世界初のグリップセーフティを装備したサブマシンガン

 今回も国内ではあまり知られていない、しかし歴史上大きな意味を持つサブマシンガンに関するページの内容を紹介します。

意大利TZ-45


イタリアのTZ-45:グリップセーフティを初めて使用したサブマシンガン

あるサブマシンガンがある。第二次大戦終結数か月前に生産に入り、イタリアの敗戦とともにこの銃も最期を迎えた。この銃の生産数は多くないが、率先してサブマシンガンに自動式グリップセーフティを採用したことにより重要な地位を占める。これこそイタリアのTZ-45サブマシンガンである‥‥。

TZ-45サブマシンガンはイタリアのTonon GiandosoおよびZorzoli Giandoso兄弟が1945年、第二次大戦終結数か月前に設計したもので、世界初の自動式グリップセーフティ装置を持つサブマシンガンである。この銃はすでに人々から忘れられているようだが、設計と技術上なされた突破において、戦後各国のサブマシンガンの発展に一定の促進作用を引き起こした。

イギリスのステンサブマシンガン、ドイツのMP40サブマシンガン、アメリカのM3サブマシンガン同様、TZ-45も第2世代サブマシンガンに属する。グリップが木製であることを除き、この銃は完全に金属製であり、トリガー、トリガーガード、バレルジャケット、マガジンハウジング等はいずれも金属板をプレスして作られている。TZ-45サブマシンガンはベレッタ社が生産したが、同社がその前に生産していたM38系列サブマシンガンと比べると、TZ-45の加工は荒かった。

TZ-45のストックは2本の鉄棒から作られ、自由に伸縮できた。この点はM3サブマシンガンと非常に似ている。このストックは縮めた時、前端がバレルジャケット下方に溶接されたガイドプレートの穴の中に挿入された。このガイドプレートにはもう1つ機能があり、それは当時よく行われた車両の中でマズルを射撃ポートから突き出して射撃する時、ガイドプレートを射撃ポートにひっかければ、射手は銃が車両の揺れのために保持して射撃できなくなることを心配する必要がなかった。ドイツのMP38系列およびMP40系列サブマシンガンのバレル下に装備されているフックも同様の機能を持つ(頑住吉注:反動でマズルが装甲車両の車内に引っこんで装甲板の内側を撃ち、跳ね返った弾丸が乗員を殺傷するのを防ぐため、という説明を見たことがあり、この方が納得できる説明のように思えますが)。

TZ-45のマガジンはベレッタM38サブマシンガン系列のマガジンと全く同じで、このため互換できる。この銃は発射機構ベースの右側にセレクターが装備されており、セーフティ、セミオート、フルオート各状態の間で切り替えができる。セレクターレバーが後方を向いているとセーフティを表し、銃は撃発できない。セレクターレバーを時計方向に60度回すとセミオート発射位置となる。セレクターレバーを前方に向けると、フルオート発射位置となる(頑住吉注:下の画像で分かるようにまっすぐ前までは回りません。セミオートが中間位置なら回転角度は120度ということになります)。フルオート時の理論上の発射速度は毎分810発である。

あらゆる第2世代サブマシンガン同様、生産過程でTZ-45も長時間の遅れおよび予算節約のための数多くの改修を経験した。第二次大戦終結前の最後の数か月間に、イタリアは全部でおよそ6,000挺のTZ-45を生産した。1950年代初期、ビルマ政府はこの銃の生産権、金型、生産機械、工具を購入した。報道によればGiandoso兄弟は自らビルマに行って技術指導を提供さえした。この銃はビルマで新たにBA-53サブマシンガンと命名されたが、生産数は非常に少なかった。



(頑住吉注:これより2ページ目)

初めて自動式グリップセーフティを採用

TZ-45サブマシンガンには最も称賛に値する点が1つあり、それはまさにこの斬新かつ独創的な特徴ゆえにでもあり、この銃を唯一無二のものにし、武器発展史上における地位を確立させている。‥‥すなわちこの銃は世界で初めて自動式グリップセーフティを設けたサブマシンガンなのである。

これ以前に出現したサブマシンガンは全ていろいろなマニュアルセーフティ装置を設けていた(頑住吉注:グリースガンのようにセーフティらしいセーフティを持たないものもありましたが)が、これらのセーフティは全てあまり信頼できなかった。もし使用者がセーフティオンにするのを忘れたら、そうした銃はただちに意図しないケースで撃発して思わぬ傷害を引き起こすかもしれない。マニュアルセーフティと異なり、TZ-45が採用した自動式グリップセーフティは、平時においてはオンになり、使用者が射撃時に手でグリップを握りしめた時だけセーフティが解除される。セーフティ状態の時は、ボルトがコックされていようが前進していようがセーフティはボルトを固定し、使用者が安心してマガジン交換できるようにするのである。

この自動式グリップセーフティを設計する時、多くの思考が費やされた。当時この種のセーフティの概念と実現方法は、サブマシンガンに関してはなお空白に属していたが、拳銃に関してならすでに新鮮とは言えなかった。コルトM1911拳銃にはすでにこの種のセーフティが全ての型に使用されていたからである(そのグリップセーフティはグリップ後方に位置する)。自動式グリップセーフティの設計理念は、それが生まれた30年余り後になって、Giandoso兄弟によって初めてサブマシンガンの設計に応用されたのである。だが彼らは単純にM1911拳銃のグリップセーフティの設計を模倣したわけでは決してなく、別の方法を取った。より簡単な方法を用い、L字型の自動式グリップセーフティをマガジンハウジング後面に設計したのである。このような設計の目的は、兵士が右手でトリガーを引くのと同時に、左手で都合よくグリップセーフティを握りしめられるためだった。

TZ-45サブマシンガン主要緒元

口径 9mmx19
作動原理 ストレートブローバック
発射速度 810発/分
空虚重量 3.2s
全長 845mm(ストック伸ばし) 552mm(ストック縮め)
銃身長 254mm
給弾具 10、20、32、40連ダブルフィードボックスマガジン
機械式サイト ピープ式リアサイトとポスト状フロントサイト

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「TZ-45同様にベレッタ社製のM38Aサブマシンガン。この銃の加工製造はTZ-45と比べ、よりきめ細かい」)

前進撃発式設計

TZ-45は前進撃発式設計を採用している。前進撃発の原理はReinhold Bakerによって最初に発明され、まず口径200mmの「Baker」自動カノン砲に用いられた。後にこの原理は自動火砲と大威力銃器(例えば対戦車ライフル)に広く応用されるに至った。第二次大戦中に対空火器として広く使用されたウィルリコ速射砲もこの種の原理を採用していた。この原理は簡略化設計を経て、サブマシンガンに広く応用されるに至った。

前進撃発原理は実はストレートブローバック式原理の一種であり、伝統的なストレートブローバック式原理と異なるのは、弾薬が撃発した後、ボルトが一定の距離さらに前進を継続することである。

伝統的なストレートブローバック式原理を採用した銃器の中では、火薬ガスは静止したボルトの慣性を克服する必要があるだけであり、これを後方に押せばチャンバーの開放、薬莢の引き抜き、排莢等の動作が完成する。一方前進撃発原理を採用した銃器の中では、火薬ガスは前進するボルトの慣性を克服し、かつこれを後方に押さねばならず、こうしてやっとチャンバーが開放されるのである。前者に比べ、チャンバーの開放により多くの火薬ガスのエネルギーを消耗する必要がある。このようにすれば2つのメリットがもたらされる。すなわち1つにはボルトが前進する力によってチャンバーを閉鎖するのであって、普通のストレートブローバック式銃器のようにボルトが静止状態でそれ自体の重量によってチャンバーを閉鎖するわけではない。このため前進撃発原理を採用した銃器は、そのボルトの重量がこれに応じて減少し、そういうわけで銃全体の重量もこれに応じて減少するわけである。もう1つは、ボルトを後退させ、チャンバーを開放するのにより多くの火薬ガスのエネルギーを消耗する必要があるので、銃の後座感がはっきりと減少し、銃のコントロール性と射撃快適性も改善されるに至るはずである。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「デンマークのM50サブマシンガンのグリップセーフティ(上)とイタリアのTZ-45サブマシンガンのグリップセーフティの対比。TZ-45サブマシンガンにあるL字型セーフティの装着位置がはっきり見える。兵士がTZ-45サブマシンガンを保持し、セーフティを操作する時に握るのはL字型セーフティの、比較的支点から近い力点である。一方M50を操作する時に握るのは比較的支点から遠い力点である。機械原理からすると、TZ-45サブマシンガンの設計には明らかに弊害があり、兵士の操作に不利である」)

(頑住吉注:これより3ページ目)

設計に欠陥あり

TZ-45が自動式グリップセーフティをマガジンハウジング後方に装備したことは、グリップセーフティの操作を自然かつ確実なものにしたが、この設計は決して完璧なものではなかった。主な欠点は2つある。1つめは、この銃は両手を組み合わせて操作することしかできず、片手で独立した操作ができないことである。2つめは、兵士たちが銃を保持して射撃する時、左手が握るのはL字型グリップセーフティの、比較的支点から近い力点である。テコの原理からすると、兵士がグリップセーフティを解除する時により大きな力を要する。グリップセーフティの支点から比較的遠い作用点が、今まさに往復運動しているボルトに影響を及ぼすことを防止するため、兵士はグリップセーフティを非常にしっかりと握りしめることが必須で、ほんの少しでも緩めてはならない。さもないと、ただちにボルトの運動速度の低下、ひどければ不発さえ起こり得る。

デンマークのマドセンM50サブマシンガンにもこれと類似したグリップセーフティがある。ただしそのL字型の力点、支点、作用点間の長短の組み合わせはちょうどTZ-45の逆である。兵士がM50を使用する時、L字型の支点から比較的遠い力点をちょうど握ることができ、この種の設計は握るのに力がいるという問題をまさに解決している。

第二次大戦終結後間もなく、世界初の、片手で射撃でき、グリップセーフティの操作もできるサブマシンガンが出現した。これこそ旧チェコスロバキアのZK467サブマシンガンである。ただしこの銃の生産数はきわめて少なかった。後にイスラエルのウージーサブマシンガンがこの種の設計理念を継承し、世界で最も有名で、生産量も最大の片手でグリップセーフティの操作を行うサブマシンガンとなった(頑住吉注:しかしUZIのグリップセーフティはテコのように作動するのではなく前後にストレートにスライドするものであり、マルシンのモデルガンが実銃に近い使用感なら、あまり快適ではないのではないかと思われます)。

(頑住吉注:ちなみに「ZK467」で検索するとこんな画像が出てきました。 http://en.valka.cz/attachments/4461/ZK467.jpg グリップセーフティがあるようには見えません。さらに検索すると「ZK476」という銃が出てきました。 http://forum.valka.cz/attachments/4461/1314346660_ZK476.jpg どうもこれの間違いのようですね)

グリップセーフティの設計に欠陥がある他に、TZ-45にはもう1つ蛇足的な設計がある。2段式リコイルスプリングである。これは全く不必要に設計を複雑化させている。ベレッタM38サブマシンガンとTZ-45のボルトの直径はほとんど同じだが、M38のリコイルスプリングはより簡単に設計されている。2種類のリコイルスプリングの射撃に対する影響を対比するため、TZ-45の直径が比較的小さく、構造が比較的複雑な2段式リコイルスプリングを取り出し、M38のリコイルスプリングに交換してみる。本来の2段式リコイルスプリング使用時、TZ-45の発射速度は810発/分であるが、一方M38のリコイルスプリング使用時には発射速度はかえって816発/分に達した。このことからTZ-45に使用されている2段式リコイルスプリングは必要なく、射撃性能にはっきりした向上は全く見られず、構造がより簡単なリコイルスプリングはでも同様の性能を達成させることが完全に可能であることが分かる。

(頑住吉注:原ページのここにある画像の部品名称は3つともグリップセーフティです)

上から下に、TZ-45サブマシンガン、マドセンM50サブマシンガン、イスラエルのウージーサブマシンガン。TZ-45とM50のグリップセーフティは銃全体の前部に設置され、両手で操作しての射撃が必要となる。一方ウージーサブマシンガンでは、兵士はトリガーとグリップセーフティの操作を片手で行える。

歴史上の地位は争い得ない

著名なベレッタM38系列サブマシンガンと比べると、TZ-45サブマシンガンはより生産が容易で、売価がより安いが、この2つの理由からだと人々がGiandoso兄弟がかつてこのようなサブマシンガンを設計したことを記憶しておくのはおそらく困難だろう。この銃は世界で初めてグリップセーフティを使用したサブマシンガンであり、そのグリップセーフティの設計は充分成功とは言えなかったが、サブマシンガンに関して言えばグリップセーフティは非常に必要性の高い設計である。

欠点は存在するものの、Giandoso兄弟設計によるTZ-45サブマシンガンは依然サブマシンガン発展史上の重要作品の1つであり、サブマシンガンの「第一号」の1つを確実に占めていて、この地位は歴史の中にあって揺らぐことはなく、争い得ないのである。


 翻訳をあらかた終えた後でこんなページを見つけました。

http://www.smallarmsreview.com/pdf/TZ45.pdf

 どうもこれを元にしたものだったようです。真上、真下からの写真は貴重ですね。しかし今回紹介したページの内容は決してこの記事の翻訳ではなく、オリジナルにない内容も一部盛り込まれています。

http://www.youtube.com/watch?v=6aoueQwzX4c

 非常に珍しいこの銃の実際の射撃の動画です。

http://bbs.tiexue.net/post_4607755_1.html

 内容は同じですが、このページには銃に合わせる装備品の画像がありました。

 「前進撃発」については以前ここで触れましたが、その時に抱いた疑問は解決されないままです。














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