極超音速兵器は未来の切り札か
素人考えではそんなに難しそうに思えなかったんですが。長いので2回に分けます。
http://military.china.com/kangzhan70/zhjw/11173869/20160422/22498179.html
SR-72はアメリカの「極超音速の切り札」になれるか?
最近、アメリカが新世代極超音速武器の研究開発を吹聴する声がやかましく論争の的となっている。まず空軍が公開の書簡を書き、極超音速発展の重要な意義、そしてすでにアメリカのこの方面における先んじた地位は動揺させられているかもしれないと指摘した。その後、ロッキード・マーティン社総裁自ら、同社の著名な「スカンクワークス」はすでに「飛行速度マッハ6」の極超音速飛行機の研究開発を開始していると言明した。つまりすでに宣伝されて何年にもなるSR-72極超音速偵察機に関し、この飛行機の研究開発経費は「受け入れ可能」と言明したのである。
ならば、アメリカは本当にロッキード・マーティン社が言明するように、すでに極超音速飛行機研究開発における主要な技術的難題の上で突破を取得しているのか否か? 彼らは比較的少ない経費を用いて、比較的短時間内に、いかなる防空システムをも打ち負かせる「極超音速の切り札」を研究開発できるのだろうか?
極超音速飛行機の主要な技術的障害
今年3月初め、アメリカ空軍と国会議員は連名で議会に公開の書簡を発した。この作者の1人は当時アメリカ航空宇宙局のX-15極超音速ロケット飛行機の試験飛行員の息子で、現在はアメリカ上院議員である。彼は、自分の父がまだもし生きていたらきっと、我々はとっくにX-15が1960年代に創造したマッハ6.7の速度記録を超えているべきだと言うだろう、と語った。
X-15検証機は1960年代に試験飛行したロケット動力飛行機で、その研究開発は後のスペースシャトルのために道ならしをした。見たところ、1960年代にはもうマッハ6.7に到達できた以上、ならば今日新たな極超音速飛行機を研究開発するのは決して絶対的難題ではないようである。
この書簡の中に言及されたもう1つの飛行機はアメリカ空軍がリードするX-51Aである。公開の書簡の言い方によれば、それは2013年にマッハ4.5の速度をもって3分間飛行し、極超音速飛行機のカギとなる重要技術を検証した。すなわち、「スクラムジェットエンジン」である。
アメリカは継続してX-51プロジェクトの上に投資を増加し、スクラムジェットエンジンの技術的成熟性を高めさえすればよく、それでもう巡航ミサイルに似た極超音速武器が獲得できるかのようである。
しかもロッキード・マーティン社総裁のマレーネ ヒューソンは3月15日、ロッキード・マーティン社はすでに熱防護システム、空気動力学、ナビゲーションコントロールシステム、遠距離通信システム技術の方面で突破を取得済みで、同社傘下の著名な「スカンクワークス」はすでに飛行速度マッハ6に達する飛行機の研究開発を開始している、とした。
上述のこうした言い方はアメリカの極超音速飛行機の未来が光明に満ちていることを示しているかのようだ。
しかし事実はおそらくこうした吹聴者が言うように素晴らしいものではなく、極超音速飛行機の研究開発は現在成果が密集して出現する時には至っていない。
技術の角度から言うと、極超音速飛行機を製造しようとするには、人類はまだ多くの技術的難関を突破する必要があり、このことは未来の極超音速飛行機発展の「路線図」をも決定づけている。
まず、極超音速飛行機第1の難題は「熱の障害」である。
確かに、1960年代の人類は極超音速の「熱の障害」を克服するいくつかの基本的な方法をもう掌握していた。最も典型的なのは宇宙船や大陸間弾道ミサイルの弾頭で、それらはいずれもマッハ20の速度をもって地球の大気圏に進入する。この過程では、摂氏6,000度の高温に耐える必要がある。だが指摘しておくことが必須なのは、こうした飛行体の熱に抗する技術の水準は、今人々が研究開発しようとしている極超音速飛行機に比べれば、あいにくと充分にはほど遠い、ということである。
何故なら今研究開発される極超音速飛行機は、大気圏内、あるいは大気圏の縁を、マッハ5〜20の速度をもって長時間飛行することが要求され、しかも全飛行過程の中で宇宙船や大陸間弾道ミサイルの弾頭のように急速に減速してはならないからである。さらに過酷な要求は、飛行過程の中でさらにコントロール能力を持つ必要があるということである。この技術的難度がすでに当時大気圏再突入を主要な設計目標とした飛行体と比べずっと高いことは考えれば分かる。
現在この方面において、成果の公開が最も多いのはアメリカで、2011年ロッキード・マーティン社とアメリカ国防省は共同でHTV-2極超音速滑空機の飛行試験を行い、この飛行機の試験速度はマッハ20だった。だが試験飛行は失敗をもって終わりを告げ、このことはロッキード・マーティン社が決して声明の中で言うように「すでに熱防護システム技術で突破を取得」してはいないことを示し、少なくとも関連技術はまだ実際の飛行機の上で検証を得てはいない。
熱の障害を突破する技術的難度はこのように高く、このため現在研究開発されている実用化された極超音速武器の飛行速度は全てマッハ5〜10というこの区間に選択されている。
熱の障害は極超音速飛行機技術の難点の1つでしかなく、しかもまだ相対的に解決が容易な難点の1つなのである。
(頑住吉注:これより2ページ目)
続く難題は動力システムである。現在まで、極超音速飛行機はほとんど全てロケットエンジンを用いて飛行を実現している。このうち極超音速滑空機は飛行の後半段階では動力はなく、完全に比較的高い揚力:抵抗比に頼り、特定の高度層で滑空を行う。
大気圏内全過程コントロール可能な極超音速飛行を実現したければ、現在見たところ、最も現実的な動力技術はスクラムジェットエンジンである。
皆知っているが通常のラムジェットエンジンの理論的最大飛行速度はマッハ5で、この速度を超えるとラムジェットエンジンは正常に作動できなくなる。一方スクラムジェットエンジンは現在まだ初期に相当する研究開発段階にある。
現在公開されている資料から見て、アメリカのX-51検証機だけがスクラムジェットエンジンの実際の飛行試験を行ったことがある。以前の報道が言うところによれば、X-51はかつて2013年に完全に成功した飛行試験を行い、当時検証機はB-52H爆撃機上から発射され、ロケットエンジンを用いてマッハ4.5の飛行速度に到達し、しかる後にスクラムジェットエンジンを始動して飛行速度をマッハ5まで高めた。スクラムジェットエンジンの作動時間は120秒近くに達し、新たな世界記録を創造した。
だが当然、別の方面において最近アメリカ空軍ミッチェル研究所は議会に提出した文書の中で、X-51の実際の飛行速度はマッハ4.5だったとした。もしこの情報が確かならば、X-51は実はスクラムジェットエンジンの点火試験を行っただけで、決してまだ真に強大な推力を生じさせてはいないことを意味している。
スクラムジェットエンジンは現在アメリカの他中国でのみ飛行試験が行われたことがある。2015年我が国の「馮如賞」受賞者の1人である王振国教授の賞を獲得した事績の中でこの時の試験の状況に言及されている。「総指揮および総設計師として、チームを率いて十余年を経歴し、概念の提出、方案設計からシステム集成までの国家重大特定プロジェクトXX極超音速飛行機の研究開発を成功させ、かつ組織的に飛行試験を完成させたことは、我が国をアメリカに続き第2のスクラムジェットエンジンを動力とする極超音速飛行機自主飛行を実現した国とした。」 しかも我が国のスクラムジェットエンジンはアメリカとは異なり、世界初の航空ケロシン再生冷却スクラムジェット技術を使用したエンジンで、X-51Aが特殊吸熱型炭化水素燃料を使用するのに比べ、実用化までの距離がさらにいくらか近い可能性がある。
全世界で今まで中米両国だけがスクラムジェットエンジンの飛行試験を実現しており、しかも種々の情報から見て、現在まだいずれも技術の難関攻略段階にあり、実用化できるまでにはまだ相当の距離がある。このことからは、吸気式動力の極超音速飛行機の難度がどんなに高いかも見て取れる。
まさにスクラムジェット動力研究開発の難度が高いがゆえに、短時間内にはまだ実用に投入し難く、このため予見できる将来、人類初の実用極超音速武器で最も現実的なのはやはり「ブースト-滑空」方式の飛行で、すなわちロケットエンジンを主要な動力ソースとし、極超音速水平飛行段階には決して動力はない。あるいは、マッハ5より低い速度で、ラムジェットを使用して動力飛行するものである。
熱の障害と動力の他、極超音速武器次の難題はコントロールシステムである。
アメリカが研究開発する極超音速武器計画には現在多くの方案があり、その中で最も実用段階に近いのはアメリカ陸軍が「ノースポール」中距離ミサイル推進器を用いて改良するAHWシステムである。これは典型的な「ブースト-滑空」式の飛行体である。だが現在まで、まだ非常に少ない何回かの試験しか行われておらず、しかも去年の試験での爆発は発射場の深刻な損傷をもたらし、次の試験は2017年になることを要してやっと継続して行えるかもしれない。まさに飛行試験がまだ初期段階にあるがゆえに、AHWの命中精度問題は現在まだ真に検証が開始されていない。
極超音速ミサイルの正確な命中を実現しようとすれば、現在まだ多くの実験が待たれる。しかも現在の実験回数がまだ非常に少ない状況下で、極超音速ミサイルの正確な攻撃技術を掌握しようとするのは、おそらく短期間内には達成が非常に難しい。
まさにこの原因ゆえにでもあるが、近い時期内で最も現実的な極超音速を武器化する方式は、それを戦略核兵器の投入ツールとすることに他ならない。それを戦術打撃用途に用いようとすれば、まだより多くの実験と研究を必要とする。