シュワルツローゼピストル その14

 何故シュワルツローゼがこのピストル(頑住吉注:M1909)の後にもなお膝関節閉鎖機構に取り組んでいたのかは完全には明らかでない。彼は自分のシステムが他よりも有利となるように異なっているという確固たる意見だったに違いない。そうでなければ彼が1909年3月23日、「短距離後退するバレルを持つ自動火器」のパテントを申請したことの説明がつかない。これは1910年5月12日にナンバー221831の下に与えられた。

 この内容は次のようなものだった。

この発明は短距離後退するバレルを持つリコイルローダーに関係している。これまでに存在するこうした銃のセルフローディングシステムには、1.閉鎖機構の後退および前進運動がバレルの運動と同時に行われるもの、2.これら両部品の運動が独立して相前後して行われる(閉鎖機構の運動がバレルの運動の後を急いで追うことによって)もの、が存在する。最初に挙げた型はバレルの前進と閉鎖機構の閉鎖が同時であることによって閉鎖機構の運動もが大きなスプリング圧下で、つまり非常に信頼性を持ってなされ得るという長所を持っている。他方ではこの場合閉鎖機構のオープンが非常に急速に、そしてショック様に行われ、これによりロック機構部品の耐久性を損なう。

 第2の型ではこうした問題は起こらない。閉鎖機構の装填運動がバレル前進の後になって初めて起こる、つまりこの場合閉鎖が静かに行われ得るからである。しかしこうした構造方式の場合閉鎖機構の閉鎖は通常等しい比率の下に小さなスプリング圧下で行われねばならない。リコイルショックによって閉鎖機構に、かなり重いバレルよりもずっとわずかな運動仕事が与えられるからである。そういうわけでバレルは後退時に閉鎖機構の復帰のための、閉鎖機構だけよりも強いスプリングをも共に圧縮できる。

 今やこの発明によって新しい、第3の型が作り出された。これは従来知られている両者の長所を持ち、その欠点は伴わないものである。これは閉鎖機構の復帰のためには従来通りバレルを前に押すためのスプリングが使われるが、このスプリングの圧縮がバレル後退のみによってすでになされ、この結果閉鎖機構の後退が全くスプリングに苦しむことなく完全にフリーに行われることによって達成される。

 図ではこの新しいリコイルローダーの2つの異なる型が図式的に表現されている。図1および2は閉鎖ピストンが既知の方法で引き棒を持つ閉鎖レバーによって開閉される閉鎖機構を示しており、図1は閉鎖された、図2は開かれた形を表現している。図3および4は固定されたケースに関節結合された閉鎖レバーを持つ閉鎖機構を図解している。この閉鎖レバーはバレル後退の影響下でバレルよりも長いストロークで移動し、そしてこの際閉鎖機構がロック解除され、後退させられる。

 バレルl(図1および2)は閉鎖機構ケースhに固定され、既知の方法でバレルと共にストック内にスライド可能に収納されている。ケースの後端はスプリングfにあてがわれ、このスプリングの後端は誘導ケースgにあてがわれている。そしてバレルは常に前方へと押されている。閉鎖機構ケース内にはピンbによって閉鎖レバーkが関節結合され、このレバーは前端にボルトk1をめぐって回転可能な引き棒dを搭載している。この引き棒はピンiによって閉鎖機構部品と結合されているため、閉鎖機構部品はロード運動実施のために前後にスライドできる。閉鎖機構部品のロックおよびロック解除は全ての望む方法で行うことができ、この発明の対象ではない。閉鎖レバーにはリンク部品mがひっかけられ、この後方は固定された誘導ケースgと結合されている。このリンク部品は柔軟なマテリアルから作ることができるが、1個の、あるいは複数の堅固な関節部品から作られることもできる。図からは、閉鎖レバーkが誘導ケースとのこうした結合のためにスプリングfによってバレル同様常に前方、閉鎖位置(図1)へと引かれることがたやすく理解される。

 この閉鎖機構設備の作動方式は次のようである。発射の際バレル、閉鎖機構ケース、閉鎖機構がリコイルショックの作用下で後方にスライドする。その際同時に閉鎖機構ケースはスプリングfを圧縮する。閉鎖レバーkはこの運動の最初の部分においてその位置を後退したシステム内で変えない。この結果リンク部品mの前後の結合ポイント間の距離は縮まる。閉鎖レバーkはスプリング圧から解放されるが、一方リンク部品はたわむか、(堅固な素材による構造方式の場合)誘導ケース内あるいは閉鎖レバーとのその結合ポイントで短縮のためスライドさせられる。さらなる後退にあたっては閉鎖レバーは外側に動き、誘導ケースgの固定されたくさび面oをほぼ通過し(図2)、この際閉鎖機構がロック解除され、そしてその後後方に引かれる。バレル後退の終了直前、閉鎖機構部品は図1で点線で示された位置に達する。この間に閉鎖機構部品に蓄えられた運動仕事により、その後閉鎖機構は単独でさらに後方に急速に動く。バレルと閉鎖機構がその最後部位置に達するまでである(図2)。ここで初めてこの間に後を急いで追ってきた閉鎖レバーがリンク部品mをいっぱいに前方へと引くので、リンク部品は再びピンと張り、つまり閉鎖機構は再びスプリングの圧力下に置かれる。このためリコイルショックが止んだ後におけるバレルの前進により、同時に閉鎖レバーの図1の位置に向けた前方へのスイングと閉鎖機構の閉鎖が行われる。

 記述された発明の膝関節閉鎖機構への使用に際しては作動方式は同じである。差は閉鎖機構ブロックが閉鎖機構ケースとロックされるのではなく、ロックが通常の方法で閉鎖機構関節自体によってなされる点のみにある。

 図3および4で表現された型の場合、閉鎖レバーk1は固定されたケースg1のピンb1をめぐって回転可能である。発射時、バレルl1と共に後退する閉鎖機構ケースがレバーを押すので、上端に関節結合された引き棒d1はバレルよりも長いストロークで後退する。この場合引き棒はまず閉鎖機構c1をロック解除し、その後バレルから閉鎖機構を引き抜く。多くの型で知られた構造は、この方法で今や使用可能となる。すなわちバレルまたは閉鎖機構ケースにリンク部品m1が固定され、このリンク部品は後端が閉鎖レバーにひっかけられ、閉鎖機構がバレルの前進時に再び自動的に閉鎖される、というものである。リンク部品の代わりに閉鎖機構ケースには突起m2を取り付けることもできる。この突起はレバーk1を連れて行くが、そのフリーな後退を許す。最初の型の場合でも発明の本質を変えずにそのような変更は適用できる。

パテント請求
1. 短距離後退するバレルと、バレルから独立して(つまりその後を急いで追う)閉鎖機構の後退運動を持つ自動火器であり、発射の際に閉鎖機構のための閉鎖スプリングもがバレルの後退のみによって圧縮されることによって特徴付けられる。これは閉鎖機構のオープン時、閉鎖スプリングの反対圧力からの負担をなくすためである。

2. 引き棒によって動かされる閉鎖レバーまたは膝関節閉鎖機構を持つ請求1のような閉鎖機構であり、閉鎖スプリングが前部ではバレルに、後部では固定されたケースにあてがわれ、一方閉鎖レバーは中間節によってケースと結合されているので閉鎖機構がオープン時にスプリングのテンションをかけられずにバレル運動の後を急いで追うことができ、しかし閉鎖時にはバレルによって共に前方に引かれることによって特徴付けられる。

3. 固定された閉鎖機構ケースに関節結合された閉鎖レバー(バレルの後退時に後方にスイングさせられ、閉鎖機構を後方に引く)を持つ請求1のような火器であり、このレバーがオープン時にスプリングのテンションをかけられずにリコイルショックによって動き、だが閉鎖時にはバレルによって前進を強制されることによって特徴付けられる。


 何と申しましょうか、これまでのパテントの内容は部分的に不明な点はあっても大筋理解できてきたつもりなんですが、このパテントは意図自体が理解不能です。

 図1、2の方ですが、mのリンク部品を紐のようなものと仮定すると分かりやすいです。mはkの軸後下方とgをつないでおり、誘導ケースgを基準にバレルlは前に押されているのでmはkを閉鎖状態になるように引っ張るわけです。発射によってロックされたままバレル、バレルエクステンション、ボルトが後退しますが、この後退によって紐mがたるみ、kを閉鎖状態になるように引っ張るのを止めるわけです。もちろんこの瞬間までに弾丸はマズルを出、バレル内の圧力が低下していなくてはなりませんが、ここでボルトのロックは任意の方法で解除され、スプリングに抗することなく慣性で後退します。リコイルショックが止んでバレルが前進すると紐mは再びピンと張ってボルトを強制的に閉鎖させます。

 要するにボルトは後退時にはスプリングのテンションをかけられずに自由に後退できるのにもかかわらず前進時にはスプリングのテンションをかけられて強制的に閉鎖させられる、ということです。これは分かるんですけどいったいこれにどういうメリットがあるのかが分かりません。通常のシステム、すなわち閉鎖機構がスプリングのテンションをかけられながら後退し、前進するという通常のシステムには「閉鎖機構のオープンが非常に急速に、そしてショック様に行われ、これによりロック機構部品の耐久性を損なう」という欠点があってこれが取り除かれるのだ、という主張のようですが、スプリングのテンションをかけられて緩衝されながら後退する方がよりゆっくり、ショックが少なく後退するようにしか思えません。

 図3、4ではレバーk1を強制的に前進させるシステムが2通り同じ図に書き込んであって混乱しますが、動きとしては分かるような気がします。しかしこのシステムは図1、2のもののような「ボルトは後退時にはスプリングのテンションをかけられずに自由に後退できるのにもかかわらず前進時にはスプリングのテンションをかけられて強制的に閉鎖させられる」というシステムではなく、ボルト後退の全ストロークにわたってバレル復帰スプリングを圧縮し続けなければならない、つまり通常システムの変形としか思えません。

 まあいずれにせよこのアイデアは図を見ても分かるようにあくまで概念のみであってこのままオートピストルに応用できるようなものではなく、これ以上の記述がなく、図1、2のようなシステムの銃が普及していないことから見てパテントとして認められる新規性はあってもあえてこういう特殊システムを導入するほどのメリットのない、要するにナンセンスアイデアだったとみて間違いないでしょう。

 非常に長かったこの記事ですが、次回はいよいよこの分野におけるシュワルツローゼ最後のパテントが紹介されて締めくくられます。











戻るボタン