「ワリヤーグ」総設計師が「遼寧艦」を語る

 動力機関などにも触れられています。

http://military.china.com/important/11132797/20131024/18107188.html


「ワリヤーグの父」、遼寧艦を見る:ボイラーの改造はロシアにはるかに勝る

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「『ワリヤーグ」号(左)と『クズネツォフ』号のウクライナの黒海造船工場におけるツーショット写真。今両者はすでに非常に遠く離ればなれになっている。」)

(編者による)中国初の空母「遼寧」号就役から1年、外界はこの艦の作戦効果につき頻繁に推測を行っている。中国軍は情報公開方面で比較的低調なため、一部の外国メディアは「遼寧」号誕生の地であるウクライナのニコラエフ市黒海造船工場に改めて戻り、関連の事情を知る者から「迂回」して関連の状況を理解している。ロシアの「軍事工業総合体」記者ニコライ ノヴェチコフは、「遼寧」号の前身である旧ソ連の「ワリヤーグ」号空母の総設計師ヴァレリー バビッチにインタビューを行い、問答形式をもってこの極めて経験豊富な技術者に「遼寧」艦の中国における整備、修理と就役の状況の解析をお願いした。

ここで雑誌の原文の重点的内容を以下のように編集翻訳し、読者の参考までに供する。

アメリカ空母より経済的 受ける重視度はソ連を超える

記者:「遼寧」号の就役に関し、あなたはどんな見方を持っていますか?

バビッチ:中国の空母に対する感情はソ連ないしロシアに比べずっと深いです。中国空母の引き渡し、就役式を見てみると、多くの党、政府、軍の指導者の姿があり、このことは中国が本国の空母事業のために見るべきもののある心血を傾注していることを説明しています。アメリカ空母の就役式も非常に盛大にしておごそかなもので、大統領自ら現場でテープカットします。これに比べると、ソ連の空母の待遇は少なからず遜色がありました。

記者:「遼寧」号は真の空母と評価できるのですか?

バビッチ:目下、「遼寧」号は空母訓練プラットフォームとしか評価できません。主要な任務は艦載機飛行員およびその勤務保障人員の養成訓練、そして本国の艦艇設計・建造人員のために学習と実践の場所を提供することです。ですが、「遼寧」号は決して普通の訓練艦ではなく、その歴史的使命は中国の後続の空母の国産化のために必要な理論と技術の支持を提供することです。

現在、中国は空母戦闘群の建設を加速し始めており、かつウクライナと協力して艦載機を試験し飛行員を養成訓練しています。アメリカに比べると、中国初の空母の建造費用はずっと低廉で、アメリカの「ジョージ ブッシュ」号空母は62億アメリカドルの資金を費やし、2015年の就役が計画される新概念空母「フォード」号には81億アメリカドルが費やされる見込みです。さらにこれには科研および設計部分に投入した24億アメリカドルは算入されていません。公開されている情報に照らせば、中国の「遼寧」号のための直接の投資は35億アメリカドルを超えないはずで、これには1998年にウクライナ黒海造船工場から「ワリヤーグ」号の船体を買ってくるのに費やされた2,000万アメリカドルの費用が含まれます。中国は「ワリヤーグ」号購入の際、非常に大きな抵抗に遭遇しましたが、最後にはやはり既定の目標を実現したのです。

記者:「遼寧」号の就役の過程はどのようだったのですか?

バビッチ:中国人は「遼寧」号の建造継続とテストの過程で、きっと一連の技術問題に遭遇したはずです。この艦が真の意味での空母になりたければ、まずメイン動力装置の安定性という問題を解決しなければなりません。アメリカの空母に比べ、「遼寧」号を含むソ連スタイルの空母の薄弱な部分はボイラーシステムに集中的に体現されています。空母の「心臓」としての動力システムは、毎時115トンの高圧蒸気を生み出すことができますが、維持メンテナンスのプロセスは非常に複雑で、人員がしばしば見てチェックする必要があり、作業量の大きさはごく容易に人を疲労困憊させます。また、メインエンジンの蒸気発生装置の信頼性、タービンのパイプラインが高温高圧を受け入れられるか否か、空母が全速航行下で少なくとも三日三晩問題ある状況が発生しないことを保持できるか否かなどの試練も、直接「遼寧」号の未来の運命を決定付けます。中国当局の情報によれば、「遼寧」号は2015年になってやっと作戦能力を具備することができ、この艦のこれからの道はまだ長いのですね。

(頑住吉注:これより2ページ目。画像のキャプションは「動力システムは遼寧艦が正常な運行、作戦能力の具備を実現する核心的システムの1つである。中央軍事委員が遼寧艦機関電気長を表彰したのは、1つの側面から中国の『ワリヤーグ』号に対する改造が相当に成功したことを表している。」です。)

記者:あなたが挙げたこうした問題は、中国の空母事業に多大なマイナス面の影響をもたらしますか?

バビッチ:私は、中国人の聡明才知と大変な苦労に耐える精神に頼り、「遼寧」号は必ずや大いに異彩を放ち、作戦性能はソ連のオリジナル版を非常に大きく超越することになる、と信じます。私が知り得たところによれば、「遼寧」号の前身「ワリヤーグ」号の大連での改装の期間、中国人は艦のボイラーワンセットを取り外し、これに対して改装と最適化を行い、必要とされる技術要求を達成させ、これは「遼寧」艦の後の航海試験の中で検証が得られています。ロシアは空母ボイラー改造方面でこのような成果を取得してはおらず、インドのために改装する「ヴィックラマディヤ」号空母が試験航海時に故障を発生させたことがまさにその証明です。

各方面の情報によれば、中国人にとって艦載航空システムこそが空母建造過程における最大の難題で、また、空母の重点部位のダメージコントロールシステム、弾薬の安全な貯蔵システム、弾薬を素早く輸送するシステム(下層の船室から飛行甲板まで輸送する)も重点的に攻略する必要のある技術的難関です。もし上述の問題が全てスムーズに解決できたら、中国は空母国産化の能力を完全に具備することになります。現在、中国の技術人員が「遼寧」号上で展開する一連の研究、試験、訓練作業は、全てこの目標の実現のためであり、「遼寧」号の訓練艦としての意義はまさにここにあるのです。

ウクライナとの協力 艦載機の性能はオリジナル版に勝る

記者:もはや秘密ではない問題を教えてください。当初あなた方が「ワリヤーグ」号の武備を計画した時はどう考えたのですか? これは我々が「遼寧」号の作戦能力を理解することに対し参考にする意義があるはずです。

バビッチ:設計によれば、「ワリヤーグ」号の艦載戦闘機には3種がありました。すなわち、スホーイー27K(後にスホーイー33と改名)、ミグー29K、Yak-141です。この艦の建造の期間(1985〜1991年)、スホーイー27Kとミグー29Kはいずれも実戦テストを完成させていました。また、「ワリヤーグ」号はさらにYak-44早期警戒機、Ka-27PS対潜ヘリ、Ka-27捜索救援ヘリ、Ka-29航空降下ヘリ、Ka-31早期警戒ヘリなどを配備するはずでした。総合すると、「ワリヤーグ」号の累計の搭載機は52機となるはずでした。

記者:それなのに、何故ロシア海軍で唯一現役の「クズネツォフ海軍元帥」号空母、つまり「ワリヤーグ」の姉妹艦はスホーイー33戦闘機しか配備していないのですか?

バビッチ:スホーイー33とミグー29Kの用途は異なり、前者は航続時間、弾薬搭載量などの方面で優勢を占め、後者は製造コスト、体積、機動性、武器コントロールシステムなどの方面のパフォーマンスがより良いのです。「ワリヤーグ」号の設計方案の中で、2つの種類の戦闘機にはそれぞれ自らの位置があり、性能上の不足を相互補完していました。惜しいことに、ソ連解体後、財政の逼迫ゆえにミグー29Kの生産は中止を迫られ、「クズネツォフ」号はスホーイー33だけを配備したのです。ここ何年かになって、ミグー29Kはやっと再生を果たし、インドはロシアがインドのために改装する空母上にこの機を配備するよう要求しています。Yak-141もロシア航空事業の復興と共に大いに活躍する余地があります。また、この機はロシアがフランスから購入する「ミストラル」級強襲揚陸艦上に配備される可能性が大いにあります。

(頑住吉注:これより3ページ目。画像のキャプションは「ロシアが改装してインドに販売する中古空母『ヴィックラマディヤ』は航海試験中、非常にまずいことにボイラーが損壊する深刻な事故に遭遇した。中国と比較すると、徒弟が師匠を超えたことにすこぶる似ている。」です。)

記者:中国は「遼寧」号のためにどのような艦載機を配備するのですか?

バビッチ:中国空母の艦載戦闘機もスホーイー27を基礎に改良して開発されたものです。1990年代、中国はロシアから陸上基地版のスホーイー27SK戦闘機の生産ラインを購入し、国産のスホーイー27を「殲ー11」と称し、生産工場は沈陽に所在します。私自身2006年に殲ー11B戦闘機の模型を見たことがあり、それに対する印象は深いです。中国は殲ー11Bを手本に艦載の殲ー15戦闘機を研究開発しました。性能はスホーイー33に追いつき、甚だしきに至っては超えると見積もられます。

指摘しておくことが必要なのは、ウクライナが艦載機方面で中国を助けていることです。当時、まさに我々はソ連の残したスホーイー27Kの原型機であるT-10Kを中国に提供しました。設計方案によれば、中国空母はさらに国産の直ー8AEW早期警戒ヘリを搭載することになりますが、指揮、コントロール、艦載機を誘導して敵を迎え撃つことに関する要求を満足させることができるにはほど遠く、この艦は最終的にはやはりソ連のYak-44あるいはアメリカのE-2Cのような固定翼早期警戒機を搭載する必要があり、これは必然的に次の課題を引き出します。カタパルトのない空母上でこのように大型の早期警戒機を発着させる技術的難度は相当に高いのです。言い換えれば、中国人がもし海洋上で互角の形勢を形成したければ、本国の空母カタパルトを研究開発することが必須だということです。さもないと、空母の作戦機能を充分に発揮することはできないのです。

記者:「クズネツォフ」号と「ワリヤーグ」号には建造の初めから一定の差異があったのですか、なかったのですか?

バビッチ:2隻の空母はいずれも「1143.5工程」図面に基づいて建造されたものです。ただし「ワリヤーグ」号は性能がより先進的な遠距離探知計測レーダーと電子戦システムを装備し、上層建築には140カ所余りの改良点があり、両者の艦体にもやや差異があります。1992年初めになって、「ワリヤーグ」号の全体建造工程はすでに67.7%完成し、航空システムはすでに80%完成し、弾薬庫リフト、着艦制動装置、航空燃料システム、艦載機リフト、ボイラーコンパートメントはいずれもすでに装備が終わっていました。ソ連解体とロシアの財政逼迫が原因で、「ワリヤーグ」号は途中で打ち捨てられ、中国に買って行かれるまで長年放置されたのです。

2002年3月、「ワリヤーグ」号は中国の大連港に到着しました。信じられているところによれば、中国の専門家は3年の時間を用いて仔細にその構造を研究し、2005年4月になってやっとそれに対する継続建造、改装を開始したのです。(編集翻訳:秦鴎)

(頑住吉注:4ページ目)今の遼寧艦と対比すると、その前身が何年か前中国に牽引されてきた時の「ワリヤーグ」号だとは非常に想像し難い。

(頑住吉注:5ページ目)「クズネツォフ」号空母は長期にわたって修理工場に停泊し、もって電力と暖房の供給を獲得した。

(頑住吉注:6ページ目)ロシアの次世代空母は「ウリヤノフスク」級原子力空母を基礎に研究開発されることになるとされる。画像はこの空母の設計図。

(頑住吉注:7ページ目は本文の一部とほとんど同じなので省略します。8ページ目)今年9月、殲ー15艦載戦闘機は空対空ミサイル武器を搭載して着艦した。


 中国に来た時の「ワリヤーグ」は重要な設備がほとんど取り外された「空箱」だったとする記述も多いんですが、これを読む限り動力機関はオリジナルの蒸気タービンを改良、手直ししたもののようですね。あるいは「空箱」説は国際的批判をかわすための虚偽の宣伝だったのかもしれません。本筋と関係ないですがYak-141が復活して「ミストラル」級に搭載される可能性があるというのもちょっと驚きです。F-35Bがこけたら世界最強の垂直離着陸戦闘機になるかもしれませんね。


















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