元祖サブマシンガン? Villar Perosa

 「Visier」2005年5月号に、イタリアの軍事博物館と、そこに展示されているVillar Perosaに関する記事が掲載されていました。ご存知の通りVillar Perosaはピストル弾薬をフルオートで発射した最初の火器であり、サブマシンガンのルーツであるとも、コンセプトや用途からサブマシンガンとは別のものであるとも言われています。有名な銃ではありますが、国内ではあまり詳しく紹介されたことがないと思います。記事は6割くらいがVillar Perosaに関する内容、残りは博物館の紹介ですが、ここでは前者のみに絞って内容をお伝えします。


そのマシーネンピストーレはイタリアン(頑住吉注:ドイツ語のマシーネンピストーレはいわゆるサブマシンガンのことで、特にピストル強化型の小型サブマシンガンを指すわけではありません)
 外観上だけではなく、「Villar Perosa」は(頑住吉注:マシーネンピストーレよりも)むしろミニサイズのマシーネンゲベール(頑住吉注:マシンガン。直訳すればマシンライフル)を思い出させる。2つの空マガジンつきで、このダブルバレル銃は約7.9kgの重さがあった。西部戦線における突撃の際の塹壕乗り込み用としては、このマシーネンバッフェ(頑住吉注:フルオート火器全般を指す言葉のようです)は重すぎ、扱いにくすぎたはずである。だが、この技術的才能ある将校Revelli(1864〜1930)の構造は、山地では完全に軽減措置としての価値を持っていた。比較してみよう。ドイツ同盟(頑住吉注:第一次大戦時のいわゆる同盟側をドイツではこう呼ぶんでしょうか)のMG08/15は(頑住吉注:水冷式なので冷却用の)水と弾薬込み、銃架なしで19.5kgの重量があった。「Comando 7a Armata,Reparto Mitraglieri」(頑住吉注:「a」は自乗の「2」のように7の右上に小さな文字で表記してあります。イタリア軍内の組織でしょうが説明がないので詳しくは分かりません)はRevelliの構造を「pistola mitragliatrice mod.1915」つまり「マシーネンピストーレ」と名付けた(頑住吉注:黄色部分がサブマシンガンにあたるイタリア語で、これで検索するとトップはベレッタ公式のM12S2の紹介ページでした)。だが、1921年に発行されたドイツパテントナンバー373345はこの銃を次のように定義していた。「〜2つの独立した、しかし構造的に同調された閉鎖および発射設備を持つマシーネンゲベール」。イタリアパテントのベースとなる申し込みはすでに1915年9月8日に行われていた。この小さなマシーネンゲベールは、バイポッドと防盾を装備され、近距離用の火力支援目的で歩兵部隊に到着した。しかし、各25発のピストル弾薬用両マガジンおよびフルオート装備は、Villar Perosaをその投入目的にもかかわらず、技術的に、そして歴史的に、全てのマシーネンピストーレの母としているのである。

名は体を表わす
 すなわち、Giovanni Agnelliは助産術をなしとげた(頑住吉注:意味不明ですが、この開発者の名前の中に助産術と関係ある語句が含まれているのではないかと思います)。かつての騎兵中尉はその断固たる態度と明確に現われた戦略的思考に向けた能力ゆえに1902年、将官には昇進できなかったにもかかわらずFIATの「Geschaftsfuhrer」(頑住吉注:「a」と「u」はウムラウト。辞書には「経営責任者」、「取締役」、「マネージャー」、「支配人」、「経営者」、「業務管理者」などの意味が出ています。ずいぶん幅があってどれにあたるのか不明です)になった。彼はVillar Perosaを、同名の出生地にある「Officine di Villar Perosa」内で製造させた。この小さな作業場は今日に至るまで家族閥Agnelliのように1つの概念である。abbrica taliana di utomobili orinoの出発点として(頑住吉注:予備知識がないこともあってさっぱり分かりませんが、おおよそVillar Perosaを製造した小さな作業場が国際的に有名な自動車メーカーであるフィアットの出発点であることが知られている、とiいった意味ではあるまいかと思います。 http://www.fiat-auto.co.jp/about/index_c4.html ここは日本におけるフィアット公式サイトの歴史紹介ページです。 http://www.fiat.com/cgi-bin/pbrand.dll/FIAT_COM/fbrand/fbrand.jsp?BV_SessionID=@@@@0464923265.1117557080@@@@&BV_EngineID=ccceaddekffdemicefecejgdfiidgng.0&categoryOID=-1073762968 一方こちらは本家公式サイトの歴史紹介ページです。 これらによればフィアットの設立は1899年、最初の工場設立は1901年とされており、まあ当然かもしれませんがVillar Perosaに関しては全く触れられていません。)。

 当時FIATの「Gesellschafter」(頑住吉注:「社員」、「(共同)出資者」、「共同経営者」。これも幅が広すぎでよく分かりません)はまだフォーミュラ1やフットボールクラブのことは考えておらず、まず最初にはたっぷり稼ぐことを考えていた。すなわち戦争のさなかである1916年、Agnelliはアメリカの手本にならってヨーロッパ最大の自動車工場を建設した(頑住吉注:本家公式によればLingotto工場のことのようです)。戦争はこの株式会社の儲けを力強く上昇させた。FIATはマシンガンとならんで軍用トラック、飛行機、救急車、U−ボート用エンジンも製造した。

 急速だったのはVillar Perosaもである。すなわち、理論的な発射速度はバレルごとに1500発だった(頑住吉注:毎分。「理論的な」というのは実際に休みなく1分間撃ち続けられるわけではないという意味で、毎秒25発の速度が実際には得られなかったという意味ではないようです)。その特徴的な音ゆえに、イタリア人たちはこの縮小マシーネンゲベールに「Pernacchia」のあだ名を与えた(頑住吉注:「ペルナッキア」。イタリア語でブーイングのことだそうです。例えばトイガンでもMGCのイングラムやLSのL85A1などのようにあまりに発射速度が速いと発射音が断続的に聞こえず、「ブー」という連続音のように聞こえることがありますが、この銃の場合もブーイングのように聞こえたわけでしょう)。これは「furzahnlichen」(頑住吉注:「a」はウムラウト。辞書に載っていませんが、「Furz」という単語が「つまらないことで大騒ぎする」という意味なので、それに近い意味ではあるまいかと思います)なこのマシーネンピストーレの騒音の、わずかに美文調の書き換えである。

秘密事項
 Revelliのオープンボルト銃は最も単純な構造方式の、高い説得力のある力学的閉鎖原理で機能し、これは今日に至るまで円筒形薬莢使用の際に真価を示している。ボルト体はその重量慣性に基いて作用し、追加的にカーブであやつられて変速される。ボルトの重量慣性が射手の安全を図り、ダイレクトに作用するガス圧によって閉鎖解除される。高い発射速度を達成するため、その重量は比較的小さくなっている。ボルト体の重量不足は、ダイレクトにカーブであやつられる変速システムが埋め合わせている。レシーバーに固定され、45度の斜面になった「あやつるカーブ」が、ボルト体上の突起を通じてボルトを回転させる。「あやつるカーブ」の斜面を乗り越えるまでである。このシステムは例えばボルト後退の遅延には役立たず、(駆動技術的変速比i=1:0.7により)弾丸がバレルを去ってしまうまで、弾薬薬莢のなお許される膨張道程のために配慮している(頑住吉注:この説明はさっぱり理解できず、特に黄色部分がおかしいように思うんですが、ロッキングシステムではないが、動き始めにボルトを回転させることによってほんのわずかに後退を遅延させるということでいいのではないかと思います)。このアイデアは完全に新しいものではなかった。というのは、すでに1911年にゲッティンゲン(頑住吉注:ドイツ、ニーダーザクセン州の都市)出身のRobert Schraderが「円筒形回転ボルトを持つ自ら活動する火器」用のアイデアをパテントによって保護することに成功していたからである。Revelliがこの、あるいは他のパテントからインスピレーションを受けたのかどうかは、残念ながらもはや分からない。

 ボルト自体は単純な、一部中空の円筒からなっている。リコイルスプリングはボルトとファイアリングピンを同時に駆り立てる。これらはボルト体の最も前のポジションの直前になって初めてプライマーを起爆させることができる。ハードラバー円盤がボルト後退のショックを和らげる。

システムサイクル
 Revelli大佐は彼の銃をフルオートオンリーとした。このマシーネンピストーレは6つの局面で作動する。局面1においてはボルト体はトリガーに保持された発射準備状態の位置にある。局面2において、トリガーの操作後にボルトは弾薬をマガジンからチャンバー内に導く。ボルト体はこのとき最前部位置にあり、弾薬はファイアリングピンによって点火される。局面3においてガス圧上昇終了後にボルト体の突起は「あやつるカーブ」上を上にすべる。この結果ボルト体のオープン道程は短縮される。カーブはボルトを軽く回転させる。局面4において弾丸はマズルを通過する。ボルトのオープン道程はここで5mmの膨張および安全道程に対応する。この際Villar Perosaに使用される円筒形の弾薬薬莢は限度領域内の荷重をかけられる。局面5において弾丸はバレルのマズルを遠ざかる。ボルト体上に取り付けられた突起はこのとき「あやつるカーブ」の上の角に位置している。最終局面においてボルトはさらに後方に向かい、バッファーまですべる。薬莢は投げ出される。トリガーが放されないと、ボルト体は新たな弾薬をマガジンからチャンバー内に導き、新たなシステムサイクルが始まる。

中途半端?
 今日まで、このVPとも略称される銃は、マシーネンピストーレともマシーネンゲベールともされている。だが、この銃はどちらにも部隊適性がなかった。イタリアの陸軍首脳部はVillar Perosaを軽機関銃と考えていた。だが、効果的な阻止および支援射撃用としては、ベルトからの強力なライフル弾薬の方が、虚弱な9mm弾薬よりも適していた。射手が両方のバレルから同時に射撃しなくても、彼は極端な発射速度ゆえに、絶えずこの軽く湾曲したボックスマガジンを交換しなくてはならなかった(頑住吉注:トリガーを引き続ければわずか1秒でマガジンが空になる計算です)。そしてAbiel Bethel Revelli大佐は、彼の創作物のターゲット内弾道を過大評価していた。この銃のサイトは500mにまで達していた。だが、弾丸はこの距離では有用な貫通効果をもはやもたらし得なかった。軽装甲されたターゲットに対しては、VPはより短い距離でもわずかのことしか成し遂げなかった。この鋤グリップ(頑住吉注:古い重機関銃などに多いハンドル形グリップのことです)を持つファイアースプレーは近距離銃としても同様にわずかしか役立たなかった。だが、Revelliもイタリアの将官たちもそのような問題を気にかけなかった。イタリアの山岳部隊は軽量な銃を求めており、そしてこの銃を得たのである。Villar Perosaは、近距離では応急の陣地からの射撃で充分危険な存在と分かった。このVIAT製の銃はバイポッド、トライポッドから、車載銃架あるいは防盾の背後から、考え得る限りの使用をされた。すなわち橇、自転車、サイドカー、ボート、気球、飛行船に乗せて。

 VPの収束弾道が敵に脅威であることは、この雑種の全ての戦術的欠点にもかかわらず、オーストリア人たちも思っていた。彼らは戦利品として分捕った銃を使用し、そしてこのVIAT製マシーネンピストーレを彼らの「Sturmpistole M18,Kaliber 9mmM12」(別名9mmステアー)仕様でコピーした。Revelliのマシンピストルがバイポッドまたはトライポッドつきで登場した一方、このオーストリア製の子孫はKraxe(背中に担うフレーム)にマウントされた(頑住吉注:例えばこんなのみたいです。 http://www.globetrotter.de/de/shop/detail.php?mod_nr=js_31001&artbez=Tatonka+Lastenkraxe)。

 Villar Perosaはスイス製のダブルマシーネンピストーレM1919システムFurrer(7.65mmパラベラム仕様、ピボット銃架用)、フランス製マシーネンピストーレS.T.A.1924(9mmx19仕様、バイポッドつき)、同じ弾薬仕様のチェコ製ZK383(頑住吉注: http://www.machinegunnest.co.uk/zk383.htm )のような他の開発品にもインスピレーションを与えた。

 だが、1920年、Revelliのマシーネンピストーレはさらに突然変異をとげた。イタリアの軍最高司令部はPerosaの欠点を知っていたにもかかわらず、未解決のまま留めていた。Hugo Schmeisserによって開発されたベルグマンマシーネンピストーレは、終戦直前に陣地戦における方向性を示していた。すなわち、フルオートで射撃されるピストル弾薬はハンディな近距離戦闘銃のものであるが、マシーネンゲベールのものではないということをである。戦後、後のベレッタのチーフ設計者Marengoniは(頑住吉注:Villar Perosaの)双子構造を短いプロセスで解決した。彼はVPを単純に分割し、今やシングルバレル銃となったこれに1本の新しいトリガーを木製ストックとともに与えた。この結果これはハイブリッドからまだ真のマシーネンピストーレにはならなかった。マガジンは上部に留まり、このVillar Perosaの新型は当時「OVP」の商号を名乗った。

Drucksache(頑住吉注:囲み記事。辞書には「印刷物」と言う意味が載っていますが、内容と合いません。たぶん「圧を高めるもの」といった意味ではあるまいかと思います)
 参考文献はしばしばVillar Perosa用の弾薬を「9mmグリセンティ」と述べている。だが、これは完全には正しくない。VP弾薬のオリジナルな名称は、「cartucce calibro 9mm,mod.915」と言う(頑住吉注:たぶん「キャリバー9mmモデル915カートリッジ」という意味だろうと思います)。Bolognaにある兵器廠はわざわざこのFIAT製マシーネンピストーレのために「栓」を持つグリセンティ弾薬を研究し直したのである。この、ベルダンプライマーを持つ、外寸では9mx19ルガーと等しいグリセンティ弾薬は、弱いがゆえにこのマシーネンピストーレを明らかに信頼性を持って機能させなかった。このマシーネンピストーレのボルト重量に適するガス圧に到達させるため、追加的に約7mm厚のRosshaar(頑住吉注:馬のたてがみまたは尾の毛。この場合どちらかは分かりません)製フェルト円盤を火薬上に置いた。この結果生じた圧縮火薬は先端ガス圧5000バールに達した。だが、0,05秒という短時間の後再び低下した。ノーマルなグリセンティの先端ガス圧はこの値より下である。この圧縮火薬をピストーレグリセンティモデル10で射撃すると、この先端ガス圧はあまりにも重い銃器の損傷を導いた。だからこのマシーネンピストーレ弾薬のための特別な名称には勧める価値がある。この「栓」がレザーで作られ、湿気防止として使われたら、レザーにすでに含まれているタンニン酸のために問題が生じただろう。VP弾薬には8gの重さの、前部4mmが細くされたハード鉛コアを持つフルメタルジャケットフラットノーズ弾が使われた。

VPのテクニカルデータ
銃器全長:595mm
銃器全重量:2つの空マガジンとバイポッド込みで7.9kg
点火システム:可動式で前進時にカーブであやつられるファイアリングピン。
発射機能:オープンボルト。フルオートオンリー。 
マガジン:2つの各25発入りダブルカアラムマガジン
トリガー設備:ボルト体にダイレクトに作用し、単独の射撃、両方のバレルからの同時射撃が可能。
セーフティ:両トリガーの機械的ブロッキング(ボルト体前進を防ぐセーフティは特にない)。
口径および弾薬:cartucce calibro 9mm,mod.915
弾丸の初速:400m/s
弾丸の初活力:640J
照準設備:機械的距離調節サイト、フロントサイト。
バレル:2つの平行に配置されたバレル。銃身長(弾丸を誘導する領域)297mm。
バレル内プロフィール:6条角型ライフリング。右回り。谷部の幅2.4mm、谷部の深さ0.13mm、谷部の直径9.08mm、山部の直径8.82mm、ライフリングの角度7度(コンスタント)。
チャンバー内プロフィール:全体に円錐形、円錐の角度(全体で)1度
(頑住吉注:ほんのわずかにテーパーがかかっているということのようです。薬莢にわずかなテーパーがあるのか、そうではなくガス圧がかかっても抜けやすくするためなのかは分かりません)。薬莢先端部における直径9.75mm。90度のフィーディングランプ部を除く長さ12.2mm。フリーボアの長さ6mm。
発射速度(理論上):バレルごとに毎分1500発。
ボルト:ボルト体重量(ファイアリングピン、エキストラクターつきコンプリート状態)273g。コッキングハンドルなしでボルト体をコッキングするための力100ニュートン(球状のコッキングノブをダイレクトに操作)。コッキングハンドルを使用した場合40ニュートン
(頑住吉注:本文では説明されていませんが、この銃には梃子を利用したコッキングハンドルがあり、これを使うと40%の力でコックできたということです)。「あやつるカーブ」の角度45度。レシーバー上の「あやつるカーブ」の斜面の高さ8mm。
レシーバー上の「あやつるカーブ」の表面硬度:52HRC(ロックウェル硬度)
ボルト体上の突起の表面硬度:55HRC


 検索してみたんですが、このVillar Perosaという名称は本文にもある通り生産地の地名と同じで、地元の観光案内のようなサイトばかりヒットします。「マシンガン」などを加えてさらに試みたんですが、あまり詳しくこの銃について説明されたサイトは見つかりませんでした。

 日本の参考文献では床井雅美氏の「最新サブ・マシンガン図鑑」以上に詳しいものはないのではないかと思いますがこれすら4ページです。ちなみにこの本の写真の銃と「Visier」のそれにはかなりのディテールの差があります。

 この銃はストレートブローバックと思われがちですが、実際にはロックこそないもののボルトが回転するシステムが追加されていたわけです。説明がよく理解できないのが残念ですが、一種のディレードブローバックと見ていいのではないでしょうか。「高い発射速度を達成するためボルトを軽くする」、「ボルトの重量不足を補うためにボルトを回転させる」、「弾薬がボルト重量に適さないので特殊な圧縮火薬を使う」と、どうもちぐはぐな印象で、ノーマルな9mmグリセンティ弾薬を使用するストレートブローバックの銃でも調整次第で充分いけたのではないかとも思われます。まあこれは史上初のピストル弾薬を使用するフルオート火器のことですから試行錯誤の過程で最善のものにならなくても仕方ないのかもしれませんが。

 ただ、一般に9mmパラベラムより低威力とされる9mmグリセンティですが、このデータによれば圧縮のおかげで9mmパラと同等の威力を発揮していたようで、これがなければ威力不足問題はより深刻なものになっていたでしょう。9mmパラより低威力の弾薬を外寸を変えずに同等の威力までアップしている点、従来のピストルに装填すると大事故につながるおそれがあるという点で、この弾薬はPMM弾薬に似ています。現場ではかなり混乱したんではないでしょうか。弾薬の断面図や分解した写真もありますが、本当に弾丸と発射薬の間に円盤状のフェルトを挟んだだけです。こんなことで威力アップできるならどうして多用されないのかは不明ですが、何かしら問題点もあるんでしょうね。

 銃の断面図のイラストもあり、非常にシンプルな構造がよく分かります。驚くのはプッシュ式のトリガーが支点をはさんで下、さらに前方に伸び、下からボルトを直接キャッチしていることです。トリガーを押すと先端部は下降し、ボルトをリリースするわけです。リボルバーはともかく自動火器でトリガーとシアが一体という銃はきわめて珍しいのではないでしょうか。トリガーは左右2本あり、単に左右同時に押せば同時に発射し、片方を押せば片方が発射するというだけです、本文にあるようにボルトとファイアリングピンは別体ですが機能としては一体のようです。ちょうどMP40みたいな感じだと思いますが、何を意図してこうしたのかはよく分かりません。マガジンが真上にあるので排莢は真下に行われ、PPSh41のようなサブマシンガンを上下逆にした感じです。リアサイトも微調節できるとされていますが、フロントサイトは5本あってそれぞれ100、200、300、400、500m用となっており、カチカチとワンタッチで切り替えられるようになっています。初めて見た防盾を装着した状態の写真もありますが、中心部にバレルを出すための丸い穴が開いたほぼ正方形(斜めからの写真なので正確には分かりませんが)の単純な形状のものです。厚さは目測で8mmくらいでしょうか。銃や脚を固定するボルトの頭は尖らせてあり、これはたぶん旧日本軍の戦車でもあった防弾性を高めるための配慮でしょう。日本戦車の場合あまり効果はなかったようですが。

 本文に出てくる、この銃をシングル構造に分割した銃というのは「最新サブ・マシンガン図鑑」P212に掲載されている「ベレッタM1918」のことかと思いました。床井氏は「第一次大戦末期に一部がイタリア軍によって戦線で使用された」とされていて、開発者の名前も一致しています。しかし「Visier」の記述では1920年となっており、戦後の話になってしまっています。どうも変だなと思って検索すると、

http://www.comandosupremo.com/Ovp.html

 こんなページがあり、両者は別ものでした。このページの記述は「Visier」のそれに近く、作動方式はやはりディレードブローバックとなっています。それにしてもまあ不細工な銃です。

http://www.earmi.it/armi/atlas2/650.htm

 ここにはイラストですが3種載っています。










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