中国製5.8mm小銃弾薬の威力に疑問

 前回紹介したページでは、中国製5.8mm小銃弾薬は貫通力、射程が優れているだけでなく人間に対する効力も先行の5.56mm、5.45mmに勝っている、また7.62mm弾薬を必要とせず歩兵弾薬を一本化できる、とされていましたが、これとは異なる見解を紹介したページもありました。

http://war.news.163.com/07/0425/10/3CTSIL2000011MTO.html


外国の媒体情報:中国の5.8mm弾は装甲貫徹力は良好、ただし殺傷力不足

要旨

5.8mm弾薬の戦場における実力発揮ぶりは? 新華社の情報によれば5.8mm弾薬はハイチにおける国連平和維持部隊中国部隊によって現地の反抗者との交戦において初めてその威力を見せた。5.8mm弾薬が市街における作戦中に見せた長所短所は相半ばした。一方においてその最大級に優れた貫通能力は、レンガ壁、積まれた石、金属製ドア、自動車の外殻等の障害を越えての攻撃に非常に適している。他方において5.8mm弾薬は人間に対する効果が充分でなく、さらに多くの射弾数を要して初めて目標の制圧ができる。

5.8mm重弾は優れた長射程小口径弾薬であるが、伝統的な大威力の7.62mmx54R 53式弾薬に取って代わることは不可能だということに注意が必要である。小口径弾それ自体の持つ打撃エネルギー、弾頭エネルギー等は全て7.62mm口径弾のレベルに到達することが不可能である。これはまた、何故中国軍部が5.8mm汎用機関銃の大量装備をしないのかの原因であるかもしれない。

本文はアメリカの「小火器評論」(頑住吉注:「スモールアームズ レビュー」?)誌上の、中国5.8mm小口径弾薬に関する文章から翻訳したものである。筆者Timothy G.Yan(頑住吉注:中国系の人ですかね)は彼の目に写った中国の小口径弾薬を描写した。これに対し2003年第8期の我が「軽兵器」誌上に発表された小口径弾薬に関し評論した文章は、少し異なる見方を表明している。以下はその原文を訳したものであり、その内容の正しさを保証するものでも、その視点に賛同するものでもない(頑住吉注:中国人による記述はこの段落だけで、以下は全て訳文らしいです)。

過去数十年、アメリカの5.56mmx45弾薬とロシアの5.45mmx39弾薬はずっと世界の小口径弾薬の主導的地位を占めてきた。人をして注目させるのは、、前世紀90年代中期に中国軍部が公開した独自の5.8mmx42小口径高速弾薬である。1960年代には早くも小口径高速弾薬がベトナム戦争において見せた長所がただちに中国軍部の注意を喚起した。1971年3月中国人民解放軍最高司令部後方勤務部は北京において小火器科研作業会議、略称「713会議」を招集し、自国の小口径銃、弾薬系統の研究開発を決定した。提出された指示は、口径6mm前後、初速1000m/s、弾頭重量軽減、反動軽減、終点効能等の方面において全て56式7.62mmx39銃、弾薬系統に勝るべきものとされた。続く「744」会議は5.8mmと6mm両種の口径の論証を進めることを決定した。弾薬全長は56〜59.5mmの7種の方案から選択された。しかし最初の8年、小口径弾薬の発展は論証段階にずっと留まったままだった。1978年になって研究開発作業はやっと真に開始された。1979年、5.8mmx42を小口径歩兵弾薬の最終方案とすることが確定した。この弾薬は1987年に設計が完成し、型号はDBP87とされた。

1988年、中国の小火器設計者は5.8mm狙撃銃と5.8mm汎用機関銃用の長射程、大威力5.8mm重弾薬の研究開発を開始した。この5.8mm重弾薬はすでに時代遅れであるリムドの53式7.62mmx54大威力弾薬に取って代わる計画だった。5.8mm重弾薬は1995年に設計が完成した。

中国軍部はかつてQBZ87式自動小銃を試用していた。この銃は元々あった81式自動小銃を基礎に改造して作られたもので、新しい5.8mm標準弾薬を使用した。

QBZ87式小銃を使用しての意見をもとに、中国はさらにQBZ95式小口径銃系列を開発した。QBZ95銃系列はQBZ95自動小銃、QBB95分隊用機関銃、QBZ95B短小銃などを包括していた。95式銃系列はブルパップ構造の設計を採用していた。この他、5.8mm重弾薬を使用するQBU88式狙撃銃もブルパップ構造であり、1997年に制式装備ととして使用され始めた。中国はさらにベルト給弾のQJY88式汎用機関銃も開発した。狙撃銃と汎用機関銃は5.8mm重弾薬専用に設計されたが、5.8mm標準弾薬も使用できる。最近になって5.8mm銃系列にさらに1機種の新メンバーが出現した。すなわちQBZ03式自動小銃である。この銃はコンベンショナルな構造でブルパップ式ではなく、そのグリップはアメリカのM16ライフルに類似していた。

5.8mm標準歩兵銃弾薬の弾頭質量は4.15gで、銅で覆われたスチールジャケットが採用された。長さ24.2mmの弾頭はユニークな外形で、先端は鋭くとがり、尾部のテーパーは比較的大きい。尖ったスチールコアとジャケットの間の空間には鉛が充填されている。スチールコアの長さは16mm、直径4mm、重量1.5gである。

5.8mm重弾薬の弾頭設計は標準弾と全く異なる。この弾頭の特徴は小型軽量の硬質スチールコアが弾頭の先端部に位置していることである。この方式は弾頭重量を増加させ、スチールコアを前に置いたことも弾頭の弾道性能を高めた。5.8mm重弾は標準弾よりやや長く、円弧形に近い先端と、さらに絞られた尾部は弾頭が亜音速飛行に近づいた際の空気動力学性能を改善した。弾頭質量は5gまで増加した。

5.8mmのテーパー付き薬莢の長さは42mmで、テーパーは直径10.5mmのリム部分から始まり、テーパーの角度は給弾および排莢に有利なように設計されている。おそらくコスト削減のため、5.8mm薬莢はスチール製である。5.56mmの銅製薬莢と比べ、5.8mmスチール製薬莢は製造コストが安く、重量が軽い。ただし腐蝕防止用の塗装が必要である。薬莢がスチール製であることはその他の問題も少々伴っている。硬くてもろい金属であるため、スチール製薬莢はチャンバー内での気密性があまりよくなく、かつ銅製薬莢と比べ断裂が起きやすく、したがって銃を故障に導くことになる(頑住吉注:真鍮に比べ柔軟性の低い素材であるため、発射時に膨張してチャンバー内に貼りつき、機密性を高める作用が弱く、薬莢切れ事故も起きやすいということですね)。排莢の信頼性確保のため、5.8mm薬莢のリムは非常に厚く、エキストラクター用のミゾの寸法も非常に大きい。

5.8mm弾薬は銀色のダブルベース球状発射薬を使用しており、装薬量は1.8gである。これは5.56mm SS109の1.7g、ロシアの5.45mm 7N6の1.6gより多い。コスト削減を考え、5.8mm弾薬の発射薬は有腐食性の薬剤である。NATOやその他の西側国家は第二次大戦終結以後腐食性発射薬は使用していない。5.8mm腐食性発射薬は高いエネルギーを発生させることができず、その生じさせるチャンバー内圧力は284MPaである。これはシングルベース発射薬を使用する7.62mmx39弾薬よりは少し高いが、5.56mmM855/SS109の380MPaよりずっと低い。プライマーはベルダン型である。

中国の弾薬設計者は、5.8mm弾薬の弾道性能と貫通力はいずれも5.56mmおよび5.45mm弾薬より優れているはずであると称している。事実5.8mm弾薬のマズルエネルギーと初速は確実に少し高いようである。

5.8mm標準弾と5.56mmNATO弾の、射程400m内での弾道性能は大きな差がない。400mを越えると5.8mm弾の弾道係数は優位となる。短銃身のM4カービンから発射された5.56mmNATO弾の弾道性能と5.8mm弾ではなおさらで比較にならない。5.8mm重弾とMK262 5.56mm弾の弾道性能は基本的に同じだが、5.8mm弾の高初速はその貫通能力をさらに強くしている。これら2種の重量弾頭の速度低下はいずれもその標準弾と比べて遅い。筆者はかつてQBZ95自動小銃を使用する機会を得たことがあり、使用したのは5.8mm標準弾薬だったが、100mにおける射撃精度は3MOAに達した。訓練を受けた射手ならば5.8mm小銃を用いて射撃精度は全て2.5MOAに達することができるか、あるいはさらに良くなる。筆者が海兵隊にいた際の経験では、M855/SS109の 5.56mm弾のM16A2を用いての射撃精度は2MOAに達することができるか、あるいはさらに良かった。新型のM16A4はさらに重く、長いバレルによってさらに高い精度に到達できる。AK74から発射した7N6 5.45mm弾は300mにおいて精度2.5〜3MOAに到達できる。ただし300mを越えると精度はたちまち急激に低下する。OBU88狙撃銃をを用いて発射した5.8mm重弾は100mにおいて精度1.2MOAに到達できるとされている。全体的に、5.8mm弾薬の精度は、古い7.62mmx39より確実に高く、ロシアの5.45mm弾薬に勝り、5.56mm SS109弾薬のレベルに達している。

中国大陸の銃器雑誌「小火器」2003年第8期は5.8mm弾の弾道試験に関する文章を発表し、アメリカ小火器メーカーのいくつかの研究データを引用し、ソフト、ハードターゲットに関する対比図表を作成した。

3種類の試験は、5.8mm弾の貫通能力が5.56mm、5.45mm弾より強力であるとの中国の設計者による主張を実証した。しかし試験に試用されたのはロングバレルのQBB95分隊用機関銃であってQBZ95自動小銃ではなかった。QBB95分隊用機関銃が発射する5.8mm標準弾の初速は、FNCアサルトライフルが発射する5.56mmNATO弾よりずっと高い(頑住吉注:何故ここで唐突にFNCが比較対象として出現するのか分かりませんが、要するに中国のテストは小銃より長いバレルを使ったアンフェアなものだ、ということです)。ただし、5.8mm弾の距離300mにおける10mm鋼板100%貫通という結果は、やはり人をして敬服させるものだ。

実際上、5.56mm弾の貫通力と5.8mm弾とではどちらが優れているのだろうか。中国が行った弾道試験とは異なり、アメリカ海兵隊と陸軍はアバディーン試験基地で、客観的な比較試験を行った。バレル長508mmのM16A2ライフルが発射した5.56mm M855/SS109弾は700mの距離において3.5mmのA3鋼板を全く問題なく貫通した。だがこれに対し5.8mm弾の装甲貫通力は確実に5.56mm弾を上回った。5.8mm弾の弾頭構造は徹甲弾のそれに似ている。あるいは徹甲弾であると言ってもよい。その高い貫通能力はその設計によって得られている。5.8mm重弾の装甲貫通性能は、85mの距離において15mm低炭素鋼を貫通でき、1000mの距離において1.3mm硬質鋼板を貫通できるものであることははっきり示されている。5.8mm重弾はいかなる距離においても全て貫通力が53式7.62mmx54R弾薬より強力だとされる。中国由来の非常に多くの資料はすべて、5.8mm弾薬の装甲貫徹力がどんなに優れているかに言及しているのが常だ。中国がこの種の設計を行ったことに対する1つの可能な解釈は、5.8mm弾薬設計論証において、装甲貫徹力に重点が置かれた、というものだ。一方NATO普通弾が重点を置いたのは貫通力である(頑住吉注:意味不明です。ソフトターゲットに対する貫通力ということでしょうか)。

多数の徹甲弾と同様に、ターゲットに石鹸を使った試験において、5.8mm弾頭の傷を作る効果は理想的なものではない。5.8mm弾頭の形成する空洞の容積は5.56mm弾頭と比べ1/3小さく、5.45mm弾頭の半分程度でしかない。厚く重い鋼質のジャケットには刻まれたミゾもなく、5.8mm弾頭が破片を生じることはない。鉛製ジャケットも弾頭が安定を失い、転倒する妨げになる。当然5.8mm弾薬の殺傷力はそれでも56式7.62mmx39中間型弾薬より60%勝っている。

5.8mm弾薬の戦場における実力発揮ぶりは? 新華社の情報によれば5.8mm弾薬はハイチにおける国連平和維持部隊中国部隊によって現地の反抗者との交戦において初めてその威力を見せた。5.8mm弾薬が市街における作戦中に見せた長所短所は相半ばした。一方においてその最大級に優れた貫通能力は、レンガ壁、積まれた石、金属製ドア、自動車の外殻等の障害を越えての攻撃に非常に適している。他方において5.8mm弾薬は人間に対する効果が充分でなく、さらに多くの射弾数を要して初めて目標の制圧ができる。しかし砂漠、山地等開けた環境の中では、5.8mm弾はその比較的長い有効射程により、さらに出色の実力を見せるはずである。

5.8mm重弾は優れた長射程小口径弾薬であるが、伝統的な大威力の7.62mmx54R 53式弾薬に取って代わることは不可能だということに注意が必要である。小口径弾それ自体の持つ打撃エネルギー、弾頭エネルギー等は全て7.62mm口径弾のレベルに到達することが不可能である。これはまた、何故中国軍が5.8mm汎用機関銃の大量装備をしないのかの原因であるかもしれない。


 「我が国の銃器雑誌は別の意見ですよ」、「これは翻訳であって私の意見ではありませんよ」という言いわけつきではありますが、一応こういう表現活動は可能なようです。

 中国は近年国外における戦闘を経験していないのではと思ったんですが、ハイチの平和維持活動で経験していたんですね。もちろん敵は近代装備を持つ軍隊ではなく暴徒のたぐいでしょうが。

 5.8mm弾は徹甲弾に近いものであるためソフトターゲットに対する効果が低いということです。しかしエネルギー量が大きいならばソフトターゲット内におけるエネルギー放出量が多い弾頭を開発して併用することで問題は解決できると思われます。それが行われていないならば、現時点ではその必要に迫られていないということでしょう。

 「排莢の信頼性確保のため、5.8mm薬莢のリムは非常に厚く、エキストラクター用のミゾの寸法も非常に大きい。」という記述がありました。

http://blog.donews.com/images/blog_donews_com/sdss/148516/o_709.jpg

 この画像が分かりやすいです。私の以前の製品もそうですが、モデルガンカートリッジは実銃より精度が劣るエキストラクターなどの部品に対応してミゾが非常に大きく、深くなっています。中国製弾薬はまるでモデルガンカートリッジのような形状で、やはり技術的に劣る部分をカバーしているんではないでしょうか。

 ただ、命中精度は軍用ライフルとして非常に優れているM16A2に大きく劣らないようなので優秀な部類に入るはずです。









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