台湾の新たな双胴巡視艦は「空母キラー」か

 スタイルの変わった「軍情視界」の2回目です。

http://military.china.com/topic/vision/11138177/20141022/18885325.html


軍情視界第81期:台湾海の新たなる野望

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「沱江級巡視艦は台湾が建造するウェーブピアシング型双胴巡視艦で、第1隻目の原型艦は2012年11月2日に着工され、2014年3月14日に進水式が行われ、艦名が『沱江』号と定められた」)

両岸の実力の比率の変化と共に、以前は大型水上艦艇の開発に熱中していた台湾海軍は近年来また中、小型ミサイル艦艇に対し濃厚な興味を生じさせ、かつこれをもって日増しに強大になる大陸の海軍に対し某種の「非対称の優勢」を建立することを企図している。9月27日に航海試験を開始した「沱江」号ミサイル巡視艦には、台湾海軍によってこのような期待が寄せられている。

三十年河東、三十年河西 (頑住吉注:「世の中のことは変化し盛衰は常ならず」といった意味だそうです)

国民党政権が台湾に敗退した後より、いかにして台湾海峡の制海権を保持するかがその主要な戦略的考慮となった。この種の状況下で、その海軍建設も当然重要中の重要事になった。しかし、海軍というこの種の現代工業の支えを必要とする軍種に関して言えば、台湾当局自らの力量に頼ったのでは明らかに手に余り、「強大」な海軍を建立するには、さらに「友邦」の支援に頼る必要があった。

1970年代から、アメリカは屑鉄に近い価格で(1隻あたり10万アメリカドル前後)台湾向けに第二次大戦の期間に建造された退役駆逐艦の大規模な輸出を開始した。台湾海軍の多数の「陽」の字のつくクラスの駆逐艦のルーツはここである。こうした財産に頼り、台湾海軍は1970年代に一度アジア最大の駆逐艦部隊を持ったが、この光栄は一時のことだったと言える。

この時、「旅大」級ミサイル駆逐艦(頑住吉注:051型)はすでに建造が開始されていたが(これはアメリカが台湾向けに大規模に駆逐艦を販売した主要な原因でもあった)、まだ規模は形成されず、大陸の海軍は依然として「陸上基地航空隊、潜水艦、快速艇」をメインとし、台湾海軍の優勢は非常に顕著だった。

だが、アメリカ人が与えたのは全て第二次大戦時の古い艦で、武備が立ち後れているだけでなく使用寿命にも限りがあり、改良を幾度も経たが1990年代になるとやはり次々に退役した。この時、島内経済発展の恵みを受け、台湾海軍はすでに「第2世代艦計画」を開始していた。購入、賃借などの方式を通じ、台湾海軍は当時比較的先進的だったいくつかの種類のアメリカ、フランス製駆逐艦、護衛艦に換装し、水上艦艇の技術レベルは大幅な向上を得た。これに比べ、大陸の海軍はすでに駆逐艦、護衛艦メインの時代に入っていたが、艦艇の技術レベルの上では依然、台湾海軍が購入してきたこれら「舶来品」と同列に論じられず、特に防空と対潜方面ではそうだった。まさにこの種の技術上の優勢にも基づいて、台湾当局に何と「武力をもって統一を拒む」の美しい夢を見せた。

だがまさにいわゆる「三十年河東、三十年河西」である。新世紀に入って以来、大陸の経済、科学技術などの領域の急速な発展と共に、艦の建造レベルと質にも非常に大きな向上があり、例えば052D、052Cのたぐいの国際的に先んじた水準を持つ艦艇が出現しただけでなく、艦の建造速度も今では昔の比ではなく、ネット仲間たちがしばしばふざけて「1年で1つの艦隊に着工し、1つの艦隊が進水する」と称するような結果となった。発展がかくのごとく迅速な大陸の海軍に直面し、台湾海軍は購入に頼ったのではすでに対応し難く、いくつかの国があえて売らなくなったこともあるのでなおさらだった。止むを得ず台湾は「非対称」の路線を行き始めるしかなく、大量の対艦ミサイルを搭載した小型艦艇をもって大陸の脅威に対抗することを希望した。「沱江」号ミサイル巡視艦はこうした背景の産物なのである。

(頑住吉注:これより3ページ目。画像のキャプションは「沱江級巡視艦の艦体はレーダーから姿をくらます設計を持ち、艦首にはステルス砲塔版の76mm速射砲1門を配備し、上層構造の後部には雄風3型および雄風2型ミサイル発射ボックスが設置され、上層建築の後端にはさらにファランクス近接武器システム1基が装備されている。」です。)

人を不可解にさせる設計

2009年には早くも、台湾海軍にはもう新型艦艇研究開発の計画があり、かつこのために2010年度の「国防予算」の中にいわゆる「迅海重大案件」が入れられ、「ステルス、快速、強火力」の小型艦艇の開発を計画していた。2012年11月2日、この計画の第1号艦に正式に着工され、1年半の建造を経て、この500トン前後の艦艇はついに2014年3月14日に進水し、かつ「沱江」号と命名され、艦ナンバーは618である。

台湾海軍が公開した資料によれば、この艦の全長は60.4m、全幅14m、喫水深度2.3m、標準排水量502トン、航続力は2,000海里で、8〜12隻の建造が計画されている。大陸の022ミサイル艇の影響を受けてのことと見られるが、「沱江」号は小水線面双胴設計(頑住吉注:英語では「small waterplane area twin-hull ship」と言うそうです)を採用し、このため甲板面積が広い、耐波性が強い、横向きの安定性が良いなどのメリットを持ち、武器の配置も比較的容易である。

外形から見て、この艦の上層建築は艦艇本体とぴったりつながり、移行は自然で、かつ内向きに傾斜し、マストも大きな傾斜角を呈するレイアウトである。また、前甲板には遮蔽式設計が採用され、ステルスに有利なだけでなく、高められた艦首はより大きな波浪にも適応できる。この艦の設計からは、台湾海軍がそのステルス性能を保障するために苦しんで技量をつぎ込んだことも見て取れる。だが全体構造について言えば、衛星アンテナ、火力コントロールレーダー、近接防御砲などが外部に露出し、依然全体的ステルスに対し一定の破壊をもたらし得、「ウィズビー」級(頑住吉注:スウェーデン)のような全ステルス艦艇には遠く及ばない。

「沱江」号の武器の設置もすこぶる特色を持つ。艦首の1門のステルス版76mmオート・メラーラ艦砲は対艦もできれば防空もでき、艦尾にはファランクスシステムがある。しかも対艦能力に対する強烈な追求から、この艦は艦体中部に8発の「雄風」2および8発の「雄風」3ミサイルを搭載しており、非常に目を引く。こうした「大きな武器」の他、「沱江」号はさらに4挺の12.7mm機銃を搭載し、戦時には若干の「スティンガー」ミサイルの搭載を選択し、もって防空能力を増強することができる。

動力の上では、「沱江」号はディーゼルエンジン+ウォータージェット推進の配置を採用し、最高航行速度は38ノットに達している。このうち、エンジンには直接的に「錦江」級ミサイル巡視艦のMTU16V 1163 TB93型ディーゼルエンジンを採用しているが、2台のエンジンを使用する「錦江」級の航行速度が25ノットでしかないことを考慮すると、この艦は装備数を4台に増加している可能性が高い。

シンプルさを追求するためか、それとも自信満々だからかは分からないが、「沱江」号の電子設備は甚だしきに至ってはより早い時期の「錦江」級の完備ぶりに遠く及ばず、航海レーダー、「大成」データリンク、艦砲火力コントロールレーダー、衛星アンテナしか装備しておらず、1つの完備された探知計測システムを形成し得るには遠い。このことは人に、、まさかこの艦をサイズの大きいミサイル搭載艦としてのみ使用するのか?、と疑うのを禁じ得なくさせる。

最も興味深いのはこの艦の尾部の大きな空いた甲板で、レイアウトから見てヘリの発着区の位置に違いない。だが「沱江」号の当初の模型から見て、この位置はまさに空いているようで、ヘリ発着のマークが決して表示されていない。進水後の画像でもいかなるヘリの降着補助設備も決してはっきりと示されてはおらず、逆に非常に多くの雑物がここに配置され、人を相当に不可解にさせる。

(頑住吉注:これより3ページ目。画像のキャプションは「沱江級巡視艦の設計概念はアメリカの沿海域戦闘艦(LCS)を主要な設計の青写真とする」です。)

幻の「空母キラー」

「沱江」号の出現は、一度台湾世論界のひとしきりの歓呼を引き起こした。台湾メディアはこの艦のSF的に見える外観によって引きつけられたのか、それとも16発にも達するミサイル搭載数に震撼させられたのかは分からないが、何とこれに「空母キラー」の称号を与え、この艦は大陸の空母の脅威に有効に対応できると宣伝しているが、事実は本当にこのようなのだろうか?

空母の打撃を語るには、まず空母との接触を実現する必要がある。だが台湾海峡の東西200kmを超えない幅という状況について言えば、陸上基地対艦ミサイルであっても海峡の大部分の海域をカバーでき、決して大型水上艦艇の作戦に利はない。このため、たとえ最終的に台湾問題を武力で解決する極端な状況が出現しても、空母が台湾海峡に赴くことはないだろう。しかも陸上機の航続距離を語れば、台湾全島をカバーするのに全く充分であり、このことはさらに蛇足で空母を海峡あるいは海峡付近の作戦に派遣させる必要をなくさせる。つまり「沱江」号に接触の機会を非常に与え難い。当然、戦時に空母が台湾島西側に迂回し、その防御の薄弱な部分に対し空中の打撃を行う状況は排除できない。ならば、「沱江」号はこの種の対抗の中で空母に打撃を与えることができるのだろうか?

空母にとって、艦載戦闘機の最も遠い警戒範囲は数百kmに達し得、さらに艦載早期警戒機の探知計測範囲はこの距離をはるかに超える。一方「沱江」号が搭載する「雄風」2および「雄風」3ミサイルの最大射程はそれぞれ170および130kmでしかなく、空母を打撃しようとすれば生存を確保する条件下でこの有効範囲に進入することが必須であるが、殲ー15というこの艦載機の面前では、空母から170km以内まで防御を突破するのは明らかに「沱江」号が達成し難いことである。

「沱江」号が生存を保証するのに頼みとするのはそのステルス性能と航行速度だが、そのステルス設計から見て、対艦ステルスの達成が基本的に合格なだけで、対空ステルスは数組のミサイル発射ボックスだけでもう非常に大きな反射を形成し、空中からの捜索から逃れ難い。高い航行速度は対艦ミサイルの被命中率を低下させ得るが、現有の艦艇の速度より顕著に高いことが必須であり、38ノットの航行速度は低くないように見えるが飛躍的な向上では決してない。「沿海域戦闘艦」は47ノットに到達していることを知る必要がある。

もしこうした要素を全て考慮せず、空母を某場所の海域に置いて「沱江」号に打撃させても、この艦は必ずしも空母を発見できない。何故ならこの艦は基本的な対艦探知計測能力を決して具備していないからである。その外界に対する感知は主に「大成」データリンクに頼るが、戦時になれば「大成」データリンクを支持する台湾の早期警戒探知計測システムは打撃の下で生き残れるだろうか? 生き残ってリアルタイムに空母の情報を掌握できるだろうか? このことから見て、「空母キラー」は自分を慰めるスローガンおよび空想に過ぎないのである。

未来の野望

実は、「沱江」号の完成の台湾に対する意義はそれでも比較的大きいのである。最終的な技術状態はまだ知り難いが、この艦は結局のところ現在まで台湾が自ら研究開発、製造した最も先進的な水上艦艇であり(「成功」級は図面に基づいて建造したとしか言えない)、トン数もかろうじて艇クラスを離脱できる。暫時の成功は台湾海軍に巨大な鼓舞を与え、さらには彼らに「大躍進」計画を幻想させたのかもしれない。

先日明るみに出た情報によれば、「沱江」号が航海試験を開始したばかりという状況下で、台湾海軍はまた「迅海第二段階」計画を始動するつもりであり、500トン前後の「沱江」号を2,000トン前後の護衛艦に拡大しようとしている。もしただ単に艦体を拡大したら比較的現実に即さず、計画の中ではさらにこの護衛艦のためにフェイズドアレイレーダー、MK-41垂直発射システム、「天剣」2対空ミサイルなどの先進的な武器システムを装備するに過ぎず、決して「沿海域戦闘艦」を真似てこの艦に多種の作戦能力を具備させようとはしておらず、飛躍が大きいとは言えない。だが現在の状況下では、この護衛艦の結果は決して人を好意的に見させない。

2,000トン級の双胴護衛艦は決して台湾海軍の最終的な追求の対象ではなく、台湾当局者がメディアに明らかにした情報から見て、11月に正式に発表される台湾海軍の今後20年の艦建造計画の中には、10〜15隻のこの護衛艦の他、さらに4隻の10,000トン級の大型駆逐艦、4〜8隻の排水量1,200〜3,000トンの潜水艦、および数量不詳のドック上陸艦があり、食欲が大きくないとは言えない。しかし、外部の援助に頼らない下で、台湾が20年の時間内に500トンから10,000トンにまで飛躍するのは、実際に則さない野望としか言えず、この計画に比べれば、やはりアメリカの中古軍艦がよりちょっと現実的である。結局のところ、「保護費」はいつも払う必要があるのである。


 仮に批判を全部認めたにしても、現実的に可能な選択肢の中ではこれが一番大陸の脅威に対抗しうる可能性が高いのでは、とも思えますが。実際の使用の中でいろいろ改良もされていくでしょうし、ヘリポート云々は少しの手直しでどうにでもなる問題としか思えません。
















戻るボタン