フランス警察新制式拳銃にSIG PRO SP2022採用
ゲナーディ・ニコノフとAN−94関連の記事が掲載されていたのと同じ「Visier」2003年9月号に、フランス警察に採用されたSIG PROに関する記事も掲載されていました。
フランスにおけるザウエル
それはまるで公用ピストルのトライアスロンレースだった。多くの選手が出場するが、ゴールにたどり着くのはわずかである。フランス内務省が行った新しい制式9mmパラベラムピストルのテストレースでは、参加者はピストル界の地位と名誉を求めてこれに参加した。勝ち残れば何百万ユーロもの注文を得ることも不思議ではないのである。
各メーカーは入札の予定納期に間に合うものならば、多数の機種を提出することもできた。ただし、1機種につき20挺そろえなければならなかった。1751年創業の老舗、エッケルンフォルデのJ.P.ザウエル&ゾーンは、SIGプロ2009シリーズ内の4機種をフランスへの旅に出した。つまり合計80挺のテストピストルということになる。スタンダードなタイプの他、ドイツ警察用SPC2009として認可されているDAオンリーモデル、手動セーフティ装備モデルも参加させた。このテストレースの勝者はすでに明らかになっているように、スタンダードなSIGプロだった。
そこに至る道のりは、泥まみれ砂まみれの過酷なものだった。第一ラウンドにおける試射では1挺(1機種ではない)につき7500発が発射され、このとき1挺の銃が重大な問題を起こしてただちに却下された。フィールドテストでも多数の機種が失格していった。実用性を確かめるため現場の巡査の手によるテストも行われた。ただし、テスト内容の詳細はフランス内務省が機密事項としたため知られていない。
この第1ラウンドを乗り切った機種は、わずかな時間とメンテナンスののち、第2ラウンドに突入した。第2ラウンドではさらに多い2万発の試射が行われた。そして古くから知られる軍用ピストル向けテストの手法も用いられた。すなわち、120cmの高さから鉄板、砂、土、ぬかるみに落とすという信頼性テストである。
数ヶ月に及んだテストマラソンののち、フランス内務省はザウエル&ゾーンのSIGプロ2009のノーマルなDA・SAモデルを勝者とした。勝者に与えられた賞品は、フランス警察、税関、各州の警察に配備される20万挺という大規模な注文だった。売上高は控えめに見積もっても千万ユーロの桁になるはずである。
フランス側は、ザウエル&ゾーンに、いくつかの改良が可能かどうか問い合わせ、問題なしとの解答を得た。この結果採用モデルはSP2009からSP2022になった。改良の内容は以下のとおりだ。フレーム前下部のマウントレールが、独自規格からピカティニーレールの規格に変更されたこと。トリガーガード前面が指をひっかけられるフック状の形になったこと。デコッキングレバーもより指をかけやすい形になったこと。ローディングインジケーターが追加されたこと。グリップ後下部にランヤードリングが追加されたこと。
抵抗の打破
1998年のデビュー以来5年、SIGプロはフランス警察による制式採用で初めてヨーロッパの公用マーケットに本格的に浸透を果たしたといえる。グロック、H&K USP、そしてSIGプロといったプラスチックフレームのオートはアメリカでは以前から公用に使用されてきた。しかしドイツおよび西ヨーロッパの警察では、これまで全金属製が主流だった。メーカーは1976年に始まった一連のシリーズで最高レベルの公用ピストルを作ってきたが、今回プラスチックフレームのオートでもその実力を証明したといえる。
歴史
成功のルーツはスイスのニューハウゼンに求められる。そこでは、1966年、スイス・インダストリー・ゲゼルシャフト(SIG)が、P210、またの名を「ゼルブストラーデピストーレ オルドンナンツ モデル1949」の近代化に着手した。この銃は保守的なスイス人が作ったものらしく、古風な内容だった。トリガーはSAのみだし、総削りだし加工のためコストが高かった。近代化作業は最初M1949のスライドをプレス加工にしてコストダウンしただけのものだったが、このプロジェクトは急速に発展していった。1967年にはアルミフレーム、プレススライド、デコッキングレバー、DAトリガーを備えた試作品を発表した。1969年までには、外形ものちのP220にほぼ近づいた。スイス軍によるテストは1974年まで行われた。このテストでは1挺につき10630発が連続的に発射された。これは当時としては過酷な負担を強いるテストだったが、P220は申し分ない内容でクリアした。スイス軍はP220を「9mmピストーレ1975」として選定した。この間、ニューハウゼンのSIGは試作品をエッケルンフォルデのJ.P.ザウエル&ゾーンGmbHに作らせていた。これはコストを考えてのことである。しかし、決定的だったのは1972年に施行された法律でスイスの武器輸出が強く制限されたことだった。このため、例えばSIG510アサルトライフルも本国ではなくマニューリンで作らせていた。
ドミノ効果
1980年代初めには日本の自衛隊と警察、そしてデンマークもそのクオリティに注目することになった。ドイツでは1979年ごろからの赤軍テロが活発化した時代、警察武装変更の波が押し寄せた。このとき、西ドイツの北半分では、P220を短縮したP225(またの名をP6)をほとんど一致して採用した。シュレスヴィヒ・ホルスタイン、ハンブルグ、ブレーメン、ノルドライン・ヴェストファーレン、ヘッセン、ザールランド、ベルリンは即座にこの銃の購入を決め、メクレンブルグ・アポンメルン、ザクセン・アンハルトもこの銃に変更した。ブランデンブルグは統一に反してダブルカアラムのP228を求めた。BMIと連邦税関管理は扱いやすい9連発のP6を選んだ。2、3のスイスの警察組織もまもなく購入した。
ダブルカアラムのP226はアメリカのXM−9ピストル決定トライアルによって誕生した。この銃はP220を改良し、15連マガジン、側面のマガジンキャッチを備えたものだ。だが、SIGザウエルはドイツでの例と違い、この銃によってアメリカ人を納得させることはできなかった。ドイツでは連邦刑事庁、シュレスヴィヒ・ホルスタイン州のSEK、ハンブルグ、ヘッセン、ベルリン、メクレンブルグ・アポンメルンが採用を決定した。チューリンゲン、ラインラント・プファルツ、ノルトライン・ヴェストファーレンはP6をP226および補助のP228に装備変更して火力を強化した。
P226はXM−9の注文を逃したが、世間の評判ではその原因はピストルの実力ではなく価格の問題であり、またベレッタによる活発なロビー活動のせいであるとされる。これを裏付けるように、この後アメリカの公的機関や特殊部隊が軍制式とは異なるSIGザウエル製品を次々採用した。ネービーシールズ、FBI、DEA、ニューヨークPDが他のピストルと平行して使用し始めた。イギリス国防省もスペシャルボートサービス、スペシャルエアサービスにP226を採用した。スウェーデンのスワットチームもP226のピカティニーレール装備モデルを採用した。アメリカ陸軍自身も短縮モデルのP228を3000挺入手し、M11という名称を与えた。9・11同時多発テロを防げなかったことで厳しい批判を受けたフェデラルエアマーシャル、そしてテキサスハイウェイパトロールは.357SIGを使用するP229で火力の強化を図った。
ネクストジェネレーション
1980年代はじめの出現以来、グロック17は急速に販売数を伸ばし、このジャンルに根本的な変化が訪れた。プラスチックフレームのピストルに比べ、アルミ、スチールフレームのピストルは無視し得ない2つの欠点を抱えることとなった。P226とグロック17はほぼ同じサイズであるが、グロック17の方が200g以上軽い。そしてプラスチックの射出成型によるフレーム製造のコストは従来の金属加工より安いという点が決定的である。それまでウルムのワルサー、オーベンドルフのH&Kなどに対して優位に立ち、巨大な販売成果を上げてきたSIGザウエルのピストルに転機が訪れた。
1998年、この流れに抗し切れなくなったSIGザウエルは、最初のプラスチックフレームモデル、M2340(口径.357SIGおよび.40S&W)を発表した。その目指すところは明らかだった。アメリカの公用マーケットである。アメリカではマンストッピングパワーの不足から9mmパラベラムからの離反が起きていた。9mmパラベラムを使用するM2009はM2340より後の発売となった。
メーカーはSIGプロを作るにあたり、コストを下げながら安っぽく見られてはいけないという困難な綱渡りを強いられた。その結果SIGプロは非常にマッシブなものになり、寸法等も全金属モデルに近いものになった。重量も全金属モデルとさほど変わらず、グロックやUSPよりずっと重い。欠点その2。SIGプロの価格はザウエル&ゾーンの申し立てによれば851ユーロであり、ライバル機種より明らかに高い(頑住吉注:別の銃のレポートによれば、グロック23および22が619ユーロ。USPおよびワルサーP99が699ユーロ。あまり比較にならない機種だがオールスチールでコストが高いはずのチェコ製Cz75は499ユーロ。その中国製コピーのノリンコNZ85Bは369ユーロで売られている)。ただし、同社の同クラスのアルミフレームモデルであるP228に比べれば約290ユーロも安い。つまり、ザウエルはそのプラスチックフレームピストルを、同社のアルミフレームモデルの完全な代替物として作っていると考えられる。
欠点はまだある。コストダウンの結果として分解が楽に行えたディスアセンブリーレバーが廃止された。分解はクラシカルなブローニング方式であるスライドストップを抜くという方法によっている。また、全体に他のメーカーに比べ左利き射手に対する配慮が足りない。グリップもいくらか太くなり、手の小さい射手には握りにくくなっている。フレーム自体も厚くなっている。
ワンピースのグリップ本体は交換可能で違うサイズのものも別売されている。この下にはもうひとつ利点がかくされている。交換可能なトリガーモジュールである。これを交換することで、ノーマルモデルを比較的短時間でDAオンリーに変更することができるのだ。
全体として新しいプラスチックフレームのメリットに関しては意見が分かれている。また、腹立たしいことにSIGプロとアルミフレームのシリーズにはマガジンの互換性がない。
要点
SIGプロは実際にはザウエル製品だ。この銃は高い加工技術によって作られた、大型で安定した実用ピストルである。メーカーがもっと小型化したくなかったのは、小型化すればコントロール性と射撃の快適性が損なわれるからだ。この点はテストでも有利に働いたことだろう。例えばP225は小型化しすぎてバランスを損なっているという意見も強い。ただ、この他にSIGプロを小型化したSIGプロ コンパクトクルツスペシャルも登場した。サイズは180x34x130mmを越えず、重量も最大900gを越えないようにしてある。銃の耐久性は1万発(消耗品を除く)もあり、使用年数が増え、訓練がより多く行える。この銃はウルム射撃試験局でもノルマを満たしており、過去のP
6以上に今後の警察拳銃トライアルにおいてホットな存在である。
伝統と革新のメーカー(頑住吉注:別扱いの囲み記事)
ザウエル&ゾーンの歴史は1751年にまでさかのぼることができる。このとき、ガンスミスのJohann Gotllob Sauerが小さな同族会社として設立した。息子のJohann Paulが現在まで使用されている社名「J.P.ザウエル&ゾーン」を登記した。このメーカーは現存するドイツ最古の銃器メーカーであるし、1526年創業のベレッタなどとともにヨーロッパ最古に属するメーカーのひとつと言える。1830年代、ズールに共同で「スパンゲンベルグ&ザウエル」という銃器工場を設立した。そして当時の新式銃であるパーカッションライフルの利潤の大きい注文を2、3手にした。工場ではハイクオリティな猟銃も生産していた。
ザウエルがハンドガンに参入したのはライヒスリボルバーM1883によってである。続く「バー」ピストルは民間の顧客向けだった。最初のオートピストルはロス・ステアーピストル1904のライセンス生産だった。初めての独自設計によるオートはM1913である。第一次世界大戦の頃、この銃は士官、下士官によく売れた。戦後のワイマール共和国でも多数が公用として使われた。
だがこのビジネスはワルサーPPの出現で不調になった。当時のM1930は卓越した存在であるワルサーに劣っていたからだ。ワルサーPPへの回答としてM36が作られた。この銃は現在まで受け継がれているザウエルタイプのデコッキングレバーをすでに備えており、マニュアルセーフティは不要だった。続く38Hは大量に生産された。
戦後、ソ連によってピストル工場は解体、猟銃工場は他と併合され、ザウエルによるこの地での生産は終わった。1951年、西ドイツのエッケルンフォルデにJ.P.ザウエル&ゾーンGmbHとして再建された。
フランスにも銃器メーカーはありますが、軍用にはライセンス生産のベレッタM92系を使っているはずですし(以前マルシンが「MAS」のトレードマーク入りモデルガンを販売していましたね)、警察用にはSIGザウエルを使っているわけです。フランス製リボルバーはけっこう使われていたようですが、あれも完全オリジナルではなくスタームルガーの亜流ですし、フランス製オートに至っては公用として現在ほとんど出番がないということのようです。フランス人にデザインセンスがないとは思えませんが、そういやフランス製オートってダサダサのばっかりですね。
これまでフランス警察がどの機種を主に使っていたのかは書いてありませんが、今後は20万挺と大量に購入したSIGプロをメインで使っていくことになるんでしょう。このためのトライアルで他にどこのメーカーのどの機種が参加したか書いてないのは残念ですが、たぶん多くのメーカーから広告をもらっている銃器雑誌なので落ちたメーカーに配慮したんでしょう。フランスにおける採用テストでは、専門家ばかりではなく「Gendarmen」の手によるテストも行われたとされています。この単語の訳は「(地方の)警察官。おまわりさん。」となっています。高度な専門家だけでなく現場で働く下級の警官にも使わせて意見を聞いたわけで、P2000V5を採用したドイツ人によるテストにはこういう点が欠けていたんでしょう。DAオンリーではなくDA・SAモデルが採用されたのもこれと無関係ではないかもしれません。昔からドイツ人が世界一流のピストルを数え切れないくらい作っているのに対し、フランス人の作ったもので世界的に普及したものは皆無であり、現在も自力で一流のピストルを作る能力はないわけです。しかしこういう点への配慮はフランス人の方が上ということでしょうね。
テストに参加したスタンダードな9mmパラベラムモデルのM2009からやや改良されたM2022はよりごついピカティニーレールがつき、トリガーガードがフック型になって、戦闘的な印象になっています。ピカティニーレールはフレームと一体のプラスチック製で、サイズ上当たり前ですがごく短く、横方向の谷部は3つしかありません。こうしたレールは共通性の高い規格の方がいろいろなレーザーサイト、ライトなどを装備でき、使用者としては便利ですが、まあメーカーとしては自分のところのアクセサリーを購入させるため独自規格にしたいんでしょう。それでも20万挺も買ってくれるお客様の要望なら聞くというわけです。
プラスチックフレームのオートは本来「安い」「軽い」というのが大きな利点ですが、SIGプロは他メーカーの一流全金属製オートと同じか高く、P229との比較でわずか25gしか軽くない、という「安くない」「軽くない」なんだか変なプラスチック製オートです。ただし、同社のアルミフレームオートよりはかなり安く、それと同じくらいハイクオリティなものを目指しています。120cmの高さから鉄板に落とすテストや、2万発の耐久性テストにも合格しているわけですからタフネスにも問題ないんでしょう。重いのでリコイルが抑えやすいというメリットもあります。ちなみに、アメリカではいち早く警察用として浸透したプラスチックフレームがヨーロッパでは最近になって浸透しはじめたというのは、アメリカの警察官の方が一般に重装備で、軽いピストルがより強く求められたからでしょうか。そうだとしたらSIGプロの重さはアメリカでは嫌われやすいのではないかという気がします。
新型なのに何故分解が旧シリーズより難しくなっているのか以前から疑問でしたが、これはコストダウンのためで、「Visier」としても明らかにこの点は旧シリーズの方がよかったと評価しています。マガジンの互換性がないのは何故か分かりません。マガジンの比較写真がありますが、角度も見るかぎり違わない感じです。文章にはありませんが、旧シリーズのうち強力な.357SIG.、40S&W使用モデルはワイヤーをより合わせたものをコイルにしたリコイルスプリングを使っていましたが、SIGプロは断面が長方形のワイヤーをコイルにしたリコイルスプリングを使っています。SIGプロはプラスチックフレームを使ったオートには珍しく、グリップが別パーツになっています。金属フレームのオートにはよくある、ワンピースグリップを後方からはめるタイプです。手に合うグリップと交換できるメリットはありますが、たぶん強度を確保するためにフレームを一体型より厚くしなくてはならないはずです。グリップが太くて手の小さな人に握りにくくなっているのもこのせいでしょう。手に合うグリップと交換といっても、ノーマルがほぼ最低限の大きさのはずで、これより大幅に小さいグリップというのはありえないはずです。グリップを外した下にあるトリガーモジュールを交換すれば比較的簡単にDAオンリー(またはその逆)に変更できるというのは便利なようですが、実際にそんな変更が必要になることは少なく、さほどのメリットではないと思います。もっと簡単に変更できるブローニングダブルモードも全然ダメだったようですし。
最後に登場している「コンパクトクルツスペシャル」とSP2022のデータを示します。
SIG−PRO SP2022
口径:9mmパラベラム
装弾数:15+1発
寸法:187x34x144mm
銃身長:98mm
重量:806g(空)
SIG−PRO Compact SPC 2009
口径:9mmパラベラム
装弾数:15+1発
寸法:180x34x135mm
銃身長:89mm
重量:800g(空)
全高が違うのに装弾数が同じなのは誤植かと思いましたが、実はマガジン下部のフィンガーレストが短いだけなんです。このマガジンをノーマルなSIGプロに使用することもできるはずですし、そうすれば2009との違いは全長がわずか7mm短いだけになります。「Visier」は今後注目株としていますが、私としては別の銃としてわざわざ作る必要があったのかかなり疑問に思います。個人的には全体的な印象としてSIGプロという銃はちょっとコンセプト的に中途半端な印象で、たいていの人はこれを買うより同じくらいの値段の他社製全金属製一流オートを買うか、もっと安い一流のプラスチックフレームのオートを買うか、もっときばってSIGザウエルのアルミフレームのオートを買うかの選択になるような気がするんですが、いかがなもんでしょう。
本筋と関係ない話ですが、ドイツではP220のことを通称「ツボ ツバンツィヒ」というそうです。これは「220」という数字のノーマルなドイツ語読みとは異なります。本来「2」は「ツバイ」ですが、電話などのとき聞き違いを避けるため「ツボ」というのだそうです。日本軍の「ふた」みたいなもんでしょうね。「ツバンツィヒ」は「20」の読みです。この呼び方は日本語の「にーにーまる」とニュアンス的に近いと思います。
ザウエルの歴史で、「バー」というピストルが登場しています。表記は「Bar」の「a」をウムラウトにしたもので、発音は「ばー」と「べあ」の間くらいの感じだと思います。この単語は「熊」を意味しますが、直接的にはスイスに住んでいたロシア人ブルクハルト・バーという開発者の名前を取ったものです。この銃は横から見るとコンシールハンマーのリボルバーに似ていますが、シリンダーに当たる部分は4つのチャンバーが垂直に並んだものになっています。バレルは2本垂直に並んでいて、チャンバーのうち上の2つがバレルと一致しています。トリガーはダブルアクションオンリーで、ハイスタンダードデリンジャーのように内部でハンマーノーズが動いて上下のチャンバーを打ち分けます。上下2連デリンジャーと同じ2連発が終了したら、チャンバーをぐるっと1回転させてもう一度2連発ができます。使用弾薬はオリジナルの7mm弾ですが、後には.25ACP仕様も多数作られたということです。ルガーの先代ドイツ軍制式拳銃であるライヒスリボルバーは軍の注文で他のメーカーと共に作ったものですから、実質この「バー」が製品としてのザウエル製ピストル第一号ともされています。装弾数が比較的多いのにリボルバーより薄くて携帯しやすいということでかなりの人気があったそうですが、ベストポケットオートが普及するまでの一時的なものに終わりました。何故ここまで知っているかというと、モデルアップしようとして資料を集めたからです。でもいくらなんでも売れないと思うので実現していません。まあそのうち売れないのを覚悟で作るかもしれませんが。