スターリングサブマシンガンの誕生

 今回はメジャーな機種なのにあまり詳しい説明を読んだ記憶がないスターリングの誕生にまつわる経緯に関するページの紹介です。

斯特林-切特沖鋒槍及其后継型


スターリング・パチェットサブマシンガンおよびその後継型

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「スターリング・パチェットサブマシンガンはランチェスターMk.1サブマシンガンを基礎に大幅に改良してできたものである」)

設計、生産の時が緊迫していたため、急いで作られたステンサブマシンガンは外観が相当に粗削りだった。イギリス軍はやむを得ずステン系列のサブマシンガンを大量に採用したものの、これがイギリス軍の悠久の歴史および良好な伝統と充分マッチしておらず、イギリス軍の威厳あるイメージを損なっているとずっと考えていた。このため、外観が英軍のイメージと充分マッチし得るサブマシンガンの開発が切迫した要求となった。

この必要に合わせるため、多くの会社が揃って力を尽くし、すぐに多くの製品が出現した。例えば既存のステンサブマシンガンを基礎に木製ストックとバーチカルフォアグリップを加えたものなどである。スターリング武器社はイギリス軍の新たな必要に応えることを決め、ランチェスターMk.1サブマシンガンに新たに改造を加えることに着手した。

スターリング武器社は2つの方向性で事に当たった。1方面ではランチェスターに彼が研究開発したランチェスターMk.1サブマシンガンの改良に引き続き責任を負うよう依頼し(これこそ本誌前号で紹介したM1、M2試作型である)(頑住吉注:ここでも前回紹介しました。ただ、前回の説明ではステンに対抗できるくらい生産性を上げコストを下げることが目的で、今回のステンは外観が粗雑で軍の威厳にかかわるから、という説明とは違っています。執筆者が別なんでしょうか)、他方面ではジョージ ウィリアム パチェットにも同時にこの改良作業を始めるよう委任した。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「ストックを折りたたんだスターリング・パチェットサブマシンガン。緊急状況下ではストックを折りたたんでいても射撃が行える。」)

スターリング・パチェットサブマシンガンを詳しく見る

パチェットがいつスターリング武器社の設計部門に入ったのかについては、現在ではすでに考証することはできない。だが彼が改良した最初のスターリング・パチェットサブマシンガンは1942年9月25日にイギリス軍のテストを受けている。

スターリング・パチェットサブマシンガンはランチェスターを改良したM1、M2試作型と外観上はっきりした差異があり、原型のランチェスターMk.1サブマシンガンとも比較的大きな差異があった。

M1、M2試作型との第1の差異はバレルジャケットにある。M1、M2試作型は軽量化を実現するためバレルジャケットを省略していた。一方スターリング・パチェットサブマシンガンは原型銃のバレルジャケットを元のまま残している。バレルジャケットの装備は灼熱のバレルによる火傷を防止できる。また原型銃同様、バレルジャケットには規則正しく多くの放熱孔が開けられている。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「セレクターは発射機構ベースの前方に設置され、発射機構ベースの左側面に刻印されている頭文字の「A」はフルオート射撃を表し、右側面に刻印されている頭文字の「R」はセミオート射撃を表している。セレクターを下方にするとセーフティ状態であり、ここには頭文字は刻印されていないが判別は容易である。」)

2つめの差異は発射機構ベースにある。まず発射機構ベースがレシーバー上に置かれている位置が異なる。M1、M2試作サブマシンガンの構造は大部分原型のランチェスターMk.1サブマシンガンの設計を踏襲しており、発射機構ベースはレシーバー後端に設置されていた。一方パチェットはフルオート射撃時のマズルジャンプのコントロールの便を考慮し、発射機構ベースをレシーバー中央部下方にの位置に設置し、力学的バランスを達成した。この他、その発射機構ベースの設計はM1、M2試作型の発射機構ベースと比べてより小さく精巧で、より見た目が良かった。

3つめの差異はストックの設計にあった。第二次大戦の時期、サブマシンガンは一般の歩兵部隊の中でも広範に使用されたが、落下傘降下部隊や突撃部隊等の近代戦への使用により適しており、このため彼らのサブマシンガンに対する要求は短小軽便、火力猛烈、だった。ステン系列のサブマシンガンは固定式ストックを採用しており、携行が充分便利とは言えなかった。ランチェスターとパチェットは、ランチェスターMk.1サブマシンガンの改造にあたりいずれもこの点に注意を向けたが、2人の処理方法ははっきり違っていた。ランチェスターはM1、M2試作型サブマシンガンに取り外し可能な金属ストックを装備した。しかし兵士が使用時にストックを取り付けるのには一定の時間を必要とし、明らかに面倒だった。一方ランチェスターが採用した方法はずっと簡単だった。彼はスターリング・パチェットサブマシンガンのために、薄い鋼板をプレス加工して作った折りたたみ式金属ストックを設計した。携行時はストックを折りたたみ、緊急状況下ではストックを折りたたんでいても安全に射撃が行え、かつストックの折りたたみ、伸ばしは非常に便利だった。

第4の差異はスターリング・パチェットサブマシンガンのバレル前端にはバヨネットベースがなくなり、バヨネットがもはや追加装備できないことだった。

スターリング・パチェットサブマシンガンのセレクターはMk.1およびM1、M2試作型同様トリガーガードの前上方に設置されていた。セレクターを左側に回すとフルオートモードとなり、セレクターを右側に回すとセミオートモードだった。下に回すとセーフティ状態となった。緊急状況下において射撃モードを間違えることを防止するため、発射機構ベース両側面には特に記号が刻印されていた。左側面の頭文字「A」(automatic)はフルオートによる発射を表し、右側面の頭文字「R」(repeating)はセミオートによる発射を意味していた。セレクターを下方に回すとセーフティ状態で、ここには頭文字は表示されていないが、判別は容易である。ランチェスターサブマシンガンと比べて、この銃が発射状態を表示する頭文字によるサインは明らかにより分かりやすい。

ランチェスターはこの銃の設計を完了した後、この銃のためのパテントを申請し、パテントは1942年8月に認められた。1942年9月、スターリング武器社はイギリス兵器部にテストに向けた請求を提出した。テストを経て、イギリス兵器部は次のように考えた。スターリング・パチェットサブマシンガンの品質はステンサブマシンガンと比べて高いものの生産コストも高い。ステンサブマシンガンにはない折りたたみ式ストックを採用している。発射機構ベースがレシーバー中央部下方に位置しているので、フルオート発射時のマズルジャンプも容易にコントロールできる。この他この銃の外形もイギリス軍の気質に比較的符合している。このためこの銃に対し全体的には高い評価を与え、スターリング武器社にこの銃を基礎に後続型の研究開発を行うことを要求した。

(頑住吉注:原ページのここにある1枚目の画像のキャプションです。「ストックを伸ばした状態。金属製ストックには薄いスチール板をプレスして作る方法が採用された」 続いて2枚目「バレルジャケットの設計は原型のランチェスターMk.1サブマシンガンと比べても変化はない」)

(頑住吉注:これより2ページ目)

改良型、「制式」に昇格

イギリス軍の命令に接したスターリング武器社はランチェスターに対し、彼の研究開発するサブマシンガンに改良試作を続けるよう要求した。1943年末、パチェットはイギリス陸軍に、彼が以前に試作したサブマシンガンと設計理念は基本的に同じだが、改良してさらに完全にしたサブマシンガンを提出した。イギリス軍はこの新型試作サブマシンガンに対しテストを行った後、この銃に対し高い評価を与え、これが特殊部隊の使用に最も適した武器であると考え、この銃をランチェスターMk.1 9mmサブマシンガンと命名し、臨時制式武器に選定した。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「ランチェスターMk.1サブマシンガンの右側面図。この銃はスターリング・パチェットサブマシンガンの後継型である。」)

1944年、イギリス軍はスターリング武器社に10挺のパチェットMk.1 9mmサブマシンガンを生産するよう要求し、かつこの10挺の試生産されたサブマシンガンを連合軍のヨーロッパ大陸反攻作戦での使用のために投入し、実戦においてこの銃の性能をテストした。イギリス軍の記録によれば、この10挺の試生産されたパチェットMk.1 9mmサブマシンガンの一部は第6航空降下師団に支給されてノルマンディ上陸作戦に投入され、使用された。また一部は第1航空降下師団に支給され、オランダのアーネム降下作戦(頑住吉注:映画「遠すぎた橋」の舞台となったマーケット・ガーデン作戦のことです)に投入され、使用されたという。

パチェットMk.1 9mmサブマシンガンの基本設計はスターリング・パチェットサブマシンガンと同じだが、一部のディテールが異なっていた。例えばそのストックはやはり折りたたみ式だが、スターリング・パチェットサブマシンガンのストックと比べるとより丸みを帯びており、折りたたみ後のストックはレシーバーおよびバレルジャケットの下方に密着した。グリップの傾斜角度もスターリング・パチェットサブマシンガンと比べより大きく、握っての保持がより自然で快適だった。そのコッキングハンドルは原型のランチェスターMk.1サブマシンガンのコッキングハンドル同様、湾曲した三日月型で、スターリング・パチェットサブマシンガンのような楕円形ではなかった。もう1つの細かい差異はレシーバー後方の設計にあった。伸ばしたストックをひっかけるのに便利なように、パチェットMk.1 9mmサブマシンガンのレシーバー後部カバー上には特別にストックのロック機構が設計されていた。一方スターリング/パチェットサブマシンガンにはこのような設計はなかった。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「ストックを折りたたんだパチェットMk.1サブマシンガン」)

この銃とスターリング・パチェットサブマシンガンにはまだ1ヵ所明らかな差異があり、それはセレクターの位置の違いだった。スターリング・パチェットサブマシンガンのセレクターは発射機構ベースの前端に設置されていたが、一方この銃のセレクターは発射機構ベースの左側に移されていた。だが同様に3つの位置で調節可能であり、かつ各位置にはそれぞれ頭文字が刻印されていた。この中で「A」はフルオートを表し、「R」はセミオートを表し、「S」はセーフティ状態を表した。この他、この銃のマガジンハウジングの上下両側にはいずれも刻印があり、上側はパチェットサブマシンガンの銃器名称とシリアルナンバー、下側はパテントに関する情報だった。

当初この銃は外部に露出した円錐形のフロントサイトを採用していた。フロントサイトの耐久性を高めるため、後期型ではフロントサイトガードが増設された。リアサイトに関してはもはやランチェスターMk.1のL字型起倒式リアサイト、V字ノッチは流用されず、ステンサブマシンガンと似た固定式のピープリアサイトが採用された。

現在すでにパチェットMk.1 9mmサブマシンガンが後の実戦中にどのような複数の改良を経たのかについて調べることはできなくなっているが、確かなのは第二次大戦後の1953年9月18日、パチェットMk.1 9mmサブマシンガンの後継型であるパチェットMk.2 9mmサブマシンガンがイギリス軍に制式採用され、L2A1サブマシンガンと命名されたことである。

(頑住吉注:原ページのここにある1枚目の画像のキャプションです。「パチェットMk.1サブマシンガンとステンサブマシンガンは共にコッキングハンドルがレシーバー右側に設置され、マガジンハウジングがレシーバー左側に設置されている。」 続いて2枚目「パチェットMk.1サブマシンガンのストック折りたたみ状態を下から見たところ。折りたたんだストックはレシーバーとバレルジャケットの下方に密着している。」 続いて3枚目「レシーバー後部カバーにはストックロック機構が設けられている。」 )

パチェットMk.2 9mmサブマシンガンとパチェットMk.1 9mmサブマシンガンは基本設計は同じで、細部に差があるに過ぎない。最大の差異はマガジンの設計にある。パチェットMk.1 9mmサブマシンガンはランチェスターMk.1サブマシンガンやステンサブマシンガンと同じストレートなマガジンを使用していたが、パチェットMk.2 9mmサブマシンガンはカーブしたマガジンを使用する。この種のマガジンは1944年後期に開発され、生産数量は比較的少ない(頑住吉注:この1文どこにかかっているのかはっきりしません。パチェットMk.1専用ストレートマガジンでしょうか。それともパチェットMk.2用初期型マガジンでしょうか)。この他、パチェットMk.1 9mmサブマシンガンのストレートマガジンはダブルカアラムシングルフィードの給弾方式を採用していたが、この種の給弾方式は容易に給弾の故障を発生させた。一方パチェットMk.2 9mmサブマシンガンのカーブしたマガジンはダブルカアラムダブルフィードの設計を採用し、給弾の故障が発生する確率を大いに低下させた。

第二次大戦中イギリス軍が大量に使用したのはステン系列のサブマシンガンだったが、第二次大戦後はパチェットが設計したサブマシンガンがイギリス軍に大量に装備され始め、またL2A1、L2A2、L2A3系列が派生してカナダ、インド、ナイジェリアなどの英連邦国家に装備され、使用された。

(頑住吉注:原ページのここにある1枚目の画像のキャプションです。「パチェットMk.1サブマシンガンのマガジンハウジング上面の刻印。示されているのは第1号試作銃のナンバー」 続いて2枚目「マガジンハウジング下面の刻印。パチェットの獲得したパテントナンバーが刻まれている」 続いて3枚目「パチェットMk.1サブマシンガンはスターリング・パチェットサブマシンガンと比べてグリップの角度がより大きく、保持がより自然で快適である」 続いて4枚目「パチェットMk.1サブマシンガンはセレクターが発射機構ベース左側に移され、3つの位置に調節できる。いずれも頭文字で表示され、その中の「A」はフルオート、「R」はセミオート、「S」はセーフティ状態を表す」 続いて5枚目「パチェットMk.1試作型。フロントサイトは外部に露出している。フロントサイトの耐久性を増すため、後期型ではフロントサイトガードが増設された」 続いて6枚目「リアサイトはステンと似ており、ピープ式である」)


 スターリングはステンを洗練させたもののような印象を受けますが、ステンから発展したものではなく、似ても似つかないドイツのMP28系から発展したものだということです。ランチェスターとパチェットの試作型は偶然とは考えられないくらい似ていますが、2人の間にどの程度の情報のやり取りがあったのかはこの記事を読んでもはっきりしません。













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