Kel Tec SU-16ライフル

 「Visier」2004年8月号の「スイス銃器マガジン」ページに、アメリカ製のユニークな折りたたみ式ライフル、Kel Tec SU-16のレポートが掲載されていました。


Kel Tec SU-16ライフル

アメリカの会社であるKel-Tec CNC Industries,Inc.は折りたたみ式ライフル開発のスペシャリストであるように見える。少なくとも我々がここで皆さんに紹介するSU-16はすでに第3の折りたたみ式ライフルである。むしろうわべのユニークさが重要だった先行する両バージョンと違い、この「Sport Utility Rifle」で重要なのは独自の構造であり、詳細に観察されてしかるべきである。

 ひょっとするとあなたはまだ覚えているかもしれない。当時のIWMの1997年11月号で私がKel-Tecの最初の折りたたみ式ライフル(Sub-9ライフル)を皆さんに紹介したのを(頑住吉注:よく分かりませんが「スイス銃器マガジン」=「SWM」は当時「IWM」という名前だったということではないかと思います)。その銃はロック機構がない、ストレートブローバックのオートローダーであり、9mmパラベラム仕様で、かなり単純な構造を持っていた。バレル前部にはリング型のフロントサイトを装備した背の高いフロントサイトハウジングがあり、プラスチック製フォアグリップ、ピストルグリップが付属したレシーバー(既製品のマガジンを受け入れるようになっていた)、パイプ状ストック、プラスチック製バットプレートがあった。折りたたみメカニズムのおかげで全長743mmのライフルは不使用時には405mmにコンパクト化できた。この銃は完璧に作動したが、その奇妙な外観の下での人間工学的操作性にはいくらか問題があった。
 このライフルはシリーズ内でいくつかの改良を受け、2002年に「Sub-2000ライフル」の名でアメリカマーケットに登場した。「スイス銃器マガジン」ライターのJ.B.Woodはすでにこの銃をテストしており、その記事は2003年4月号に掲載されている。ただし変更点はむしろ副次的なものだった。変更点に該当するのは特にアッパーレシーバー、フロントサイトハウジング、ピストルグリップであり、これらにはプラスチック製パーツが組み込まれ、これによって製造コストをいくらか減らすことを可能にしていた。その上特別なロックシステムが折りたたみ時の銃に施錠することを可能にし、悪用の危険を最小化していた。だが、おおざっぱな外観と作動原理は変わっていなかった。

ガス圧作動銃としてのSU-16
 これと違って新しいモデルSU-16では完全な設計変更が行われ、実際のところ引き継がれているのは「折りたたみ式ライフル」という原理だけである。新しい設計は外観からむしろUS M1カービンを思い出させ(頑住吉注:そ、そうか?)、そのシャープなフォルムは今や人間工学的観点からも充分なものである。だが特に大きな違いはライフル用としてはむしろ弱い9mmパラベラムというピストル弾薬をライフル弾薬である.223レミントンに変えたことである。これは一方では依然として非常にハンディであるこのライフルの使用領域をいくらか広げ、しかし一方ではより強度があり、コストの高い閉鎖システムを前提とすることにもなった。SU-16(「SU」とは「Sport Utility」を意味し、「16」はM16の閉鎖システムが引き継がれていることを示唆している)はそれゆえにロック機構のあるガス圧作動銃であり、システムの連発作動のためのエネルギーは、バレルのマズルから22cmの位置に穴を開け、ガスをここから後方に導いて得ている。そのためのパイプはバレルの上に平行して存在する。この中にはエネルギーをボルトキャリアに伝達するピストンおよびロッドがある。ボルトキャリアの下部、バレル方向には閉鎖のためのラグがあり、発射時にはチャンバー後方のリセスとかみ合ってロックされる。これ以後発射時の全経過とシステムの機能はM-16と同じである(頑住吉注:M16はリュングマンシステム、SU-16はピストンを持つ通常のガスオペレーションと重大な違いがあり、この説明は少々大ざっぱすぎるようです。幸い公式サイトに作動経過を示した断面図があるのでそちらを参照してください)。

大部分がザイテル
 Sub-9はまだ大部分が金属製であったが、メーカーは金属の比率を製品ごとに毎回減らしてきた。この結果SU-16では内部でボルトキャリアが前後動するアッパーレシーバーが完全にプラスチック(ザイテル)となっている。マガジンの入るスペースの内部には金属の内張りは全くなく、マガジンもプラスチック製なのでここではプラスチック同士が滑り接触することになる。アッパー、ロアレシーバーの支点も同様にプラスチック同士が滑り接触する形で、回転軸となる保持ネジだけがスチール製である。アッパーレシーバーは完全にプラスチック製だが、バレルはアッパーレシーバーと強固に結合された金属製ソケットに差し込まれている。ロアレシーバー内部のハンマーおよびいくつかの他の小パーツは同様にスチール製である。
 列挙はさらに続けることができる。ストックはザイテル製、同様にトリガーおよびトリガーガード、ピカティニーレールおよびピープサイトもザイテル製である。フロントサイトハウジングもザイテル、折りたたみ式バイポッドとしても機能するフォアグリップも当然ザイテルであり、バイポッドのロック機構もザイテルである。この素材の耐熱性がどのくらいかについては知らないが、私はこの銃を直射日光の下に停めた自動車のフロントグラスの下には置かない(こうした観点からの警告はマニュアルには書かれていないので多分心配し過ぎだと思うが)。

分解
 このライフルの折りたたみはまずマガジンを抜くこと、そしてチャンバーの弾薬を取り除くことから行われる(マガジンがあると完全に折りたためない)。次にセーフティをかけた状態でアッパーレシーバー後端にあるホールドピンを押し出す。これを最も簡単に行うには弾薬の助けを借りるとよい。このピンはなくしやすいので注意しなくてはならない。このため元どおりアッパーレシーバーの穴に差し込む。ピンはそこでスチールのスプリングによって確実に保持される。バットプレートの下部がバレルにかぶせられ(頑住吉注:バットプレート下端が二又になっており、プラスチックの弾性を利用してバレルをパチンとはめ込んで保持します。公式の写真も参照してください)、これで折りたたみは終了である。ストック内には2個の予備マガジンがセットできるが、これも折りたたみ時には紛失しないよう確実に保持される。ハンマーはコックしていてもいなくても程度の差はあれロアレシーバー内、折りたたみ軸の近くから突出する。
 ここからさらに分解するにはフォアグリップ(バイポッド)をいくらか開く必要がある。これによりガスパイプをつかみ、そのバヨネット式結合を解除することができる。するとガスパイプを、ピストン、ロッド、リコイルスプリング、ボルトキャリアと一緒に後方に押し動かすことができる。ボルトの最後部位置でコッキングハンドルはアッパーレーシバーから工具なしに抜ける。次にガスパイプとともにこれらを下に傾け、アッパーレシーバーから取り除ける。これ以上の分解が必要になるのはまれであり、慎重に行うべきである。なぜならリコイルスプリングがバスパイプ内部で圧縮された状態だからである。アッパー、ロアレシーバーにある約1ダースのネジには触れないのが得策である。

実射
 このライフルの命中精度は、我がStGW90と比較してもよい(すべき)ものには該当しない。結局のところSU-16の価格はその半分以下なのだし、全く違う目的に役立つものなのである。オリジナルサイトを使った場合の100mから3発の命中精度は、49(PMC)〜129mm(Hirtenberger)の間となった。トリガープルは2.7kgもあって快適でなく、理解しがたい。安全性にはいくらか寄与しているが、鋳造パーツは過度の負担をかけるとそれに確実には耐えない。サイトも当然あまりよくない命中精度結果に関係している。(フロントサイトで)上下左右に調節可能なのは使用目的に合っているが、リアサイトはドットサイト、スコープ使用時には簡単に取り外せる。しかしプラスチック製レールなのでこの場合も競技に使用するような命中精度にはなりえない。SU-16はときどきインフォーマルな射撃を行うプリンキングガンとしても第一に使うべき銃ではない。この銃は例えばランドローバーや飛行機に積むサバイバルキットとしても使える。命中精度がよくないと言っても、100mからビアコースターに必ず命中するだけの精度はあるのである。

テクニカルデータ
モデル:Kel-Tec SU-16ライフル
銃器タイプ:折りたたみ式。回転式ロッキングラグを持つオートローダー
メーカー:Kel-Tec CNC Industries,Inc.(アメリカ、フロリダ州Cocoa)
口径:.223レミントン
銃身長:480mm
サイト:ピープ型リアサイト。調節可能なリング型フロントサイト。

照準長:465〜580mm(頑住吉注:リアサイトはピカティニーレールに取り付りつけるので前後に移動可能)
マガジン装弾数:10発
セーフティ:トリガーに作用する押しボタン式
伸長時全長:950mm
折りたたみ時全長:660mm
伸長時全高:140mm
折りたたみ時全高:170mm
全幅:61mm
重量:2.410kg(未装填時)
素材:スチール、アルミニウム、プラスチック
価格:1265スイスフラン

Kel Tec SU-16ライフルから射撃した.223レミントンの成績

弾薬 弾頭重量(グレイン) 弾丸タイプ 初速(m/s) 初活力(ジュール)
RWS Target 55 FMJ BTHP 989 1743
Hirtenberger 55 Nosler 982 1719
GP90 63 FMJ BT 900 1654
Winchester 55 FMJ 877 1371
PMC 55 FMJ BT 858 1312

 公式サイトにおける紹介ページはここです。

http://www.kel-tec.com/su-16_rifle.htm
 
 ホームに戻ると「Sub-2000ライフル」のページも見られ、これも面白い構造なのでよかったら見てください。

 期待したほどユニークな特徴を持つものではありませんでしたが、割とよく考えられた銃ではないかと思います。非常にコンパクトで、シンプルで、その割には操作性も悪くなさそうです。公式の断面図イラストを見ると、非常にうまくコンパクトな中にメカを収めたデザインであるのが分かると思います。私は長物のメカにあまり詳しくないので断言できないんですが、オペレーションのためのピストンロッドにリコイルスプリングを巻いて省スペースを図るアイデアは珍しいんではないでしょうか。
 命中精度があまりよくないのはプラスチックを極端に多用した結果としてやむを得ないことでしょうし、サバイバルガンとして使うならこれで充分と思われます。何も書かれていないということは信頼性にも大きな問題はなかったんでしょう。

 ただ、これほどプラスチックを多用し、サイト、バイポッドのロックパーツ、トリガーなど本来精度、強度、剛性を要求されるパーツまでプラスチックにしているというのは明らかに妥協であり、コストダウンという大きなメリットもある反面長期間の酷使には耐えられないでしょう。また、これを読む限りフォアグリップをバイポッドとして開くと完全に露出するガスパイプはロック等がなく、バヨネット結合されているだけのようで、なんだか不安な感じです。
 プラスチックの多用は通常主に「コストダウン」「軽量化」というメリットをもたらしますが、この銃では後者のメリットが充分に現れていません。未装填時約2.4kgと言えば軍用アサルトライフルのうち最軽量なものと大差がなく、プラスチックパーツを列挙した部分を読むと、なぜほとんどプラスチックなのにこんなに重いのかいぶかしく思うほどです。

 折りたたみ機構自体は何ということもなく、要するにM16をテイクダウンした状態とさほど変わりません。この筆者は指摘していませんが、サバイバルガンとして使う場合、折りたたんだ収納状態で長期間トランクにしまって置いたり、あるいは不時着した飛行機からこれをひっつかんで苛酷な自然環境の中に脱出するといったことが想定されるわけで、作動部分に異物が入り放題というのは個人的にちょっとどうかと思います。袋などに入れておけば問題ないでしょうが、それならM16系ショートカービンを2分割して袋に収納した場合に比べ、さほど大きなメリットがないような気もします。それにこの銃をたたんだ状態は何かバランスと言うか収まりが悪い印象です。

 とは言うものの、個人的にはこの変な銃、結構気に入りました。








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