シュワルツローゼピストル その2


 だがシュワルツローゼの意気込みはくじけなかった。当時最も冒険的なセルフローディングピストルのための提案が生じたので、正しい解決法を見つけ出すことを望んでいた彼はこれを1894年5月19日に「後退時に自転する閉鎖機構カバーおよび直線状に誘導される閉鎖機構シリンダーを持つ自動火器」としてパテント出願し、これは1895年11月18日にナンバー83892の下に彼に与えられもした。

 今回彼は弾薬(依然としてリムド)をピストルのグリップフレーム内に収納し、閉鎖機構メカニズムを完全に変更した。外装ハンマーの代わりにファイアリングピンを使用することによってである。

 このナンバー83892を持つパテント書類には以下のような文面がある。

提出された発明は、閉鎖機構設備が発射時に生じるリコイルショックによって自動的にオープンし、そして打撃スプリングによって再び閉鎖される火器に関するものである。

 添付された図ではこのピストルに関する発明が分かりやすく説明されている。これらは次のことを示している。

図1 銃の縦断面。閉鎖機構は閉鎖され、ファイアリングピンは前進している。

図2は同じく縦断面。閉鎖機構がオープンされて示されている。

図3は外観であり、図4は閉鎖機構が閉鎖されている際のピストルを後方から見た図である。

図5は閉鎖機構ケースのノッチを示し、図6は図2のx-y線における閉鎖機構ケースの断面を示している。

図7は閉鎖機構シリンダーをバレルから分離した後の閉鎖機構後端の外観である。

図8はコッキングレバー、図9はファイアリングピンの外観を示し、図10は閉鎖機構シリンダーの外観をいろいろな角度で示している。

図11は弾薬マガジンを上から見た外観を表現している。

 バレルLはそれに固定された、あるいはそれと一体で作られた閉鎖機構ケースHとともに、銃床Kの2つのリングrr内で前後動できる。その際ケースのノッチ(図4および5)内で働く銃床の突起k1(図3および5)が両方の部品(頑住吉注:バレルと閉鎖機構ケース)に同時に共通の縦軸(ボア軸)をめぐる適した回転を強いる。

 閉鎖機構ケースHは内部に閉鎖機構シリンダーCを受け入れ、前下部にマガジンの弾薬が自由に通って出るための切り取り部を持つ。一方上部には閉鎖機構シリンダーの突起cおよびlのための縦方向の切り取り部がある。閉鎖機構シリンダーは前内部に2つの閉鎖用突起wwを持つ(図2および6)。

 閉鎖機構シリンダーCは回転なしに誘導される。閉鎖機構シリンダーは前外部に突起cを持つ。この突起はケースの突起部c1(図3および6)への衝突によってシリンダーの後退を制限する。さらにここ
(頑住吉注:閉鎖機構シリンダー前外部)には2つの、円周の反対側に位置する、直角に曲がったノッチnnがフライス加工されている。その縦部分はシリンダーの前進の際に閉鎖用突起wwにauflaufenする(頑住吉注:どうしても直訳できないんですが、要するに閉鎖用突起がノッチ内に入り込むということです)。閉鎖用突起は上で描写された閉鎖機構ケースの回転の際にノッチの直角の部分にねじ込まれ、そしてこれにより発射ガスのリコイルショック受け止めるバレルと閉鎖機構シリンダーのロックを引き起こす。

 閉鎖機構シリンダーは内部にファイアリングピンSを持ち、ファイアリングピンには打撃スプリングfがそのリング状隆起部tの切り取り部iを通して導入されている。閉鎖機構シリンダー内に固定されたスプリングvはファイアリングピンをコック位置に保持する。ファイアリングピン後退時にそのスパイクoがファイアリングピンのリング状隆起部の前に出ることによってである。

 シリンダーの突起lのスリット内には、コッキングレバーDの回転ピンddがはまっている。コッキングレバーの下端は銃床の突起kに軽くあてがわれている。

 そしてコッキングレバーはコッキングかんぬきg(コッキングレバーとともにファイアリングピンのスリットu内を動く)とともにファイアリングピンに後ろの受け部を提供する。コッキングレバーは閉鎖機構シリンダーの後退の際に突起kに保持され、そのピンddをめぐって回転を強いられる。これにより打撃スプリングfは前方に駆動するコッキングかんぬきgによって後ろから前へと圧縮される。したがってこのスプリングは閉鎖機構シリンダーをコッキングレバーを使って常に前へと駆動しようと努める。

 閉鎖機構シリンダーの後退の際、回転軸ddに対し反対に形成された平面eがコッキングレバー(スリットuの後面pに作用する)を圧する。同時にファイアリングピンが後退し、その後スパイクoによって固定される。

 この銃の場合弾薬供給は任意に配置できる。図にはハンマーおよびブロック閉鎖機構を持つ私のピストル(パテント書類ナンバー70130参照 頑住吉注:前回紹介したもの)の際にすでに使用されたマガジン設備が表現されている。バーBによって誘導された弾薬供給スプリングFはこの場合常に、同様にバーBに誘導されたフォーロワJを上昇させるように作用している。薄いスチール板から作られたマガジンMには、切込みによってサイド部分に2つの内側にスプリングのテンションがかかった「葉」mm(図2)が形成されている。その上の角は内側に曲げられている(図11)。これがオープンされた閉鎖機構の際に最も上に位置するマガジンの弾薬を高く上げさせ、この結果弾薬は閉鎖機構シリンダーによってつかまれ、バレル内に押し込まれることができる。

 この銃の作動経過は次のようである。閉鎖機構シリンダーはセーフティのグリップg1を使って、そしてその下端が銃床のレスト部k2(図2、3、4)に入った状態でのコッキングレバーDのわずかな右回転によって後退させられる。これにより閉鎖機構はオープンされた位置で固定される。その後マガジンは弾薬によって満たされ、続いてコッキングレバーは再びレスト部k2から解かれる。このとき閉鎖機構シリンダーはただちに前方へと急速に進み、同時に弾薬をマガジンからバレル内へと押し込む。ファイアリングピンはこのときコックされており、閉鎖機構シリンダーはバレルとロックされ、この銃は発射準備状態である。

 その後射手がトリガーを引くと、スプリングvのピンsとかみ合っているフックa2はファイアリングピンのリング状隆起部の前のスパイクoを引き、ファイアリングピンはそのスプリングfに駆動されて急速に進む。その後前方のプライマーに当たって発射が起こる(図1)。

 このときリコイルショックがバレルを閉鎖機構シリンダーおよび閉鎖機構ケースとともに、ファイアリングピンとコッキングレバーを同時にコッキングしつつ銃床のリングrr内で後方に駆動する。その際ノッチhの切り立った部分h1(図5)が突起k1上に沿って滑り、ケースはバレルとともに右に回転する。この結果閉鎖用突起wwはノッチnnの直角の部分から回転して出、そしてこれによりバレルのロックは解かれる。その後閉鎖機構ケース内のコッキングレバーDのための切り取り部の前面qが(図2および7)コッキングレバーに当たり、そしてその後さらに短距離共に後方に滑ったケースはこれによりコッキングレバーにさらに高い速度を与え、これにより閉鎖機構シリンダーはバレルから離れる。閉鎖機構シリンダーはこのとき、ノッチhの終わりの面がケースとバレルの後退を制限するため、与えられた力によって単独でさらに急速に後退する。完全にオープンされた位置(図2)に達するまでである。この運動により、同時に発射済み薬莢がエキストラクターAによってバレルから取り除かれ、そして打撃スプリングの圧縮は完了する。

 このときコッキングレバーDは打撃スプリングの効果の下に閉鎖機構シリンダーを再び前へと駆動する。これがマガジン最上部の弾薬をつかみ、バレル内に押し込む。この運動によりバレルと閉鎖機構ケースは過早に前方へ押し動かされることがないのは次の理由である。閉鎖機構ケースのレスト部b(図3)は、閉鎖機構シリンダーのバレルからの分離の際に、ケースの斜面b2に作用している突起l(図7)によって(この突起はケースをさらにいくらか右へと回転させる)銃床のリングr(図3および4)のピンb1とかみ合わされる。その後閉鎖機構シリンダーが前方に急速に進む際に再びバレルの近くに到着するとすぐ、その突起c(ケースの斜面b3に作用している)がノッチbをピンb1から外し、そしてこのとき閉鎖機構シリンダー、閉鎖機構ケース、バレルは一緒に前方に動く。この際突起k1はノッチhの切り立った面h2に作用し、ケースは左へと回転する。この結果システムが最初の位置に達したときには閉鎖用突起wwはノッチnn内にロックされている。

 描写された装填運動は急速に行われるので、閉鎖システムがその際前部位置に再び達したとき射手はまだトリガーを引いている。そういうわけで、トリガースパイクスプリングvのピンsは下ではなく、トリガーフックa2の上に急速に進む。トリガーを放した後、スプリングf1はフックa2を再びピンs上に立てる。トリガーがその軸a1上で押し動かせるようになっていることによってである。トリガーへの改めての圧力はそういうわけで続く発射を起こす。そして解説された銃の作動経過が繰り返される。

 ここで申し立てられた閉鎖機構シリンダーのバレルとのロックのための設備は、発射ガスの突きをバレル後部開口の後ろで直接受け止めることを許す。閉鎖機構シリンダーに取り付けた閉鎖用突起を持つ銃の場合にそうであるように閉鎖機構(弾薬の長さよりワイドであることを前提とする)を連れ戻さねばならないことなしにである。マガジンは直接バレル後部開口の後ろに入れることができる。一方従来はマガジンとバレルの間にはケース内に閉鎖用突起のための受け部のフライス加工のための空間を空けておかなければならなかった。さらに、この場合ケース内の閉鎖用突起のための縦ノッチがなくなっており、このためケースがより薄く維持でき、そして簡単に作れる。より多い発射薬を持つ銃の場合、閉鎖機構ケース内に相前後して複数の閉鎖用突起を設けることができる。

パテント要求

1. 自動的な火器であり、この場合閉鎖機構ケースの角のあるノッチ(h)が閉鎖機構ケースのリコイルショックによる後退の際に銃床に固定された容器の突起(k)上で滑り、閉鎖機構ケースはバレルごと縦軸をめぐって回転する。一方閉鎖機構シリンダーは回転なしに後退する。この結果バレルと閉鎖機構シリンダーの間のロックは解かれる。

2. 1.で特徴を示した火器の形式であり、この場合発射のための設備と閉鎖機構の自動的なロックのための設備が閉鎖機構シリンダー内に収納されている。

3. 1で特徴を示した火器の形式であり、この場合打撃スプリングが同時にまた閉鎖機構シリンダーおよびバレルの前進を引き起こす。

4. 1.で特徴を示した火器の形式であり、この場合ファイアリングピン(S)にかぶせられた打撃スプリング(f)の端部がファイアリングピンにあてがわれ、これを前方に駆動し、そして打撃スプリングはその別の端に接したコッキングレバー(D)(閉鎖機構シリンダー内の2つの回転ピン(dd)をめぐって振れ、このフリーな端部は銃床の突起(k)にあてがわれている)によって閉鎖機構シリンダーの後退の際に圧縮される。この結果フリーにされた閉鎖機構シリンダーを常に再び前方に駆動する。





 正直前回のパテントより不明部分が多いです。一番の理由は図が不鮮明でパーツの関係や文字が読み取れない部分が多いことです。

 この銃は前回のものよりもはるかに我々が知る一般的なオートピストルに近づいていますが、まだかなり変わった点を残しています。基本的にはショートリコイルで、文中で「閉鎖機構シリンダー」と呼ばれているボルトは回転によって「閉鎖機構ケース」と呼ばれているバレルエクステンションとロック、アンロックします。この特徴は現在の銃にも近いものが見られますが、この銃ではユニークなことにボルトはストレートに前後動するだけで、バレルエクステンションの方が回転するわけです。また、FNのブローニングM1900のようにメインスプリングとリコイルスプリングが兼用されています。これは合理的なようにも思えますが、実際にはリコイルスプリングのテンションを弱めたいがこれ以上メインスプリングのテンションが弱まると不発が多くなってしまうなどのケースも多いはずで、柔軟性を欠くシステムと考えられます。

 「コッキングレバー」と直訳したパーツは我々の知るいわゆるコッキングレバーとは全く異なる機能を持つパーツであり、このパーツがメインスプリング後端に押されることでボルトに復帰するテンションが生じています。マガジンは固定で、ボルトを後退させるとこのコッキングレバーがボルトをクリックストップするようですが、このあたりはいくら読んでもよく分かりません。コッキングレバーは図2のように射撃中大きく後退するので、射手はグリップのかなり下を握ることになり、相対的にバレルの位置が高くなってマズルジャンプが大きくなるはずです。シアは板バネでできており、バレルエクステンションに付属しています。トリガーを引くとファイアリングピンをコッキング位置で止めている突起が下降して発射し、発射後バレルエクステンションが後退するとトリガーとシアの関係は否応なく断たれ、バレルエクステンション復帰後はトリガーの軸穴が長円形になっているためにトリガーは元の関係に復帰できるわけです。「コッキングかんぬき」と訳したのがいわゆるコッキングレバーで、ボルトアクションライフルのそれを小さくしたような形をしているようです。

 このシステムのメリットに関する記述は何を言っているのか、そもそもどんな銃と比較しての話なのかよく分かりませんが、前回の銃よりずっとシンプルで無理のないシステムであるのは一目瞭然です。また、機関部は現在の銃と比較してすらコンパクトな印象です。

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