シュワルツローゼピストル その5

 シュワルツローゼは、バレルおよびボルトを「保持するもの」(頑住吉注:以後ホルダーとします)を修正した場合、彼のその前のパテント(頑住吉注:「その3」で紹介されたもの)によってより大きな成功が得られると思ったらしい。いずれにせよ彼は1896年10月15日、「リコイルローダーのためのバレルおよび発火機構ホルダー」のためのパテントを申請した。これは1897年10月22日にナンバー94729の下に彼に与えられ、次のような文面があった。

提出された発明は、後方にスライドできるバレルを持つ自動火器(ドイツ帝国パテント ナンバー83892および88542参照)のためのバレルおよび発火機構ホルダーに関係している。

 両者においてバレルLはそこに固定された閉鎖機構ケースHおよび閉鎖機構シリンダーCとともに銃床の「誘導するもの」(リングr)内で発射のリコイルショックによって短距離後方へ急速に動かされる。この際バレルと閉鎖機構シリンダーの間のロックは解除され、その後バレルとケースは留まり、一方閉鎖機構シリンダーは開始された後方への運動を続行し、空薬莢を投げ出す。続いてシリンダーが後退時に圧縮していたスプリングの圧力により、シリンダーは再びバレルに向けて前進させられ、その後バレル、ケース、シリンダーは一体で発射位置に前進させられ、その際バレルのロックが再び行われる。

 今やこのシステムではバレルと閉鎖機構ケースがシリンダーのこれらと分離しての前後運動の間、銃床リングと一時的に結合される。これがバレルホルダーの目的である(
頑住吉注:「バレルホルダー」と言ってみたり「ボルトホルダー」と言ってみたり「バレルおよびボルトホルダー」と言ってみたり非常に分かりにくいですが、全て同一の部品です)

 添付された図では次の内容が図解されている。

図1 ボルトホルダー

図2 この設備の後方からの外観

図3 閉鎖機構の閉鎖された際の縦断面

図4 同じくオープンされた際

図5 閉鎖機構が閉鎖され、ファイアリングピンが前進した状態の銃の縦断面

 バレルおよびボルトホルダーP(図1)は閉鎖機構ケースの後端に軽くあてがわれている(図2、3、4)。これは閉鎖機構ケース上でいくらか半径状には動ける(
頑住吉注:要するに横から見てのシーソー運動はできる)が、縦方向にはスライドできない。

 組み立てられた銃では閉鎖機構ケースはこのバレルホルダーを一緒に前後に引いて動かす。一方バレルホルダーは後ろの誘導リングr内にこれ用に備えられたスリット(図2)によって閉鎖機構ケースの回転に参加することを阻まれる。ホルダーの前の突起pは閉鎖機構シリンダーのノッチc2内をグリップしており(図3、4)、閉鎖機構が完全にオープンした際シリンダーの上の閉鎖用突起に当り、シリンダーの閉鎖機構ケース内での後退ストロークを制限する(図4)。閉鎖機構が閉鎖されている際、後ろの突起mはファイアリングピンsの上に位置する(図3)。

 閉鎖機構ケースとシリンダーの一緒の後退によってロック解除が行われた後、シリンダーは閉鎖機構ケースから離れて急速に動き、この結果閉鎖機構シリンダーの後面(ホルダーの突起mの傾斜をつけた内面に作用する)がホルダーの後端を、そしてこれによりノッチp1も少し持ち上げる

 そういうわけで閉鎖機構ケースが再び急速に前進する際ノッチp1は誘導リングrの後面に当り、閉鎖機構ケースを中間位置に固定する(図4)。

 この時閉鎖機構シリンダー(ホルダーの突起m上を滑る)が再び完全にバレルに向けて急速に前進し切る前にホルダーの後端は沈下できないので、閉鎖機構ケースの早すぎる前進(従来しばしば行われていたような)は今や完全に排除される。閉鎖機構シリンダーがバレルに向けて急速に前進すると、ノッチc2の後端がホルダーの前の突起pに当り、その後端を再び下にスイングさせ、この結果ノッチp1はrと干渉外に置かれる。その後バレル、閉鎖機構ケース、閉鎖機構シリンダーは一緒に発射位置へと前方に滑る(図3)。

パテント請求
1、リコイルローダー用のバレルホルダーであり、これは閉鎖機構シリンダーのバレルからの分離に際してその突起m上に存在する斜面を用いて(この上に閉鎖機構シリンダーが作用する)持ち上げられ、この結果閉鎖機構ケースの再度の急速な前進に際してホルダーのノッチp1が誘導リングの後面に当り、そして完全にバレルに向けて急速に前進したシリンダーがホルダーの突起mを解放するまで閉鎖機構ケースはバレルと共に中間位置に固定される。

2.項目1で特徴付けられたバレルホルダー上の突起pは閉鎖機構のオープン時閉鎖機構シリンダーのショルダー部に当り、シリンダーの後退ストロークを制限する。


 


 「その3」で紹介されたパテントにもこのバレル・バレルエクステンション一時ロックシステムはありましたが、この系列の銃独特の「コッキングレバー」と連動するものであり、マガジン内の弾薬を保持する役割も兼ねていました。今回の内容には「閉鎖機構ケースの早すぎる前進(従来しばしば行われていたような)は今や完全に排除される」とあり、理屈上は「その3」におけるものも確実に機能しそうに思えますが、実際には作動不良が多かったようです。

 何故こういうパーツが必要なのかと言えば、バレル・バレルエクステンションに独立したリターンスプリングが付属しているからです。ガバメントやM92系など大多数のショートリコイルモデルにはバレルにリターンスプリングはなく、バレルはスライドの復帰最終段階にそれに押されることで前進します。しかし十四年式など一部バレル(エクステンション)リターンに作用するスプリングを持つものもあります。十四年式の場合もボルトが復帰する前にバレルは勝手に自分のスプリングによって復帰を始めようとするはずですが、構造上ロッキングブロックが上昇しようとしてもボルトの切り欠き部分が復帰してくるまでは上昇できず、結果的にバレルの早すぎる復帰は起こりません。しかしこの系列のシュワルツローゼピストルの場合、抵抗なくバレルが復帰してしまうことができます。



 黄緑がバレル基部、薄い青がボルトヘッド、濃い青が閉鎖用突起です。この銃の場合ボルトが前進して閉鎖用突起がバレル基部の縦方向の削り部に入り込んだ後にボルトではなくバレル側が矢印方向に回転して両者がロックされますが、ボルトが来る前にバレルが前進、回転してしまえば閉鎖用突起は当然縦方向の削り部に入り込めず、完全閉鎖できなくなってしまいます。今回のパテントの対象であるバレルホルダーはこれを防ぐものです。機能的には非常に単純であり、上の説明で充分だと思います。ただ、前回も書きましたがバレルにリターンスプリングを設けず、ボルトに押されてバレルが前進するようにすればこんなパーツは必要ないわけで、そんなに自慢できる発明とは思えません。事実パテントが失効した後もこのメカを真似た銃は出現していないようです。








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