レーザー兵器の空戦における使用

 タイトルを見て予想したのよりも現実的な内容でした。

http://military.china.com/critical3/27/20160111/21119185.html


高エネルギーレーザー武器は一体未来の空戦を変えられるのか否か

レーザー理論の基礎はアインシュタインが1917年に建立したとされる。だが1957年になることを要して、人々はやっと真にレーザーを発見した。レーザーは指向性が良く、ビームが集中し、単色性が良く、出力が強大という特徴を持ち、いくらの想像力も必要とせず、もうレーザーの武器としてのポテンシャルを見て取ることができる。さらに1964年、007映画「ゴールドフィンガー」の中にはもう死光武器があり、これは早い時期の人々のレーザー武器に対する1つの考え方である。

レーガン時代、スターウォーズ計画の中でも宇宙レーザーを用いて対ミサイル対衛星の主要な武器とした (頑住吉注:黄色い字で表記する文はたぶん元々キャプションだったと思われます。)

武器としてのレーザーは伝統的弾道式武器と比較できないメリットを持つ。大気による屈折を計算に入れなければ、レーザービームは直線で、弾道の湾曲がなく、これは空戦に対し特別に重要である。航空機関砲の砲弾の弾道は重力によって自然に落下するだけでなく、飛行機の水平および垂直機動の速度や角度も砲弾を湾曲方向に向けて動かし、重力で落下する弾道と複合して作用する時、弾道計算を特に複雑にさせ、大気の湿度や密度、風向風速の変化はさらに一歩弾道計算の難度を増加させる。レーザービームには弾丸の飛行時間の問題もなく、光速は30万km/sで、典型的作戦距離内ではレーザービームの伝達時間は軽視して計算しないことができる。この一切は極めて大きく照準の問題を簡略化する。レーザー武器は真の「見れば即命中」で、照準問題の性質と難度はカメラの光学静止画像撮影と大差なく、軍事上レーザーの目標照射と光電子目標識別に対し必要とされる安定技術はとっくに成熟している。

レーガン時代、米ソ軍備競争がピークに達し、両者の戦略核兵器はいずれも相手方を何遍も破壊するのに充分に足り、相互に破壊を確保することがあってのみ双方を理性に立ち戻らせることができた。相互破壊の確保を打破することは一撃で命を奪う魔法のアイテムとなり、戦略ミサイル防御は一方的な核の優勢の信頼できる保障となる。各種の陰謀論があるが、アメリカは確かに真剣に「スターウォーズ」と呼ばれる戦略防御計画(略称SDI)を推進したことがある。その中で宇宙レーザー武器(略称SBL)は重要な一部分だった。大陸間弾道ミサイルの飛行は上昇段階、中途段階、再突入段階に分かれる。再突入段階での迎撃の射程と反応時間の要求は最低で(頑住吉注:要するに迎撃兵器の射程が短くてもいいし相手がミサイルを発射してから撃墜するまで比較的長い時間の余裕があるということですね)、ミサイル防衛システムは目標の周囲に配備され棚からぼた餅を決め込むことができ、技術的難度は比較的低い。だが核爆発の誘発とその後の核汚染はいずれも目標国にとって吸収される必要があり、これは最後の、他の方法がない場合の方法である。中途段階迎撃は宇宙での核爆発をもたらし、威嚇作用はずっと低いだろうが、目標国に対する危害は比較的少ない。最も理想的な迎撃方法は上昇段階のはずで、核爆発と核汚染の効果は基本的に全て発射国によって吸収される。信頼性の高い上昇段階迎撃が達成できれば、当然最大限の威嚇が達成される。だが地球の湾曲率ゆえに、宇宙の対ミサイル武器プラットフォームがあってのみ、やっと遅れず上昇段階の敵の大陸間弾道ミサイルを迎撃する可能性がある。しかもレーザー武器があってのみやっと間に合うのである。

宇宙には空気がなく、SBLには大気圏内のビームの屈折、吸収、動揺、熱ブルーミングの問題はない。だが宇宙レーザー武器最大の問題は充分な出力にある。軌道上に重量と体積が巨大な衛星搭載レーザー武器を配備する技術的難度も非常に高いし、信頼性が高い、コントロール可能な、高い再使用率の、重量の軽い100万ワット級大出力レーザーは世界的な難題である。アメリカはボーイング747を用いて「機載レーザー武器システム」(略称ABL)に改装し、その化学レーザー装置は600kmの距離で近距離弾道ミサイルが撃墜できるとされた。だがシステムの体積と重量はかなりのもので、6個のSUV一般サイズのモジュールを必要とし、それぞれのモジュールの重量は3トンに達する。補助システムや操作員を加えると、やはりボーイング747のような超大型輸送機だけがやっと搭載できる。ABLは飛行しての実戦試験段階に到達し、2007年以後何度もの試験を行ったことがあるが、試験結果の評価は定まらない。ABLは本来小ブッシュ時代の「国家対ミサイル計画」の中の重要な組成部分になろうとしていて、実戦使用に投入するつもりだった。特にイラン、北朝鮮など初級弾道ミサイル能力を持つ国に対抗するものだった。だが2011年やはり中止された。国防長官のゲイツは議会で証言した時、次のように語った。「国防省内にこのシステムが作戦レベルに到達し得ると考えている人はいない。現実は、機に搭載されている現有の化学レーザーを強大化し、20〜30倍の出力にする必要があり、それでやっと充分遠距離で射撃ができる、というものだ。現在の状況について言えば、我々はイラン国境内に進入することを必要とし、それでやっと上昇段階のイランのミサイルが射撃できる。しかも実戦配備に到達させようとすれば、10〜20機のボーイング747を必要とし、1機あたり15億アメリカドルで、毎年1億の運用費用である。私にはいかなる軍人がこれが実行可能と考えるか分からない。」 これはまだSBLに比べ要求がより低い「初級段階」なのである。

(頑住吉注:2ページ目)

小ブッシュ時代機載レーザー(ABL)は飛行し、甚だしきに至っては成功裏に対ミサイル試験を行ったが、最終的にはやはり実戦の要求に到達できず中止された

アメリカのレーザー武器の発展は阻害を受けたが、ソ連の状況もいくらも良くはなかった。ソ連は1960年代にはもう対弾道ミサイルを配備していたが、限られた迎撃効率しかなく、これは袋小路とは言えないが、茨に満ちた技術路線だった。技術水準の制約により、ソ連は重点をレーザーを用いた大陸間弾道ミサイルの直接迎撃に置かず、体系として対抗するという角度から着手し、SDI体系の中の衛星に照準を合わせてレーザー武器を開発した。ソ連の宇宙レーザー武器の核心は「北極」ロケットを用いて地球に近い宇宙空間に送り込んだ二酸化炭素レーザー武器で、目標にはSBLプラットフォームが含まれた。これはアメリカの大陸間弾道ミサイルの迎撃とは直接の関係はなかったが、少なくともアメリカの一方的な核の優勢を打破し、相互破壊の確保を回復するものだった。だが1987年の発射試験は失敗し、重量80トンの「スキフ」衛星搭載レーザー武器システムはそれと共に廃棄処分とされた。これはソ連版の「スターウォーズ」計画の終結でもあった。

戦略ミサイル防御級のレーザー武器は今に至るも依然現実からの距離が非常に遠いが、レーザー技術は発展しつつあり、100〜150キロワット級の武器クラスレーザーはすでに実用化のハードルを越え、しかも小型化のポテンシャルは非常に大きく、新たな可能性をもたらしている。ABLの化学レーザーは危険な特殊化学燃料を使用する。「スキフ」の二酸化炭素レーザーは作動する時に非常に大きな量の気体を発生させ、目標として暴露するだけでなく、さらにかなりの後座をもたらし、姿勢制御ロケットで補う必要があり、さもないと安定した軌道での運行の維持ができなくなる。新世代レーザーは電力駆動を用い、そんなに多くの面倒はない。エネルギー源問題が容易に解決されるだけでなく、機載、艦載、車載電源が使用でき、さらに「無限」の弾薬搭載量を持ち、充分な燃料さえあれば、理論上「無限」の持続射撃ができる。「再装填」時間はレーザーシステムの回復時間によって決まるが、強大な外部電源は射撃の時間間隔をも短縮する。出力が比較的低いことは光学システムに対する要求を下げ、甚だしきに至っては工業レーザー部品の採用を考慮することができ、大幅にコストを下げる。最も重要なのは、戦術概念を改変し、非常に大きくレーザー武器のハードルを下げることである。

現代の戦場では、無人機の使用がどんどん普及し、対無人機もどんどん頭の痛い戦術問題となっている。通常の高射砲や対空ミサイルは当然まだ有用だが、1つにはコストが高すぎ、特に使い捨ての低コスト無人機に対してはそうである。2つ目には新型無人機の特徴(頑住吉注:発するシグナルといったところでしょうか)は小さすぎ、遠距離では通常のレーダーさえ必ずしも有効ではなく、もし電動無人機だったら赤外線さえ発見し難く、迎撃窓口が小さすぎ、防空システムに極めて短い発射時間しか与えないという問題が出現する可能性がある。これこそ戦術レーザー武器の腕の振るい場所である。

ドイツのラインメタルはすでに実戦クラスの戦術レーザー武器を登場させている。

イギリスのMBDAも類似の戦術レーザー武器を登場させている

アメリカのゼネラルアトミックは第3世代戦術レーザー武器を研究開発中である

「アベンジャー」無人機上に装備される計画で、かつF-18E戦闘機に装備するポテンシャルがある


ドイツのラインメタル社の言い方によれば、戦術レーザーの毎回の射撃のコストは1ドルでしかなく、大威力精密弾丸(例えばスナイパーライフルに使用する)さえこれには止まらない。中等出力の戦術レーザーはさらに快速発射ができ、このことは無人機の迎撃に対し非常に有利である。戦術レーザーは迫撃砲弾やロケット弾の迎撃に用いることもできる。イスラエルの「アイアンドーム」システム用ミサイルはハマスのロケット弾を迎撃するが、もし発射されるそれぞれのロケット弾を全て迎撃したとしても、コストが高すぎる。ハマスのロケット弾は製造が粗悪で、精度が非常に低いだけでなく、発射時イスラエル軍の反撃の圧力を受けてあわただしく照準し、照準の正確さが非常に劣り、しばしば大量の目標に命中できないロケット弾がある。「アイアンドーム」システムは無人の地域に落ちると見られる無害なロケット弾を自動的に無視するが、照準が良好あるいは末端制御誘導があるロケット弾に対してとなると、無視することはできなくなる。イスラエルは「鉄光」(頑住吉注:検索しましたが英語名は不明です)システムを研究開発中で、戦術レーザーを用いて「アイアンドーム」のミサイルに代替させる。

ロケット弾の弾道は比較的低く、迎撃が充分早くさえあれば、弾片が目標区に落ちるには至らない。戦術レーザーはロケット弾を完全に破壊する必要はなく、構造に対し充分な破壊をもたらしさえすれば、飛行中の弾体のバランスを失わせ、解体と無害化をもたらすことができる。迫撃砲弾に対しても同様である(頑住吉注:回転によって安定するロケット弾はある程度の損傷を与えれば自壊しそうな感じがしますが迫撃砲弾は少なくとも尾翼を大部分破壊するくらいしないと無害化されないのでは)。イスラエルのラファエル、ドイツのラインメタル、イギリスのMBDAはすでに実戦ができる戦術レーザー武器システムを登場させており、アメリカのゼネラルアトミック宇宙システムは第3世代高エネルギー武器システムを登場させ、2018年に「アベンジャー」(「プレデターC」とも呼ぶ)無人機に搭載する計画である。新たなシステムは50、75、150、300キロワットの出力を持ち、リチウム電池をエネルギー源に使用し、充電時間は3分間、毎回の充電後10回の快速発射ができ、1.3x0.4x0.5mの寸法しかなく、ボーイングF-18Eの3,400ポンド吊り下げポッド内に装備でき、C-130輸送機あるいは爆撃機の搭載はなおさら全く問題なしである。このことはレーザー武器の空戦応用に現実的な前途の見通しを持たせ、空戦の世界がこれよりレーザー時代に入る可能性がある。

(頑住吉注:これより3ページ目)

現代の空戦の中で、空対空ミサイルはすでに主要な武器となっている。航空機関砲は種々の限界ゆえに、とっくに空戦の舞台の中心から退出している。予見できる将来、レーザー武器は出力の制限ゆえに、依然直接敵機を撃墜するのに用いるのは非常に難しい。もし現有の最高エネルギー量レベルのレーザー武器が機載化できても、大出力レーザービームは大気の影響を受けること中等出力レーザーをはるかに超え、大出力レーザー武器は依然試験的にレーザービームを発射し、リアルタイムで大気中の伝達ルートの変形を測定し、修正パラメータを計算し、しかる後にやっと高エネルギーレーザーを発射できる。破壊が必要とする累積エネルギーレベルに到達しようとすれば、同一ポイントに数秒間、甚だしきに至ってはさらに長く安定して照射する必要がある。これを敵とこちら双方がいずれも機動し飛びまわる空戦の中で信頼性をもって実現することは非常に難しい。だが空戦のその他の特徴はレーザー武器に特殊な腕の振るい場所を持たせる。

赤外線制御誘導は依然近距離空対空ミサイルの主要な制御誘導方式で、これは現在最も信頼できるパッシブ制御誘導方式でもある。理論上「静寂殺傷」が達成でき、相手方を騒がせない状況下で撃墜することができる。ステルス戦闘機にとって、このような密かな殺傷はステルスの優勢を最大限発揮するのに有利で、理論上忍者のように相手がまだ茫然としている中で1人1人やっつけることができる。対ステルス機作戦に関して言えば、赤外線制御誘導はレーダーステルス能力の影響も受けず、レーダー制御誘導空対空ミサイルに比べより脅威がある。だが赤外線と可視光線の周波数は近すぎ、赤外線に敏感な遠見(頑住吉注:遠くを見る手段でしょうか)は可視光線に対しても充分敏感で、赤外線レーザーの作用はより直接的さを加える。レーザー致盲は赤外線制御誘導空対空ミサイルに対するソフト殺傷の有効な手段である(頑住吉注:いまいち分かりにくいですがミサイルの弾頭の赤外線探知装置を可視光レーザーで妨害し命中を妨げることができるということのようです)。

赤外線制御誘導には点赤外線と成像赤外線があり、点赤外線で「見える」のは単一の光点で、成像赤外線で「見える」のは赤外線画像で、抗妨害能力がより強く、さらには機体の薄弱な部分を選択しての正確な攻撃ができる。赤外線制御誘導の敏感度を向上させるため、赤外線探知計測システムには非常に高い増幅率があり、微弱な赤外線の特性を充分はっきりした信号にまで拡大することができるが、視野の中に強い光が出現したら、一面目がくらむ結果をもたらし、目標の信号を埋没させるだろう。太陽光や閃光弾の影響を抑制するため、増幅率は自動制御し、目くらましの影響を避けることができが、赤外線特性が乏しい目標は暫時見失うだろう。太陽光は固定された方向から来て、飛行機の指向や運動の軌跡を根拠に自動的に増幅率抑制の時期と強度を予測することができる。閃光弾の持続時間は非常に短く、定時の増幅率抑制を設定し、しかる後に迅速に回復させることができる。その他の強い光による妨害に対しても、増幅率抑制が充分低くなるまで自動的に捜索の調節ができる。だがこれには一定の時間を必要とし、強い光が過ぎた後も目標に対する捕捉を回復する時間が必要とされる。レーザー致盲は快速、不規則な強力な閃光と持続的照射を利用し、赤外線探知計測システムに不断の増幅率調整の中で目標を見失うことを迫り、甚だしきに至っては調整が間に合わない中で光に敏感な部品の永久性損壊をもたらし、制御誘導を破壊する。

エアフォースワンの尾部のレーザー制圧システム

レーザー制圧は爆撃機、輸送機上の、肩に担いで撃つ対空ミサイルに対抗する基本技術で、アメリカ大統領専用機「エアフォースワン」上にもこのような装置が装備されている。過去、戦闘機上には体積や重量の関係ゆえに、また全方向カバーの問題のためもあったが、レーザー制圧を採用するものは少なかった。戦術レーザーの小型化、軽量化につれ、これも戦闘機の重要な配備となる。

赤外線制御誘導の他、空対空ミサイルはさらにセミアクティブあるいはアクティブレーダー制御誘導を大量に採用している。レーザー制圧はここではあまり直接的な腕の振るい場所はないが、依然レーザー近接信管の作動を妨害する可能性がある。無線近接信管は第二次世界大戦時にもう使用が開始され(頑住吉注:VT信管という奴ですね)、ドップラー効果により目標との相対的な運動を測定し、目標との距離が最も近い場所で起爆させ、最大の殺傷をもたらす(頑住吉注:理論的にはわずかにでも遠ざかり始めたところで爆発せざるを得ないのでは)。より高級なものはさらに目標の方向が確定でき、指向性の殺傷破片束を形成し、爆発のエネルギーと殺傷破片の無害な方向への浪費を減少させる。だが無線の周波数は比較的低く、相対速度が特別に高い時、容易に目標を見失う結果をもたらし、レーザー近接信管が時運に乗じて生まれた。赤外線制御誘導の問題と同様、快速、不規則で強力な閃光を用いるとレーザー近接信管の受信部分を迷盲させることができる。甚だしきに至っては直接物理的損壊をもたらし、近接爆発の計算を破壊する。このことは赤外線制御誘導空対空ミサイルに対しても同様である。だが対ミサイルはレーザー近接信管の作動範囲に至る必要があり、結局のところやはり近すぎる。レーダー制御誘導空対空ミサイルに関しては、さらにより遠い距離でもう来襲するミサイルを破壊する必要がある(頑住吉注:「だが」以降何言ってるのか分かんないです)。

(頑住吉注:これより4ページ目)

戦術レーザーの能力を用いて直接レーダー(あるいは赤外線)制御誘導部品を破壊する、これは当然直接的ハード殺傷方法である。だが空戦レーザー対ミサイルの腕の振るい場所はまだこれに止まらない。空戦は動態の相互運動である。電子対抗の他、攻撃を受ける戦闘機は極力速度と機動性を用いて追撃するミサイルを置き去りにして脱出しようとし、ミサイルは極力より強大な速度と機動性を用いて戦闘機を逃がすまいとする。現代の空対空ミサイルのエネルギーの優勢は顕著で、戦闘機は単に機動に頼ったのではすでにミサイルを置き去りにして脱出する可能性はあまりなくなっている。だが高機動過負荷はミサイルの空力コントロールや弾体に対する非常に高い要求である。重量とコストを下げるため、ミサイルには設計上あまり大きな余裕量はなく、これは飛行機の破損に関する安全の要求とは全く違う。言い換えれば、高機動追跡中のミサイルに対し、レーザー武器がたとえ大きくない弾体構造の破壊を作り出しても、過負荷が剰余の構造強度を超え解体をもたらさせる可能性がある。あるいは空力舵面あるいはガス舵面に充分な破壊をもたらせば、空力的にバランスを失いコントロールを失う結果をもたらす。このため、ミサイルの完全撃破は決して必要ではないのである。この点は弾道ミサイルあるいは対艦ミサイルの迎撃と非常に違う。弾道ミサイルの目標は固定で、目標の不徹底な破壊は、破壊された弾体(残るロケット燃料が加わる)や完備された戦闘部が依然目標に対し充分な損壊をもたらす可能性がある。軍艦は移動するが、対艦ミサイルとの速度の比較で言えば速度が低すぎ、固定して動かない目標と大差なく、同様の問題がある。だが機動する飛行機は異なり、空対空ミサイルの戦闘機に対する速度の優勢は2〜3:1を超えず、機動性の優勢は3〜4:1を超えない。このことはさらに戦闘機はエネルギーを保持することができ、一方ミサイルのエネルギーは短時間動力段階後一路下降するというこの事実を軽視している。

武器は勝利を提供する半分に過ぎず、もう半分は戦術から来る。もし戦術と時機が当を得ていたら、来襲するミサイルがまだ一定の距離にある時、適当に戦闘機を安定させ、レーザー武器の命中精度と安定した照射時間を向上させ(つまりより大きな累積照射エネルギー)、しかる後に突然、猛烈な大幅の機動動作を用いて来襲するミサイルについてくることを迫り、有限の損壊を最大の効果に到達させ、このようにすれば来襲するミサイルの解体、あるいはバランスを失うことを促すことができる。もし来襲するミサイルが何百mの距離で解体あるいはバランスを失ったら、機動中の戦闘機にはほとんどいかなる損害もない。このような距離なら、輸送機や爆撃機にも損害を避ける充分な機動能力がある。これはレーダー制御誘導(セミアクティブよびアクティブレーダー制御誘導を含む)空対空ミサイルに対し有効なだけでなく、赤外線制御誘導空対空ミサイルにも同様に有効である。これは予見できる将来最も現実的な空対空ミサイルに対するハード殺傷の手段である。

機載レーザー武器の有利なところはさらに特殊な作戦環境にある。機載レーザー対ミサイル武器は使用中棚からぼた餅を待つというやつで、来襲するミサイルの追跡を待ち、射程に対する要求が高くなく、10km以下でもう充分である。大気中の伝達によるエネルギー損耗は最小に下げることができ、各種伝達ルートの変形も最小に下げることができ、非常に大きくレーザー武器の使用問題を簡略化する。レーザー技術の進歩とともに、より大きな出力の機載レーザーが現実となり、さらに一歩レーザー武器の空戦における威力を増加させるかもしれない。

機載レーザー自衛対ミサイルシステムがひとたび大量装備されたら、極めて大きく空戦の形を変えることになる。空対空ミサイルはまだ一撃必殺を語れないが、すでに相当に高い命中率を持つ。だが機載レーザー自衛対ミサイルシステムは極めて大きく一撃必殺のハードルを上げ、かつ対ミサイル補助手段としての機動性の重要性を改めて高める。一般的に考えて、次世代戦闘機の基本的特性はステルスであり、甚だしきに至ってはステルスのために戦闘機のその他の性能を適当に犠牲にすることもでき、例えば速度、機動性である。ステルス戦闘機は相手方が察知しない中でもう発見、接敵、攻撃、退出のサイクルを完成させることができるが、武器の発射はステルスを破壊し、もし一撃必殺を達成できなかったら、甚だしきに至っては攻撃を反復しても功を奏することを確保できなかったら、ステルス戦闘機はすぐ自身を暴露し、基本性能で勝負することが必須という不利な局面に陥る可能性がある。

ステルス戦闘機のもう1つの問題はステルスが要求する機全体内部搭載状態下での機載武器の数が限られていることである。F-22には6発のアクティブレーダー制御誘導のAIM-120の他、さらに2発の近接格闘専門に用いる赤外線制御誘導近距離空対空ミサイルがある。F-35には予見できる将来において機内に赤外線制御誘導空対空ミサイルを搭載する能力はなく、全機内部搭載とすれば4発のAIM-120に頼るしかない。もし敵に先んじて発射、一撃必殺が達成できなかったら、F-35の置かれる状況は非常に困難なものになるだろう。ロッキードは機内搭載架へのAIM-120搭載数増加の問題を研究中であるが、言われるところによれば6発までの増加が有望で、このことは非常に大きく機載武器の数の問題を緩和する。少なくとも一撃必殺が成らない時、再度第二撃、第三撃を発動できる。

F-22がアメリカ空軍の主力制空戦闘機となったのは、そのステルスが超音速巡航、超機動性能と相互補完だからである。F-35は対地攻撃をメインとする戦闘爆撃機であり、空戦の中では主にステルスと超視距離外攻撃能力に頼り、ひとたび一撃必殺できなかったら、非常に容易に視距離内格闘に陥る。F-35の格闘能力にはずっと論争がある。2015年1月14日の模擬空戦演習は疑問を持つ者の視点を検証した。クリーンな外形のF-35は格闘空戦の中で2つのサブタンクを搭載したF-16Dにかなわなかった。別の方面では、F-22は数が深刻に不足するため、F-35はアメリカ空軍の制空作戦の重要な部分たることが迫られる。F-35も当然機載レーザー自衛対ミサイルシステムの益を受けることができるが、これを重視して頼ることが必須という状態に至った時、F-35は短所が大きく現れ長所は発揮できなくなっている。だが角度を変えると、レーザー武器とその他のハード殺傷型対ミサイル能力は対空ミサイルに対しても同様に有効である。隠蔽してチャンスを待ち、突然蜂起する対空ミサイルは最も対処し難いが、ひとたび発射されれば、陣地の場所はすぐに暴露し、続く事柄はずっと簡単になる。

レーザー武器とその他のハード殺傷型対ミサイル能力はアメリカ空軍に対しいまだかつてなかったチャンスおよび挑戦であり、非ステルスあるいはセミステルス戦闘機にも新たな生命力をもたらし、ミサイルを発射する側の一方的優勢をなくすことが有望で、これは空戦のターニングポイントとなるだろう。


 難しすぎて分からない部分もありますが、レーザー兵器を使って敵機を一撃で破壊することは近い将来には難しいものの、レーザー兵器が空戦で重要な役割を占めるようになることはそれ以前にも充分あり得るんだなということは分かりました。



















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