公用ピストル、SMG、PDWのトレンド

 「Visier」2004年11月号に、公用ピストル、SMG、PDWの世界に最近起きている流れに関する記事が掲載されていました。執筆者は「Visier」編集長David SchillerとAnderas Skrobanekとなっていますが、この編集長はちょっと愛国心が強すぎると言うか、何でもドイツ万歳にしてしまいがちです。その点を含んでお読みください。


「Es tut sich was…」(頑住吉注:また「Visier」によくある分かりにくいタイトルです。これは言いかけの形でちゃんとした文章ではありません。おおよそ「最近動きが起きているがそれは…」といった意味かと思います。)

9mmパラベラム仕様のサブマシンガンはまもなく骨董品に属するのか? そんなに早くはない。しかし興味深い方向転換が予告されている。公用銃および警察ピストルのマーケットは動き始めている。

 最近いくつかの良いニュースもある。今年の8月24日におけるアメリカの「ホームランドセキュリティ」のための省の発表は、2つのドイツ銃器メーカーからの納入であり、これは当然お祝いをしなくてはならない。2001年9月11日同時多発テロの後で設立された安全保障に関する大規模な役所、略称DHSは、それに属する警察組織のためにひっくるめて130,000挺のハンドガンの購入に青信号を出した。この警察組織とは沿岸警備隊から税関、移民コントロールを経て新しい運輸安全局に至るまでを指し、新しい運輸安全局は武装した航空機護衛官、空港の検査官、警備員にも管轄権がある。Heckler & Koch Inc.(バージニア州Sterling所在。注文の合計額は26,200,000ドル)、SIG-Arms(ニューハンプシャー州Exeter所在。注文の合計額は23,700,000ドル)はそれぞれ65,000挺の銃を納入する。タイプ、形式、サイズはそれぞれの「需要の担い手」の自由に任されている。DHSは口径としては9mmパラベラム、.40S&W、.357SIGを挙げている。契約が与えられたその前には、4か月以上続いた大規模テストがあった。このテストでは46種類のいろいろなモデル690挺を使い、約3,000,000発の試射が行われた。このDHSの契約は、過去25年間におけるアメリカのハンドガン取引として、1979年に公募された米軍の9mmパラベラムミリタリーピストルのための契約以来最大のものである。

 同時にこのプロジェクトは、警察および公用銃器領域内で再びいくらかの動きが起きていることを示した。例えば、.357SIG弾薬は最近まで実にゆっくりした普及度だった。だがそれに対し現在では、この弾薬はこれまでアメリカの官庁に愛用されてきた.40S&Wを力強く追い上げているように見える。

 その上、こうしたニュースはアメリカのDHSに限られない。イラクでの経験に基づいて、近いうちにアメリカ軍内でもサイドアームおよびピストル弾薬の全般的な熟慮が行われる。そして新方式の近距離領域用防御銃器(Personal Defence Weapon 「PDW」)に関してもである。アメリカの戦車部隊に所属するある大尉は、イラクでの多くの注意を払うべき経験の中での現用の9mmパラベラム仕様M9ベレッタへの幻滅を次のように的確に要約している。「M9はデコレーションには良いが、銃撃戦においてはツバを吐くほどの価値もない」。

英軍も同様に来年、第二次大戦末に導入されて以来のFNハイパワーを「ausmustern」する(頑住吉注:辞書にはこの単語の訳語は「兵役不適格にする」、「廃棄処分にする」と出ています)。M35は齢を取ったというだけではない。兵器庫にあるたいていの在庫品はクリーニングによって駄目になるか、使い潰されている。だからイギリスは去年意味もなくNATO領域内でPDWプロジェクトを押し進めたわけではない。英兵たち(Tommys)は、9mmパラベラムピストルをわずかな例外を除いて部隊から完全に除去することさえ熟慮している。そのポジションはFNの5.7mmx28、またはH&Kの4.6mmx30のような新しい小口径弾薬が占めることが求められている。こうした弾薬はピストルでも、FNのP90やH&KのMP7のようなサブマシンガンでも撃つことができる。こうした着想は他の軍隊、例えばオランダ軍にも、そしてそれだけでなくドイツ連邦国防軍にも同様に受け入れられている。ドイツの場合は歩兵部隊においてP8がMP7に取り換えられている。

(頑住吉注:ここに中見出しが入っていて、英語に直訳すれば「News for Polsens」となりますが、「Polsens」は辞書に載っておらず意味不明です。)
 ドイツ連邦共和国のいくつかの警察署、および税関も目下新調達の時期にある。NRW(頑住吉注:ノルドライン・ヴェストファーレン州)では2003年10月、大規模な「官吏テスト」が行われた。ワルサーは発注を得たと言われるが、現在納入はライバルのH&Kおよびザウエルの抗議によって延期されている。つまりこの結果は2005年の早くない時期にまで遅れる可能性がある。それにより約40,000丁のピストルが動くNRWの決定は、税関にも影響を及ぼす。目下税関は13,500挺の公用ピストル、SIGザウエルP225(別名P6)を使用している。連邦財務省の情報によれば、ファイナンスのための新装備が2005/6会計年度内に控えており、また「納入は決算の直前」だという(頑住吉注:経済問題の話は私にはさっぱり分かりません)。

 コストの問題がある。連邦国境警備隊でも20,000丁以上のP6が、そうこうするうちにすでに20〜25歳の高齢になっている。完全な新装備を開始するか、あるいは古い銃を徐々に新品のP6に交換していくかが熟慮されている。まだ公募のプロセスは始まっていない。

良く編成された
 目下ドイツメーカーは形の上で誰が見ても全般的に卓越しているように見える。H&Kは数十年前から大西洋の両側で多くの軍組織や官庁に良好に採用されてきている。ワルサーはすでに数年前、S&Wと大西洋を挟んだパートナーシップを結んだ。そしてSIGザウエルは2000年10月以来新社長Michael Luke(頑住吉注:「u」はウムラウト)とThomas Ortmeierの下で経営され、エッケルンフォルデとエクセター(頑住吉注:ドイツにおけるSIGザウエルの所在地とアメリカの子会社SIGアームズの所在地)に新風が吹いている。Michael LukeがJ.P.ザウエル&ゾーンを引き継いだ直後に筆者が会ったとき、以下のようなプランを語った。「私は、我が社がベストの警察ピストルを作ることを望む。…それは全くのニュージェネレーションだ!」 そしてザウエルは2004年、このニュージェネレーションピストルP250DCcをIWAにおいて発表した。そしてこれはザウエルが2003年7月にSIGプロをベースとしたP2022によって欲していたフランス警察向けのまるまる200,000丁の大規模注文をゲットし、最高記録タイムでの納入が可能であった事実に続くものである。

1970年代の遅い時期と1980年代の早い時期において、ドイツ警察、オーストリア連邦陸軍、そして米軍の新しい武装が始まった(頑住吉注:それぞれ、.32ACPから9mmパラベラムへの使用弾薬変更、グロックの採用、.45ガバメントから9mmベレッタへの更新を指しているんでしょう)。それ以来ピストル分野では現在のような多くの動きはかつて決してなかった。米軍は当時ベレッタ1社のみから1999年終わりまでにM92をほぼ420,000挺調達し、そしてさらに10,000挺以上のSIG-M228を「M11」として購入した。これは諜報機関や陸軍、空軍、海軍の治安維持業務用だった。FBIも1980年代半ばにはすでにSIGモデル226および228への傾倒を明らかにしていた。

S&W、コルトのような当時からの強力なライバルは、現在むしろ不在によって際立っている。少なくともアトランタは最近S&Wの.40口径モデルに決定したが。アメリカの警察署のグロックに対する熱狂は至る所で酔いが醒めてきているように見える。ベレッタは最初スタートがひどく遅れた。新しいマルチキャリバーピストルが今年の秋、アラビア湾のセキュリティメッセで公開されたが、多くの採用決定プロセスからは冷たい反応が予想される(頑住吉注:要するにこの部分は現在ドイツ製品が他国製品に比べて好調かつ前途有望だということが言いたいようです)。

明らかなトレンド
 西側工業国においては全般的にいくつかの基本方向が浮かび出ている。少なくとも警察関係では。コスト圧力に基づき、プラスチックフレームを避けて通るメーカーはほとんど1社もない。多くの官吏はプラスチックフレームの銃を、従来のジュラルミン、スチール構造方式に対する軽量さから愛用している。SIGザウエルでさえP250「ディフェンスコンセプト」(DC)でこの傾向に敬意を表明した。このジャンルではグロックがその積極的なマーケティングと低い市場競争価格でアメリカマーケットに鮮明なシュプールを残した(頑住吉注:遠まわしにドイツ製品より品質が良かったから成功したのではない、と言いたいようです)。
 現在ほとんど1社もトライアルにおいて1つの銃器タイプのみで参加することはできなくなっている。銃のモジュラー構造のおかげで、いろいろなトリガーシステムが提供できる。そしてたいていの役所はクラシックなフルサイズ銃とならんで、女性メンバーおよびコンシールドキャリー用に同一モデルのより小さいコンパクト型を依然として求めている。
 「需要の担い手」はたいてい、ライトまたはいろいろな付属品のためのピカティニーレールを要求するのと全く同様に、手の大きさに適合できるグリップフレームも要求する。警察が従来型のDA/SAのかわりにDAOに取り換える動きはどんどん強まっている。この伝播はアメリカからドイツにも広がっている。もしこれが実際に非常に有利ならば、それは実践の中で示されることになる。今日まで依然として追加のマニュアルセーフティレバーは放棄しうると考えられてきた。だが、公用銃窃盗に備えるため、「つかむことを遮断するもの」を備えたホルスターや適切な近距離領域トレーニング(Weapon retention)とともに銃自体にセーフティが備えられている。

MP5はどうなる?
 遅くとも1977年のMogadischu、1980年5月のSASによるロンドン(プリンセスゲート)のイスラエル大使館突入以来、ある種自分の評判に気を使う西側の各特殊部隊はH&KのMP5シリーズを採用した。この1960年代に開発された、ローラーロッキング閉鎖機構を持つクローズドボルト銃は、警察公用になお何年かは同行することになるが、さらに何十年もということはない。しかしNATOのPDWプロジェクト(2000年1月イギリスの公募によりいろいろな局面にいる15,000の部隊のためにスタートした)により、MP5には強力なライバルが生じている。だが、「同盟陸軍」(頑住吉注:NATO軍のことのようです)は弾薬を統一できていない。長い比較テストにもかかわらず、2003年11月に行われたNATOの標準化協議CNADの新たな決定は、(特に)ドイツの5.7mm弾薬優先に反対する抗議に基づいて延期された。トゥーン(頑住吉注:スイス、ベルン州の都市)における新たなテストラウンドが続いた。全ての悩みの種は、新PDW弾薬クラスの能力にある。これは100〜150mにおける命中精度と、「Crisat身体防護ミックス」(20層のケブラーと1.6mmチタンプレートからなる)貫通後の充分な残存エネルギーのことであり、9mmパラベラムのキャパシティを明らかに越えたものである。
 FNはその口径5.7mmx28のP90により、H&Kとは違って早いスタートを切っていた。FNは説得力のある「積み木箱コンセプト」により製品を提供することができた。これはドライバー、支援部隊、器具の操作者の防御火器から、特殊部隊用の警察特殊銃器にもすることができるというものである。そうこうするうちに、ほとんど17,000挺のP90が世界中で販売された(頑住吉注:意外に少ないですね)。USシークレットサービス、SAS、オランダのBBEはこの「射撃できるバイオリンケース」を使用している。全く同様にアメリカの多くのスワットチームもどんどんこの銃を使用するようになっている。1997年4月、リマ(ペルー)の日本大使公邸への突入により、P90はその初陣を経験した。これに対しP7は伸縮可能なショルダーストックとピストルグリップのおかげでよりコンパクトな印象を与え、より長いP90より大型ピストルとしてよりよく体に装着して携帯できる。ドイツ連邦国防軍はP7に賛成票を投じ、SEKの一部部隊もMP5kのかわりのオプション兵器としてこの銃を手にいれたいとすでに考えている。興味深い新開発品も予告されている(頑住吉注:キャプションに出てくる「UCP」のことだと思います)。他のNATOパートナーがどのような決定を下すか、そして4.6mmx30が実戦においていかに真価を示すかを辛抱して待ち続けよう。



スポーツ銃?(頑住吉注:囲み記事1)
 新しいP2000V5による「左下へのそれ」はありえない。2003年10月、警察長Hetgerは発表した。バーデン・ビュルテンベルグ州警察は、新しい銃のトリガー作動に関する困難を抱えた(頑住吉注:これだけでは分かりにくいので補足します。以前お伝えしたように、約1年前、バーデン・ビュテンベルグ州がP2000のDAOバージョンを採用したとき、「弾が左下へそれる。銃がおかしいに違いない」という声が警察から上がり、マスコミで大問題になりました。しかし本当は銃がおかしいのではなくプルが重くストロークが長いDAOトリガーに対する慣れの問題でした。別の言い方をすればDAOの銃が精密射撃に向かない、慣れるのに努力を必要とする銃であるのも事実であるわけです)。意地悪を言っているのではない。というのは、どんなスポーツシューターが自由意思でコントロール困難なトリガーをすでに選んでいるだろうか。特にDAOシステムの公用ピストルはスポーツ分野では手を焼くものであると思われる。他方ではまさにこのDAOピストルを射撃することの高い要求が、射手を奮い立たせる可能性がある。BDSのJurgen Ofner(頑住吉注:「u」「O」はウムラウト。BDSはドイツのスポーツ射撃団体のようです)は、すでに現在警察官たちがスポーツ射撃にも新しい公用ピストルを使用していることを知っている。より長期的にはこれに完全に対応した種目をお目見えさせる可能性がある、とハンドガン担当のBDSスポーツリーダーは語った。BDMPにおける同盟スポーツリーダーであるDetlef Mesletzkyはニュースとして発表した。「トレンドが発展しても、我々はスポーツルールを変更する必要はない。機会均等のためには、既存の競技の中でDAOピストルのために独自の採点をすることに決めることで充分である。」Mesletzkyは語った。つまり公用ピストルから吹くフレッシュな風はシューティングスポーツを刺激する可能性もあるのである(頑住吉注:要するに「最近警察でDAOピストルが普及してきていて、これを競技に使う警察官も増えている。あえて不利なDAOで参加する人のために得点に下駄を履かせたり、DAOピストルオンリーの競技を新設する動きもある。このように警察におけるDAOピストルの普及は競技にも影響を与えつつある」といったことですね)。


(頑住吉注:囲み記事2 タイトルにことわざらしきものが使われていますが意味がよく分かりません。後の展開とも合わせ、たぶん「結婚相手をよく吟味して選ぶ人は皆長く連れ添う」といったような意味ではあるまいかと思います)
 これは警察官にもあてはまる。警察官はその公用ピストルと数年しか結婚していない場合より、むしろ何十年も連れ添い続けることが多い。新装備は何百万もの金を飲み込む。このためバイエルン州は、全ヨーロッパ的なトライアルに没頭するリスクを犯すより、むしろ廃棄処分にしたいP7をノルドライン・ヴェストファーレン州およびニーダーザクセン州から受け継いだ。しかしザウエル、ワルサー、H&Kといったドイツメーカーはあまりにも多すぎるライバルを恐れる必要はない。現実的なチャンスは、「操作および投入手段に関する小委員会の技術的指針(TR)」にしたがって公的証明書が発行されたモデルのみにある。すでにアンビの操作エレメントへの要求が、グロック社製品のようなモデルを脇へ押しのけている(頑住吉注:最近のドイツ製品はスライドストップまでアンビになるなど両側から同じように操作できるよう高い配慮をしたものが多くなっていますが、これはこういうモデルでないとドイツ警察用としての公的証明書が受けにくくなっているからでもあるようです。そしてグロックのようにこの配慮が遅れたものは自動的に排除されてしまうということです。グロックが対応しないのはドイツ警察用に食い込めなくてもアメリカマーケットで問題なければいいと判断しているからかも知れませんが、アメリカにも左利きの人は多いはずですし、今後ドイツ製品に押される原因にならないとも限らないでしょう)。
 TRは公的証明書発行のために人間工学的なグリップを持ち、重心位置が適正で、よりフラットで突起部が少なく丸みを帯びた形状の、簡単に操作できるピストルを要求している。このモデルは25mから16cmのグルーピングを持っていなけばならない。耐久性は少なくとも1万発なくてはならないが、閉鎖部品は5千発でよい。ピストルの使用年限は25年が必要である。受験者は雨、塩水、ぬかるみ、砂、塵に直面し、そして充分な落下実験および実射テストを経る。全てのテストは特別な「テスト方針」の中で明文化されており、これにしたがってウルムおよびズール射撃試験局がテストを行う。ミュンスター警察技術研究所のインターネットサイトを参照のこと(http://www.pfa.nrw.de/PTI_Internet/pti-intern/indexe5ab.html 頑住吉注:このトップページにある、以前紹介した電気ショック銃「テイザー」の画像をクリックするとピストルや弾薬だけでなくヘルメット、防護ベストなどに関する「技術的指針」がずらりと並んだページが表示されますがどれもほとんど文字だけみたいです。時間があれば訳してみたいです)。そうこうするうちに、2003年9月バージョンではスタンダードな警察ピストルに関する要求項目リストだけでなくサブコンパクトに関するものもできている。同様にいろいろな手の大きさに適合できるグリップに関する要求も新しい項目である。これは多くの女性警察官のためのものだ(頑住吉注:ワルサーがP99でグリップ後部の交換システムを採用し、H&KがP2000でこれに追随したこと、そしてザウエルがP250DCcでプラスチックのグリップフレームを簡単に交換できるシステムを採用したことも、アンビの操作系同様単にメーカー間の競争ではなく「技術的指針」で要求されたからでもあったんですね)。
 メーカーがいかに調達政策上の基準に強く依存しているかは、TRにある9mmパラベラムへの束縛によってすでに証明されている(頑住吉注:ドイツメーカーが少なくとも国内向けには9mmパラベラム仕様の銃ばかり作っていることは、公用拳銃の基準にいかに強く影響されているかの証明だ、ということのようです。ただ、これは9mmパラベラムに事実人気が集中しているからそれ以外の基準を定める必要がないのかも知れず、鶏と卵のような話のような気もします)。アメリカにおける要求項目リスト、National Instituts of Justice(NIJ)の「Autoloading Pistols for Police Officers」では、多くの種類が含まれている。このアメリカ法務省付属の研究機関による「NIJスタンダード0112.03」では、.40S&W、.45ACP用のテストデータも含まれている。1995年版にはまだ10mmオートがあったが、.357SIGに道を譲らざるを得なかった。TR同様NIJスタンダードも詳細に述べられた定義およびテスト方法を含んでいる。本質的な差は、ドイツの指針は表面(できるだけブルーイングがない)まで含めた極度に具体的な「警察ピストル」の概念を伝達していることである。それに対しNIJ基準は非常に一般的な内容に留まっており、そして主としてモデルのファンクション能力に集中している。NIJスタンダードもネット上にある(http://www.justnet.org/testing/pistols.html)。

終わらない歴史(頑住吉注:囲み記事3)
 弾薬、ことに警察用銃器にとってベストの弾薬を探すのはそうである。ただしこれはそもそも人々がまだベストの弾薬を探している場合の話である。というのは、とりわけドイツでは9mmパラベラムはライバルを恐れる必要がないのである。由緒ある.45ACPだけでなく、革新的な弾薬、例えば.40S&Wはドイツ警察用には決して真剣に考慮されない。これらの代わりに9mm薬莢には「社会的に妥当な」変形弾、例えばQD PEPまたはアクション4のようなものが装備される(頑住吉注:いずれもすでに紹介した弾薬ですが、QD PEPの方が先に来ているのはひょっとするとこっちの方が多用されるようになっているのかも知れません)。「有害物質が削減された9mmx19技術的指針弾薬」は、無関係の人間に対する少ない危険、少ない跳ね返りの危険を要求し、そして破片効果を禁じている。この弾丸はソフトターゲットにおいては「攻撃および逃走無能力の作り出し」のため大きなエネルギー伝達が意図される。これはある種の妥協以上のものではありえない。というのは、TRは同時に「ハードターゲットおよび自動車タイヤへの試射における充分な効果」を要求しているからである。ドイツの状況は官庁が完全に自主性をもって最もさまざまな弾薬を考慮に入れ、失敗からすぐ学ぶアメリカとは違う。FBIは1997年、.40S&Wの使用を決定した。これは10mmオートが銃の消耗でもトレーニングでもあまりにも多くの問題を持ち合わせていたからである。だがアメリカの連邦官庁、FBI、沿岸警備隊は最近.357SIGの方をより好んでいる。新しい試射テストラウンドは、この弾道がフラットなボトルネック弾薬が遮蔽物、ことに自動車のフロントガラスによりよい弾丸効果を作り出すことを示しているからである。

キャプション
戦いのリングに登場した新参者:SIGザウエルP250DCcは9mmx19仕様の、エンプティ状態で720gの軽量なプラスチックフレーム装備の銃であり、新方式のダブルアクションオンリーでも供給される。このKellermannDAOプリンシプルの削減されたトリガープルの重さはスプリングによるある種の「Vorspannung」に基いている(頑住吉注:「Vorspannung」には「SA時のコック」、「利用すること」、「バイアスをかけること」など多くの意味があります。設計チーフの名をとったというこのケラーマンシステムについてはまだよく分かりません。日本の専門誌が詳しくレポートしてくれるといいんですが)。

近々別れる?:アメリカ軍の9mmベレッタとの色恋沙汰は決して特別にお熱いものではなかった。実戦投入におけるいくつかの失敗(しばしばマガジンにも原因がある)に基き、たぶんまもなく大規模な新調達が番を待っている。

競争相手:P2000はP10の発展型であり、そしてこれによりH&KのUSPシリーズのさらなる子孫でもある。この銃は今やP99がすでに採用しているような交換可能なグリップ後部をも持っている。ワルサーは元々DA/SA銃として整備されていたP99を、今や需要の担い手の希望に応じてバリエーション豊富な表面コーティング、トリガーシステム、トリガーキャラクターで供給している。左:モダンな特殊部隊の外観像は、このオーストラリアのSASトルーパーのようにまだMP5によって特徴づけられている。

なしではいられない:グリップフレーム前部のマウントレールは今日公用ピストルモデルにおいて放棄しがたいものである。P99クイックアクションもこれを持っているし、同様にSIGプロ2009から発展したプラスチックフレームのフランス警察用SP2022もそうである。この銃はクラシックなDA/SAトリガーを持つ。

発展型:ドイツ連邦国防軍もP8として使用しているUSPとP2000のダイレクトな比較は、マテリアルがスライドのどこから取り除かれているかを示す(頑住吉注:P2000はひっかりにくくするためだけでなく軽量な新しい警察弾薬に対応するためスライドのエッジが大きく落とされて軽量化されています。)。P2000のグリップ後部は交換可能で、さらにハンマー左隣のボタンによってデコックが行われる。

官庁の希望に向けた良好なラインナップ:ザウエルのP226はFBIやSASも含めた多数の警察および特殊部隊で採用されている。P228はブランデンブルグ州の警察ピストルである。P229とP239は.40S&Wおよび.357SIGのために困難を取り除き、SIGプロシリーズ、そしてそれによりP250DCcの前段階ともなった。閉鎖システムの原理からして、そしてその操作は全てダイレクトに祖先たるP220由来である。使用者は学習し直す必要がない。

これも供給範囲に属す:SP2022は工場渡しでフレーム内に鋳込まれた「Transponder」(頑住吉注:これは英語です。日本では「応答機」などと訳されたり、「トランスポンダ」と呼ばれたりもするようです)つきで供給される。これは銃のアイデンティフィケーションを分解することなくスキャナーによって可能にするものである。このような方法のエレクトロニクスによる情報キャリアおよびサインは将来ほとんど全ての公用ピストルに与えられることになる(頑住吉注:要するに削り落とされてしまうおそれのあるシリアルナンバーだけでなく、プラスチックフレーム内部に非破壊検査で銃の出所を特定できる電子部品を鋳込んでおくということのようです)。右:オランダ海軍特殊部隊BBEのスペシャリストたちはMP5をすでにトレーニングおよびいくつかの状況において限定された数量で使用しているのみである。それに代わるものはすなわちFN P90である。

アンダーカバー:非常にしばしばドイツ警察は、そのスタンダード警察ピストルとならんで、女性や市民の中に投入される警察官に供給するサブコンパクト、ただし操作や構造が等しいものがあるかどうかに依存して発注を行う。写真上のAS(アンチストレス)トリガーを持つバリエーションのP99cでは、トリガーはコック状態のSA時でも前のポジションに留まる。上右:連邦海軍はM8を特に彼らのフリゲート艦の船上チームが、ユーゴスラビア海岸や「アフリカの角」で船に乗り込んで制圧する必要に迫られたときにも必要とし、また使用している。

未来の夢:SAABボフォースは2000年8月、初めて彼らの近距離領域兵器(「CBS MS」)の新しいバージョンを発表した。UZIプリンシプルにしたがってグリップフレーム内に20および30発マガジンがロードされる。オープンボルト、クローズドボルトが選択できるリコイルローダーであり、バレルを簡単に交換することによって9mmx19が発射できる。しかし第一には新しい6.5mmx25用に調整されている。この弾薬はアルミ薬莢を持ち、弾頭重量は2g、初速は815m/sで戦闘射程距離は400mまでである。この銃はエンプティ状態で2650g、全長はストック収納時363mm、伸長時565mmである。(頑住吉注:「Bofors CBS MS」で検索しても見つかりませんでした。「Bofors PDW」で検索すると、「CBJ MS」という銃の情報に行き当たりました。 http://www.securityarms.com/20010315/galleryfiles/2000/2018.htm 覚えている方は少ないでしょうが、このホームページ発足からあまりたたない頃、アメリカの「スモールアームズレビュー」誌に掲載されたこの銃にコラムで触れたことがあり、また同時期にコンバットマガジンにもほんの少し情報が掲載されていました。しかし今回「Visier」に掲載されているのはまったく別の銃で、「CBJ MS」がスチールプレスを主としているのに対し、「CBS MS」はプラスチックが多用されています。たぶんまだネット上にもあまり情報がない新製品または試作品なんでしょう。ちなみにボフォース公式サイトにも情報はないようです。 http://www.saab.se/dynamics/ )

PDWのパイオニア:MP5K(写真のモデルは折りたたみストックを持たない)はすでに長い間SEK、ボディーガード、パイロット、コマンド用の火力の強いミニサブマシンガンとして使用されている。この銃はNATOで1962年から1982年までに標準化された9mmパラベラムを発射する。右:.40S&Wは運動量が大きすぎる10mmオートを短縮するところから生じた。アメリカ警察においてこの弾薬は1986年の「マイアミ銃撃戦事件」以後9mmパラベラムと交代した。ただし昨年頃から.357SIGがその場所を見出している。

惰性モデル?:いくつかの「顔のしわ伸ばしの美容整形」にもかかわらず、プルーフされたFNハイパワーは今日公用マーケットにおいてほとんど競争力がない。イギリス部隊も来年この銃と分かれる。

力の代わりに量:左はP90による25mからのフルオート1連射の結果でグルーピングはたった7cmである。これは至近距離においては複数の命中が得られ、5.7mmの細い2gの弾丸が非常に壊滅的な効果になるということである。P90から発射した場合の初速は715m/sで、棒状マガジンは50発を収納する。20連発ピストルであるファイブセブン(12cmバレル)から発射した場合の初速でも依然650m/sの数値になる。リコイルはH&Kの4.6mmx30の場合と全く同様に実に快適である。P90はピストルの場合と違って両手保持の射撃姿勢ではほとんどターゲットラインから動かない。MP7同様P90は最初からサイレンサー、そしてキャリングハンドル上のマウントレールのおかげでレーザー/ライトモジュールを装備できる。
 
オランダのベストの装備:王国海軍の特殊部隊BBEはKSK、SAS、GSG9からのミックスであり(頑住吉注:意味不明です。ドイツやイギリスの特殊部隊で訓練を受けた人材で構成されているということでしょうか)、リスクを伴う実戦投入で真価を示してきた。BBEは1990年代末にすでにメインの銃器として携帯していた。USシークレットサービスの個人守護者同様ファイブセブンも使用している。

サイドアーム:FNがP90の「対をなすもの」としてファイブセブンを販売しているのに似て、H&Kも2003年にMP7の4.6mmx30を使用する「ウルティメットコンバットピストル」(UCP)のプロトタイプを提示した。この銃は2005年に量産に移行する予定である。重量は20発マガジン込みで690g。

ハンディ:MP7はピストルのように太腿ホルスターに入れて携帯でき、ショルダーストックを伸ばさずに射撃できる。左の写真はドットサイトと補助サイトをピカティニーレール上に装備したバージョンだが、スコープやナイトサイトも受け入れ可能である。ノーマル弾薬である1.7gの銅メッキした全スチール弾付きの「コンバットスチール」とならんで、現在2gのトレーサー、変形弾、「こわれやすい」弾、スプーンノーズ弾、「ウルティメットコンバット」の各型、2.7gのフルメタルジャケットソフトコアを越えて5gのサブソニック弾まで、全ての官庁の希望とシチュエーションに備えるために存在している。海兵隊もP90とMP7の比較テストを実施している。どちらのシステムがNATOにおいてレースの終わりにPDW注文を獲得するか、あるいは全ての標準化の望みにもかかわらず両方が選ばれるかは目下未解決のままである。

より強い逆風:(頑住吉注:P90やMP7のようなPDWだけでなく)G36Cのようなウルトラショートコマンド型もそうこうするうちに多くの特殊部隊においてかつて非常に愛用されていたMP5にとってかわっている。重量と外形寸法上MP7は非常に大きな長所を提供する。中でも室内、車内での捜索、近距離戦闘において。9mmパラベラムは50〜100mにおいてすでにその限度に突き当たる。特に遮蔽物、障害物、防護ベストの貫通の際には。だから最小のサブマシンガンと.223ショートライフルのミックス武装はより需要を満たす(頑住吉注:この場合「最小のサブマシンガン」はMP7を指すのではないかと思います。タイトルの「より強い逆風」は、MP5に対するもので、特殊部隊用銃器の花形だったMP5の時代もいよいよ終わりが近くなってきたようです)。


 全体に「ドイツ製品は絶好調だし今後もどんどん伸びていくぞ」というトーンで、やや割り引いて読まねばならない気もしますが、現在公用ハンドガンが約20年ぶりの大きな転換期にあるという指摘はなるほどと思いました。イギリス軍がハイパワーを捨て、アメリカ軍もベレッタM9を更新することを検討していること、グロックの伸びが鈍化し、アメリカメーカーもも伸び悩んでいる一方ドイツ製ハンドガンが評価を高めていること、特殊部隊兵器の代表だったMP5の時代がついに終わろうとしていることなどがそれで、5.7mmx28や4.6mmx30のような小口径PDW弾薬を使うハンドガンが9mmパラベラム仕様の軍用ハンドガンにとってかわり、またPDWがMP5にとってかわるという可能性が示唆されています。「効力とはエネルギー伝達である」と考えるドイツ人にはエネルギーの大きい小口径弾に不安はないわけですが、果たしてどうでしょうか。逆に言えばこれらが米英軍に採用されれば実戦で「効力とはエネルギー伝達である」が真か否かが否応なく証明されることになるでしょう。PDWに関してはP90とMP7が争っていますが、まだ結論は出ておらず、NATOでは絞りきれずに両方が採用される可能性も考えられるということです。個人的には例えばマシンガンナーがサブとしてMP7を「太腿ホルスター」に入れて携行することは充分可能ですが、P90の場合それよりかなり負担が大きくなると思われることなどから、PDWとしてはMP7を採用し、P90が欲しいような場合は極端にバレルを短縮したアサルトカービンで間に合わせればいいような気がします。何度も書きましたがP90の重量は最軽量のアサルトライフルと大差ないわけですし。ただ、ちょっとだけ登場したボフォースのPDWも気になります。この銃の公称の有効射程は既出のPDW弾薬より長く、口径が大きいだけでなく簡単に9mmに転換できることからより多くの人に抵抗なく受け入れられそうです。ひょっとしてボフォースが「漁夫の利」なんてことはないでしょうか。
 一方警察ピストルとしてはプラスチックフレームが完全に主流となり、DAOが伸びてきているようです。ただDAOにはトリガープルの重さという問題点もあり(まあそこが長所でもあるんですが)、そこでワルサーのアンチストレスやザウエルのケラーマンシステムのようなストロークは長いが軽く引けるという変則システムも試みられています。また、銃が奪われた場合のためにDAOでもマニュアルセーフティを備える動きもあるようです。同じ「Visier」でかなり厳しく評価されていたタウルスPT24/7(DAOでマニュアルセーフティつき)は案外この要求に合わせたものだったのかも知れません。そしてアメリカの公用ピストルでは.357SIGが伸びる傾向だということです。これはボディーアーマーへの貫通力や車両への効果が大きいことが理由であると思われ、警察がテロリスト相手のより厳しい戦いを想定せざるを得なくなっていることのあらわれかもしれません。






戻るボタン