セマーリン左側面セマーリン右側面

セマーリントリガー引きセマーリンバレル前進


 これは1992年に作った投稿者として最後の作品です。
 これの実銃は1970年代後半に開発されたきわめて珍しい手動連発ピストルです。マガジンには.45ACPが4発入り、チャンバーと合わせると5連発になります。1〜2連のデリンジャーを除き、最小の.45ハンドガンというのが売りだったようです。外観は通常のオートに似ていますが、スライドが後退するのではなく、バレルが前進して排莢します。「バレルが前進」というとお気づきの方もいるでしょう。この銃はブローフォワードを手動化したものです。トリガー軸がロッキングの役割を果たし、トリガーを引いていないときはバレルが前進できますが、引いているとロックされています。だから当然発射時はバレルがロックされているわけです。ロッキングラグを削ってしまえば発射時に猛烈な勢いでバレルが前進(というよりバレル以外の部分が後退)して自動的に排莢されるはずです。オートにしなかったのは強力なリコイルスプリングや開放を遅らせる機構(ブローフォワードにロック機構がついた銃って私は知りませんが知ってる人います?)を盛り込む必要があり、そうすると複雑、大型化して逆に存在意義が薄れるからでしょうね。当時としては珍しいダブルアクションオンリー、手動セーフティなしというスタイルでした。トリガーまわりにはローラーベアリングなどが組み込まれて非常にスムーズなプルで、命中精度も良好だったということです。ただ、半手作りということで価格は最高級ターゲットピストル並みでした。Semmerling社が販売していましたが倒産したのか撤退したのか後にアメリカンデリンジャー社が販売していました。同社はセマーリン以外にもハイスタンダードデリンジャーやCOP、MAXINEの項で書いた.45-70ダブルデリンジャーなど珍デリンジャーを開発または権利を買いとって販売していましたが、それらのクオリティーにはいろいろ問題もあったようです。現在どうなっているのかは不明ですが、アメリカの最近のカタログには掲載されていないようなので、少なくともセマーリンは絶版になっているんでしょう。
 作品は締め切りに追われることもなく納得行くまで作りこむことができたせいか、今見てもけっこうよくできているように感じます。細部の仕上げは相当荒いですけど。内部メカはマルシンのコルト25(ガスガン)で、実銃通りバレルを前進、後退させることによる手動連発式です。トリガー、ロッキング、携帯時にバレルが不用意に前進しないロックなど実銃通りのシステムを再現しています。ノズルには.45ACPの空薬莢をかぶせてリアルな感じにしてあります。内蔵ハンマー式ではありますが、ハンマーに押されてストライカーが銃の後方にニュッと突き出す様子(写真左下)も再現してあります。下部の左右から圧迫して引きぬくマガジン(後にS&W が.380シグマで似た方法を採用しましたね)も実銃通りの再現です。
 残念ながらプラキャストではリアルなメカが作れないので製品化はないでしょうが、自分としては愛着のある作品です。

※実銃についてはGUN誌1986年4月号、作品についてはアームズマガジン1993年7月号を参照してください。

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