中国の電子戦機の実力は

 コラムで紹介しましたが、中国は殲-10を改造したEJ-10を配備し、「その性能はアメリカ最新の電子戦機EA-18Gに相当する」と主張しています。それは事実なんでしょうか。実は今回紹介するページは6月発表と少し古いもので、当時優先順位が低いと判断してざっとしか読まなかったものですが、この問題に関連する記述があったのを思い出したので改めて読み直して紹介します。

http://mil.eastday.com/m/20120608/u1a6611378.html


アメリカのEA18Gは解放軍の短所を際立たせる 台湾、大陸の電子戦力はアメリカより20年分劣る、とする

(頑住吉注:原ページのここにある1枚目の画像のキャプションです。「EA-18GがF-22を撃墜した事実は人々に空中における制電子権の重要性を知らせる」 「制電子権」というのは言うまでもないでしょうが「制空権」、「制海権」になぞらえた造語です。 続いて2枚目、「イリューシン-76をプラットフォームとする空警-2000の装備数は限られ、これは何故何年も前から中国が熱心にイリューシン-76を導入しているかの原因でもある。」。)

東方ネットの記者黄駿の6月8日の報道:日本の共同通信社の報道によれば、駐日アメリカ海軍は3月、メディアに向けて神奈川県厚木基地に配備される最も先進的な電子戦機EA-18Gを見せた。EA-18Gは世界で最も先進的な電子戦機で、100%いかなる電子妨害、制圧任務も遂行することができる。この機に搭載されたフェイズドアレイレーダーは敵サイドの電子設備を破壊でき、電子機器によって偵察、調査することも、敵機に対し電子妨害を実施することもできる。

さらに重要なのは、アメリカ軍に2009年にデビューした1機のこの戦闘機の機体に、鮮やかに1機のF-22の図案がマーキングされていることだ。これはこの機がかつて、目下世界で最も先進的な第4世代戦闘機であるF-22を撃墜したことがあることを表している。このため、EA-18Gは「王の中の王」と呼ぶことができる。

現在、グアム島などアメリカ軍アジア太平洋の島嶼の配備重点地域および海上を巡航する空母はいずれもEA-18Gの拠点となる可能性がある。最も前方への配備、海上移動プラットフォームに加え、EA-18Gの「ホーネット」から継承された1,000kmの作戦半径、さらに機載の各種電子戦システムの電子作戦範囲を考慮すれば、アジア大陸の近海レーダーと電子設備はことごとくEA-18Gの脅威下にあることになる。

アメリカ軍の電子戦力のアジア太平洋への接近は直接解放軍を目標にしている。ある台湾の専門家は、電子戦を実施するハードウェア方面において、解放軍とアメリカ軍の隔たりは決して大きくないが、全体的素質に関して言えば、隔たりは20年にも及び、甚だしきに至ってはもっと大きい、とする。問題は、いくつかの中国の独自研究開発による電子作戦設備がなお部隊に全面装備されていないことにある。

戦術レベル

まず、中国空軍の持つ早期警戒機の数量が不足である。現在4機の空警-2000と5機の空警-200しかない。重点地区(海彊および辺彊)の情報と早期警戒指揮機に対する需要は極めて大きいため、数量上明らかに不充分である。システム作戦のカギとなる重要なポイントとして、空中早期警戒指揮機はその他の作戦機の作戦機能をマッチングし、発揮させる倍増器である。

次に、運-8系列の電子偵察機、電子妨害機、合成開口レーダー戦場監視機の生産、装備速度が遅すぎる。運-8の量産前、飛豹あるいは旧式化した殲-7電子戦機だけに頼って防空制圧作戦を実施し、「ソフト妨害」と「ハード殺傷」の方式をもって電子戦の対抗を行った。世界の強国と比較すると、いくつかの領域では中国の電子戦建設は長足の進歩を成し遂げているが、全体的にアメリカと比べれば、中国の隔たりは依然2、30年ある。

技術が他人に及ばない以上、止むを得ず戦術方面で体と頭を働かせる。

電子対抗(対制圧と対対制圧)方面において、少なからぬ人々は中国の電子工業レベルが低く、電子対抗能力はまだ台湾に及ばないかもしれないと考えている。だが中国の電子戦能力は独立して自主的に発展したフルセットのシステムであり、相手の状況に焦点を合わせて改良、グレードアップすることができる。台湾は全てをアメリカから購入しており、ひとたび問題が発生したら、全軍壊滅の可能性がある。このため解放軍の電子対抗能力はなおアメリカに及ばないが、将来の発展の余地は極めて大きいのである。

解放軍が発展させるフィルター妨害技術とは、信号を増強して自分が敵をロックオンする距離を伸ばす、あるいは信号を抑えて敵が自分をロックオンする距離を短縮するものである。これはとても有効な方法だが、よく人に軽視される。信号増強設備(感応増強機)は自分のロックオン距離と信号解析度を50%増加し、一方信号抑圧(遠隔感応弱化機)は、敵のロックオン距離と信号解析度を35%減少する。

電子偵察能力

中国は1980年代から正式に電子偵察システムの研究開発を開始した。初の製品はKZ-800電子偵察機であり、しかもこのタイプで対外的に輸出された。

KZ-800はコンピュータ制御を採用した全自動化電子偵察システムであり、自動捜索、キャッチ、測量分析、表示、キャッチした信号の記録ができる。この他レーダーの類型、性能、作動状況の識別、位置決定もできる。だが大型運輸プラットフォームが欠乏していたため、轟-6やツポレフ-154などの比較的遅れた搭載機しか選択できなかった。今世紀に入って新世代の運-8機の使用が開始されたが、性能はアメリカのRC-135に比べワンランク劣っている。新世代のRC-135の機能する高度、滞空時間、使用範囲などはいずれも我が軍の輸送機よりずっと優れている(頑住吉注: http://bbs.tiexue.net/post_2739445_1.html 模型ですが、最初の2枚の画像がこの機の輸出型です)。

同時に解放軍は電子支援偵察システムの研究開発も開始している。これらのシステムはすでに空警-200と空警-2000早期警戒機(運-8改装)に配備され、アメリカのEP-3、RC-135電子偵察機に相当する。だが数量は比較的少なく、しかも敵サイドに深く入って偵察を行うことはできない。そこで特別にKZ-900型機載戦術偵察吊り下げポッドシステムが研究開発された。このシステムは電子偵察、地上基地、資料チェーンおよび後方勤務維持修繕システムを含み(頑住吉注:システムには機に搭載される設備だけでなく地上基地の設備やメンテナンス設備なども含まれる、ということでしょうね)、周波数はKZ-800より大きな範囲をカバーする。異なる類型の感知計測機の信号をキャッチでき、敵サイドの感知計測機の戦術性能(例えば作動周波数、発射出力、変調方式、パルスの幅、重複率、アンテナの形式、波速の幅など)が分かり、もって電子妨害機が妨害を行いやすいよう誘導する。

戦時において、KZ-900吊り下げポッドシステムは目標空域内の感知計測機の信号を捜索でき、しかも資料チェーンでキャッチして得た情報を即時に基地に伝達し、戦区の指揮センターのために遅れず正確な電子状況を提供し、指揮員が素早く有効な戦術的配備を行い、各種の対制圧措置(例えば電子妨害や対輻射攻撃)を使用しやすくする。

平時においては、このシステムはツポレフ-154や運-8電子情報偵察機の不足を補うことができる。このポッドを吊り下げ搭載した戦術機は長時間偵察任務を執行でき、周辺の電子輻射原の位置を捜索し、関係する電子システムのパラメーターを得、電子戦資料庫の改修と建立に用いる。

電子妨害方面では、運-8電子妨害機が最大の遠距離妨害に使え、その機能はアメリカのEC-130H機に類似している。KG-300Gは自動警告、レーダー脅威信号、指標の追跡、正確な電子制圧の機能を持ち、複数の脅威信号をキャッチ、分析し、複数目標を妨害する能力を持ち、比較的強い電子妨害能力を具備している。この吊り下げポッドは主に殲轟-7型戦闘爆撃機(頑住吉注:「飛豹」)に装備され、妨害機に戦闘爆撃機(殲轟-7Aあるいはスホーイ-30MKK)のために妨害による援護を提供させることができる。

当然、もし妨害が不成功でもさらにハード殺傷ができ、これは中国国産の鷹撃-91対輻射ミサイルによってなされる。このミサイルは中国がロシアのKH-31P型ミサイルの技術を導入したもので、アメリカ軍のAGM-88対輻射ミサイルに相当する。

(頑住吉注:これより2ページ目)

早期警戒システム

中国は1960年代にはもう早期警戒機の研究開発を開始していた。その後、中国は目をイスラエルの早期警戒システムに転じた。このシステム装置はイスラエルの航空機会社(IAI)とその傘下ののELLA社によって1980年代末期に共同で研究開発されたもので、この機系統はボーイング707機から改装され、アメリカのE-3早期警戒機と同じだった。

早期警戒機の建設方面ではイスラエルの中国に対する援助は極めて大きかった。イスラエルは1990年代初めにはもうネットワーク技術とレーダーを結合し、情報化とシステム化を実現した。この後、中国は独立して早期警戒機を発展させる「一号工程」を開始し、3年の時間しか費やさずにもう空警-2000早期警戒機を研究開発した。

空警-2000のレーダーアンテナはアメリカやロシアの早期警戒機のように機械式の回転はせず、固定されて動かない。何故なら空警-2000が採用しているのは固定アクティブ位相レーダーだからである。空警-2000に装備されるレーダー、スーパーコンピュータ、コントロール台、ソフトウェアは全て中国が自ら設計、生産したものである。現在の早期警戒機の技術に関して言えば、中国はすでにトップに到達しているに違いなく、現在劣っているのは量産というこの一歩となっている。

そうではあるが、中国空軍はやはり次のような制限に直面している。第1に大型機プラットフォームの不足である。中国には大型機の研究開発能力が不足しており、加えて外国からのイリューシン-76購入は阻まれ、中国の特殊機の数量の成長が制限されている。例えば空中給油機、輸送機、早期警戒機、戦場監視機などで、このことは最遠距離電子戦機の数量を増やすことが長時間にわたり難しいという結果を直接もたらしている。

第2に、電子部品の性能が比較的遅れている。中国の電子工業技術レベルには限度があり、空軍の戦術機の発電出力は普遍的に比較的小さい。現在最も欠乏しているのは大出力の妨害吊り下げポッドである。KG300G妨害吊り下げポッドの出力は1.85キロワットに過ぎず、これは一種の自衛型妨害吊り下げポッドであり、非常に接近した対空ミサイルのレーダー誘導の妨害にしか使えない。一方アメリカ軍のEA-6Bが装備するAN/ALQ-99妨害吊り下げポッドの出力は100キロワットにも達し、広範囲の妨害、捜索、追跡ができる。

最後はやはり電子コンポーネントの性能上の問題である。例えば鷹撃-91対輻射ミサイルの電子コンポーネントの性能は不足で、1つのミサイル弾頭があらゆるレーダーの周波数をカバーすることはできず、3種類のミサイル弾頭を開発するしかなかった。それぞれが周波数全体の一部分を担当する。これでは対輻射作戦の柔軟性が低下し、後方勤務保障の難易度が高まる。一方アメリカ軍のAGM-88ミサイルは1つのミサイル弾頭を使用するだけで0.8〜20ギガヘルツをカバーでき、これは現役の捜索、追跡レーダーの圧倒的多数の周波数を含む。

電子対抗能力

解放軍の各軍種は全て電子対抗部隊を持つ。陸軍は専業の地上電子戦部隊を持ち、空軍と海軍も一定数の電子対抗機、艦船、大型レーダー妨害基地を持つ。

電子対抗部隊の主要な任務は敵の電子設備の電磁輻射信号を捜索し、その類型、パラメータ、配備状況を調べて明らかにし、その無線通信を妨害し、その他の軍兵種と共同して敵の指揮、コントロール、通信、情報システムを打撃し、敵サイドの指揮体系を破壊し、敵サイドの武器コントロール、制御誘導システムを妨害し、敵サイドの電子部隊に対抗し、その他の兵種と共同して電子陽動や電子偽装を実施し、敵サイドの電子妨害兵力を発見し測定することである。

20年近い建設を経て、中国空軍はすでに完備された現代電子戦体系をひとまず建立した。現在まで、世界でアメリカ、ロシア、フランス、イスラエル、中国だけが完備された電子戦能力を具備している。

だが我々は、中国の航空工業、電子工業のレベルに限界があり、空軍電子戦機隊には依然充分な最遠距離電子戦機が欠乏し、電子妨害吊り下げポッド、対輻射ミサイルなどの装備の性能がアメリカ軍と比べ依然非常に遅れていることがはっきりしており、そして電子戦、制電磁権は制空権、制海権奪取の先決条件でもある、ということを必ず見ておかねばならない。しかも、解放軍の電子戦発展のロジックとその軍事工業発展は同様で、まず「有る」ことを求め、その後「有る」ことを基礎に不断に更新、世代交代しているのである。

この種の状況の中では、「〜」(頑住吉注:日本語にない漢字が使われており、また検索すると非常に多くの用例がヒットするのに意味を説明したページは見つかりません。「たぶん着実に、かつ速く」といった意味ではないかと思います)の目標を達成するためにはそれぞれの種類の武器システムの数量はあまり多くなることはないし、しかも機種は必然的に多くなる。このことは中国が現段階において電子戦力上アメリカに遅れているという事実をも決定している。


 コラムでは、「以前の中国の電子戦機が比較的大型の爆撃機をベースにしていたのは技術的制約から電子妨害用の機器が大きく、重くならざるを得なかったからであろうと推測されます。普通に考えれば最新型はF-18系に相当する殲轟-7「飛豹」戦闘爆撃機をベースにするのが自然ではないかと思うんですが、比較的小型の戦闘機である殲-10をベースにするというのはどういうことなんでしょうか。」という疑問を提示しましたが、実は「飛豹」に電子戦ポッドを搭載した機はあったんですね。しかし中国のこの種の装備の出力はアメリカのそれとは桁が違うどころか2桁違い、その他の面でも遅れが大きいことが分かります。フォローのつもりなのか性能は充分だが数が足りないみたいなことを書いている部分が複数ありますが、全体的に見ればとてもそうは思えません。比較的小型の殲-10を搭載機としたのは、やはり充分な機材が技術的に作れず、比較的小型の機材なら殲-10に積めるしその方が生存率も上がるだろうということではないでしょうか。私はこうした電子技術の隔たりに根がある電子戦技術上の隔たりは、そう簡単には解消すまいと思います。










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