中国国産空母の動力は? その2

 前回は「過度に楽観的でない、現実を直視した内容」と評しましたが、今回はちょっと現実離れした部分を含む記事です。

http://military.china.com/important/11132797/20130813/17994699.html


中国空母の動力、ダブルの重大任務に直面:動力装置と総合電力

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「航行速度は空母の機動能力と海上対潜作戦と緊密に関係している。また航行速度は遼寧艦のような種類のスキージャンプ式空母にとってはさらに重要性が増すと言える。画像は米軍のリンカーン号空母が海上で高速機動旋回を行っているところ。」)

新華ネット特別原稿(新華軍事評論員 鄭文浩) 多くのメディアは空母について討論している時、しばしば動力システムを軽視する。何故なら空母の巨大な外形、勇ましい艦載機、規模が非常に大きい航路護衛艦隊に比べ、内部深くにある動力システムは確かにあまり目立たないからである。航空エンジンと比べると、水上艦艇のエンジンがもはやどんなに無力になっても、結局のところまだ海上を漂うことはできる。だが作戦機のエンジンがひとたび問題を起こせば、飛行員はすぐ落下傘降下を準備する。しかし空母は浮遊するプラットフォームというだけではなく、現代の実戦機同様、やはり極めてパワフルな動力で、高い航行速度と艦上設備の需要を満足させる必要があるのである。またカタパルトの空母に対する意義はすでに周知されている。まさに多くの専門家が予測するように、中国の未来の国産空母も、必ずやどんな種類のカタパルトを採用するかの問題に直面する。蒸気カタパルトであろうが電磁カタパルトであろうが、それ自体が高い技術の代表であるだけでなく、さらに空母の動力と密接に関係している。このため、空母の動力は空母の性能を評価する1つの非常に重要な指標であり核心的な技術問題なのである。

まず、パワフルな空母の動力は空母の航行速度というこの実際の戦術的必要性を満足させることができる。

第1に、空母艦載機の発着には空母が一定の速度を保持することが必要である。空母艦載機の発着は本質的に言えば海上の飛行場での発着である。物理学的基本法則から言って、飛行機が発進できるためには必要な発進速度に到達することが必須である。アメリカの原子力空母は速度ゼロでカタパルト発射できると称しているが、これはアメリカ艦載機の航空動力とカタパルトの強大さに基づいている。もしそうだとしても、米軍はやはり常時20ノットと向かい風の状態下での発着を保持し、もってカタパルトへの圧力を軽減する必要がある。

スキージャンプ式空母にとって、空母の速度はさらに重要が増す。カタパルトがないので、艦載機発着時の重量は制限を受けざるを得ず、しかも空母の航行速度がもし低下したら、直ちにさらに一歩艦載機の離陸重量の条件が悪化し、直接その作戦半径と武器搭載能力に影響する。このことは空母の総合作戦能力が大幅に低下することを意味する。

(頑住吉注:これより2ページ目。画像のキャプションは「アメリカがその次世代『ジェラルド フォード』号のために研究開発した電磁カタパルト。」です。)

第2に、航行速度は空母の機動能力の重要な体現である。空母は本来的に遠海で作戦する必要があり、家の門を守るのではない。航行速度の差異は直接空母が配備されるまでの時間に影響し、海戦の距離が大きくなるほど、空母の機動速度の差異ははっきりする。国際的な危機、事件が発生するたび、アメリカ大統領はいつも、一番近い空母はどこだ?、と訊くことになる。これは実は航行速度とも関係がある。フォークランド戦争(頑住吉注:原文ではマルビナス島戦争)で、イギリス特別混成艦隊は30日近く走ってやっと本土からマルビナス島付近の海域に到着したが、その空母の巡航速度はたった18ノットだった。もし原子力空母の30ノット以上の巡航速度だったら、少なくとも8〜9日は短縮できた。当時まずマルビナス島海域に到着したイギリスの「コンカラー」号原潜は水中速度28ノットで、スコットランドの基地から出発して21日しかかからなかった。もし我々が空母航路護衛艦艇がそんなに速く航行できないということを考慮するなら、艦隊全体が25ノット前後の速度を保持し、1週間早く戦場に到着すれば問題ない。もしアルゼンチンの実力が弱くなかったら、1週間の時間的遅れは現代戦争の勝敗に影響するに足りたはずである。

第3に、航行速度は空母の安全、すなわち対潜作戦と関係がある。敵軍の潜水艦が潜伏している可能性がある海域では、空母は直ちに頻繁なジグザグの戦術機動を行う必要があり、その目的は水中に潜伏する潜水艦に空母の運動方向を判断し難くさせ、攻撃発動の機会を探し出しにくくさせ、同時に空母戦闘群の対潜戦力を避け難くさせることにある。ジグザグ機動戦術は空母戦闘群が比較的高い航行速度を保持することを必要とし、一般的な状況下では16〜22ノットの保持が必要である。もし風速がごく低い状況下だと、さらに29ノットまで上げる必要がある。空母戦闘群の高速航行は、一方においては敵潜水艦の魚雷攻撃の占位扇面を縮小し、その占位確率を下げ、かつ相手方が遅れず偵察して得た情報を利用しにくくさせる。

空母戦闘群の尾部の対潜縦深は小さいが、これが航行している時は最高速度26ノットより低い潜水艦はもし後方から魚雷攻撃のため占位するとすれば比較的困難である。何故なら相対速度が小さく、何ノットかしかなく、このため輻射騒音の強度が高く、また高速占位の持続時間が長く、艦隊の尾部に位置する空母航路護衛潜水艦あるいは水上艦艇の曳航式アレイソナーによって容易に発見されるからである。しかも、潜水艦が空母戦闘群の側面から尾部に入るにも数時間かかる。これらはいずれも敵潜水艦の攻撃活動を制限する。もし敵サイドが原子力および通常動力潜水艦の魚雷、近、中、遠距離対艦ミサイル、機載、艦載中、遠距離対艦ミサイルを組織して空母戦闘群を攻撃したら、という可能性は否定できず、こうなれば極めて大きく空母戦闘群の対潜防御能力は削減されることになる。だがこのような力量を組織できる国はごく少なく、いくつもないのであって、空母の高速機動の意義は依然成立する。

このため各国は空母をテストする時にいつも極限の速度を出し、もって空母が設計された最大航行速度を満足させられるか否かを確定するのである。もしこの原因がなかったら、ロシアがインドのために改装した「ヴィックラマディヤ」号空母もある航海試験の中でボイラーが爆発して退場という結果にはならなかったはずである。

(頑住吉注:これより3ページ目。画像のキャプションは「中国が研究開発する1兆ワット級高温超伝導発電器はすでに満負荷での安定した運転を実現している。これは艦船の完全電動システムの発展に対し非常に重要である。」です。)

空母の高速機動が強力な動力を必要とする以外に、蒸気カタパルト装置と空母の動力にも非常に大きな関係がある。アメリカのC系列カタパルトのいくつかの初期タイプ、例えばC-7は「フォレスタル」号空母のメイン動力ボイラーの制限を受け、カタパルト発射の速度が上げられなかった。後に専用の蒸気補助燃焼加圧ボイラーが使用され、やっと蒸気の圧力が倍に高められ、カタパルトの発射能力が向上した。C-13カタパルトを使用しても多くの制限がある。これは1回の発射で625kgの蒸気と1トン前後の緩衝用淡水を消耗する必要がある。蒸気は発射後外界に散ってしまい、もし空母が毎分1機の速度で緊急カタパルト発進を行ったら、連続8機の発射後、空母のメイン動力の蒸気はもう20%失われ、動力全体が32%損失し、航行速度は8ノット低下せざるを得ない。単純な蒸気動力空母ではすでに大型カタパルトの消耗を受け入れられないことが見て取れる。もしカタパルトを研究開発しても、動力の蒸気を作り出す能力の制限によって、カタパルト発射する重量と効率が制限され、したがって艦載機の作戦性能が制限される。このためアメリカが原子力空母を研究開発したのは、グローバルな巡航に対応する以外に、カタパルトの蒸気に対する巨大な需要とも非常に大きく関係しているのである。

蒸気カタパルトが極限まで発展したところで、さらに先進的な電磁カタパルトが時運に乗って生まれた。中国が電磁カタパルト装置を応用できるか否かは、カタパルト自体の研究開発によって決まるだけでなく、さらに艦艇自体の電力供給レベルにも制限される。伝統的空母の推進システムと電力システムは2つの相対的に独立したシステムである。動力の大部分のエネルギーは艦艇を推進して前進させるのに用いられ、小さな部分が艦載発電設備を連動させて艦載電子設備に電気エネルギーを提供する。だが空母が今日まで発展すると、電子設備の電力供給の需要が不断に増大している。例えば、「遼寧」艦の艦橋上の4つのフェイズドアレイレーダーである。しかも同時に電磁カタパルト、レーザー砲、レールガンなど将来空母に装備される可能性がある高エネルギー量武器も電気エネルギーに対する需要を高める。1世代前の空母に比べ、これら新型の武器と設備は空母のエネルギーの需給構造の改変を強化することになる。

このため、新世代空母はより充足した動力源がある必要があるだけでなく、さらにより新しい総合電力システムを応用して空母の動力システムの革命的変化を実現する必要がある。つまり、「完全電気動力空母」である。

(頑住吉注:これより4ページ目。画像のキャプションは「高温超伝導発電器と伝統的発電器の対比図。高温超伝導発電器の未来の国産空母に対する応用の意義は重大である。」です。)

空母という超大物への艦艇総合電力システムの応用が、まずもたらすのは艦艇内部の推進設備の非常に大きな変化である。遼寧艦の底部にやってきた人は皆、空母の巨大な蒸気タービン、歯車伝動装置、軸系に驚愕させられる。アメリカのニミッツ級空母も同様である。空母の動力は減速歯車と長い軸を介してスクリューを動かす必要があるため、核反応炉、ガスタービン、蒸気タービン、伝動装置は皆集中して艦艇の最低部に装備され、しかも一直線状に配置する必要があり、空母の多くのスペースと重量を占める。だが艦艇総合電力システムの使用は、空母の動力が減速ギアボックスを抛棄し、軸系を短縮し、発電器を用いて直接スクリューを連動させて前進させることができることを意味している。空母の核心的動力は低層甲板に装備することが必須ではなくなり、より柔軟に装備する位置を選択できる。1本の電気ケーブルが発電器を運転させて空母の前進を押し動かすことができ、したがって水面下の魚雷攻撃が艦艇の動力に対し致命的打撃を与えることが避けられる。艦艇総合電力システムは空母の構造レイアウトを変えた。このことは空母により多くの武器弾薬の搭載あるいは艦員の生活空間の改良のためのスペースがあることを意味する。いくつかの想定の中のさらに急進的なアジポッド式電力推進装置は、軸系さえ全部不要で、発電器とスクリューが直接一体化し、空母の尾部に装備されて船体の前進を押し動かす。

総合電力システムは空母の内部構造レイアウトを改良した他、さらに艦艇の燃料のエネルギー利用率を上げた。伝統的艦艇の電力は、全体の推進エネルギーから固定された一部分を割いて発電するに過ぎない。もし艦艇が全速で航行していなかくても、電気エネルギーが増加することはない。だが総合電力システムは空母の動力の機械エネルギー源を全て電力に転化し、その後実際の需要に基づいて柔軟に分配する。もし空母が全速航行を必要としなかったら、大部分の電力は艦載の電力消耗の大きいシステムに用いることができる。例えば、前述の電磁カタパルト、甚だしきに至ってはレールガンである。したがって燃料が節約でき、燃料消費が下がり、原子力空母に応用しても、核反応炉の使用寿命が延長できる。

現在我々は、空母の動力システムの優劣が空母の作戦性能に対し極めて重要な作用を果たすことを見て取るのは難しくない。我々は中国空母艦載機の発展に関心を持つのと同時に、絶対に空母の動力というこの「心臓」の重要性を軽視してはならない。イギリスの「エリザベス」級空母、アメリカの「フォード」空母といったこれら新世代空母に直面し、中国空母の動力はダブルの重大開発任務を実現する必要がある。まず高出力、高効率、高い安全性を提供できる空母核心動力装置である。これには蒸気タービン、ガスタービン、艦載核反応炉が含まれる。同時に「総合電力システム」というこの艦載エネルギースマート化、情報化管理システムの応用を実現する必要がある。

(頑住吉注:5ページ目)6月29日、殲ー15艦載戦闘機が遼寧艦で短距離スキージャンプ発進を行った。スキージャンプ発進なので、殲ー15の作戦能力は非常に大きな制限を受ける。

(頑住吉注:6ページ目)まさに建造中のイギリスの「クイーンエリザベス」号空母。これは世界初の完全電気推進の空母である。

(頑住吉注:7ページ目)去年インドの「ヴィックラマディヤ」号中古空母は航海試験中動力システムのボイラーが故障したために失敗した。

(頑住吉注:8ページ目)8月12日、インド国産の「Vikrant」号が進水しているところ。実際には空母の「殻」に過ぎない。


 ちょっと実現への道筋という面で具体性を欠いており、超伝導とか言われると相当に胡散臭く感じますが、逆に言うと世界最先端、高性能の空母を作るのは中国の技術では簡単でない、ということの表れかもしれません。












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