現代ドイツ、スイス軍にも存在する「都市伝説」

 前回ドイツ語版「Wikipedia」のG36に関するページを紹介しましたが、その中に「キャリングハンドル上にあるフロント、リアサイトからなる照準具は、リフレックスサイトを持たない(例えばスペイン陸軍に使用されている)G36の輸出バージョン用近接戦闘サイトに過ぎない。ネジと接着剤でマウントされているリフレックスサイトを叩き落とす試みは、たいてい3つ全てのサイト設備の破壊という結果になる」という、背景を知らないと意味不明な記述がありました。実はこれは現代のドイツ軍に広まっている「都市伝説」を打ち消したものです。今回はこれに関する、そしてついでにスイス軍に広まっている「都市伝説」に関する、サイト、「WaffenHQ.de‥‥die Welt der Waffen」内のページの内容を紹介します。

 ちなみにこのサイトは目的のページに直接行けない困ったサイトです。

http://www.waffenhq.de/index1024.html

 ここから、左にあるメニューのうち「Specials」をクリックし、表示されたページの「Infanterie」(歩兵)という項目のうち、「"Urban Legend" - Teil I」をクリックしてください。


「都市伝説」の終わり その1


G36リフレックスサイトの叩き落とし実験

 ドイツ連邦国防軍には多くの「都市伝説」がある。……人がいつも、そして再三にわたって聞き、かつていつか誰かによって生じたはずの、世代を越えて兵士によって受け継がれていく作り話である。これには、当然防衛事態のみに支給される伝説に包まれた装備上の対象も含まれる。日々使用される家庭用品の秘密の機能や性質のようにである(頑住吉注:いまいち分からんのですがこの部分は本題とあまり関係がないのでいいことにしましょう)。

 これにはG36のサイトも含まれる。輸出バージョン(リフレックスサイトなしで供給される)のキャリングハンドルには、単純なリアサイトと小さなフロントサイトからなる緊急サイトが存在する。だがリフレックスサイトのマウントによってこれはもはや使えなくなる。このため、狙い定めた一撃によってリフレックスサイトが分離するのだと考えられた。この噂はG36採用の当初から部隊のあちこちに広まり、絶滅させ得ないように見受けられる。一部の教官がまさに銃器訓練においても、この嘘を広め続けている。この小さな真相レポートは、これを限りにこの「ナンセンス」を取り除く試みである。

 実際のところこのリフレックスサイトは2本の4mmネジによって固定され、追加的に接着されている。そして決してそう簡単に分離するものではない。だが我々は画像に語らせる。画像は千の言葉より物を言う。

 次にリフレックスサイトの叩き落としが試みられた。最初は素手でだが、この結果は痛む手に現れたのみだった。ここまでにおいてサイトは損傷を受けなかった。木の板、そして後にはハンマーという補助手段を使って初めてこの部分を分離させることができた。

 ちなみにこれにより納税者には何のコストも生じていない。コストはテストに参加した人々によって分担して負担された。

 我々はさらに次のように指摘したい。これに使われた銃はG36Cのソフトエア模造品である。ただしキャリングハンドルはオリジナル部品である!

(頑住吉注:原ページには以下画像が並んでいますキャプションは順に

1枚目:「G36C。このテスト開始前この銃はこう見えた。」 ちなみに「Notvisierung」というのが「緊急サイト」です

2枚目:「テスト開始前の側面からの外観」

3枚目:「叩き落し後の側面からの外観。接着痕に注意。だがさらに追加的にネジ止めされていた。」

4枚目:「一部分離された。」

5枚目:「さらなる側面からの外観。」

6枚目:「下から見た破断したキャリングハンドル。」

7枚目:「上から見た破壊はかなりなもの。」

8枚目:「さらなるディテール。」

9枚目:「このサイトの戦闘価値はゼロである。」)


 スペインなどで使われている輸出版は1.5倍スコープだけでリフレックスサイトを持ちません。このスコープが曇り、破損などの理由で使えなくなったら一切狙えなくなってしまうのでは困るので、キャリングハンドル上に簡単なフロント、リアサイト(緊急サイト)が設けられています。同様のものはL85A1やAUGにも見られますが、いずれも照準長はピストル並み、またはそれ以下で、まあ「ないよりまし」程度のものでしょう。この緊急サイトはドイツ軍バージョンでも存在はしますが、リフレックスサイトで隠されて使用はできません。これは単にH&Kがパーツを共用としただけのことで、ドイツ軍バージョンのそれには意味はないんですが、そうとは知らない兵士たちは使用不能の緊急サイトを見て首を傾げました。そして、「これはいざという時はリフレックスサイトを叩き落せば使えるようになっているんだろう」と思った兵がいて、それがいつの間にやら事実として広まってしまったわけです。これは「使用不能のサイトが存在した」、「銃の大部分がプラスチック製だった」という2つの要因が揃わなければありえなかった事態と思われます。もちろんプラスチック製とは言え軍用銃のサイトを手で叩き落せるわけはなく、道具を使って無理に叩き落そうとすればキャリングハンドルごとぶち壊れて緊急サイトも使えなくなってしまうというのが事実でした。

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「都市伝説」の終わり その2

ライフル弾薬GP90の使用

 ドイツ連邦国防軍同様スイス陸軍にも多くの「都市伝説」が存在する。……人がいつも、そして再三にわたって聞き、かつていつか誰かによって生じたはずの、世代を越えて兵士によって受け継がれていく作り話である。

 おそらくほとんど全てのスイスの新兵は遅かれ早かれ聞くことになる。「Stgw90(SIG SG 550)はSS109NATO弾薬を発射できるが、ライフル弾薬90(以下GP90と呼ぶ 頑住吉注:スイスの制式弾薬)はNATO銃で発射できない。弾丸の径が5.56mmの代わりに5.6mmだからである。」

 これは誤りである。
 GP90の5.6mmという名称の理由は、スイス陸軍がコンマ以下をきれいな数字にならしたことである。GP90とSS109の弾丸は構造と重量が異なる。GP90は4.1g(63グレイン)の鉛製コアを伴う弾丸、一方SS109は4g(62グレイン)で鉛とスチール製のコアを持つ。両方の弾丸は直径が.224インチもしくは5.689〜5.69mmである。バレルの内径は.219インチもしくは5.56mmである。それゆえ弾丸の直径はいくらか大きい。弾丸がこれによってバレル内での誘導を得るからである。

 唯一正しいポイントは、ニッケルメッキされたスチールジャケットを持つ古いGP90弾がエロージョンによるバレルの消耗を助長することである。(スチールジャケットはトムバック製ジャケットのように良好にライフリングに適合しない。これによりバレルと弾丸の間からより多いガス漏れが起き、これは命数にネガティブに影響する。だが正確な数値は残念ながら手元にない、あるいは発表されていない)しかし1997年におけるトムバックメッキされた弾丸の採用により、この問題も解決された。

注:GP90の画像の下にある弾丸は比較用であり、広く普及した.223系コンポーネントである。ノギスはより良いビジュアル化に役立つ。数値は追加的にマイクロメーターでチェックしている(頑住吉注:原ページではこの下に、スイス軍用弾丸と一般的な.223の弾丸がノギスで計測されており、いずれも0.569インチという数値になっています)。


 要するに「我がスイス軍用の弾丸はNATO用の弾丸よりも微妙に大きくなっていて、これに合わせた銃身でNATO弾は発射できるが、NATO弾用の銃身からスイス軍用の弾丸は発射できない。」という噂が広まっているがこれは誤りで、単にスイス軍が数字をはしょって表記しているだけ、というのが事実なわけです。この話に「もしNATOと戦争になっても、敵は鹵獲した我が軍の弾薬を使えないが我が軍は使える。これは高度な戦術的配慮である。」といったニュアンスがあるのかどうかは分かりません。











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