タウルス「トラッカー」.17HMR

「Visier」2004年5月号に、新しいバーミント弾薬である.17HMRを使用するブラジル製リボルバー「トラッカー」のレポートが掲載されていました。


ホーナディによる新弾薬.17HMRを使う銃の中に最近タウルスの「トラッカー」リボルバーも参入した。この弾薬が開発された理由には、.22マグナムのライバルとなるハンドガン用弾薬を作るというものも含まれている。

 私は口径.17HMRのタウルス「トラッカー」をテストのために受け取ったが、この弾薬仕様であることが特別に嬉しくてすぐさま喚声をあげたというわけではない。私には.17口径リムファイア弾薬が、私の必要において、.22口径リムファイア弾薬の全てのバリエーションより大きな効果を発揮するとはどうしても思えなかった。というのは、私はすでに考え得る限り全ての弾丸バリエーションと薬莢の長さを持つ.22口径弾薬を射撃した経験がある。たとえばBB弾、.22ショート、.22ロング、.22LR、あるいはこの大きさの小さな散弾としてである。私はJ.C.Stevens Modell 14 Little Scout(これは.22口径である)で射撃を学んだ。いつも私のクラスメイトであるRichy Greenがこの銃を彼の父親の洋服ダンスから拝借した。私達はこのKK(小口径)ライフルを2つの主要部分に分解し、1つづつを目立たないようにズボンの脚部、ジャケットの下に突っ込んだ。そして私達は自転車で町のゴミ集積所に行き、撃つことによってぴょんぴょん跳ねたり壊れるものなら何でも撃ち、あるいはそこに住むネズミの群れに対して狩りを行った。弾薬の入手に問題はなかった。.22口径弾薬は金物屋でいつでも売っていたし、当時子供が小口径銃を撃つことはまったく普通のことだった(頑住吉注:子供が銃を持ち出して事故を起こすケースが大きな社会問題になり、「子供用安全装置」としての意味が大きいキーロック式セーフティを義務化する州が出るくらいですから現在はそうではないということなんでしょう)。私達は50セントを貯めたらすぐ紙箱入りの.22ショートを買った。より強力な.22ロングや.22LRはたまにしか買えなかった。何故なら.22ロングは最低でも75セントしたし、まして.22LRなら一箱1ドル以上したからである。私達は子供ながらにいろいろな小口径弾薬の性能レベルを学び、またそれだけでなくライフルについても学んだ。私達が使用したLittle Scoutというライフルは、1950年代の早い時期に作られて家に置いてあったものであり、本当は.22LRのガス圧には耐えないものだった。.22LRを使うと、この小さな単発銃のローリングブロック閉鎖システムは破裂するおそれがある。Richyと私にとって幸運なことに、私達はまれにしか.22LRを買うためのお金をかき集められなかったし、そしてときたまの特別の安売りの時しか買えなかったのだ。

 この過去に関するノスタルジックな話の脱線は、私が過去40年間に.22口径が何をなし得、またなし得ないかを知るための多くの経験を持っているということを明らかにしたかっただけである。そしてその私には、全くの私見としてホーナディの新しいリムファイアカートリッジ.17HMRには、もたらされる長所が皆無であるように思われた。だが、今回この銃で.17HMRを2、300発射撃し、そして去年開発されたこの弾薬を使う似たような2、3の銃をチェックしてみて私は.17口径ホーナディに関するこの(先入観に基づく)判断を修正せざるを得なかった。今では、私はこの弾薬に決定的なチャンスがあると見ている。ハンティングと有害鳥獣駆除という分野と同様に、これまでテーマにされてこなかった分野、すなわちセルフディフェンスにもである。

 ひょっとするとこのテスト銃の出現も、この弾薬のセルフディフェンス目的の使用を促進するかもしれない。少なくとも私は考えを変えた。というのは、私は.17HMR仕様の「トラッカー」を使ってみて、この分野に使用する上での不安を感じなかった。私はすでにこの銃と比較できる大口径のタウルスリボルバーを何回も撃ち、レポートしている。このシリーズに関して強調しておきたいのだが、.45コルト口径のショートバレルバージョンは、すんでのところで私のお気に入りのキャリーガンである.38スペシャル口径のS&Wセンチニアルをおしのけるところだった(頑住吉注:おいおい、実際に替えたわけじゃないんかい)。タウルスは.17「トラッカー」を好みに応じてブルーイングまたはステンレススチール、6インチまたは長い8インチバレルで供給している。

 テストしたサンプルは6インチバレルが付属したステンレスモデルであり、細部の装備は通常の「トラッカー」シリーズと同じである。柔らかく滑らないゴムの薄板が付属した「Ribber」グリップ、および小型化され、エッジがないシリンダーラッチは、使用者全員のハードなマグナム弾薬使用時の射撃快適性を高める。この2つはほとんど反動がない型である.17HMR仕様でも備えられ、完璧にその役割を果たす。フレームにピンで固定されたフルアジャスタブルのミクロメーターリアサイトは、水平の溝が入った黒色のフロントサイト(赤色のプラスチックインサートつき)とぴったりだ。マッシブな輪郭を描くバレルにはベンチレーターリブ(レール)がつき、「トラッカー」独特のシルエットを印象づけている。外観的な魅力だけでなく、このレールはスコープマウントベースとしても利用できる。今になって思えばもし私がテスト銃と同時に適したピストル用オプティカルサイト(例えばLeupoldやBurrisの)と適したマウントリングを用意しておけばそれが長所として役立ったのだが。「人は常に後になるほど賢くなる」である。(頑住吉注:どうもことわざみたいです)。

 シリンダーには.17HMR弾薬が7発入る。シリンダー後部の保持は一般的な普通の方法で行われる。前部はスプリングでテンションをかけられたフレーム内の球がシリンダークレーンを固定する。これまで、球によってシリンダーを閉鎖するこの方法は、高価なカスタムリボルバーにしか見られなかった。この方法の、エジェクターロッド先端を保持する普通の方法に対する長所は、エジェクターロッドがトリガーの抵抗にならない、そして特徴的な結果としてロッドが100パーセントまっすぐであるか否かに関係がなくなる、という点にある。しかし、シリンダーの閉鎖を球によって行っているにもかかわらず、シングルアクションのトリガープルははじめ約2150gもあった。ダブルアクションでは5300g弱にもなった。疑いなく、アメリカの製造物責任規制がこの重いトリガープルの原因となっている。しかし.17口径タウルスのような潜在的にベストの命中精度可能性を持っている銃が人の心をくすぐるには、軽い普通のトリガーを必要とする。特徴的なことに、ダブルアクションのトリガープルはS&Wより短く感じる。タウルスシステムのハンマーは比較上コックが急速に行われ、より少ないストロークでレットオフするように見える(頑住吉注:筆者は触れていませんが、トリガープルが重い原因の一つはこれじゃないですかね)。

 射撃テストはペンシルバニア州OaksにあるLower Providence Rod and Gun Clubで行った。15および25ヤードの距離で2、3箱の弾薬を消費した時点で、私はすでにこの小口径弾薬が少なくとも馬鹿にしたものではないことに気付いた。.17HMRはリムファイアカートリッジ領域にとっての重要な進歩をもたらした。私はこの後タウルスを依託射撃により50ヤードでテストした。というのは、それまでの近距離はこの銃にとってまったく容易すぎるように思われたからである。そうでもしないと私は.17口径「トラッカー」で単にターゲットに開いた隙間なく集まった穴にさらに弾を撃ちこみ続けるだけだったのだ。

 私はこのときスコープを用意しなかったというものに続く2つ目のへまをやった。50ヤードにおいて、それまでよりずっと高い照準点を選んだのだ。このホーナディ弾薬に、この距離でより高い点を狙う計算は必要なかった。この弾丸の沈下は50ヤードの距離においてなお無視できる。私が小僧の頃にこれがあったらゴミ集積所のネズミたちをあの世行きにできただろう(頑住吉注:まわりくどい書き方ですが、ハンドガンでありながらターゲットが小さなネズミでも、50mでそのまま狙ってあたるほど弾道がフラットで、しかも命中精度が高いということが言いたいようです)。17グレイン(1.10g)V-MAX弾の速度は充分である。計測器によれば、初速は平均581m/sであり、この結果この弾薬は187ジュールのマズルエネルギーをもたらしている。

 軍用領域において.17HMRと比較できる初速を達成し、いくらか重い弾丸を使用するいくつかのモダンな弾薬が開発されている。FNの5.7mmx28は、31グレイン弾がファイブセブンピストルによって約640m/sに加速される。H&Kの4.6mmx30は26.2グレイン弾がPDWによって約725m/sに加速される。.17HMRはハンドガンによって、有害鳥銃駆除、ハンティング用とセルフディフェンス用のダブルの機能を引き受けることができる。これなら軽く、リュックサックに入れたりベルトに差して持ち運べる。しかしそのためにはタウルスは重い「トラッカー」の贅肉をさらにいくらか落とすか、あるいはそのかわりにS&Wの小さなJフレームをベースにした「キットガン」をモデルに軽量化する必要がある。


 まず本筋と関係ない話です。「ステアー『タクティカルエリート』」SDと『M9A1SD』」の項目で、タクティカルエリートSDからサブソニック弾を発射したときの音が、「性能の劣るサイレンサーを装着したKKライフル程度」と書かれており、「KKライフル」とは何か分からなかったんですが、これは「小口径」の略で、どうもドイツでは慣用的に.22リムファイアを指すようです。

 さて、日本の専門誌のレポートの場合、内容と直接関係ない筆者の近況とかから入るスタイルってよくあるじゃないですか。でも、やはりドイツ人は真面目で固いということなのか、ドイツの専門誌の場合、内容と直接関係ないことが書いてあるレポートは非常に少ないんです。で、昔の思い出がかなり長く語られているこのレポートにちょっと違和感を感じたんですが、読んで行くうちにこれがどうもアメリカ人の書いたものらしいことが分かりました。内容的にも緻密なドイツ人のそれ(例えば「DWJ」の.17HMRに関するレポートは今回のレポートと好対照ですね)と違ってけっこうアバウトだったりします。たいていの記事には銃や弾薬の細かいデータを表にしたものがありますが、これもありません。しかしまあこの思い出話は「スタンド・バイ・ミー」の世界みたいでちょっと興味深かったです。ちなみにスティーブンスのリトルスカウトというのはこんな銃です。
http://www.gunsamerica.com/guns/976411961.htm
 
 メーカーの公式サイトはここです。
http://www.taurususa.com/main/index.cfm
 上にあるメニューの「PRODUCTS」をポイントし、「Revolvers」をクリックし、右のメニューの「TAURUS TRACKER REVOLVERS」をクリックすると「トラッカー」リボルバーのバリエーションが示されます。ここでレポートされているのは「Model:17SS6」というモデルです。ちなみにレポートでは触れられていませんが、この銃にもキーロック式セーフティがあります。同じタウルスの「PT24/7」のとき、「ゴムの薄板が付属したグリップ」というような表現があり、私は芯までゴムではなく、ゴムの薄板をかぶせたグリップ、と解釈しましたが、どうもこれはゴムのグリップの表面から直角に滑り止めの薄板状ヒダヒダが多数生えているようなタウルス独特のグリップを指していたようです。確かにリコイルをマイルドに感じさせる効果は高そうですが、谷部に汚れがたまって落としにくそうですね。 

 私はこの銃の「トラッカー」という名前を見て、メーカーが.17HMRを対人用に推奨しているのかと思ってちょっと意外に思ったんですが、実はこれはこの口径に限らないシリーズ共通の名前なわけです。
 途中でシリンダーの固定に関する記述があります。「エジェクターロッドがトリガーの抵抗にならない」というのは、S&Wなどの方法だとシリンダー軸自体の先端がスプリングのテンションのかかったパーツで抑えられているのでその分シリンダー回転の抵抗となって結果的にトリガープルが重くなるが、タウルスの方法ならそれがない、ということのようです。そして「ロッドが100パーセントまっすぐであるか否かに関係がなくなる」というのは、通常の方法だと長時間の使用や何らかのアクシデントで軸の先端が曲がった場合、ロックされなくなったりトリガープルが異常に重くなったりする可能性があるが、タウルスの方法ならわずかの曲がりなら作動に影響しない、ということのようです。ちなみに球を使ったこの方法を採用している高価なカスタムリボルバーというのは、例えばGUN誌1989年5月号でレポートされている「ポーピールポケットピストル」とかのことだと思います。ちなみに、球は使っていないものの、この2つのメリットはたぶんスタームルガーの現行の方法でも同じではないかと思うんですが。 

 さて、私は.17HMRに関し、(体重がわずか人間の1/10程度しかない)キツネやアナグマに対してすら効力がギリギリで、キツネの場合平均8〜15m逃げられ、最大40m逃げられることもある、ということから、これと性質が似ており、重量が1.5倍強になったような弾薬である4.6mmx30の人間に対する効力は疑わしいのではあるまいか、と書きました。今回の記事の筆者は私と全く異なり、.17HMRがセルフディフェンス用に充分であるとしています。その根拠は要するに「実際に撃ってみてそんな実感を持った」ということだけのようです。また、最後の部分の話の展開から、「PDW弾薬は軍用として作られ、また一部で実際に使用されているのだから効力は充分であるはずだ。民間人のセルフディフェンスには軍用ほどの威力はいらないからPDW弾薬に初速が近く、弾丸は軽い.17HMRで充分だろう」という考えもあるのかもしれません。
 もし.17HMRがセルフディフェンスに充分であるならば、リコイルが小さいので銃を非常に軽量(ABSモデルガン程度)にでき、撃ちやすく、命中精度が高く、必要なら遠距離射撃もでき、比較的小型のリボルバーでオートに負けない9発装填できるものにもできる(薬莢の太さがほぼ同じ.22LRを使用するリボルバーにはそういうものが存在するので)、などかなりのメリットが考えられます。しかし「.17HMR」の項目をもう一度見ていただきたいんですが、銃身長60cmのライフルでは791m/sもあった初速が、この6インチリボルバーでは581m/sと大きく低下しています。エネルギーは速度の自乗に比例するので、344ジュール対187ジュールと約54%まで極端に低下してしまっています。この187ジュールというのは.22LRのスタンダード弾薬とハイベロシティ弾薬の間にある数値で、これで人間に対する効力が充分とはとても思えません。また、セルフディフェンスにこのリボルバーのような6インチバレルはあまりにも長すぎ、最低我慢できる程度として4インチにしたら、初速はもっと低下するでしょう。
 この筆者の言うように本当にこうしたものが今後普及し、また実際にセルフディフェンス用に効果をあげれば.17HMRの人間に対する効力は証明されることになりますが、どうなるでしょうか。私はやはりそうはならないのではないかと思います。








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