S&W 「Thunder Ranch」.44スペシャルリボルバー

 「Visier」2005年6月号に、S&Wの異色の新製品に関する記事が掲載されていました。


古きよき時代から来た銃

スミス&ウェッソンはClint Smithと共に、Thunder Ranchによって古い.44スペシャル仕様のモデル21を復活させた。

くのシューターにとって、現実における.44スペシャル仕様のセルフディフェンスリボルバーと今日における可能性に関する議論は過ぎ去ったものである(頑住吉注:非常に分かりにくいんですが、文脈上当然現在でも.44スペシャルには実用性があると考えられている、ということのようです)。こうした銃はカウボーイアクションシューティング用としても確かにレトロウェーブの一部である。しかしこのコンセプトは果たしてまだ本当に時代に合っているのだろうか? アメリカの最も有名なシューティングトレーナーの1人であるClint Smith(囲み記事参照)はイエスと考えている。それは彼らにとって、両大戦間の時代のセルフディフェンス銃への回帰である。‥‥当時、アメリカ南西部における多くの法の番人にとって最高の選択だった銃への。

.44スペシャル弾薬は1907年に、.44ハンドエジェクターファーストモデル(別名トリプルロック)と共に導入された。このリボルバーは非常に成功していたので、イギリスでも彼らの軍用弾薬.455ウェブリーマークU仕様で採用された。しかし、非常に頻繁に歴史の中で示されるように、戦争に使われて初めて、この銃は西部戦線の泥まみれの塹壕において弱点を露呈した。というのはセカンドモデル(1915〜40)において、第3の閉鎖エレメントも、バレル下のシリンダー軸ケース(頑住吉注:エジェクターシュラウド)もフィールドにおける実用の中で重度にクリーニングされてエッジがなくなったのである(頑住吉注:いまいちよく分かりませんが、イギリス軍に採用された.455仕様のハンドエジェクターが泥まみれの塹壕で必要とされる頻繁なクリーニングによってエッジが磨耗して信頼性に問題をきたした、ということのようです)。

 1926年以後(1941年まで)製造された.44ハンドエジェクターサードモデルもシリンダー軸ケースを持ち、禁酒法と世界恐慌の渦の中でデビューした。テキサスのS&W製品取り扱い商「Wolf and Klar」は直ちに3500挺を注文した。しかしそのうち到着したのは1000挺のみだった(頑住吉注:人気が高くて品薄だったということでしょう)。127mmバレルを持つそのうち300挺は1931年にHoustonのポリスデパートメントに行った。最も有名なテキサスレンジャースでさえ、この「モデル1926」を「ホルスター銃」として選択した。だが、アメリカの第二次大戦への介入が近づいてくるのが感じられたことによって、スミス&ウェッソンではさしあたり全てのラージフレームつきリボルバーの生産を停止した。しかし社はそれをすぐに弾みをつけて再開し、1926系リボルバーをモデル.44ミリタリーとして大量生産した。その後4thモデルミリタリーが続き、1950年に実施された生産物シリーズの名称変更によってこれがM21となった。だが、1966年までの16年の生産期間で、1200挺が販売されただけだった。

固定の、そして完成した
 この時代には調節可能なリアサイトが公用ピストルにおいても流行になっていた。スプリングフィールドの人(頑住吉注:S&W)もこのトレンドに完全に合わせていた。今日ではどうか? 今日たいていの固定サイトはJフレームを持つ小型のスナッビーにおいてだからこそ許容されている。こうした銃は全く短い距離用に代役として使用されるべきものだからである。つまり、Nフレームを持ち、固定サイトを装備した最後のリボルバーである.41マグナム仕様のモデル58が、S&Wのベルトコンベア上を走っていたのがすでに25年以上前のことであることは全く不思議なことではない(頑住吉注:どうもこの人の話は分かりにくくていかんですな。当時は公用ピストルにアジャスタブルサイトを装備するのが当たり前になっていたし、現在でも近距離用の小型リボルバーくらいでしか固定サイトは許容されない。だから大型のNフレームと固定サイトを持つM21が今回復活するまで長年絶版状態だったことは不思議なことではない、ということですね)。

 だが、一般に調節可能なリアサイトはセルフディフェンス銃に何をもたらすのか? その銃は多くの異なる弾薬を射撃したい人に、全ての弾薬で狙点通りに命中させることができる可能性を提供する。しかし、固定サイトと比べてのもろさは大きな欠点である。セルフディフェンス銃のための最高の要求としての信頼性は、多くのポリスデパートメントが1980年代の真っ只中までリボルバーを装備し、そしてこれに関ししばしばS&Wミリタリーポリスがあったという事実をももたらした。というのは、フレームと一体のリアサイト、バレルと一体のフロントサイトを破壊することはほとんど不可能だったからである。
 
これは男の世界だ
 だが、新しいM21-4により、S&Wは1つのオールドモデルのリボルバーを導入しただけでなく、これらを現行の製品からの特徴によっても装備したのである(頑住吉注:昔のM21を単にリバイバルしたのではなく、最近の製品の特徴も取り入れている、ということです)。例えば長さ43.18mmの6連発シリンダーがNフレームに装備されている。この長さは現行のスミス&ウェッソン製.44マグナムにも使われている(頑住吉注、昔のM21よりやや長いけれど、.44マグナムは装填できないようになっている、ということです。理由は書かれていませんが、完成直前まで.44マグナムシリンダーと共通にした方が製造上都合がいいからではないでしょうか。それならいっそ完全に共通にして.44マグナムも装填できるようにした方がいいような気もしますが、「これはこういうもの。元々意図されていない過度の負担をかけるのは無意味」ということらしいです)。それだけでなく、Thunder-Ranch-Specialは安全ロックを持っている。これは、シリンダーロックかんぬき(頑住吉注:シリンダーラッチ)の上にあり、外部のキーの助けによってロックがかかる。‥‥アメリカの銃器法に捧げられたものである。ファイアリングピンもフレーム内に姿を隠している。だが、ラウンドバットの上にあるグリップ領域が拡大されたAhrends木製グリップは疑いもなくかつてのM21−4に必要だった(頑住吉注:キーはアメリカの銃器法のため止むなくつけたもので本来は不要、フレームに移されたファイアリングピンについては評価していませんが、グリップは新しい方がいいということのようです。グリップの描写はわけが分からないので後に紹介するサイトの画像で見てください。要するに親指の付け根あたりに当たる部分のデザインのことだろうと思います)。

 最も目立つのは、フレーム右サイドにある金色のThunder-Ranchロゴである。Clint Smithを理解している人は、彼に控えめに表現する傾向があることを知っている。噂によれば、彼は「貴金属製の」彼のサインをリボルバーにつけることを避けることにかろうじて成功したという(頑住吉注:結果的にできた銃には金色の「Thunder-Ranch」というロゴがついていますが、当初は「Clint Smith」のサインも同様に入れられるはずだった。しかし謙虚な彼はそれを辞退した、ということでしょう)。社、そしてスプリングフィールドのマーケティング部門もそれを当然理解せざるを得なかった。そして彼は昨年(頑住吉注:Clint Smith監修によるThunder-Ranchという名の製品を販売する?)権利を与えた。2004年、社はM21−4Thunder-RanchをSHOT Showで紹介した。その最初の2日だけで500挺の注文があった。そして今日までにすでに1700挺が販売されている。これに比べ旧モデル21が16年間で1200挺だったことはまさに馬鹿げたことに思える。

古い恋人は必ずしも錆びていない
 このクラシックを選択した人は、たいていこのリボルバーとできるだけ調和する弾薬種類にも拘束される。しかし25ヤード(22.86m)において10のテスト弾薬が使用された。ウィンチェスターの246グレイン鉛ラウンドノーズが、6発のグルーピング69.8mmでベストの種類となった。他の弾薬を使ってもフリーハンドでの射撃結果が受け入れ可能な70〜80mmとなった。ウィンチェスターの200グレインシルバーチップホローポイントのみ127mmでいくらか否定的な結果となった。

 S&W M21-4Thunder-Ranchは、全く流行の品ではなく、蛍光を発するターゲット補助具、ハイテク合金、モダンなスペシャルグリップを示していない。この銃はブルーイングされたスチールと木でできた.44スペシャル仕様の単なる大きなリボルバーである。「これは純粋なセルフディフェンス銃である」 Clint Smithは言う。 「そう望まれる通り」

雷の天気(囲み記事)
 その名前は予定通りである。すなわち、Thunder-Ranch( http://www.thunderranchinc.com/ )においてClint Smithは厳しい1個連隊を率いている。この海兵隊のベテランはベトナムで戦い、警察で7年間働いた。‥‥SWATメンバーそしてスナイパーとして。この時代の間、そしてその後、トレーナーとして、またヘッケラー&コックInc.のためのトレーニングディレクターとしても評判にふさわしい存在となった。1993年、彼は最終的にThunder-Ranchを開設した。これはそうこうするうちにテキサスからオレゴンへと移転した。この地で彼は彼のチームと共に種々の小火器領域ごとの確立されたトレーニングを提供している。ピストルおよびリボルバーからアーバンライフルを経てショットガントレーニング、スナイパーコース、あるいはホームディフェンスや正しい武装の選択といった領域のセミナーに至るまでである。そのかたわら、Clint Smithは再三にわたってメーカーに新しい銃器モデルのためのインスピレーションをも与えている。‥‥例えばS&WのThunder-RanchスペシャルあるいはLes Baerにである。

モデル:S&W 21-4 Thunder Ranch
価格:958USドル
口径:.44スペシャル
装弾数:6発
全長:238mm
銃身長:102mm(4インチ)
重量:1030g
型:ブルーイング仕上げ。Nフレーム。DA発火機構。木製グリップ。サービスリアサイト(直角)、ハーフムーンフロントサイトを持つ固定サイト。フレーム右サイドには金色のhunder Ranchロゴ。木製プレゼンテーションケース(リミテッド版)。

S&W M21-4Thunder-Ranch:.44スペシャル

弾丸重量およびタイプ 初速(m/s) グルーピング(mm)
165grs JHP 351.7 82.6
200grs GD-HP 281.5 76.2
200grs Silvertip HP 222.8 127
240grs L-FP-RN 209.7 82.5
246grs LRN 201.5 69.8
250grs Keith SWC 219.5 82.5

注釈:JHPはジャケッテドホローポイント。GD-HPはゴールドドットホローポイント。L-FR-RNは鉛フラットポイントラウンドノーズ。LRNは鉛ラウンドノーズ。SWCはセミワッドカッター。射撃距離25ヤード(22.86m)。射撃姿勢はフリーハンド(頑住吉注:依託なしということでしょう)。6発のグルーピング。


 非常に読みにくい文章でした。もちろん私の読解力不足もあるんですけど、この筆者の文章がそもそも要領を得ないというのも絶対あると思います。例えばイギリス軍が使用した.455仕様のミリタリーポリスが塹壕での苛酷な使用で問題を起こしたという内容は、その結果どういう改良がなされたといった記述でもあればともかくこの記事の趣旨とほとんど関係がありません。他にもいちいち触れたように分かりにくい表現が多く、この部分は重要なので知りたいという内容に触れられていなかったりします。こんな文章を書く奴はどこのドイツ人だ! ‥‥。まあそれはさておきまして、大型のNフレーム、比較的低威力の.44スペシャルの組み合わせ、オールドファッションの作りと、ちょっと首を傾げたくなるような新製品ですが、その道の権威であるクリント スミス氏の提案で作られ、ある程度の人気を博しているということです。

http://www.thunderranchinc.com/swtrr.htm

 これがThunder-Ranch公式サイトにおけるこの銃の紹介ページです。なお、探したんですが、S&W公式では紹介されていないようです。

http://www.firearms.smith-wesson.com/store/index.php3?cat=293608&item=831381&sw_activeTab=1

 これはS&W公式で「口径.44スペシャル」で検索した結果1機種のみ出てきた銃です。私はこの記事を読んだとき、.44スペシャルならLフレームでもいけるのでは、と思いましたが、これを見るとLフレームだと5連発が限度のようですね。記事にはThunder-Ranchは「蛍光を発するターゲット補助具、ハイテク合金、モダンなスペシャルグリップを示していない」とありますが、これがまさにThunder-Ranchと対照的な「流行の品」にあたるリボルバーなわけでしょう。私はこういう新しいリボルバーが嫌いですけど、しかしだからといってセルフディフェンス用としての実用面でThunder-Ranchの方が優れているともちょっと思えないです。セルフディフェンス用にNフレームは大きすぎ、重すぎではという気がしますし、.44スペシャルのセルフディフェンスリボルバーとしてはチャーターアームズのブルドッグが有名ですが、はるかに小型軽量のこの銃の方がむしろこの用途には向いている気さえします。また、現在の視点から総合的に評価して9mmパラベラム仕様の(どうしても嫌なら.40S&Wでも.45ACPでもいいですが)サブコンパクトオートより優れているとも思えないです。金色の「Thunder-Ranch」ロゴをつけて木製プレゼンテーションケースに入れた銃が「純粋なセルフディフェンス銃である」というのもどうかと思いますし。‥‥というかセルフディフェンスガンだと強弁するからおかしいのであって、有名人のキャラクターにちなんだレトロ趣味の銃と見るべきなのかも知れません。

http://www.americanhandgunner.com/FTR11.html

 これはこの銃のより詳しい紹介ページですが、「究極のファイティングシックスガン」だとしていますね。をを! 写真撮影はかのイチロー氏ですな。そういえば初期のコンバットマガジン誌で氏も「実用リボルバーにアジャスタブルサイトは不要」旨書かれていましたね。ちなみにこのページの途中に「The sixgun that started all the fuss, the 1926.」というキャプションがついた画像がありますが、これが旧モデルのようです。

http://www.thunderranchinc.com/Olesbaer.htm

 これはLes BaerによるThunder-Ranchスペシャル銃器の紹介ページです。

 この銃はさすがに量産メーカー向きではないでしょう。カスタムショップの出番かもです。









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