ステアー 「タクティカルエリートSD」と「M9A1SD」

 「Visier」2004年3月号に、ステアー社の新しいサイレンサー銃、ライフルとハンドガン2種のレポートが掲載されていました。


 ステアー・マンリッヒャー社のタクティカルエリートが突然変異を起こした。Jeff CooperのPSGバリエーションが刺激となったScout Rifleは2000年のIWAで発表されている。疑問なのは何故当時すでにサイレンサーが付いていなかったのか、という点だ。というのは、この同名の小さな町に所在する銃器メーカーは、すでに長年サイレンサー付きの銃を得意としているからだ。80年代の初め、このオーストリアのメーカーはSSG69のバリエーションであるSSG69PWSDを発表した。しかし、この次の機種が現れるまでにはおよそ20年もの休止期間があった。1990年代の終わり、Scout Rifleの特別バージョンが作られるまでに、である。
 サイレンサー付きの銃器を開発するにあたっての、ステアー・マンリッヒャー社のパートナーは、スイス、Thun所在のサイレンサーメーカー、Brugger&Thometだった。その結果古典的な警察用スナイパーライフルではなく、むしろ首尾一貫したユニバーサルライフルコンセプトが確立された。最近ではSSG69PWSDはやや旧式化して改良を希望する声が多く寄せられた。基礎は十分であり、これをベースにし、形状を変更したサイレンサーバージョンのタクティカルエリートが作られた。そして「Visier」はテスト用にプロトタイプを入手した。
 この銃は外観からすでに出自が明らかである。コンベンショナルなタクティカルエリートの定評ある、なじみの部分が新作に引き継がれている。3ポイントのセーフティ、ストックの形、組み込みのバイポッド、ボルトとマガジンの形式、これらはサイレンサーなしバージョンと区別できない。違うのはバレルだ。サイレンサーはマズルから約130mm後方までカバーしている。サイレンサーの固定ネジはバレル先端ではなくずっと後方にあり、サイレンサーを軸部のみで固定している。マズル先端部はサイレンサー内部に接しておらず、クリアランスがある。この方式の長所は、バレルとサイレンサーがお互いに独立しており、このため熱によるサイレンサーの膨張でバレルが圧迫されることがない点である。サイレンサーが少し緩んでもこの正確なクリアランスにはほとんど影響しない。意外だが、バレルには300mmで半回転のスタンダードなライフリングがある。サイレンサー装備の口径.308の銃は他社の場合でもそれが普通だが、ステアーもこれまでピッチをきつくしたライフリングを使ってきた。12〜13gの重量弾を安定させる必要があるにもかかわらず、この新製品のライフリングはノーマルになっているのだ。テスト銃にはSchmidt&Benderのスコープ(3〜12x50)が装備されていた。このスコープはMil-Dotが点灯でき、パララックスが均一化されている。

サイレンサー
 Brugger&Thomet製の、ライフルに標準装備されたサイレンサーは「乾式」で機能する。だが、ミステリアスな内部構造を持つ、全く異なる原理で作用する「湿式」サイレンサーに変更することもできる。
 燃焼ガスが引き起こす発射音を抑えるためには、このガスの緊張を解かねばならない。ガスをゆっくり漏らせば、風船から空気が出る時のように騒音を減らすことができる。このときガスの機械的エネルギーも取り去られなければならない。「乾式」サイレンサーは固い、または柔軟性のある内部構造でこれを達成する。いわゆる「Blenden」(頑住吉注:英語のブラインド。以下「仕切り板」とします)がガスを制御する。では他の選択肢として登場した「湿式」はどうか。程度の差はあれ粘り気のある液体がガスの機械的エネルギーを除去すると同時に冷却する。この原理は「乾式」サイレンサーに少量のオイルまたは水を注入することによっても機能する。これは、液体に向けて噴射されることによってガスがそのエネルギーを失うということである。同時に飛沫が熱を吸収する。細かく飛散した液体の、トータルでは大きな表面積が、ガスの冷却プロセスを容易にする。ガスは緊張を解かれ、騒音は軽減される。構造や大きさによって消音効果は大きく、また小さくなる。
 テストで使用したサイレンサーにはマズルブレーキの機能もあった。発射ガスがマズルより後方のバレル周囲に向きを変えて導かれる。これが副次的に反動を減らすのである。マズルより前にはより大きなガス拡張スペースとガスの流れをやわらげる仕切り板がある。素材と加工法により、ノーマル弾薬で5000発以上、サブソニック弾ではそれをはるかに越える命数を可能にしている。

シューティングレンジにて
 命中精度は100mから「湿式」でテストした。サイレンサーを外してサブソニック弾を撃つテストでも、精度に問題はなかった。弾丸の重量が200グレインの普及しているサブソニック弾(MEN、Lapua、RUAG等)は、この銃のようなライフリングのバレルから発射した場合、精度上の長所がもたらされることはない。
 サイレンサーを外してテストした時点で、短い「エリート」の命中精度の優秀さはかなり顕著に現れた。Hirtenberger、Federal、HornadyのTAPにおいてグルーピングは32mmかそれ以下になった。ベストの結果はFederalの168グレインマッチ弾で達成され、18mmだった。サイレンサーを取りつけることによりグルーピングはさらに縮小し、16〜28mmになった。
 これはサイレンサー取りつけによってバレル重量が増加したことと、マズル前方のガスの渦がメガホン状の仕切り板によって沈静化されたことによる。
 この銃のライフリングは重い通常のサブソニック弾には適さないため、180グレインと軽量な新型のサブソニック弾のみをサイレンサーつきで射撃した。最初に特殊薬莢のサブソニック弾をテストした。これは弾丸がセットされる先端の穴以外の薬莢全体が肉厚になっているというものだ。薬莢の小さな内容積はバレル内の弾道を安定させ、H&N製の穴が開けられて本来はハイスピードな軽量弾を、極端に少量の発射薬で発射することを可能にしている。
 もう一つのサブソニック弾はLiMaの特殊弾薬で、H&Nのホローポイント弾を使用している。この弾はLimaで普通に使われている重い弾より軽い。少量の火薬で軽い弾を発射するため、反動が弱い。だが精度に関しては重いサブソニック弾と同等である。100mから、両者ともグルーピングが30〜35mmとなった。比較のため、25mから射撃してみたが、グルーピングは6〜8mmとなった。
 消音効果も納得のいくものだった。テスト者は通常の超音速弾では音のレベルが.222レミントン以下であると感じた。サブソニック弾薬では、その音は勢いよくシャンパンのコルクを抜いたときよりわずかに大きい、という小ささだった。性能の劣るサイレンサーを装着したKK(頑住吉注:小口径の略。慣用的に.22リムファイアを指すようです)ライフル程度である。純粋に音の大きさをデシベルで計測しても、実際に聞いた実感とは大きく異なる。

M9A1SDピストル
 もう一つのサイレンサー装着銃M9A1SDは公用マーケットの要求に応えたものだ。M9A1の消音機能のある姉妹品であり、スライド前面に突き出たパイプ状の部品で区別される。ここには13.5x1mmの逆ネジが切ってある。正ネジだと右回りのライフリングを持つバレルから射撃した場合に緩んでしまうが、逆ネジだとこれに逆らう効果がある。銃にサイレンサーを装着しない場合、ネジを保護するためのプロテクターがねじ込まれる。この通常状態ではサイレンサー装備型のようには見えない。オートピストルの移動するバレルは、その重量増加に敏感に反応する。スライドの移動速度と連射サイクルがバレルの重量に依存しているからである。サイレンサーをねじ込めば、バレルの重量は極端に変化する。特に移動するバレルに大型のサイレンサーを取りつけた場合、それによってもたらされるのは静かさだけではない。銃をハンドリピーターにしないためには、銃に対するその自重を良好に打ち消してやる仕組みが必要になる。
 このため、Brugger&Thometの2種類の異なるサイレンサー、「Impuls UA」と「Jet」をテストした。「Impuls」サイレンサーには洗練されたメカニズム「Impulsgeber」(頑住吉注:ここをずっと読んでいる方はご存じのように「Impuls」には「運動量」という意味もありますが、ここでは普通に「衝撃」といった意味でしょう。「Geber」は「贈与者」といった意味です。)が内蔵されている。これにより、銃の作動は阻害されない。このような頑丈で信頼できる構造なしに約400gの重いサイレンサーをバレルにねじ込めば、M9A1のセミオート作動はまったく圧殺されてしまう。約30mmしかない細さ、155mmという短さの「Jet」は「Impuls」とは違い、こうした問題はない。ガスは弾丸が通過するポリマーの円盤によってブレーキをかけられ、引き留められ、緊張を解かれる。サイレンサー内部に蓄積されたガス圧はブリーチ前面の薬莢に作用し、作動をバックアップする。このピストルとサイレンサーのコンビネーションに使用する場合、弾薬に反応する可能性があることがS&Bのサブソニック弾によって分かった。「Impuls UA」を装着した場合、スライドが完全閉鎖しなかったからだ。これに対し「Jet」ではこのような弱装の弾薬も消化した。他のいろいろなサブソニック弾では申し分なく作動した。これはSpeerのGold Dot、RemingtonのGolden Saber、MENの9.5gフラットノーズ弾のことである。しかし、シャープなエッジのあるホローポイント弾は「Jet」のようなサイレンサーに使用する場合注意が必要だ。弾丸の通過によって仕切り板が完全に破壊されてしまう可能性があるからだ。
 シューティングレンジにおいて、M9A1SDは完全な実用ピストルであることを証明した。両方のサイレンサーを装備しての25mからのグルーピングは56〜110mmとなった。このピストルのトリガープルが比較的重いことを考慮に入れればこれは充分な命中精度だ。特に現実に公用としてチームワークで使用される場合、距離が15mを越えることがまれであることを考えれば充分である。やっかいな問題として示されたのは、熱いガスの奔流がエジェクションポートの開口部などからシューシュー漏れることだ。射手は常に防護メガネをかけるべきだ。サイレンサー装着時の騒音は「4mmM20」銃を思わせる(頑住吉注:たぶん「ユンカー」の項目で登場したような4mmの金属製BB弾を使う空気銃のことでしょう)。「Schluck」(ひと飲みの量)の水または少量のオイルを注入すれば、騒音レベルは2マガジン以上にわたって低下する。

結論と展望
 タクティカルエリートSDとM9A1SD、両銃の命中精度および消音効果は納得いくものだった。ただし、前者のライフリングのピッチが強くされていたらもっとよかったはずである。これなら重い弾を使うサブソニック弾でも成績の損失なく使用が可能になる。SSG69PWSDなどの先行製品でもピッチを強めたライフリングによって納得いく射撃結果が得られているのである。その成績とコンパクトさを考慮すれば、タクティカルエリートは他メーカーの極端に高価な高級品に代わり得る一つの興味深い選択肢である。ドイツにおけるステアー・マンリッヒャー社の総代理店の情報によれば、この製品の最終的な価格はまだ正確に決定していないという。価格は当然コンベンショナルなタクティカルエリートの現在の価格(2440ユーロ)より高くなる。いつ量産がスタートするのかも現在まだ明らかでない。それまでの間、必要な場合ステアーに1挺のみの注文を行うこともできる。M9A1SDピストルにも小改良が行われる可能性がある。大型のサイレンサーはサイトをさえぎってしまい、追加のオプティカルサイトが必要になる。このためより高いサイトが有利である。

キャプション(本文と重複しない重要部分のみ)
(「タクティカルエリートSD」)
ボルト前面には高いロッキングラグがあり、高圧下でも安全を確保している。ボルト途中には汚れ、氷対策の溝があり、厳寒や他の悪天候下でも作動不良がないことを保証している。
必要な場合HT(ハイキャパシティ)キットによって10連発マガジンに変更することができる。
安全ポジションではマガジンが少し外に押し出される。これによってボルトを操作しても弾薬は供給されない。
ボルトの取り出しのためにチークピースを最も高い位置に合わせなければならず、使用時にまた調整し直さなければならないのは欠点である。
チークピース部全体をを簡単に外すため、スナップ結合になっているのだが、残念ながらテスト銃では機能しなかった。ストック後下部には予備マガジンが収容される。

(「M9A1SD」)
この銃にもキーロック式セーフティが採用されている。これをかけるとトリガーシステムがブロックされるとともに分解できなくなる。


 この記事はあまり面白くなさそうだと思って後回しにしていたんですが、読んでみると非常に面白かったです。まあもちろん、これは面白そうだと思って苦労して長い記事を読んだけど期待はずれ、ということもあるわけですが。
 「タクティカルエリートSD」というのは要するにすでに存在する「タクティカルエリート」のサイレンサーバージョンです。さらにこの銃の原型となったのはSSG69シリーズで、これはたぶんマルゼンAPSー2のモデルになった銃ですね。
http://www.snipercentral.com/ssgp1.htm
これがSSG69で、外観はほとんどAPS−2そのままです。そして
http://www.army-technology.com/contractors/machine_guns/mannlicher/mannlicher3.html
これがサイレンサーのないコンベンショナルな「タクティカルエリート」です。なかなかカッコいいですね。外観上の特徴は標準装備され、たたむとストックの一部のようになってかさばらないバイポッド、レシーバー上面の長いマウントレール、ストック後下部の予備マガジン収納スペース、フルアジャスタブルのストックといったところです。
http://www.steyrscout.org/tactical.htm
こちらは側面写真はあまりよくないですが、ボルト単体の写真があり、上部の面取りの周辺にミゾが彫ってあるのが見えます。これは汚れや氷をここに収めることによって作動不良を防ぐ目的であるということです。似たようなアイデアはUZIやスターリングなどにも見られますね。そして、チークピースをいっぱいに上げないとボルトが取り出せないというのも下の写真で分かります。
 この銃にサイレンサーを装備できるようにしたのが今回の主役である「タクティカルエリートSD」です。サイレンサーはたいていバレル先端部にネジを切ってねじ込むものですが、この銃の場合ネジはマズルよりずっと後方にあって、マズルはサイレンサーに接していません。この方が命中精度に悪影響が出にくいということです。次に興味深いのは、通常サイレンサーはマズルより先にガスの拡散スペースがあるものですが、この銃のサイレンサーはマズルより後方にも大きくスペースがあり、発射ガスが後方に向けて流れることで反動を軽減する効果もある、という点です。理屈としてはわからんでもないですが、そんなに大きな効果があるのかなあ、という気もします。

「タクティカルエリート」のサイレンサー基部

 まあこんな感じですか。空色の部分がバレルで、途中太くなっているのがネジ部を表現したものです。バレル先端は少し細くされてサイレンサーと触れないようになっています。バレルの形は見れば分かりますが、サイレンサーの断面の方は記事にイラスト等もなく、想像も含めて大体です。ガスが後方にも流れる、というのが分かりますよね。
 そして何と言っても最も興味深いのは、「湿式サイレンサー」です。これの詳しい構造等は記事にありませんが、通常のサイレンサーに水や油を注入するだけでも同様の効果はあるとされ、原理的には単純なものです。高圧、高速の発射ガスがガスの拡散スペース内に突入すると、内部の液体が細かいしぶきになって飛び散り、ガスがこれにあたることによって減速され、同時に冷却もされる、ということです。これもなるほど、と思う反面そんなに大きな効果があるかなあという疑問も感じます。
 Dick Acousの新型サイレンサーが、実際の戦地でマズルにコンドームをかぶせたことから発想されたものではないかと推測したように、これも実際の特殊部隊がジャングル等で雨水の入ったサイレンサーで射撃したら通常より音が小さく感じた、なんてところから発展したのかもしれません。まあこの場合発展と言っても私の想像通りなら単に水が入ったサイレンサーから特段の進歩はしてないようですけど。
 ちなみに、一般論として重い弾を安定させるにはきついライフリングのピッチが必要のようです。M16でも、55グレインの弾を使っていたA1から、63グレインの弾を使うA2に改良されるにあたってピッチが強くされました。本来音速の2倍近い.308を亜音速に落とし、かつ威力を保ち、なるべくオートでも作動させるようにするには通常よりずっと重い弾が必要になります。これを安定させるには通常よりきついピッチが必要です。他社もたいていそうなっているということですし、ステアーも、過去の.308サイレンサーモデルではピッチが強められていたのに、新作の「タクティカルエリートSD」では普通のライフリングのままで、「Visier」はこれは欠点であると指摘しています。このライフリングで使えるものとして軽量で特殊なサブソニック弾を使ってテストしたわけです。この特殊サブソニック弾は100mまででの命中精度は問題ないようですが、軽いため遠距離射撃には向かないでしょう。たぶんサブソニック弾を遠距離で使うことは少ないと思いますが、軽量で低速なら当然威力は小さくなりますし、たぶん多くのオートライフルでは使えないのではないでしょうか。薬莢の肉厚を増やして内容積を小さくすることで少量の発射薬で高圧を生むというのも面白いですが、薬莢の製造が難しく、コストは上がるでしょう。
 「M9A1SD」もバレル以外は「ステアーのグロック」のようなM9A1とほとんど同じものです。バレル先端にネジが切ってあり、通常は滑り止めのローレットを彫ったプロテクターをねじ込んでいるのでサイレンサー仕様のように見えない、とされています。ただ日本のトイガンマニアからすると非常に見慣れた形式なんで、一見してサイレンサー仕様と分かると思います。このネジは緩み防止のため逆ネジになっているそうですが、こういう場合撃っているうちに逆にどんどん固く締まって外せなくなるなんてこともあるようですね。
 ショートリコイルのオートピストルの場合、バレルが後退するまでスライドがロックされて動けないわけですから、バレルに異常な荷重をかけると作動不良を起こすのは当然のことです。小型軽量な「Jet」では問題ないものの、約400gもある「Impuls UA」をそのまま装着したのでは作動不良を起こす可能性が高くなります。そこでメーカーのBrugger&Thometは「Impulsgeber」というシステムを採用して問題を回避しているということです。どういうわけかこの「Impulsgeber」の内容には文中で全く触れていませんが、サイレンサーの断面図イラストがあるのでほぼどういうものか分かります。

「Impulsgeber」

 右が前になります。青い部分がサイレンサーの口金部分、緑の部分がサイレンサー本体、赤いのはスプリングです。要するに、小型軽量な口金のみがバレルに固定され、大きく重いサイレンサーはスプリングを介してマウントされているわけです。発射時、バレルが急速に後退すると、口金は当然一緒に後退しますが、サイレンサー本体は慣性があるのでほぼそのままの場所に取り残され、これによってバレルへの負担が小さくて済むというわけです。非常に単純ですが、よく考えられたシステムですね。ただ、スプリングがあまりに弱いとフラフラして困りますし、強すぎるとやはりバレルの後退に負担がかかり、難しいところです。「Jet」では問題なかった一部の弾薬で閉鎖不良があったのもこれと関係あるかもしれません。
 一方「Jet」の方は

「Jet」」の仕切り板

前から見てこんな、ゴムのような素材でできた円盤が内部にたくさん入っているものです。中央には十字の切れ目があり、弾はここを押し開いて通過し、その後切れ目は弾性で閉じてガスを内部に閉じ込めます。内部の圧力が高くなるのでこの圧力がスライド後退をアシストするという効果もあります。ただし、発射後に高圧ガスがシューシュー噴出してやや危険であるということです。こんなことをしたら命中精度が極端に低下してしまいそうに思いますが、実射テストの結果では実用上問題ないようです。ただ、使用するのは重いサブソニック弾であり、重い弾は理屈上抵抗によって減速しにくいはずですが、それでもたぶん初速が相当に低下するはずです。たいていの記事には初速のデータがあるのにこの記事にはなく、公表したくないような結果が出たんではないかとちょっと疑ってしまいます。そして、ホローのまわりがシャープなエッジになっているようなタイプのホローポイント弾は、ポンチで打ち抜いたようにこの円盤を切断してしまうおそれがある、ということです。

 それにしても、現代の高性能サイレンサーとサブソニック弾を併用した場合の発射音は想像以上に小さいようですね。両者とも、たぶん今後主に警察の対テロ特殊部隊などによって使用されていくんでしょう。







戻るボタン