STIローマン 

「Visier」2005年3月号に、STIローマンという銃のレポートが掲載されていました。STIのハイキャパガバはガスガンにもなっているので皆さんもよくご存知でしょうが、この銃はそれとは違うクラシカルなガバメントコピー品です。まずSTI公式サイトを見てください。

http://www.stiguns.com/

 このサイトもこの銃の紹介ページに直接行けないようです。まず左のメニューの上から3番目、「コンプリートガンズ」をクリックし、表示された左の列「シングルスタック」の一番下の「LSAローマン」をクリックするとこの銃の紹介ページが表示され、銃の画像をクリックすると拡大もされます。形状はごく普通のガバメントコンバットカスタムですが、スライドが赤っぽく、フレームが緑っぽい妙な色をしている点が目につくと思います。ちなみに記事では「LSA」とは何かについても触れられています。


Auffallig unauffallig (頑住吉注:2つの単語とも後の「a」はウムラウト。「auffallig」は「目立つ」、「派手な」などの意、「unauffallig」はそれに否定の「un」がついた単語で「目立たない」、「地味な」などの意になります。このタイトルは形状的には特に変わった点のない地味なガバメントでありながら、目立つ特殊な色彩の表面コーティングを施したこの銃を表現しているようです。)

 デュオトーンの外観を持つポリマー塗装がSTIローマンの表面を摩擦および腐食から守り、そして取り違えようのないルックスをももたらしている。

 元々はといえば、Lone Star Arms社(頑住吉注:LSA)が2年以上前に「ローマン」をマーケットに持ち込んだ。Lone Starは当時銃器製造における新規参入者であり、1911系フレームおよびスライドの鍛造素材からの製造に特殊化していたが、2003年12月に同じくテキサスに所在する銃器メーカーSTIに買収された。それ以来ローマンのバレルおよび小パーツはもはやそれまでのようにいくつかのチューニング分野の下請企業に由来しておらず、大部分はSTI製である。そしてこのオールスチール銃は今やSTIによって「LSAローマン」として販売されている。

 相変わらずこの.45口径ピストルはまず第一にその茶色とオリーブグリーンのデュオトーン塗装によってライバルたちから際立っている。このハイテクポリマーコーティングは、パーカライジングあるいはブルーイングとの比較において、かなり上回るホルスター跡、磨耗、サビからの防御を提供する。通常このポリマー塗装は、サンドブラストし、脱脂した金属表面にむらなく望む色を吹きつけ、続いてこのパーツを約1時間、薄い防御層の硬化のためオーブンに入れる。他の点ではLSAローマンはクラシカルなM1911A1そのものと技術的に大部分が一致している。バレルは前部がマズルブッシング内で誘導される。ワンピースのエキストラクターはスライド内部に設置され、同様にLSAローマンにはファイアリングピンセーフティは欠けている。そして少なくともアメリカ国内では多くの1911系ファンたちがそれがあればいいと思ったりしないのも事実である。構造に制約されてのクラシカルな「ガバメント」との差異は、ロングのリコイルスプリングガイドの形状と、フィーディングランプを装備したステンレスバレルだけにしか見られない。

 他の全ての(頑住吉注:構造的なものではない形状上の)変更は、セルフディフェンス用にデザインされた1911系ピストルの操作および射撃快適性の最適化に役立っている。きれいな、そしてシャープすぎないグリップフレーム前面およびメインスプリングハウジングのチェッカリングは、滑らないグリップをもたらしている。グリップセーフティは握る手が銃をできるだけ高い位置でつかむことを可能にし、同時に手がハンマーにかまれることを防いでいる。ホワイトの3ドットつきオリジナルノバックサイトはコントラストの大きいサイト像を提供する。スライド前部の滑り止めミゾは「Press check」を簡単にすることを意図している。すなわちこれにより射手はそのピストルが本当に装填されているかどうかをチェックするため、スライドを2、3mm後退させるのである。

 加工は高級な1911系スタンダードに似ており、工具の跡は見られない。フレーム、スライド、バレル、マズルブッシング間のはめあいも価格とセルフディフェンス銃としての使用目的に見合っている。タイトでがたつきはないが、純血種のマッチ用1911系で普通な「吸いつくような」レベルではない。小さなディテールも正しいものである。すなわち、大型化されたサムセーフティはクリアに定義されたロックをし(頑住吉注:パチパチとオン、オフ各位置ではっきり小気味よくロックされるくらいの意味だと思います)、ビーバーテイルとフレームは見苦しい隙間なく互いにフィットしている。唯一、ノバックサイトのためのフライス加工(頑住吉注:アリミゾ)は批判を受けて当然である。ノバックサイトはテスト銃の場合ほとんど1.5mm低すぎ、その上あまりにもスライド上で後方過ぎる。結果はどうか。このリアサイトはスライド後部を越えて突き出(頑住吉注:といってもほんのわずかですよ)、銃は25mにおいて弾薬にもよるが狙点から6時方向に低く、2点リング内に集中して着弾する。たぶんこれは1度だけの失態である。というのは、公式サイトで正確にセットされたノバックサイトつきのローマンを見ることができるからである。公式サイトで見られる銃の場合アリミゾはスライドの滑り止めミゾのギリギリ上にある。一方テスト銃の場合は「スライドセレーション」内に入り込んでいる(頑住吉注:「Visier」掲載の写真と公式の拡大画像を比較して確認しました。高さに関しては確かにその通りです。ただ前後位置に関しては公式の画像でもノバックサイトがスライド後端より微妙に後方に突き出ているようにも見えます)。

 シューティングレンジでは、STI製品の輸入業者Charlie Prommersberger( http://www.prommersberger.de/ 頑住吉注:この銃の画像はありません)が編集部に特別に選んだピストルではなく、工場からの新品、「out of the box」(頑住吉注:日本でも「箱出し」って言いますけど、あれは英語からの直訳のようですね)を送ってきたのだということがすぐに示された。シューティングマシンに固定された状態で、この.45口径銃は初めのうち何度かのロード障害(頑住吉注:「Ladehemmungen」)を起こし、供給障害(頑住吉注:「Zufuhrstorungen」。2つめの「u」はウムラウト。どう違うのかよく分かりません。前者は閉鎖不良、後者はいわゆる送弾不良かなと想像しますが)から排莢問題、「Double Feeds」まで始まった。

 原因はすぐ分かった。下請会社Metalformのマガジンが機能の障害を引き起こしていたのである。アメリカではMetalformのマガジンは多くのピストル所有者の間で、1911系用に「信頼性が高くお買い得」な成功したコンビネーションとして通用している。しかし目の前にある品は8発のフル装填もできないし、スムーズな作動も保証されなかった。幸いなことに、あるシューター仲間にねだってテスト用に彼のShooting Star M1911マガジン(頑住吉注:検索したところチップマコーミック製らしいです)を借りることができた。

 マガジン交換後はシューティングレンジに持って行った全ての弾薬の紙箱がたやすくブレットトラップに向けて空になり、このときにはただの1回も障害はなかった。非常に控えめな弾薬であるFederal Gold Medalも、ホーナディおよびレミントンの強力なホローポイントも含めてである。重い230グレイン弾を持つ極端にハードな弾薬であるGolden Saber使用時にのみ、このピストルの繊細に調整された1400gトリガーの報いがきた。.45ACP仕様の1911系として初めてのケースではないものの、ローマンはテストにおいて極端に強い弾薬種類使用時に突然フルオートになった。強力なリコイルスプリングと、高い弾丸重量を持つ極端に強い.45口径弾薬との結びつきは、マッチ向きに軽く調整されたトリガーとは合わないのである(頑住吉注:以前アームズでWAガバメント用カスタムパーツのテストをしていたとき、あるメーカーのトリガープルを軽くするというトリガーリターンスプリングを含む三又の板バネを組むと快調なフルオートになってしまったことを思い出しました。ガバメントのトリガーメカは、トリガーを軽く調整した場合に強い衝撃が加わると他の銃よりハンマーがレットオフしやすいものであるようです)。

 この塗装が本当に金属表面を腐食から守るかという、例えば何百時間もかけるような塩水テストは、残念ながらあきらめざるを得なかった。このローマンは全てのテスト銃のうち大部分がそうであるように、大切に扱われるという条件つきで編集部に提出されたものである。少なくともこの銃は外的には使用跡から守られたまま留まった。排出された薬莢がこするエジェクションポートの後ろのフライス加工(頑住吉注:カスタムガバメントにはたいてい見られる面取り加工のことです)直上のエッジのみ、ほんのわずかに(頑住吉注:塗装がはげることによって)輝いた。内的には約400発の射撃後、例えばスライドストップ軸やリコイルスプリングガイドのような直接金属と金属がこすれる部分に小さな塗装の損傷が示された。話題に出された問題点に基いてLSAローマンについての悪口を言うのは不適切である。というのは、原則的に加工、装備、射撃成績は追加装備を施した「コンバット」M1911A1の価格に合致するものだからである。1つや2つの些細な問題ゾーンは、多くのメーカーにおいてその銃の最初の生産シリーズで同様に見られるものである。それは生じないことが望ましいが、それでもときおりは通る道である。Charlie Prommersbergerのような誇りあるライフルスミスならば、ハードな弾薬を好む人のためにトリガーをより重く調整する、あるいはサイトを修正することは朝飯前である。STIがそうこうするうちに両方の問題点を生産経過の中ですでに自分で修正しているということもありそうなことである。そして欠陥のある1911系マガジンを交換することはもっと簡単なことである。Charlie Prommersbergerによれば、サイトの修正あるいは使用目的に向けた軽く作動するトリガーの調節と全く同様に、適したマガジンに交換した場合の成績は保証されるということだ。

モデル:STI LSAローマン
価格:1500ユーロ
口径:.45ACP
装弾数:7+1発
寸法:220x36x136mm
銃身長:124mm
照準長:169mm
重量:1090g(未装填)
型:オールスチール。塗装仕上げ。トリガーストップつきアルミトリガー。高級木製グリップ。ドリフト可能なノバックサイト。


弾薬 グルーピング(mm)
Federal Hi Shok 185grs JHP 38
Remington Golden Saber 185grs JHP 78
IMI 185grs VM-SWC 86
Federal Gold Medal VM-SWC 45
WM Bullets 200grs SWC-Silvermaly 43
Sellier&Bellot 230grs VM 118
UMC 230grs VM 54
Remington Golden Saber 230grs JHP フルオート化
Fiocchi 230grs VM 41
PMC 230grs VM 91
Magtech 230grs VM-SWC 52

注:JHP=ジャケッテドホローポイント。VM=フルメタルジャケット。SWC=セミワッドカッター。射撃距離25m。銃はランサムレストに固定。命中精度テストのためにはそのつど10発のグルーピングを調査した。


 要するに、ロンスターアームズ(LSA)というメーカーがLSAローマンという特殊な塗装を施したガバメントコピー品を「2年以上前」発売し、これに目をつけたSTIが2003年12月に同社を買収し、LSAというブランド名を残しつつ自社で生産した類似の製品を最近発売したということのようです。LSA自身で販売していた時期は短いことになりますが、それでもSTIがそうした行動に出てブランド名を残しているからにはたぶん評判、ブランドイメージは良かったんでしょうね。この銃の最大の特徴である「ハイテクポリマーコーティング」は、そう言うと聞こえはいいですがこれを読む限りでは焼付塗装に近いものらしいです。ただ、塗装というイメージとは違い非常にタフなもののようです。焼付塗装に関しては日本の会社の広告サイトですが、こんなのがありました

http://natori.in-shoko.com/mem/138/ 
http://www.ohyakagaku.co.jp/yakituke.htm

 これによると焼付には塗装の皮膜を硬くするという目的の他、乾くのを待たなくてよいというメリットもあるようです。通常の工業製品ならともかく、銃の場合金属パーツを高温で熱することで強度上の問題が生じたりはしないのかがやや気になります。

 一生懸命フォローしてはいますが、サイトやトリガーの問題はともかくマガジンの不良でまともに動かないというのは人の命がかかっている実用銃としては全然些細ではない重大な問題だと思うんですが。

 さて、内容と直接関係ないですが、データの部分で「ドリフト可能」という語句が出てきました。「ワルサーP99にも問題発生か」の項目の中で、「ワルサーP99は民間用ではリアサイトが左右調節可能だが、公用は単にドリフト可能」という記述があり、どう違うのか意味不明でしたが、今になって初めて分かりました。調節可能なサイトというのは小さなドライバーなどでブレードのみ微調節できる普通のアジャスタブルサイトであり、ドリフト可能なサイトというのはノバックサイトのようにアリミゾの中でサイト全体を横にずらせるサイトを指すわけです。こうしてほんのちょっとずつ知識が増えていくわけですね(笑)。












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