中国・ウクライナ軍事技術協力

 本筋以外にも興味深い記述がありました。

http://military.china.com/history4/62/20140109/18275437.html


中国のウクライナ軍事工業技術導入のいきさつ:「ダブル導入プロジェクト」の秘密を探る

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「中国はウクライナにさらに複数の『ヨーロッパバイソン』ホバークラフト上陸艦を発注した(資料画像)」)

今年は中国とウクライナの国交樹立20周年である(頑住吉注:読んでいくうちに違和感を感じて調べたんですが、これは2012年のことで、当時記述された文章のようです)。中国・ウクライナ両国はすでに戦略的協力パートナー関係であるが、記念に関する活動は極めて低調である。だが4月9日にウクライナの農業の巨頭ULFと中工国際が金額40億アメリカドルの契約をお祝いの贈り物として締結する他、さらに5月15日に中国・ウクライナ民間航空エンジン全面契約の締結がある。

双方はいずれも工夫を凝らして軍事工業領域の協力に触れることは避けているようで、軍事貿易に関わるものには一言も言及していない。実際には、中国はウクライナ軍事工業のトップの消費国で、ウクライナサイドはさらに中国が2013年以後ウクライナのトップの軍事技術協力パートナーになることを期待している。

分析者は、これまでにウクライナはすでに中国向けに30種類の軍事技術を輸出した、と指摘する。その中には大型艦艇に用いる動力システム、大型輸送機の設計、超音速高等練習機、戦車のエンジン、空対空ミサイルなどカギとなる重要装備に関わるものがある。

20年で、中国はウクライナからほとんど全ての手に入れたい軍事工業技術を手にした。ウクライナの軍事工業の財産はすでにはっきり探られ尽くしているが、局部的な単一項目の技術領域では、中国は依然ウクライナ軍事工業との協力の強化を持続することになる。

「ダブル導入プロジェクト」がウクライナ軍事工業の人材を完全に押さえる

中国・ウクライナ軍事工業協力は、ソ連解体後のかの特殊な時期に始まった。その時、独立国家共同体各国は動揺して安定せず、人心はびくびくし、工場、機構は大量に倒産し、軍事工業領域の多くの専門家、教授が失業し、収入が激減した。特にいくつかの先端業界では、多数の一流技術者が赤貧に陥り、アメリカ、ドイツ、イスラエル、韓国、シンガポールなどの国の科研機構が続々と専門家をロシア、ウクライナに派遣し、手厚い条件で人材を招聘した。

韓国の人材計画は成績、効果が著しかった。ウクライナの専門家が韓国の駐ウクライナ大使館に連絡しさえすれば、すぐにビザと航空機チケットが手に入り、かつ1ヶ月分の賃金が提供された。賃金、報酬には統一された基準はなく、専門家本人のキャリアと貢献の大小を見て決められ、一般に月額1,500〜2,000アメリカドルで、有名な専門家は3,000〜4,000ドルだった。

中国もこの人材争奪に加入した。採用された招聘の方法は韓国に似ていたが、ソ連時代の中ロ友好という根源のおかげで、一部のソ連にいた専門家、学者の学術交流、個人的友情、連絡など多種の形式を通じて、ウクライナから少なからぬトップクラスの専門家に来てもらえた。

この得難い時期に、中国は能動的に出撃し、目的性が非常に強く、軍事技術領域のカギとなる重要技術に直進し、個人的関係を通じてその技術成果を移転させた。海軍専門家李傑はあの時の仕事を形容して次のように語っている。中国人は1週間汽車に乗り、満州から出発して、西シベリアを通過し、モスクワに進路を取り、さらにウクライナなど独立国家共同体構成国に行き、探りを入れ、意気投合し、すぐに相手方がどんな技術を持ち協力が行えるのか知った。その後すぐに多数のウクライナの専門家が中国に赴き、具体的なプロジェクトに介入した。

中国の当時の基礎技術は比較的立ち後れ、技術交流開始直後のレベルは比較的低く、規模も比較的小さかった。後に、中国は軽工業製品を用いて先進的設備と交換し、ウクライナの専門家が大規模に中国に赴き始めた。こうした専門家の大多数は毛沢東、スターリン時代の老ボルシェビキで、中ソの友情を重視し、生活への要求は高くなく、仕事は謹厳で、質問があれば必ず答え、技術、材料を非常に気持ちよく提供し、本音さえ漏らさず明かした。

だが大体1993年以後、双方の行き来はあまりスムーズではなくなってきた。「いくつかの技術材料は絶対にそちらに与えない。欲しかったらいくつかの手段が必須だ。」というわけである。李傑は、ある人は一箱の二鍋頭(頑住吉注:北京などで好まれる酒の一種で、ウォッカに近い感じのようです)あるいは中国のちょっとした特産品を個人的にいくつかの物と交換したが、過去のように実験室内でちゃんとした実験をするには必要な値段がどんどん高くなり、「後にはきっぱりと金の話しかしなくなり、金がなければ取りつく島もなくなった。」と語った。

ソ連軍事工業の人材を招聘するため、中国政府は「ダブル導入プロジェクト」を始動し、専門的に独立国家共同体の人材と技術を導入した。当時国務院首相の任にあった李鵬はこのプロジェクトを主抓し(頑住吉注:辞書に載っておらず、検索すると無数にヒットするものの意味を説明したページは全く見つからない語)、かつ「これは10年の力を費やしても養成できない優秀な人材であり、我が国にとって千載一遇の良い機会であり、決して逃してはならない。」と言った。

「ダブル導入プロジェクト」をうまく行うため、国務院は国家外国専門家局に授権し、1991年に正式に国家「友情賞」を設立し、外国人専門家が中国のためになした貢献を表彰するのに用いた。各省はその後相次いで異なる地方政府の友情賞を設立した。ウクライナ国籍の専門家オージャンコ ウォルデメイ、ケワリェンコ、アーノルド アフチャリュクは相次いで国家レベルの友情賞を獲得した。カーチャン バオウェイー ユリエヴィッチは江蘇省の友情賞を獲得した。

2002年、国務院発展研究センターのある内部報告は次のように書いている。不完全な統計によれば、10年来官民平行して行った、多ルート、多レベルで展開された『ダブル導入プロジェクト』により、ロシアおよびその他の独立国家共同体構成国からおよそ1万名を超える専門家、2,000余りの技術項目が導入された。ウクライナは「ダブル導入プロジェクト」の重点地域で、毎年多数の専門家、学者が招聘に応えて中国に赴いて講義を行い、あるいは科研に従事している。中国の駐ウクライナ大使館の一等書記官李謙如はある署名入りの文章の中で、2006年だけで、国内から招聘されウクライナ科学技術界の専門家、学者が中国に赴いたのは約150回、のべ2,000人余りである、としている。

(頑住吉注:これより2ページ目)

空母飛行員の養成訓練を助ける

中国・ウクライナの軍事工業協力は、「ワリヤーグ」号の譲り渡しというこの象徴的意義を持つ大型プロジェクトの他、艦船、戦車、飛行機の動力システム、特に各タイプのエンジン方面でのパフォーマンスが最も突出している。現在中国の多くの水上艦艇の、「ワリヤーグ」号を含め、さらに「中華イージス」艦にも用いられるガスタービンDN/DA-80、中国がパキスタンのために開発した「ハーリド」メインバトルタンクに用いられるディーゼルエンジン6TD-2E、新世代高等練習機狩鷹-15に用いられるエンジンAI-222、および高原、山地に適するヘリのエンジンは、いずれもウクライナ由来である。改良後のDN/DA-80の信頼性、維持メンテナンス性、大修理の周期、使用寿命はいずれもウクライナのオリジナル装備を超えている。

ガスタービンは近代化された大型戦闘艦の「心臓」である。「漢和安全保障業務評論」は、中国は1990年代にもうウクライナの「曙光」機械設計科研生産連合体から、UGT-25000ガスタービンを導入したが、当時技術移転は行われなかった、とする。21世紀に入ってから、経済の逼迫のため、ウクライナはついに全ての技術移転に同意したのである。

ウクライナが中国を助けて「中華イージス」を建造したとの噂は決して火のないところに立った煙ではない。公開されている報道によれば、2001年4月には早くも、当時解放軍総装備部部長の任にあった曹剛川が団体を率いてウクライナを訪問し、わざわざウクライナ最大のいくつかの軍事工業企業を訪ね、これには量子所およびそれとセットになった「火花」無線電信設備工場があった。

ウクライナ量子科学研究所所長リシツァイが明らかにするところによれば、2001年から量子所が生産する「カシタン-3」型システムの半分は中国と韓国に販売されている。特に北京が2008年の夏季オリンピックを引き受ける権利を獲得してからは、顕著にこのシステムに対する発注が増加した。西側の安全保障業務分析専門家は、この時からウクライナは「中華イージス」艦の設計作業に参加し始めた、と考えている。

またいくつかの航空技術、例えばL-15の空力レイアウト、中型輸送機「運ー8」および大型輸送機(頑住吉注:運ー20)の研究開発と改良の上で、双方はいくつかの協議を達成させた。ある情報は、ウクライナは中国が「ニトカ」地上訓練システム類似の施設を建設するのを助け、これは艦載航空隊飛行員の訓練教学に用いられ、かつ中国向けに4セットの制動ケーブルが輸出された、としている。だが、中国サイドは終始事実確認を行っていない。

ウクライナメディアによれば、2006年10月には早くも、中国は大型軍事代表団を派遣してウクライナを訪問させ、ウクライナが中国の空母飛行員養成訓練を援助する実行可能性を討論した、とする。この後、中国の技術者、飛行員、海軍技術専門家が頻繁に「ニトカ」試験飛行センターを訪問し始めた。

中国・ウクライナには空母、実戦機、戦車、装甲車の動力システムの他、さらにミサイル技術方面の協力がある。1990年代以来、中国はソ連系飛行機およびソ連系空対空ミサイルの新たな制御誘導弾頭を導入した。数百発のR-27空対空ミサイルの性能を更新できるようにしようとしたが、ロシアはコピー生産を心配するという原因により、いろいろ意地悪をした。

中国の空対空ミサイルの赤外線制御誘導からアクティブレーダー制御誘導への飛躍は、ウクライナの支持と切り離せない。キエフレーダー工場が生産した「アガット」セミアクティブレーダー誘導弾頭の改良版の性能と抗妨害能力はいずれもロシア製の同類製品より優れている。中国はこのため現有のR-27空対空ミサイルに対しグレードアップ改良を行い、かつすぐに超視距離発射能力、多目標攻撃能力、全天候作戦能力を持つPL-12中距離空対空ミサイルを登場させた。

航空領域では、ソ連時代に早くも、アントノフ設計局が中国の「運ー5」型軍用輸送機の設計、製造を助けた。ウクライナに区分けされた後、中国航空工業との歴史的根源に基づき、アントノフはずっと中国と大型輸送機につき協力を展開することを願った。アントノフは2002年にプロジェクトが立ち上げられたARJ21の設計作業に参加した。2004年にはまた「運ー8」、F600型民間機の研究開発過程で技術協力を行った。2008年、中航工業第二集団とアントノフ社は北京に航空工程研究開発センターを建立した。この主要な任務は系列化された貨物輸送機の段階的な研究開発と設計である。

2011年8月、解放軍総参謀長陳炳徳がウクライナを訪問し、両国は軍事技術領域の協力の覚え書きに署名した。ウクライナ首相アザロフは、ウクライナは大型輸送機製造方面の先進技術を持ち、中航集団とウクライナのアントノフ社は協力を深化させるべきだ、と指摘した。

中国、大金を費やす

20年の協力を経て、中国はウクライナの軍事技術の財産に対しすでに探り尽くしているが、全体的評価は依然20年前にとどまり、大きな変化はない、というものである。海軍専門家李傑は次のように語る。ウクライナの軍事工業技術が停滞して前進しないのは、一方においてはソ連時代、ウクライナは主にソ連軍事工業とセットになり、技術が偏り、単一項目の技術は非常に強いが、基礎がしっかりしていないからである。他方においては優秀な人材が大量に外部に流出し、経費の投入が不足し、このため創新が非常に難しいからでもある。

こうではあるが、ウクライナの大型輸送機、水上艦艇の設計理念、重要技術、動力システムなどの領域における単一項目の技術的優勢はやはり中国の心を動かし、依然協力の余地がある。「設計の内面の学問は短期間では掌握し難い」 李傑は率直に言う。例えば砲座の設置であるが、「私はしばしばこの問題に遭遇し、本来の砲の位置は移動できると考えるが、撤去した後問題が起きた。全体的な船室の位置さえ変化を発生させる必要があるのだ。」

設計思想と理念は美観やカッコ良さのためではなく、作戦に密着している。「あるものは変えてはいけないし、あるものは変えると良くなく、あるものははっきりと失敗作に変わる。」 李傑は批評し、中国の軍事工業は大型戦闘艦の設計思想と作戦理念の上では西側に近づいているが、依然いくつかの細微な問題を解決する能力が欠乏している、と語る。

(頑住吉注:これより3ページ目)

中国のいくつかの技術的ボトルネックは短期間内には依然解決し難く、間違いなくまだウクライナとの協力からは離れられない。ウクライナサイドも、自らの財産がどんどん薄弱になり、もし時機をしっかりつかんで変わらないと、さらに何年かたてば、恐らくもっとどうにもならなくなる、ということをはっきり分かっている。このため中国との関係を特別に重視し、意図的に軍事工業技術の移転を加速しているのである。

2011年6月18〜20日、中国指導者胡錦濤主席は10年近くぶりにウクライナを訪問した。双方は総額約35億アメリカドルの契約を締結し、中国はさらにウクライナ向けに8,000万人民元の無償援助の提供を決定した。新華社の報道は、中国・ウクライナは双方の貿易額を2010年の80億未満から2012年の100億人民元まで高めることを計画している、とする。ウクライナメディアは分析し、大幅増加の一部は軍事工業領域由来である可能性が高い、とする。

胡錦濤主席の今回の行程は非常に尋常ならざるもので、専用機はウクライナの首都キエフに直接飛ばず、まずクリミア半島のシンフェローポリ市飛行場に降りた。この原因はすこぶる味わい深い。分析は、中国・ウクライナの2大デリケートな協力プロジェクト「ヨーロッパバイソン」上陸艦と空母艦載機訓練センターは、いずれもクリミア半島に関係があり、「バイソン」を生産する海洋造船工場とニトカ艦載機訓練センターはいずれもこの半島に位置する、とする。

ロシア軍事工業総合体ウェブサイトの報道によれば、中国とウクライナの「ヨーロッパバイソン」上陸艦プロジェクトは2003年に始まった。関連の技術に関する談判は6年持続し、2009年8月になって、ウクライナメディアはやっとこの情報を公開し、発注数が4隻であると確認した。

ロシアは中国・ウクライナ軍事工業協力に対し非常に不安で、甚だしきに至っては大いに憤慨している。かつてこの協力プロジェクトはロシアの知的財産権を侵犯していると非難した。ロシア国防工業製品輸出社は、この軍艦およびその部品の研究開発の全ての知的財産権はロシアの「ダイヤモンド」設計局に属し、ウクライナはロシアと協議により定めることなくこの供給を実現することはできない、と考えている。

分析は、ロシアを憤慨させている主要な原因は、ウクライナがこの軍艦の技術ファイルを中国サイドに渡したことにある、とする。ロシアは中国軍事工業のコピー生産能力に関しずっと気にかかってどうしても忘れられない。2005年、ウクライナは艦載機スホーイー33の第3機目の原型機T-10を廃棄武器として中国に提供し、ロシアを極めて怒らせた。

だが中国サイドは納得せず、ロシアの非難には全く道理がないと考えている。「中国の軍事工業技術の掌握、消化吸収はますます成熟し、設計、研究開発し直すのは決して妥当性を欠くことではなく、いかなる国にもこの問題は存在する。アメリカも当時このようにして日本の電子技術を獲得した。さらに、中国は大金を費やしている。」


 韓国がウクライナの人材獲得に力を入れていたというのは全く知りませんでしたが、具体的成果はあったんですかね。これも本題ではありませんが「遼寧艦」にウクライナ製ガスタービンが使用されているという記述も気になります。いろいろな情報から考えて、個人的には蒸気タービンである可能性が高いと思いますが。


















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