殲ー20艦載化は簡単なことではない

 急進的な前進翼デザインの想像図が出るなど中国では殲ー20艦載化への期待が高まっていますが、それをたしなめるような記事です。

http://military.china.com/jqsj/039/index.html


殲ー20艦載化にはまだ難点あり

第4世代重戦闘機の艦載機への変身にはまだ非常に多くの技術的改良が必要

イントロダクション:アメリカの「週刊航空」、日本の「読売新聞」などのメディアの最近の報道を総合すると、中国の殲ー20ステルス戦闘機が艦載バージョンを派生させ、中国の空母に搭載される可能性があり、このことは日本の神経を緊張させた。ネット上には同様に非常に多くの艦載型殲ー20のCG画像も出現し、見たところ殲ー20が空母に搭載され艦載機となることには皆の期待が寄せられている。だが、この性能がずば抜けた第4世代重戦闘機は艦に搭載される条件を具備しているのか否か? (頑住吉注:それ以前に性能がずば抜けているかどうかも分からんのですが)

第4世代戦闘機の空母搭載に向けた発展の趨勢は顕著

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「中国が第4世代艦載機を開発するのは必然の趨勢」)

アメリカのある軍事定期刊行物の文章は、すでに何回もの試験飛行を経た殲ー20は4〜5年内にはもう量産され就役すると見られる、と推測する。この戦闘機はステルス性と超音速巡航能力を持ち、さらに先進的航空電子システムを配備し、アメリカのF-22戦闘機に対抗できる。中国海軍の計画によれば、中国空母は将来超音速巡航能力を持つ戦闘機を装備することになり、このことは中国海軍は艦載版殲ー20に対し期待に満ちていることを意味している。報道は、殲ー20の艦載バージョンは2020年前後に就役し、かつ毎年約20機の速度をもって中国海軍に装備される可能性がある、とする。

単に空軍だけではなく、解放軍海軍も同様に殲ー20というこの重戦闘機を必要とする。原因はごく簡単で、もし将来米日の空母が搭載するF-35Bと遠洋で戦闘する時、殲ー15を用いてこれと対抗するとしたらどんな有利さも占められない可能性があるからである。だが殲ー20に換えればもう全く問題なく(頑住吉注:それも現時点では言い切れんでしょう)、殲ー20の戦力化後は全世界の範囲内でF-22しかこれに対抗できないと見られる。さらに、殲ー20の航続距離と弾薬搭載量は大きく、非常に強い対艦対地攻撃能力を持ち、これも海軍艦載機が必要とするものである。

殲ー20の空力レイアウトはまだ艦載機の要求に完全に符合しない

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「殲ー20後退翼バージョンは『艦への搭載』に関する討論を引き起こした」)

艦載機の視界は1つの重要な指標である

中国海軍の未来の空母艦隊が超強力な戦力を持つ遠洋打撃戦力であることは皆が希望しているが、もしある陸上基地戦闘機を強引に空母に持ち込もうとしたなら、それは明らかに充分理性的なことではない。殲ー20は多くの優勢を持つが、だとしても現在の殲ー20が適した第4世代艦載機であることは絶対に意味しない。機の設計方面で、高速飛行と短距離離着陸は調和させることがごく難しい矛盾であり(頑住吉注:前者には高い翼面荷重、後者には低い翼面荷重が必要、ということですね)、しかも艦載機の外形設計に関する要求はさらに突出したものである。艦載機の視界は重要な指標の1つで、艦載機飛行員が外部に対し視察を行う視界は良好であることが必須であり、もって着艦時により安全さを加え得ることを保証する。一般的状況下では、空母艦載機は8度の角度をもって下降接近し、前下方に対する視野の角度はおよそ15〜17度必要である。飛行員に充分な視野があることを保証するため、設計者たちは艦載機の研究開発時、往々にして下方に垂れ下がった機首、コックピットの高さを増すという方法を採る。もし飛行抵抗が増大しても決して惜しまない。米軍のF-18のコックピットは比較的高く、一方我々の殲ー20のコックピットが明らかにより低いことが見て取れる。

殲ー20の空力レイアウトはまだ艦載機の要求に完全に符合しない

艦載機の高速という指標と短距離離着陸という指標に矛盾が発生した時、一般に機の発着に対する要求が優先して考慮される。いくつかの場合にはむしろ超音速性能を犠牲にしてでも発着性能を満足させる。艦載機の空力外形設計の原則の第1位は揚力アップ、第2位にやっと抵抗軽減なのである。飛行機の設計の上に体現されるのは、中等小さめな後退角(20〜45度)、中等大きめなアスペクト比(3.5前後)である。一方殲ー20の主翼前縁の後退角は49度に達し、明らかにより大きな主翼の後退角は低速最大揚力特性と圧跨声速升阻(頑住吉注:意味不明です。「声速」は音速ですが、「升阻」は抵抗上昇ではないかと思いますが違うかもしれません。以後も意味不明なものは簡体字を日本の漢字に直すだけにします)特性に対し不利である。ついでに一言言えば、殲ー20が採用する揚力体ストレーキ、エンテ式レイアウトは本来すでに極めて複雑な脱体渦流場を持ち、またエンテ翼と垂直尾翼の4つの全体が動くコントロール面が設計され、さらに加えて3次元ベクトルノズルがあり、飛行コントロールの複雑さはF-22の何倍にもなる。艦載機の飛行性能は確かに主に外形と動力によって決まるが、その操縦性と安定性はやはり空力設計とも密接に関連している。例えば垂直尾翼の形状、方向舵の面積、補助翼の位置、水平尾翼の尾容量などのパラメータがいずれも飛行の品質に対し重要な影響を生むのである。

大型第4世代機の発着は空母のカタパルトと制動装置に試練を与える

カタパルトは40トンクラスの機を発射して離陸させることが非常に難しい

理由があって、中国の未来の空母はカタパルト発進方式を採用することになると信じる。だが脚を強化し、構造強度を増加し、着艦フックを加え、さらに一歩低速性能を向上させればすぐ陸上基地飛行機を艦に搭載できるように簡単に考えるというこの視点は、明らかに緻密さが足りない。実際には空母のカタパルトの発射能力と制動システムの制動能力も重要な制約要素である。艦載機に対するカタパルトおよび制動システムの能力は有限であり、向上させることもできるが、相応の代価を支払う必要もあり(体積や寿命)、このためこの制限も考慮することが必須の事項なのである。

カタパルトは発射パワーで評価される。別の言い方をすればどのくらい重いものをどのくらいの速度で射出できるか、である。アメリカの蒸気カタパルトの発射重量は40トンを超えず、電磁カタパルトでも40トンに達する発射能力は持っていないようだ。何故ならパワーに対する需要が余りに大きいと各方面の難度が全て非常に大きくなるからである。カタパルトという部分に困難があるだけではなく、制動ケーブルもある適した範囲内で作動するべきである。制動能力の上限を上げることは同時に下限にも影響する。このため制動能力も適した範囲というものを必要とする。カタパルトが40トンクラスの機を発射して離陸させることはごく難しいし、制動システムもセットでこの種の重量に適応するのは難しい。中国には現在まだカタパルトを応用した経験がなく、米軍の水準に到達できるか否かまだ言い難いが、陸上基地版殲ー20の最大重量はもうすでに37トンに到達しているのである。

殲ー20の海上適応性はまだ不明確

カタパルトと制動システムの能力の範囲が理解されたら、F-22や殲ー20のような機が艦に搭載されるのは何故難しいのかを見ていくことができる。まさにいわゆる「重量が1%増加したら性能は1%低下する」というやつで、超音速巡航能力を持つ第4世代機はそれ自体標準離陸重量が重めで、30トンクラスに達する。だがもし艦に搭載し、さらに構造重量を増加して降着の衝撃に関する要求を満足させたら、さらに一歩重量が増加する。カタパルトの発射能力は限られているので、重量を増大させ続けるのは不可である。構造重量の増大は弾薬搭載量や燃料を制限する。また超音速巡航に有利な空力およびエンジンの選択は亜音速での航続距離方面において制限を受け、これは逆に航続距離や滞空時間というより重要な指標に影響する。また、いくつかの硬性の技術指標だけでなく、殲ー20の艦載機への改装は主翼の改造や海上環境への適応など多くの問題に直面する。現段階の新世代戦闘機の主要なステルス手段はステルス塗装層の採用であるが、この種の塗装層は乾燥した環境の中でもあまり安定せず、海上の塩分を含んだ霧のある環境の中ではより信頼できなくなる可能性がある。アメリカのF-35の艦載版は現在まさにこのような問題に直面している。

各国の一部の主力空母艦載機

アメリカ海軍のF/A-18戦闘機

F/A-18はアメリカのマグダネル・ダグラス社およびノースロップ飛行機社がアメリカ海軍のために研究開発した艦載単座超音速多用途戦闘/攻撃機である。1980年5月にアメリカ海軍に引き渡された。

フランスの「ラファール」艦載戦闘機

「ラファールM」は13の搭載ポイントを持ち、弾薬搭載量は9,000kgを超え、このうち5つの搭載ポイントはサブタンクあるいは大型弾薬の搭載に使え、「DEFA791B」型30mm機関砲を配備する。

中国の「殲ー15」艦載機

中国の「遼寧艦」空母の艦載航空兵力の主力は殲ー15戦闘機である。殲ー15艦載戦闘機のコンピュータシステムの性能は相当にずば抜けており、例えばメインコンピュータは高速計算能力上スホーイー33を数倍上回っている(頑住吉注:現時点でもそうなんですかね。ひょっとして中国がウクライナから入手した古い試作機との比較では)。

国産航空エンジンは依然艦への搭載の要求を満足させられない

艦載機にとって強力な「心臓」は極めて重要である。普通の陸上基地飛行機に比べ、艦載機はいくつかの方面で動力装置に対する要求がより過酷で、その信頼性と加速性はより高いことが必須である。カタパルトがない状況下では、大推力エンジンでスキージャンプ発進することができ、我が国にもこの技術能力がある。だが燃料搭載、弾薬量いずれにも非常に大きな制限があり、ロシアのスホーイー33もそうである。ベクトルエンジンによって短距離陸軍を実現することもできるが、やはり欠点は搭載重量が限られ、作戦距離が短いことである。

ある資料は、殲ー20は将来渦扇ー15エンジンを使用することになる、とはっきり示している。このエンジンとアメリカのFー119はいずれも重量1.5トンである。制動による着艦が生じさせる高い過負荷と衝撃は、高い受け入れ能力のある機体構造と脚の設計を必要とし、機載設備もこれらの要求を満足させる必要がある。こうしたことは艦載機の空虚重量が一般にこれに対応する陸上基地飛行機の重量に比べ10%前後増加する結果をもたらす。だが殲ー20の最大離陸重量は37トンに達しており、空虚重量を軽減したければ、武器搭載量を減らして火力と持続作戦能力を弱めるか、電子設備の搭載を減らして作戦機能を低下させるかである。あるいは搭載燃料を減少するかだが、エンテ式レイアウトは本来すでに航続距離が短く、さらに減らせばもっと低下する。もし各方面いずれでも要求の引き下げに首肯しないのであれば、我が国とアメリカの材料、構造等の方面の隔たりにより、殲ー20の空虚重量は疑いなくF-22より重くなる。当然、国産航空エンジンはずっと中国航空工業発展のボトルネックであり、このエンジンの性能が将来要求を満足させられるか否かはまだ未知数である。もし未来の空母がスキージャンプ発進方式を踏襲したら、艦載型殲ー20は燃料と弾薬搭載の上で必ずや巨大な犠牲を払う必要があり、その戦闘力に深刻に影響する。

専門家の評論

孫聡 

殲ー31が次世代艦載機となり殲ー20と組み合わせられることを希望

「完備された空中戦力と国家の戦略思想の相互ミックスでより強調されるのは、一定の時間内の持続打撃能力で、ハイローミックスの装備により、最低の代価の支払いで持続打撃能力が完成される。」と彼は語る。同時に「鶻鷹」機(殲ー31)の総設計師も担当する孫聡は、「鶻鷹」機が将来殲ー20とハイローの任務ミックスを行い、持続打撃能力を保持することを希望し、同時に「鶻鷹」の改良版が中国の次世代艦載機になり得ることをも希望している。(頑住吉注:「同時に」というのは殲ー15を主題とした文章から流用しているからです)

宋心之 (頑住吉注:元中国空軍にいた専門家)

米日が艦載版殲ー20を騒ぎ立てるのはいずれもF-22を多く買うため

宋心之は、日本とアメリカにはそれぞれのそろばん勘定がある、とする。日本はアメリカのF-35が買いたいのだが、その性能はおそらく殲ー20に対抗できない。殲ー20に関し騒ぎ立てることで大義名分と正当性をもってアメリカから性能がより強大なF-22を買うことができる。だがF-22は180機しか生産されず、もう生産停止となっており、将来もし空戦が発生したらF-22戦闘機の数はおそらく不足する。米軍は議会により多くの軍事費を拠出させ、アメリカ空軍にさらに一定数のF-22を装備させることを希望しているのだ。

杜文竜 (頑住吉注:空軍専門家で大佐)

殲ー20とF-35は同じランクではない

ひゅうが号(または22DDH)にはこの種の打撃条件下でまだどのくらい多くの生存確率があるか、これには非常に大きな疑問符がつく。もしこの種の状況下で我々のその時のステルス戦闘機である殲ー20あるいは殲ー31はF-35と同じランクではなく、ずっと高い位置にある。これらはハイローミックのハイエンドの機であり、我々が直面するのはアメリカ人のハイローミックスのローエンドの機であり、このためこの角度から見て第5世代機F-35の撃退に対し天然の優勢がある。

ネット仲間の調査

あなたは殲ー20の艦への搭載に影響する主要な要素はなんだと思いますか?

空力レイアウト 16.13% 150票

脚 15.81% 147票

航空材料 1.94% 18票

エンジン 24.63% 229票

機の全体設計 40.33% 375票

その
他 1.19% 11票

総票数 930票

世界初の第4世代艦載機「F-35C」

海軍認知ウェブサイト2013年6月22日の報道によれば、ロッキード・マーティン社はフロリダ州エグリン空軍基地でアメリカ海軍第101戦闘機中隊(VFA)に対し最初のF-35C「ライトニングII」空母艦載型を引き渡した。F-35Cはより高い敏捷性、兵力投入能力、艦載機連隊と連合任務部隊の打撃能力を持ち(頑住吉注:ちょっと意味分かりません。記述が間違ってるんじゃないかと思いますが)、さらに一歩現在の海軍の主要戦闘攻撃機F/A-18E/F「スーパーホーネット」の作戦能力を補充することになる。

結び

上述の艦載機設計の要求と技術的基準の中から、先進的な固定翼艦載機というものは相当に容易ならざるものだ、ということを見て取るのは難しくない。現代の艦載機は、設計の難度が大きく、構造重量が大きく、技術的要求が高く、製造コストが高く、機載システムが複雑で、保障作業が複雑であるなど多くの特徴を持つ。それらは各項目の航空先端技術の結晶であり、ある国家の総合的な国力を体現したものだと言うことができる。

第4世代戦闘機の基準の確立者であるアメリカ製のF-22は全世界で現在唯一の現役第4世代機で、我々はこれらの制限を理解した後、殲ー20が艦への搭載に適するか否かに対しより正確な判断を持つことになる。我々は性能がずば抜けた第4世代戦闘機を艦載機として持つことを非常に希望する。そうなれば我々の空母艦隊の戦闘力も顕著に向上する。だが、現在見たところでは殲ー20をもし艦載機としたいなら、まだ非常に多くの技術的難点が存在し、もし艦への搭載を必要としなくても非常に大きな改良が必要で、しかもいくつかの第4世代機が本来持つべき高い技術指標に妥協や譲歩をする必要がある。


 ここのところ余りにも楽観的で現実離れした記事が目立つんで、「大丈夫か? ちょっと落ち着け」なんて書き、知識不足で細かい指摘はできませんでしたが、この筆者の言いたいのはこれに近いことだと思います。
















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