シュワルツローゼピストル その13
レギュラーなモデル1909(他の場合にこの種の設備が普通であるようにセーフティがグリップ後部に取り付けられ、親指の付け根で押し込まなくてはならない形ではなく、グリップ前部にあり、複数の指で操作しなくてはならない)の他に、さらに、
グリップセーフティなしの型
が存在した。この場合も閉鎖機構(頑住吉注:唐突に今までと違う呼び方がされていますがこの場合バレル)が弾薬の発射時に前方に投射される(頑住吉注:というこの銃最大の特徴が共通している)にもかかわらず、このバリエーションもモデル1909と呼ばれ得るのか、完全には明らかでない。しかしさらなるモデル1909の本質的な特徴、つまりグリップセーフティはこの型には存在しないのである。
我々はこの型から3つの異なるバリエーションを写真で紹介できる。
バリエーションA
出土品由来であり、残念ながら非常に良好には維持されていない。グリップパネルは欠けている。刻印はモデル1909の場合と同じである。同様に閉鎖機構の滑り止めも変更されていない。つまりこの銃はグリップセーフティが存在しないという事実を除き、モデル1909にちょうどそっくりである。だが、
バリエーションB
はグリップセーフティの欠如の他に、まだいくつかのさらなる変更を示している。
1.閉鎖機構上の滑り止めが全く異なる(頑住吉注:縦のセレーションではなく細かいチェッカー)。
2.ピストル左サイドの刻印が変更されている。より詳しく言えば会社名の下にさらにさらなる1行「PATD.APR.18AND AUG.24−1909」が存在する。
3.アメリカにおける供給会社「Warner Arms Corporation」の略称として、グリップパネル上に絡み合ったWACの刻印がある(頑住吉注: http://www.savagearms.com/history.htm ここの記述によればサベージが第二次大戦前に「Davis-Warner
Arms」の財産を取得したとされていますが、これがアメリカでシュワルツローゼピストルを販売していた会社の流れを汲むものかどうか確認はできませんでした)。
4.技術的な変更として、右サイドのエキストラクターが外側に移され(頑住吉注:外装となり)決定的に強化されている。これは写真12(頑住吉注:上の写真)で非常によく分かる。
5.左サイドのセーフティボタンが変更されている(頑住吉注:オリジナルではセーフティではなく上下にスライドするセーフティ機能停止ボタンですが、このバリエーションではグリップ前面のセーフティがないのでこの場所にレバー式のマニュアルセーフティが設けられたようです)。
この「バリエーションB」は明らかに、特別なアメリカ国内における販売用と決められていた。このことはグリップパネル上の文字と英語でのパテント申請の指摘が証明している。シュワルツローゼがアメリカからの要望でグリップ前面のセーフティをなくしたのではないかともほぼ思われる。事実このセーフティはこの位置にあっても(頑住吉注:グリップ後部よりはまだ力をこめて握りやすいという意味でしょうか)非常に実用的とは言えず、使用者はこれを作動させるためには必ず3本の指を使って力強く押し込まねばならなかった。
我々はさらなる型を
バリエーションC
と呼びたい。これはDWJ1968年1月号で紹介された。この銃の場合同様にグリップセーフティがなく、刻印は全く欠けている。このことはDWJの記事で見て取ることができる。閉鎖機構の滑り止めはまたも完全に異なっており(頑住吉注:前回のカラー写真と比較してください。要するにノーマルな型では比較的細かいセレーションで下までは切られておらず、この型では比較的荒いセレーションが下まで切られています)、エキストラクターは写真14(頑住吉注:下の写真)から見て取ることができるようにまだグリップフレームに収納されている。
何故シュワルツローゼが彼のM1909をこうも頻繁に、そして一部はこうも基礎から変更したのかは残念ながら知られていない。これらの(そしてもしかするとまださらなる)バリエーションの製造のためには当然そのつど新しい工具を作成せねばならなかったわけで、このためには間違いなくもっともな理由があったはずである。
こうしたさして重要でない変更が頻繁に行われたのは、要するに期待したほど売れず、それを何とかしようと努力したということではないでしょうか。アメリカでこの銃がどの程度売れたのかは不明ですが、検索してもろくな情報に行き当たらない以上それほど多数でないのは間違いないはずです。この銃に関する記述はここで終了しており、次回からは別のパテントに関する説明に移っています。