SIGマシーネンピストーレMP310

 先日、横浜のある男性が亡くなって、遺品を調べると「機関銃」が出てきた、というニュースがありました。画像を見るとどうもSIG MP310のようです。この銃に関して「Waffen Revue」6号に記事があったので内容をお知らせします。


SIG-マシーネンピストーレ MP310

テクニカルデータ

名称 SIG-マシーネンピストーレ MP310
メーカー SIG(頑住吉注:住所省略します)
設計年 1956、1957年
設計者 SIG
口径 9mm
空虚重量 3.42kg
全長 ストックを伸ばした際735mm
ストック縮めた際610mm
全高 187mm
全幅 55mm
銃身長 200mm
ライフリングの数 6条
ライフリング谷部径 9.08+0.05mm ※
ライフリング山部径 8.85+0.05mm ※
ライフリング谷部幅 30+.3mm ※
ライフリングピッチ 250mmで一回転
ライフリングの方向 右回り
サイト オープンサイト
セーフティ チャンバーセーフティ
マガジン 40連スチール製
ロック 固定バレルを持つリコイルローダー
閉鎖機構 重量閉鎖機構
仕上げ マットブルーイング
グリップ プラスチック
発射速度 900発/分

(頑住吉注:あるいは「+」は「±」の間違いかも知れません)

弾薬

名称 9mmパラベラム/9mmルガー
Erlmeierブランド カタログナンバー 137
弾丸の種類 フルメタル ラウンドノーズ
弾丸の径 約9.00mm
弾丸の長さ 約15.50mm
弾丸の重量 約8.00g
薬莢の長さ 約19.0mm
薬莢の素材 真鍮
弾薬の長さ 約29.50mm
火薬の種類 無煙火薬
初速 365m/s

(頑住吉注:やたら詳しく弾薬の情報が書いてあり、この弾薬でテストしたということなんでしょうが、初速以外のテスト結果や作動不良の有無等は書いてありません)

A.全般)

 このSIGマシーネンピストーレはオートマチックな、ロック機構のない手で持って撃つ銃である。この銃はセミ・フルオート射撃用に作られている。この銃はオープンな閉鎖機構位置から射撃が行われる。

B.構成部分

 このマシーネンピストーレは次のような主要構成部分に分けられる。

 フロントサイトおよびフロントサイトキャリアが付属したバレル。バレルはレシーバーに固定されている。

 リアサイト、スイング可能なマガジンスリーブ、トリガー設備収納部が付属したレシーバー。このレシーバーは閉鎖機構の誘導に役立つ。

 トリガーバー、トリガーレール、トリガー、トリガースプリングからなるトリガー設備

 装填グリップ(頑住吉注:コッキングハンドル)、交換可能なファイアリングピン、エキストラクターが付属した閉鎖機構(重量閉鎖機構)。

 あらかじめ圧縮された閉鎖スプリングが付属した閉鎖ナット

 容量40発のダブルカアラムマガジン

 ストック(伸縮可能)。

B1.マガジンの配置

 経験上、固定されたマガジン配置は本質的な欠点を含んでいる。銃の取り扱いまたは携帯時に邪魔になること、そしてStellungsbezug(頑住吉注:辞書に載っていません)の際の地面への衝突が原因で弾薬の円筒形部分がつっかえて動かなくなることによる弾薬供給障害によってである(頑住吉注:後者はさっぱり意味が分かりません)。スイング可能なマガジン配置はいつでも危険なく完全に装填されたマガジンを銃に装着して携帯することを許す。マガジンがバレル軸線と平行に、添えるように位置されるからである。この装填されたマガジンの配置は戦闘において射手に最大限の機動性を可能にし、垂直位置(射撃位置)へのマガジンのスイングによる急速で安全な射撃準備性を保証する。この銃はこれにより、マガジンの適合する位置によってセーフティ状態にされ(バレル軸線と平行)、あるいは発射準備状態(垂直の位置)となる。

B2. トリガー構造

 特別なレバーの切り替えなしに射手はセミまたはフルオートの状態で射撃できる。トリガーを短いストロークで引けばセミオートになり、一方完全に引くことでフルオート射撃ができる(トリガーが再び放されるかマガジンが撃ちつくされて空になるまで)。両方の射撃位置は明瞭な空走距離によって互いに分けられている。

B3. セーフティ

a)マガジンを横たえることによるマガジンセーフティ(マガジン配置の項目を見よ)。(頑住吉注:それ以外考えられないのでテクニカルデータの「チャンバーセーフティ」はこのことを指しているようです)
b)レシーバーキャップセーフティ。1本の遮断レバーがレシーバーキャップキャップとトリガーを結んでいる。このレバーはレシーバーキャップが完全にロックされていない時にトリガーをブロックする。
c)セーフティレバー。希望により閉鎖機構ブロックするセーフティレバーを組み込むことができる(頑住吉注:オプションということらしく、掲載されている銃には見られません)。

B4. 銃のサイト

 50、100、200、300mの調節距離を持つローラー型サイト。弾丸の偏差はリアサイトの適合する位置によって修正できる(頑住吉注:はっきりしない説明ですが、左右調節が可能ということだと思われます)。

C. このマシーネンピストーレの機能

 銃が射撃準備状態の際、閉鎖機構はトリガーバーによってその後部位置に捕らえられている。トリガーを引くことにより、トリガーバーと閉鎖機能の間の結合が解け、この結果閉鎖機構は前進運動のため解放される。閉鎖スプリングの圧力下で閉鎖機構は前方に急速に動き、弾薬をチャンバーに押し込み、これに点火する。同時にエキストラクターが薬莢のミゾ内にかみ合う。閉鎖スプリングの圧力と閉鎖機構の重量は、弾丸がバレルを去ってしまうまで薬莢底部の後方への押しに抵抗する。この後で閉鎖機構は後方に動かされる。この際空薬莢が引き抜かれ、右に投げ出される。セミオート射撃または意識した射撃中断の際、閉鎖機構はその後部位置に捕らえられる。銃が撃ちつくされた際、閉鎖機構は閉じた状態で留まる。


 まあ何と申しますか、あまり知られていない銃の記事なのにこれまで読まなかったのは、ちょっと見ただけでたいしたことが書いてないのがまる分かりだったからです。細かいデータなど目新しい情報もないではないですが、あまり詳しい説明ではないですね。トリガーの引きのみによるセミ・フル切り替えメカについては一切説明も図等もありません。



 フィールドストリップした状態です。「あらかじめ圧縮された閉鎖スプリング」と言うのはこのように一定以上伸びないユニット形式のことです。分解はバヨネット結合になっている「閉鎖ナット」または「レシーバーキャップ」(←こんな短い記事の中で部品名統一しなさいって)を後方に抜き、これにより通常より大きく後退できるようになったボルトからコッキングハンドルを抜き、ボルトを後方に抜くというごく簡単なものです。ただし「閉鎖ナット」の固定が甘く、発射の瞬間に後方に飛んできたら危ないので、完全に固定された位置にないとトリガーが引けない安全機構があるということのようです。



 マガジンはこのように側面にあるロックボタンを押すことで折りたたみ、または伸長します。40連という通常より容量の多いマガジンが使われているのはこうしてコンパクト化できるからでしょう。しかしプローン射撃時に邪魔になるのはどうしようもありません。また、ロックボタンが大きく露出しているので、マガジンを伸ばしている際に意図せず押され、ほんのわずかにマガジンが折れた状態になることがないかちょっと心配です。

 サイトはオープンですがフロント、リア共に左右にガードがあり、リアサイトのガードの右側には指で回せるつまみ状のものがあります。これを回すと4段階のサイトに次々切り替わり、さらに回すと徐々に左右にずれていくのではないかと思いますが確かではありません。照準長はごく短いですが、精密射撃できるような銃ではないので問題ないでしょう。

 マガジンの折りたたみ、トリガーによるセミ・フル切り替えなど凝ったメカも組み込まれていますが、基本的にはオーソドックスで手堅い設計のようです。ただMAT49、UZIより数年かそれ以上後の登場であり、特別に大きなメリットのないこの銃の大きな商業的成功はあり得なかったと思われます。検索してもあまり詳しい情報には行き当たりません。冒頭で触れた人はこんな珍しい銃をどこで手に入れたんでしょうね。











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