シリンダーのフルスクラッチ

 アイデア、テクニックといいながら素材の話などが多くなっているので、ここらでアイデア、テクニックの話をしましょうか。
 以前アームズのガンスミス道場でも書きましたが、技術の高くない人(プロとしては非常に技術の低い私も含めてです)がきれいに物を作ろうとするなら、なるべく自分で形を作らないことです。例えばバレルのパイプをムクの塊から削り出そうとする人はまずいませんよね。適当なパイプを探して使えばきれいなバレルができるわけです。オートのスライド上面のアールも自分で削り出そうとせず、パイプを縦に切って接着した方がきれいにできます。
 ではシリンダーを作るにはどうしたらいいでしょうか。もちろん固まりから削るのではなく、塩ビ製の水道管などを使って作ることになります。もちろんぴったりの径のものはなかなかないですから、少し細いものにプラ板を巻いて太くしたり、太いパイプの内側にテープを貼って中にプラキャストを流し込み、硬化後にパイプを切って外し、中身だけ使ったり(つまり内径を外径にするわけですね)します。
 これで外形はできますが、後はどうすればいいでしょうか。

イラスト1

 小学生でも理屈ではできます。こんな風に三角定規でも当てて円を等分する線を引き、それをまた等分すれば中心が出て、そこにコンパスの針を刺して円を描き、分度器で6連発なら60度づつ線を書いて、交差した点にさらにコンパスの針を刺してチャンバーの径の円を書きます。製図した通りシリンダー軸の穴と各チャンバーを開ければいいわけです。
 しかし、実際には理屈通りにはいきません。頑住吉は旋盤はおろかボール盤すら持っていないのでまっすぐ穴を通すこと自体できませんし、たとえあっても絶対といっていいほど誤差が出て正確にはできません。それではどうすればいいでしょうか。要するに中心軸や各チャンバーの位置を自分で決定せず、正確に作られた既製品の組み合わせで決定されるようにすればいいんです。

イラスト2

 5連発のシリンダーを作る場合で説明しましょう。こんな風に大きなパイプに内径がチャンバーと等しいパイプを5本、中心軸となるパイプ1本を入れます。ガタがあるなら各パイプにぴったりのパイプをかぶせたりして調整します。こうした細いパイプは専門店などで探せば1mm刻みであります。チャンバーを外周に近づけたければチャンバーになるパイプの肉を薄くし、遠ざけたければ厚くします。これで正確な中心が出て、各チャンバーも中心から均等な距離に位置します。しかしごらんのように各チャンバー間の距離がばらばらです。この位置決めも自分でやるのはやめましょう。

イラスト3

 こんな風に例えば1mmのABS板を挟みます。まだガタがあるようなら0.5mm、0.3mm、0.2mmのプラ板、さらには画用紙でも挟んでぴったりの位置にします。隙間にプラキャストを流し込んで固めればシリンダーの基本形が出来ます。後はフルート、シリンダーストップの入る穴、ラチェットなどを加工していけばいいわけです。これもなるべくトイガンのシリンダーから移植する方が当然きれいにできます。もちろん各パイプ、板などの切断に伴うバリやめくれはきれいにとっておきます。

 これはひとつの例ですが、技術や設備がない人は頭を使って補いましょうというお話でした。

 

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