セルフディフェンスに適した銃は何?

 「DWJ」2004年7月号において、ドイツではいわば「タブーテーマ」である銃を使ったセルフディフェンスに関する、いくつかの項目に分かれた特集記事が組まれていました。いずれも興味深そうな内容ではありますが、いろいろ他にも読みたい記事があるので、訳すのはとりあえずセルフディフェンスに適した銃の選択に関する項目だけにしておきます。


ディフェンス用の銃はコンパクトで強力なものであるべきである。

選択の苦悩

自己防衛のためのハンドガン、ドイツにもその携帯を許されている人がいる。一般の人より強い危険にさらされている人は銃器許可証とともに携帯してよいし、ハンターは少なくとも自分の狩場内では携帯してもよい。全ての場合において、どんな銃が最も適しているのかという問題が残る。これは一つの決定への助けである。

 ベストのセルフディフェンス用武器は何かという問題は、たぶん人類が初めて道具を使った時点以来のものであろう(頑住吉注:いかにもドイツ人らしい大仰な書き出しですね。ちなみに最初の「武器」の原語は「Waffe」という単語で、これには「武器」という意味も「銃」という意味もあります。ちなみにここでは関係ありませんけど「ルフトバッフェ」のように「兵科」という意味もあります)。戦闘技術および警棒、ナイフ、護身スプレーのような単純な道具と比べると、銃器が最も効果的な防衛手段であることはすでに証明されている。銃器は「イコライザー」であり、すなわち「肉体的に、あるいは数の上で上回る者が強い」という原理を大幅に無力化するものである。1挺のピストルで武装し、訓練を経た華奢な女性が、数の多い、体力に勝る例えばレイプ犯のような暴力犯人たちから身を守ることに高い確率で成功するのである。モラル上の、また法的な観点からのこうした防御手段の問題はすでに他のページで議論した。
 アメリカではこうした事実は多くの場所で再発見されている。そうこうするうちに、50州のうちすでに36州が、問題点の全くない、チェック済みの州民に「concealed carry permit」すなわち銃器を隠して携帯することの許可証を与えている。統計上の重要な結果として、暴力犯罪のレートが減少している! 犯罪者たちが効果的な抵抗を計算に入れなければならないと知っていることが、暴力犯罪から例えば不法侵入、窃盗のようなパーソナルコンタクトを伴わない犯罪への不法行為の移行を導いたのである。これは依然として不愉快なことではあるが、人間の生命は守られている。
 ドイツでは(今のところまだ?)銃器携帯許可証、いわゆる「Waffenschein」を手に入れるのはそう簡単ではない。それでも銃器を防衛のために携帯することを許されている人がいる。そういうわけで、多くの馴染みの人々によって議論されてきたものでもある、「どの銃がセルフディフェンス目的に最も適しているのか」という問題はやはり存在する。その際重点は銃器許可証所持者の個人的な防御に置かれるべきであり、そして限定的にハンターの問題もある。ミリタリー、ポリス用とは一部異なる目標設定であるため、セルフディフェンス用の銃の判断基準はミリタリー、ポリス用の銃の判断基準とは違っている。

その銃は何ができなければならないか
 その銃は、肉体および生命に対する違法な攻撃を、信頼性を持って防ぎ、またはやめさせなくてはならない。致死的なものになる可能性がある銃器の使用は、ドイツにおける裁判の判例から、防御における最後の手段としてのみ許され、攻撃や生命の危険が非常に切迫したものでなければならない。そういうわけで、それが使われる際の銃の効果(Wirkung)はできるかぎり迅速で効果的(effektiv)でなければならない。すなわち高い「マンストップ効果」がなければならない。弾道学的観点から、これに最も効果的なのはロングアーム、つまりライフルやショットガンである。しかしこれらを常時携帯できる人はほとんどいない。それに適していないからである。ここにディフェンスガンの意味がある。そうなるともう選択肢はできるだけ阻止力の強い、つまり大きく、パワフルな弾薬を使用するハンドガン、つまりリボルバーとピストル(頑住吉注:オートピストル。以下全て同じ)しか残っていない。
 常時の携帯は、ディフェンスガンの選択にあたって考慮しなければならない2つめに重要なポイントである。それが重くて携帯に不快であるために常に家に置いていたら、銃器携帯の権利が役立つだろうか? その上たいていの場合自己防衛のために銃を携帯する人は、それを公衆に気付かれないことを望む。団体のハンターもリボルバーを公然と早撃ち用の低い位置に取り付けたホルスターに収めたりすることは多くない。すなわちその銃を服の下に隠して携帯することを好むのである。特に小柄で華奢な体つきの人が幅の広い銃を身につけると服の上から非常に目立つ可能性がある。
 ここに問題がある。常に銃を携帯するためには小さくて軽いことが望ましい。一方射撃時のコントロール性をよくするためには大きくて重いことが望ましい。高い阻止効果のためには弾薬は大口径で強力なものが望ましい。一方コントロールされた射撃のためにはどちらかといえば小口径で弱いものが望ましい。つまり阻止効果と携帯性の間で、妥協を得ようと努めなければならない。これは単純な問題ではない。

操作は単純でなければならない
 第三のポイントは、その銃は簡単に、そして理路整然と(ロジカルに)操作できなければならないということだ。セルフディフェンスのために銃を携帯する人が、(頑住吉注:トレーニング等でなく)実用状況においてそれを使用することはまれなことにすぎず、できれば全くない方がよい。これは決定的に重要なことだが、緊急事態に際してのストレスは日常的なトレーニングをしていても極度に大きい。最初の射撃の前における「いじくり回すような」セーフティレバーの操作、手動による装填またはハンマーコック、そして把握しにくいサイトは、セルフディフェンスのケースでは、誤操作による発射を起こす可能性があり、使用者自身と同様に無辜の通行人に対しても致命的な結果につながるおそれがある。こうした観点から、リボルバーでもピストルでも同様だが純DAO、またはグロック風の「事前に一部コックされる」トリガーの銃が特にお勧めである。使用者がその一貫して重いトリガーに慣れてしまえば、命中精度はどこに出しても恥ずかしくないものになる。クラシカルなDA/SAリボルバーもその実戦使用能力には問題がない。しかしストレス下でのハンマーを使ったマニュアルによるデコックは周囲へのリスクとなる可能性がある。この場合デコッキングレバーのあるDA/SAピストルの方がよい。コルト1911系変種のような純SAピストルはお勧めしない。
 最後にディフェンスガンはできるだけ、抜く時にひっかかる可能性のある突起部分が少ないことが望ましい。短くし、丸めたハンマースパー、カバーされたハンマー、平滑な形状、シャープさをなくしたサイトにはお勧めする価値がある。

根本的な問題:ピストルかリボルバーか
 両方の銃器タイプにはそれぞれ長所と短所がある。リボルバーの最も大きなプラスポイントはその信頼性である。不発が起きた後、単に改めてトリガーを引くことで次の弾薬が発射できる。ピストルの場合はマニュアルで再装填しなければならない。しかし今では大量生産品のノーマルピストルと工場製弾薬は完璧なものになっているので、不発は「希少価値を持っている」。他の面からすると、リボルバーはプラスチックフレームのピストルよりたいてい重く、シリンダーにより装弾数の割に著しく幅が広く、そして特に有用な弾薬では装弾数が少ない。5発だけということもしばしばだし、たいていは6発であり、8発まであるがこれは稀である。ディフェンス目的の場合、装弾数の問題はミリタリー、ポリス用に比べれば少ない重要性しか持たないが、それでもリボルバーの欠点のひとつである。
 モダンなディフェンスピストルは軽く、スマートで、コンパクトでありながらマガジンキャパシティ8〜17発を持ち、人気の高い「サブコンパクト」で使用弾薬が9mmパラベラムの場合、たいてい10発である。必要な場合マガジン交換によってリボルバーよりかなり速く再装填できるという利点もある。ピストルはこの10年で信頼性もプルーフされてきた。そうこうするうちに「ピストルかリボルバーか」という問題は少なくともたいていの警察署ではピストルが愛用されることで決着している。筆者もたいていの実用場面においてより良い選択としてピストルを保持している。

代表的なモダンディフェンスガン
 リボルバーの場合、ライトメタルフレームを持ち、DAOトリガーで、携帯快適性から5発入りシリンダーのものを選ぶことに真っ先にお勧めしたい価値がある。銃身長は4インチを越えないことが望ましい。さもないとその銃は前述のような携帯快適性を本来持つものでも再び扱いにくいものになってしまうからだ。「スナッビー」と呼ばれる2.5インチバレルには人気がある。コントロール性のために、その種の軽量なリボルバーでは.38スペシャルを越えないことをお勧めする。射手がその弾薬に信頼を置き、そしてバレルを3インチ未満にしないならば、.44スペシャルのライトメタルリボルバーもまだ許容範囲としてありうる。
 ほとんど全ての大手リボルバーメーカーは今日コンパクトなウルトラライトリボルバーを提供品の中に含めている。その典型例としてはチタニウムまたはスカンディウム製フレームが優先的に扱われているS&WのJフレームモデルが挙げられる。「センチニアル」バリエーションは内蔵ハンマーを持ち、「ボディーガード」バリエーションは「埋没した」ハンマーを持つ。両バリエーションは抜く時にひっかかって留まらないように角とサイトが丸められている。タウルスは一部チタン製のこれに対応するモデルを提供品の中に入れているし、スタームルガーも同様であることは一見して分かる。
 ピストルの分野では、昨年コンシールドキャリー目的に特に適したピストルであるサブコンパクトの真のブームがあった。9mmパラベラムの場合たいてい10連発であるこの「パワフルなチビ」はしばしば.40S&W、.45ACPでも入手可能である。小さな銃で大口径弾を撃つ際の強いリコイルを気にする人は、たいていの場合9mmパラベラムの成績で充分であるとしてそれを選んでよい。この場合よりよいコントロール性はより小さいストップ効果より重要である。小さな銃のリコイルがどぎつすぎると感じる人は、むしろ選ぶ銃をワンランク大型にしてもよい。それでも依然たいていのリボルバーよりスマートだし、プラスチック製法のおかげで常時携帯するためになお充分軽い。
 サブコンパクトの祖先はコルトコマンダーだが、そのトリガー技術とマニュアルセーフティのためほとんど適していない。モダンなコンパクトピストルの中ではグロック26が先駆者の役割を果たした。だが、ワルサー、H&K、ステアー、タウルスもそうこうするうちに優秀な「ミニ」をシリーズに含めてきた。Kahr、Kel-Tekも同様である。すでに途方もない数になった選択肢は少々多すぎる。グロック19、ブローニングFN49、コルト2000(頑住吉注:そんなのもうとっくにないでしょう)、ステアーM、スプリングフィールドXD、ベレッタ9000その他非常に多数がこのジャンルにがやがやとひしめいている。大型のフレームの場合、特にスマートな銃、例えばSIGザウエルP239のようなシングルローの銃がよい。射手にとって残る問題はその選んだ銃をシューティングレンジに持って行き、試射するだけである。
 デリンジャーのような特別に小さい銃は、プロがより大口径の適した銃を持っていて、さらにそのバックアップ用とする場合のみふさわしい。単独のディフェンスガンとしてはそれはふさわしくない。

DWJの結論
 この記事はディフェンスガン購入を熟慮している(しなくてはならない)人々のための提言と、最初の指針によって完成する。日常的に銃を携帯し、その際自分のフルサイズコルト1911シングルアクションや6インチバレルの.44マグナムが一番いいと信じ込んでいる人は確かに存在する。しかしたいていそうした銃は短時間、または長時間家に置かれることになり、そして持ち主は銃を持っていないまさにその日に犯人と対峙することになる。
 まさに脅威下にある人、例えば宝石商や猟区内のハンターにとって、銃を常に携帯することは重要である。こうした人が銃を10年携帯し、それが必要にならないということはありそうなことである。だが11年目に思いがけず生命の危険にさらされるかもしれず、その日のためにぜひ銃を調達しなければならない。
 全ての地域住民が緊急時に銃でセルフディフェンスできることは、危険にさらされることを意味するのではなく、より安全になることを意味するのだ、ということを我々の社会が理解することが依然として期待される。世界中で多くの人が言っていることだが、内的な安全は内部からしか来ないのである。
 そして、使用者がどの銃を選んでも同じであるが、正しい弾薬、最新の技術よりもディフェンスガンとのつきあいの上ではるかに重要なのは、次のことである。練習、練習、また練習。

正しい弾薬の選択(囲み記事)
 弾薬は、攻撃者を信頼性を持って、迅速にストップするためには弱いものであってはならない。そのため下限はピストルでは9mmパラベラム、リボルバーでは.38スペシャルと見ることができる。全てのそれより弱い弾薬は、個々の特殊な場合において熟練した射手に適しているかもしれないが、お勧めできない。上限は強力な弾薬をなおコントロールする射手の能力と、そのために必ず重くなる銃を携帯する覚悟によって決まる。適した弾丸の選択では、ドイツにおいてホローポイント弾が再び許されて以来、新しい選択肢ができた。そのセルフディフェンス領域への使用は全く意味深いものであると考えられる。ただしそれは何か不可思議な能力を持ったものとして期待できるものではない。フルメタルジャケット、セミジャケット、ホローポイント弾の詳しい比較は次号に掲載する。


 これはドイツ人による記述ですが、「スイス銃器マガジン」でサブコンパクト.45オートピストルについて執筆した人と同様に、ガバメント系は現在の基準で評価すると操作上実用に不向きであり、たいていの場合9mmパラベラムで効力は充分であるとしています。これがヨーロッパで主流の考え方なんでしょう。アメリカ人の考え方は日本の銃器雑誌等でも触れる機会が多いのでよくご存知でしょうが、それとの違いは興味深いです。

 以前(20年ほど前まで)は「真に信頼できるのはリボルバー」という考えが根強く残っていましたが、オートピストルの信頼性は今やプルーフされ、デメリットがないわけではないにしてもメリットの方が大きいとして、少なくとも公用としては完全に主流となっているわけです。
 「セルフディフェンスの実際においてはほとんど5発以内で決着がつくからチーフスペシャルなど5連発のコンパクトリボルバーで充分である」という意見も強かったですが、これはやや乱暴すぎる議論でしょう。実際に5発で決着がつくにしても、「これを外したらおしまいだ」という気持ちで撃つのと、「まだまだ弾はある」という気持ちで撃つのとでは心理的な圧迫感がまったく違います。Dr.Beat Kneubuehlは、「射手が発砲を決断するタイミング、そしてその際の精神的コンディションは命中点の位置に影響する。銃が不十分な効果しか挙げ得なかった実例の分析からは、非常に多くの例において、弾丸の効力が不足していたことが原因ではなく、射手が精神的負荷を受けていたこと、そしてそれによって正しくないタイミングで発砲を決断したことが失敗を招いたのである、ということが分かる。」と言っていますが、これは全くその通りだと思います。5連発のリボルバーより10連発のサブコンパクトオートピストルの方がこういう意味においても有利であると考えられます。
 プラスチックフレームのサブコンパクトオートピストルはサイズの割りに装弾数が多いだけでなく、全幅が小さく、機能の割に軽く、安全性も高いわけですから高く評価され、ブームというほどの人気を得るのも当然でしょう。そこでワルサー、S&W、H&Kなども新たにこのジャンルに参戦したというわけです。ストレートにではないにしても全体からするとこの筆者は9mmパラベラムを使用するDAOまたは「一部コック」のプラスチックフレームサブコンパクトオートピストル、すなわちグロック26やP2000SK等が最も適していると言いたいようです。

 この記事では、「誰が銃を持っているか分からず、犯罪者が銃による反撃を覚悟しなくてはならない」ことが直接人に対する暴力犯罪を減少させる、というアメリカにおける実例が示されています。これは非常に興味深かったですが、これを根拠にこの筆者はドイツでも銃器の規制をもっと緩めるべきだと主張したいようで、これはどうでしょうか。この実例は状況が大きく異なるアメリカでのものですし、ドイツにあてはまるかは大いに疑問です。ドイツに関しては実情を知らないのでなんとも言いがたいですが、私は少なくとも日本でもっと銃規制を緩めるべきだとも、そうすれば暴力犯罪が減るはずだとも全く思いません。
 
 









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