ある77式拳銃の使用例

 前回紹介したユニークな現代ワンハンドピストル、77式拳銃が事件を解決に導いた例です。

http://bbs.tiexue.net/post2_4203501_1.html


中国武装警察、初めて拳銃で犯人を射殺:12m以遠より犯人に風穴(頑住吉注:原文では「犯人」にあたる語が「匪徒」、「歹徒」、「劫匪」などと悪人を表すいろいろな語で表現されていますが、その語感を正確に表すことはできず、日本語として違和感があるので「犯人」に統一しました)

(頑住吉注:最初の画像は今回の記事の主役、犯人を射殺した警察官、魏文涛の訓練風景です。その下の画像はこの人の部下の演習風景で、この件と直接関係ありません)

核心の提示

6時間の対峙の間、鋭利な包丁は終始女性人質の首に突き付けられていた。

0.32秒で1人の生、そしてもう1人の死が決定した。

12m以遠において、彼はポケットから早くもチャンバーに装填された77式拳銃を取り出し、1発しかない弾丸で正確に犯人に風穴を開けた(頑住吉注:原文では「太陽穴」です)。間をさえぎっていた人質は全くの無傷だった。

この1発は、内地において拳銃を使い犯人を射殺し人質を解放する、初の素晴らしい戦例を創造した。

この射手は広東省武装警察本隊汕頭分遣隊の隊長、魏文涛である。近日中に解放軍総政治部によって、今年の全軍における「使命に忠誠を尽くす学習型指導幹部」の重要モデルに定められる。

先日本誌記者は魏文涛と対話し、あの生死にかかわる1発について解明した。

魏文涛その人

1966年生まれ、入隊25年、現在広東省武装警察の本隊汕頭分遣隊の隊長を務め、上校警啣である(頑住吉注:中国警察の階級だそうです)。相前後して、体得した実践経験を57万余字の文章にしており、7冊の勤務、訓練、管理方面の書籍を編纂し、12項目の訓練方法、戦法を改革・革新し、指揮下の部隊は100余回の人質を取ってのハイジャック、マフィア取り締まり、被災者の緊急救助等の重大任務を首尾よく達成している。

現場

12m以遠から犯人に風穴を開けた

2009年4月24日明け方、汕頭市街区春沢花園沿いのタバコ・酒店。犯罪常習者である謝月鋒は店舗のドアをこじ開け窃盗を図ったが、発見されると店番の女性店員を人質に取った。犯人の凶器は研ぎ澄ましたばかりの包丁だった。

明け方の5時から昼ごろまでにらみ合いが続いたが、謝月鋒には投降の意思は全くなかった。突然あることが起こった。警察は犯人のかけた1本の電話を盗聴し、指揮官の神経がさらに緊張した。犯人は兄嫁に、また刑務所に刑務所に入るわけにはいかない、もうすぐ人質を道連れに死ぬことにした、と告げたのだった。

数時間にわたる交渉、複数回の救出方案も失敗の結果に終わった。11時、犯人は狂ったように「最後通牒」を大声で告げた。すなわち10分以内にもし自分を現場から離れさせるという要求が満足させられなければ、ただちに女性人質の首を包丁で切るというのである。

スナイパーが95式アサルトライフルを持って人質解放を試みたが、犯人は2度とスナイパーの視線の中に出現することはなかった。時間は1分1秒と過ぎていった。犯人が隠れる店舗内が突然静かになった。現場にいた人は皆手に汗を握った。‥‥まさか?  

武装警察汕頭分遣隊の隊長魏文涛は迷彩服を着て店舗内に入った。間もなく店舗内から大声が聞こえ、間を置かず1発の銃声が響いた!

外にいた人が皆店内に突入すると、魏文涛だけが拳銃を手に下げ、落ち着いて店内から出てきた。彼は部屋の入口のスペースまで来ると、拳銃のスライドを引き、その後拳銃の銃口に何度か息を吹いた。

まさに魏文涛が放ったこの1発は、内地において拳銃を使って犯人を射殺して人質解放に成功した初めての戦例を創造したのである。弾丸は正確に12m以遠から犯人に風穴を開けていた。

犯人が人質の首に突き付けていた包丁は床に落ちており、人質の女性は見事に救われた。

実は

77式拳銃には1発しか装填されていなかった。

記者:何故77式拳銃を持って行ったのですか?

魏文涛:当時の状況は、犯人が部屋から出てこず、密かに配備されていたスナイパーには全く射撃の機会がありませんでした。私は犯人はすでに正気を失っており、いつでも人質の生命を脅かすものと判断しました。私は現場指揮官に対し、拳銃を使って射撃する方案を提出しました。全員が非常に驚きました。77式拳銃は現在部隊が装備しているうち照準線が最も短い武器です。これを使って射撃すればわずかな震えでもただちに偏差が発生します。つまり、わずかにずれた射撃を行えば、人質を射殺する可能性があるのです。

記者:あなたは当時1発の弾薬しか持っていなかったそうですね?

魏文涛:あの時参謀長の鄭再沢は77式拳銃を私に手渡し、それには2発の弾薬が装填されていましたが、私は1発抜きました。何故なら私はあの時、射撃にはただ1発の機会しかないと知っていたからです。1発目が外れれば、2度と2発目の機会はないと。私は拳銃をズボンのポケットに入れ、足を引きずるようにして入って行きました。チャンバーに装填した拳銃はいつでも暴発の可能性があることを憂慮したからです。

記者:当時女性人質の状況はどうだったのですか? 

魏文涛:人質となってまるまる数時間が経過しており、最初に私たち警察が現れるのを見た時、女性人質の目にはまだ希望がありました。後になって犯人がすでに理性を失った状態になると、女性人質もすでに絶望していました。私が発砲した時、女性人質は完全に力が抜けた状態で床に倒れました。

記者:射撃の機会はどのように訪れたのですか?

魏文涛:あの時犯人は女性人質の髪をつかんで後ろに引っ張り、力いっぱい包丁を振り回していました。私は大声をあげて銃を抜き、照準して射撃動作を完成させました。大声は犯人を震撼させるためで、犯人がこれに反応した時には、私はすでにこのごく短い0.32秒を利用して射撃準備を終えたのです。


 ドラマチックに話を脚色している部分があるのではないかという気もしますが、緊迫した現場をよく表現した文章です。ただ現場指揮官より上の総隊長自ら拳銃で犯人を射殺しに向かうというのがよく分かりません。関係ありませんが「太陽にほえろ」の初期に、石原裕次郎演ずるボスが同じように女性を人質にとった犯人を自ら射殺に向かうエピソードがあったのを思い出しました。記憶がおぼろですが、たしかボスは犯人に意外な質問をぶつけ、「え?」とあっけにとられた一瞬を突いて愛用のルガーで犯人を射殺したんでしたっけ。

 77式最大の特徴であるワンハンド装填はこの時何の役にも立っていません。それどころかチャンバーに装填して暴発を怖れながら現場に入ったとありますが、例えばワルサ―PPシリーズなら、もし落下してハンマーがレットオフしても暴発の可能性はなく、77式の性格が不利に働いたと考えられます。メカのアレンジに問題がなければ64式拳銃でも同様に暴発の可能性はまずないはずです。64式はあまりに小型であるというのなら、マカロフコピーの59式ならばよりこの用途に適していたと考えられます。しかし中国はこの59式をあまり広く使用しませんでした。この理由は謎です。あるいはこの銃の登場頃から中ソ対立が激化したことと関係があるんでしょうか。







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