キンバー製品スイスに初登場 その2

 前回に続き「Visier」2004年5月号の「スイス銃器マガジン」ページに掲載されたキンバー製品のレポート内容を紹介します。


キンバー ウルトラCDPUTM

「コンシールドキャリーを可能にするため」、この小さいキンバー ウルトラCDPUTMの主要な使用目的は短くそう言いかえることができる。この銃はカスタムショップ製であり、アルミフレーム、トリチウムサイトと並んで、ライバルたちの中でも際立たせるさらなる特徴を持つ。

 我々は先月号のこのページで諸君にキンバー タクティカルUTMを紹介した。この銃は完全にセルフディフェンスに使用するために作られたもので、綿密な加工と狭い公差によって、だがそれだけではなくターゲットシューティングによっても良い印象を残すことができた。
 このキンバー ウルトラCDPUTMは、ほぼ先月紹介したタクティカルのより小さい姉妹機種であると言うことができる。両銃はサイズの違いを別にすれば多くの共通点を示している。だが、異なる点として挙げられるのは、例えばアルミニウム製フレーム、スチール製スライドの色調である(タクティカルは下がグレーの「anodisiert」、上がマットブラックの酸化処理、一方ウルトラは下がマットブラックの「anodisiert」、上がマットステンレス)。両ピストルは同じサイト、トリガーストップが組み込まれたトリガー、ビーバーテイルつきのグリップセーフティなどを持っている。ディテールについては後にまた触れる。
 ウルトラは「コンシールドキャリー」(頑住吉注:ここでは英語が使われています)に関し妥協がない。すなわち隠して持ち運ぶために調整されているということである。外形的な寸法上、このピストルはエレガントなハンドバッグ同様ベルトホルスターにも良好に適合する。未装填重量は717gなので、携帯時の負担が特に小さい。しかしその重量は、この小さな銃でたとえユーザーの男性または女性が特に強装の.45ACPを撃ってさえ、手からすっぽ抜けないのに充分な重さではある。角やエッジは携帯による継続的な強い体とのコンタクトによっても「穴が掘られたり」すりむいたりする可能性がない程度に残らず丸く磨き落とされている。

最小モデル
 キンバーピストルはモジュールという形での提供はされていないが、多数の単体を買った人は銃を好みに応じて組み変えることができ、製造上これはすでに使用者にとってある種のユニットシステムとして機能する。キンバーピストルには3種の銃身長がある。すなわち、3、4、5インチだ。当然これに対応する長さのスライド(ステンレススチール、またはコンベンショナルなスチール、そして異なる手法のブルーイング)があり、これに加え4つの異なる高さのフレームがある。これによって単に全高が変わるだけでなく、マガジンキャパシティも変わる。ステンレススチール、コンベンショナルなスチールというスチールの種類に加えてアルミニウム製もあり、さらにダブルカアラムのプラスチックフレームが完全なファミリーとして存在する。こんなわけでコンビネーション可能性は多い。大部分のモデルは.45ACP仕様で提供されるが、社のパンフレットには4種の40S&W仕様、2種の.38スーパー仕様、4種の.22LR仕様が掲載され、これに加えさらに.22LR仕様のコンバージョンキットが4種ある。これはバレル、スライド、マガジンからなり、これによりわずかな操作で大口径ピストルを小口径のトレーニングまたはプリンキングピストルに組み変える。こうした方法で、さまざまなモデルバリエーションは合わせて50以上になる。ただし、これでも全てのコンビネーション可能性は尽くされていない(頑住吉注:そりゃ例えば最も長いスライドと最も短いフレームの組み合わせなどはあまり需要がないはずですからね)。
 構成上ウルトラはそれぞれの最小可能性の「モジュール」を利用したものであり、すなわち3インチバレルと、高さ4.75インチのフレームである。そういうわけで結果的にこのピストルは非常にコンパクトな寸法になっている。全長173mm、全高はたった129mm、全幅は両セーフティレバー部で35mmである。このようなミニ-フォーマットにもかかわらず、マガジンは7発の弾薬を保持する。これは「本来のコルト」のガバメント型と等しい多さである。これを可能にしているのは、フラットに作られたスチール薄板製フォーロワである。これは例えばデベルでずっと以前から知られている。
 ちなみにタイプ名称の中の「ウルトラ」は、ピストルの大きさに適用されるもので、それぞれの最小可能性バリエーションを指している。つまり同じ装備を持つものにはこの他に「コンパクトCDPUTM」、「プロ CDPUTM」そして「カスタム CDPUTM」がある。最後のモデルがすなわち5インチバレルと高さ5.25インチのフレームを持つ最大モデルである。ここまでは皆分かったかな?
 さてそれではタイプ名称の中の「CDP」に該当するのは何か。これは「Custom Defense Package」を表し、セルフディフェンスの必要に基づいて設計された特別な付属品パッケージである。この特徴に含まれるのは、例えばグリップフレーム前面とトリガーガード下面の30-lpiチェッカリングである。これは本当にきわめて繊細でシャープに刻まれ、銃はシューターの手の中でほとんど張りつくようである。この印象は射撃を通してのものだが、使用経験からはなお別の印象も持つだろう。この銃をタイトなホルスターから抜くには非常に苦労する。細かいチェッカリングの歯が柔らかいレザーに食い込み、ホックで止めたようになるからである。
 次に、CDPの装備にはアルミニウム製のワイドなスケルトントリガーが含まれる。工場渡しでかなり正確に2kgのトリガープルで落ちる。これは精密射撃においては人目を引く価値はないが、他方セルフディフェンスガンとしてはまさに正しいものである。これより軽いとストレスのかかった状況下で突然1発が「ひとりでに」発射されてしまう危険をはらみ、これより重いと命中精度上不利になる。トリガーが落ちないという失敗がなく、かつまた素早い連射を可能にするよう、発射後のトリガーストロークはトリガーストップによって細かく調節できる。
 トリガーシステムの領域には、トリガーを軽くし、途中にひっかかりがないようにするため、さらに1つのキンバーによる特殊な配慮がある。オートマチックファイアリングピンセーフティを装備している1911系システムのうち大部分は、トリガーの動きによって同時に「伝動テコ」を動かし、これにより間接的にセーフティボルトを少し持ち上げる。このため、トリガープルの一部はこのセーフティメカニズムに起因している。この点でキンバーピストルは異なる。
 キンバーでは、グリップセーフティが作動するやいなやボルトに充分な圧力が加えられる。そしてこれは常に、ピストルが手によって固く握られた後に行われる。すなわちトリガーに追加の重さは加わらないことになる。これにより、一般に100gないしそれ以上トリガープルが削減できる。
 このしくみはキンバーによって開発されたものではない。コルトにすでに一度そういう製品が存在したことがある。しかしそれはずっと昔のことだ。たぶんコルトがこの原理を放棄した理由は、2つのセーフティ機構を同じ部品を通じて働かせなければならないので(これはまあ「念には念を入れよ」ということだったが)、少なくとも銃が地面に衝突した時にはより多い意味を持たないからだろう。しかしこの点に関し、アメリカ人たちは彼らのコルトやそのクローンを「コンディション1」(頑住吉注:コックアンドロック)で持ち歩くことを好む。すなわちコックして(当然バレルには1発の弾薬がある)、セーフティをかけた状態である。このような射撃準備状態で、何らかの1部品が破損したとしても、少なくともファイアリングピンは確実に引き止められている。これはすなわち、セーフティボルトが動かなくなるということだからだ。しかし、これはその領域で破損が起こったら、ひとりでに1発発射されるかわりに、むしろその銃が使用不能になるということである。これは緊急事態に際して必ずしも消費者フレンドリーというわけではなく、生命の危険を生じる恐れがまったくないとは言えない。少なくとも私は個人的見解として、(グリップセーフティとファイアリングピンセーフティの)片方を、あるいは両方ならなおさら、機能停止にしようとする人がいたら忠告を与えて思いとどまらせるだろう。それをする人は、100ないし200g軽いトリガーを得ることはできるが、その一方でそのピストルが必然的に潜在的な「自動発火」の危険をはらむという代償を払うことになるからである。

 射撃によって今回もまたこのようにちっぽけな銃にひそむ命中精度潜在能力が示された。25mからの依託射撃で、最もタイトな5発のグルーピングは実に39mm(レミントン185グレインJHP)と計測され、Magtechの200グレインSWC鉛弾がこれに続き58mmとなった。これで不足という人はいるだろうか?

キンバー ウルトラCDPUTM
銃器タイプ:バレルにブローニング方式のロッキングラグを持つSAセルフローディングピストル
メーカー:キンバーMfg.,Inc.
口径:.45ACP
銃身長:80mm
サイト:固定3ドットサイト
マガジンキャパシティ:7発
安全装置:トリガーメカニズムに作用するアンビのレバーセーフティ。グリップセーフティ。オートマチックファイアリングピンセーフティ。
全長H173mm
全高:129mm
全幅:35mm
重量(未装填):717g
素材:ステンレススチール、アルミニウム
グリップパネル:木製
装備:ビーバーテイル、ロングのセーフティレバー、ロングトリガー、トリガーストップ、グリップフレームにチェッカリング。
価格:2282CHF(プラスチック製運搬ボックス込み)


キンバーウルトラによる.45ACP弾薬の成績

弾薬 弾頭重量(グレイン/g) 弾頭のタイプ 初速(m/s) 初活力(ジュール)
レミントン 185/12.0 JHP 275 453
Magtech 200/12.9 LSWC 254 418
フェデラル 230/14.9 MC 234 408
Samson 230/14.9 FMJ 231 398
Geco 231/15.1 FMJ 216 349
レミントン 185/12.0 MCWC 214 275

 続いて6月号に掲載された内容です。


キンバーコンパクトステンレスUTM
とキンバーコンパクトCDPUTM 口径.45ACP

一見グリップ素材の違いだけが目立つ2挺のコンシールドキャリー用大口径SAピストル。近づいて観察して初めて分かるさらなる特徴は数多い。

 これら「コンパクト」シリーズのキンバーピストルはサイズ上、我々が諸君に4月号ですでに紹介した「タクティカル」と、先月紹介した「ウルトラ」のちょうど中間に位置する。銃身長は4インチ(102mm)と「タクティカル」と同じであり、それゆえにスライドも同寸である。一方フレームでは「コンパクト」はより小さい「ウルトラ」と同じである。
 コルトモデルで言うなら、キンバーコンパクトはコマンダーのスライドとオフィサーズのフレームのコンビネーションということになる。周知のようにコマンダーもオフィサーズも新登場した機種ではないし、またこのコンビネーションも新しくはない。コルト自身がそのようなモデルをかつて提供したことがある。ただし私の知る限りいまだかつてスイスに輸入されたことはない。
 このような「ブレンドモデル」の背景にあるセオリーは以下のようなものである。人はバレルおよびスライドの長さといった外形寸法でも、重量やマガジンキャパシティでも最良のものを引き出そうと試みる。初めはいつも単に不格好に切り取るだけであり、コルトガバメントも最初の局面ではバレルを短くした(その結果コマンダーが生まれた)。次の試みとして、オフィサーズが生まれる長さまでさらに前部を、そしてグリップフレームを切り詰めた。最終的なモデルのディフェンダーはさらに前と下を切り詰め、これにより最大限のコンパクトさに達した。そのような極小モデルは、ガバメントのようなマガジンキャパシティも、重量や銃身長も持たず、そしてそのために初心者が使いこなすのに非常に苦労するものとなった。コンシールドキャリーにはよく適するが、セルフディフェンスの実際のケースにおいて射撃するのは誰にでもできることではない。
 コマンダーはこうした見地からはよりよい選択である。しかしまだ最善ではない。短縮されたバレルがグリップフレームと不釣り合いに見える。だが、コマンダーの上部とオフィサーズの下部を組み合わせれば、緊急時に必要なグリップフレームの大きさと、長時間携帯時の大きすぎない負担を兼ね備えた銃を得ることになる。
 このような「理想サイズ」は、マガジンキャパシティ(7発)でも照準長でもプルーフされている。しかし他方命中精度には悪影響があり、表でも明白なようにマズルエネルギーも低下する。このプロポーションがいいとするさらなる根拠は携帯快適性と携帯方法である。キンバーコンパクトは、使用者が単にジャケットのポケットやハンドバックに突っ込んで、そしてその存在を忘れられるようなポケットピストルそのものではなく、最低でも小さなホルスターを必要とする。過度に着膨れしているのでもない限り、特徴的ないわゆる「インサイドパンツホルスター」が使われる。これは、ズボンまたはベルトに固定されるが、銃は外部ではなく携帯者の体とズボンの間に存在する形になる。このような携帯方法では、いくらか長いバレルは長いグリップフレームほど邪魔にならない。バレルは体と平行であり、これと違ってグリップフレームは程度の差はあれ突き出るからである。

異なる型
 キンバーコンパクトステンレスUTMは両「コンパクト」ピストルのうち、より単純なバージョンである。トリガー(アルミニウム)およびグリップパネル(ゴム)を除き、実際上あらゆる部分にステンレススチールのみが使われている。固定サイトはブルーイングされており、リアサイトはおだやかに丸められている。これにより引き抜く際に衣服の繊維が付着したり、ひっかかったりする可能性が最小にされている。フロントサイトはアリミゾ結合されているが、必要な場合は左右に調整できる。バレルは比較的重いブルバレルタイプで、ピストルのフロントヘビー傾向を高めている。このシステムはブッシングなしで済ませている。その命中精度は完全にシャープなトリガープル(約2kg)のおかげと見ることができる。レミントン185グレインJHPで、5発のグルーピングは43mmと計測された。Samsonのハードボールでは55mmだった(25m、シッティング、依託射撃)。我々はワッドカッター弾薬を試しに撃ったが、障害が発生し、2倍に散るという結果になった。
 キンバーコンパクトCDPUTMはカスタムショップ製だ。「CDP」(Custom Defense Package)という名称についてはすでに述べた。このパッケージは主にアルミニウム製フレーム(7075-T7からの削りだし)にあり、トリガーガードの前部と下部にグリッピングを向上するチェッカリングが見られる。軽量なトリガー、アンビのセーフティレバー、丸められた角、スリムなローズウッド製グリップパネル、サイトのトリニトロン発光インサートはこれらのモデルの特徴となっている。ただしランヤードリングつきのメインスプリングハウジングは違い、客の特別の希望によるものだ。CDPはステンレスより170g軽く、542スイスフラン高い。私にはどちらが好ましいとは判断できない。

キンバーコンパクトステンレスUTMとコンパクトCDPUTM
(頑住吉注:「ウルトラ」と共通の内容は省略)
銃身長:102mm
サイト:固定。CDPはトリチウム3ドットつき
マガジンキャパシティ:7発
セーフティ:トリガーメカニズムに作用するレバーセーフティ(CDPはアンビ)。グリップセーフティ。オートマチックファイアリングピンセーフティ。
全長:203mm
全高:129mm
重量(未装填):975g(CDPは805g)
素材:ステンレススチール(CDPのフレームはアルミニウム)
グリップパネル:ゴム(CDPは木製)
装備:ビーバーテイル。ロングのセーフティレバー。ロングトリガー。トリガーストップ。
価格:1740CHF(運搬用プラスチックボックス込み。CDPは2282CHF)

キンバーコンパクトによる.45ACP弾薬の成績

弾薬 弾頭重量(グレイン/g) 弾頭のタイプ 初速(m/s) 初活力(ジュール)
レミントン 185/12.0 JHP 299 536
Magtech 200/12.9 LSWC 275 490
Samson 230/14.9 FMJ 254 480
Geco 231/15.1 FMJ 238 424
レミントン 185/12.0 MCWC 232 323

http://www.kimberamerica.com/cdp.php

ここが「ウルトラCDPU」と「コンパクトCDPU」の公式紹介ページです。

http://www.kimberamerica.com/compact.php

こちらは「コンパクトステンレスU」の公式紹介ページです。

 まず「ウルトラ」ですが、ちょっと変わっているのはリコイルスプリングです。この部分はスライドを引いたり分解しないと見えないので公式ページの画像では分かりません。
 「ウルトラ」のスライドは短く、当然軽いため強いスプリングが必要になります。こういう場合コンパクトサイズのガバメントの大先輩であるデトニクスも含め、多くの機種はリコイルスプリングガイドにまず細いスプリングを巻き、その外に巻き方向の逆な太いスプリングを巻く、という方法を取っています。ここで紹介した機種で言うと、チェコ製の「アルファ ディフェンダー」、アルゼンチン製の「ミニファイアストーム」がこの方法を取っています。いずれもコンパクトで強力な弾薬を使用する機種です。多くのメーカーがずいぶん昔から使っている以上事実上ほぼ問題ないんでしょうが、2本のスプリングが干渉し合いそうで個人的にはやや気持ち悪い方法だなあという気がします。全く違う方法論ですが、2本のワイヤーをより合わせたものをコイルにするという方法もあり、SIGザウエルなどが使っています。キンバー「ウルトラ」はこのいずれとも違う方法を取っています。

 こんな感じで、簡単に言うとロングリコイルスプリングガイドを使った普通のリコイルスプリングシステムのプラグに、さらに太いスプリングを巻いたような形ですね。複雑化してコストが上がりますが、スプリング同士が干渉しあうことはなく、デトニクスなどの一般的な方法より伸縮がスムーズだろうと思われます。ちなみにスプリングの後部の受けは本当にこんな感じにごく薄い板状になっていて、少しでもスプリングを長く取ろうとしています。

 「ウルトラ」のレポートで「この小さな銃でたとえユーザーの男性または女性が特に強装の.45ACPを撃ってさえ、手からすっぽ抜けないのに充分な重さではある。」と書いておいて、「コンパクト」のレポートでは「極小モデルは(略)初心者が使いこなすのに非常に苦労するものとなった。(略)セルフディフェンスの実際のケースにおいて射撃するのは誰にでもできることではない。」と書いているのは矛盾のように思えましたが、まあ厳密に考えれば完全に矛盾しているとは言えませんね。ただ「ウルトラ」のレポートだけ読んだ人は誰でも(女性でも)使いこなせるような印象を持つのではないでしょうか(ちなみに「ウルトラ」のスライドは「ディフェンダー」サイズです)。
 それはともかく、これも側面写真では分からないことですが、両「CDP」のローズウッドグリップは、「コンパクトステンレス」のラバーグリップよりずっと薄くなっています。これは言うまでもなくキャリー性を高めるためですが、グリップが薄い、アルミフレームで軽い、という特徴はともにリコイルを抑えにくくします。これをカバーするためにフレームにチェッカリングを刻んでいるという意味もあり、グリップが厚くステンレスフレームで重い「コンパクトステンレス」にはチェッカリングがありません。

 前回紹介した「タクティカル」も含め、キンバー製品の25mにおけるグルーピングは50mmか弾を選べばそれ以下にもなるという結果で、非常に優秀と言えそうです。ちなみにここで紹介した機種は全てブッシングレスで、ある意味命中精度が高い代償として分解しにくくなっています。

 さて、私が最も注目したのはキンバー独特のオートマチックファイアリングピンブロックの件で、「ウルトラ」のレポートにかなり長い解説らしきものがあります。まあこれは私の訳が悪い可能性が大いにありますけど、個々の文は意味が分かりますが、全体として一体何が言いたいのかさっぱり分かりません。つまり、問題の核心である「このキンバー独特のシステムの短所はどこか(トリガープルが悪くならないという長所は明らかなので)。そして筆者としてはこれを通常システムより優れていると考えるか劣っていると考えるか。」という点が明確でなく、それどころかこれについて語っているのはどこまでなのかもよく分からない、ということです。

 しかたがないのでこの点に関しては独自に考えてみましょう。この筆者はコルトがこれを放棄した理由を「銃が地面に衝突した時にはより多い意味を持たないからだろう。」としていますが、私はこれは違うような気がします。銃口を上にして落とした場合、衝突直後に例えば極端に軽くチューンしたトリガーが慣性で後退してレットオフしてしまう、という可能性が考えられますが、これはグリップセーフティで防がれており、確かにこの場合はオートマチックファイアリングピンブロックがあってもなくてもさほど大きな差はないでしょう。しかし、銃口を下にして落とした場合、ハンマーは起きたままなのに、ファイアリングピンのみが慣性で前進して発火してしまう、という可能性があり、これはグリップセーフティでは防げず、オートマチックファイアリングピンブロックがあって初めて防げる事故です。また、銃口を上にして落とし、起きたハンマーが地面に激突することによってシアとのかみ合い部分が欠け、レットオフしたような場合もグリップセーフティでは防げず、オートマチックファイアリングピンブロックがあれば発火の可能性は著しく低下するはずです。このように、キンバーシステムのオートマチックファイアリングピンブロックには充分に存在意義はあると思われます。

 それではこのシステムには問題点はないんでしょうか。私はあると思います。一般論から話しますが、ある全体システムの中に、完璧に近い安全性を求めるために2系統の安全システムを設ける場合(これは銃に限らず、例えば大型旅客機の操縦システムが2系統に分かれているのもこれに当たります)、2つの系統は原則として完全に分離するべきであって、例え一部でも共用部分を設けることは望ましくありません。理由は言うまでもなく、もしその共用部分に問題が生じたらせっかく2系統に分けた安全システムが同時にダウンしてしまう可能性が高くなるからです。具体的には例えばもしパーツ間に砂粒などの異物が挟まってグリップセーフティが握りこまれた状態でロックされてしまったら(これはそんなに極端に非現実的な想定ではないと思われます)、キンバーシステムのグリップセーフティとオートマチックファイアリングピンブロックという2つの安全システムは同時にダウンしてしまいます。一方コルトなど通常システムならこれでもオートマチックファイアリングピンブロックは生き残ることになります。

 こんなわけで、私は一見安全性は高くトリガープルに悪影響がない理想的なシステムとも思える(と言うか深く考える前は私自身そう思った)キンバーシステムにはやや傷があるのではないか、またこの傷は小さいように見えて安全システムというものの根本原則に関わる性質の傷なのではないかと思えるんです。何度も言うことですが「いいものは真似される」というのが私の基本的な考えです。コルトが放棄して、キンバーが採用したくらいですからたぶん他メーカーも使おうと思えば使えるはずです。そしてこのシステムにはきわめて大きなメリットが明確に存在します。それでもキンバー以外のメーカーは(1社もかどうかは知りませんが)採用していないわけです。これはやはりちょっと問題ありだからなのではないでしょうか。もちろん海兵隊のようにキンバーシステムのオートマチックファイアリングピンブロックすら要らないというプロ集団もいるわけですし、極端に事故が多かったわけではないシリーズ70までのガバメントより安全性が高いのは確かなので、メリットと両天秤にかければこれでいいのだという選択もありうるとは思いますが。





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