ロシア、中国戦車の自動消火装置は劣る?

 東側の戦車の防御力は西側より劣っていると考えられていますが、異なる主張をしているページがありました。

http://bbs.tiexue.net/post2_4696831_1.html


技術メモ:99式戦車はゴミ!? 某台湾のご高説はお笑い草

台湾のフォーラムのネット仲間が中国大陸の99式戦車をけなしている。この戦車はT72のようにひとたび撃たれればすぐ爆発し、砲塔は数百m飛ぶと考え、そのため自分たちの雲豹装輪式戦車(頑住吉注:装甲車)や今では影も形も見られない捷豹メインバトルタンク(頑住吉注:検索でもヒットしません。計画のみでボツったんでしょうか)がいかに先進的か大ぼらを吹いている(笑えるのは、彼がフランスのルクレールも口汚なくこきおろし、しかしアメリカのM1が台湾に来るこにはひどくあこがれていることである)。(頑住吉注:原文では戦車が「殉爆」するという表現が使われています。これは爆発して完全に廃品になってしまうようなニュアンスらしいですが、日本語に適当な訳語がないので「爆発」と訳します。ちなみに戦車自体がダメになるとは限らない場合に「爆炸」という語も使用されています)

以上の見方は、たぶん99式戦車の防波板がT72と似ており、その上ロシア式125mm砲と自動装填装置を追加装備しているためだろう。(主に平可夫の流れをくむ「専門家」であるが)(頑住吉注:「平可夫」は中国系カナダ人の軍事評論家だそうで、中国からは反中国的人物と目されているようです)99式戦車のシャーシはウクライナのT80から来ており(これはやや余談になるが、シャーシはMBT2000と大きく異なり、MBT2000はT84に似ているが、シャーシとトーションバーはT84とははっきり異なっており、遊星歯車減速機とエンジンはウクライナ系である)(頑住吉注:「MBT2000」は中国・パキスタン共同開発による戦車で、中国では正式採用されていないそうです)、T80の砲塔がチェチェンで現に飛んでおり、それならば大陸の戦車も同様にまずいことになる、と考える人もいる。

さらには大陸のネット仲間の発言を見たこともある。砲弾が車内の弾薬を貫通しない限り人員を殺傷するのは難しいと思う、と。

これらは皆奇妙なるご高説で、大陸の軍事専門家は本当に何も知らないのか? それともロシアの専門家は愚か者なのか? それともいわゆる受け売りなのか?

1.戦車が爆発する原理

戦車が爆発し、二次的殺傷が起こるのは主に弾薬により、他には燃料がある(頑住吉注:敵弾の貫通や炸裂による被害を一次的被害、攻撃を受けた戦車自体の弾薬や燃料などが爆発、燃焼することによる被害を二次的被害と言うようです)。第二次大戦期、多数の国がガソリンエンジンを使い続け、容易に引火爆発した。アメリカのM4は「Ronsonライター」と呼ばれた。ひとたび撃てばすぐ着火、撃つたび必ず着火する、というわけである。T34がディーゼルエンジンを使用してからは、着火しにくいためリスクは大いに低下した。ただしやはり引火、爆発の可能性はあった。

別の種類の状況は、車内の油圧およびオイルの配管には燃料や潤滑油が満ちており、これらは戦車内部のそれぞれのコーナーに分布し、ひとたび命中弾を受ければすぐ引火燃焼の可能性がある。もしコントロール不能なら弾薬や発射薬、および燃料タンクに引火爆発する可能性がある。

1970年代以後、さらに1つの脅威が生まれた。それはすなわちハイプレッシャー火砲が使用する可燃および半可燃薬筒である。ソ連は大規模生産と威力向上の必要から、115mm砲と125mm砲の薬筒に燃焼しやすい設計を採用し、同時に工程を短くしコストを下げた。だが燃焼と爆発のリスクは高まった。一方西側は燃焼薬筒に不活性繊維材料を加える方法を採用した。この工程は複雑であり、よりコストが高く、ただし安全性はソ連と比べ大いに高まった。

2.戦車の爆発に対抗する方法

戦車の爆発に対抗する方法は以前からずっと3つある。消火爆発抑制システム、個々の弾薬の防護、弾薬収納方式である。

消火爆発抑制システム、実はその原理は簡単である。すなわち消火噴射剤、センサー、ロジックコントロールモジュールである。火の光を早く発見し、素早く反応し、早く噴射を行って燃焼爆発を抑制し、有効に噴剤により消火しなければならない。

1.消火噴剤として旧ソ連はずっとハロン2402型を使用し、一方西側は普遍的に二酸化炭素消火剤を使用していた。後者の消火効率は前者に遠く及ばず、毒性が非常に強い。西側の戦後第1世代戦車では頻繁に集団窒息死亡という事態が発生した。

現代戦車の穿甲弾や破甲弾がもたらす超高圧に対してということで言えば、ハロン2402型消火剤の効率は高く、50秒以内に超高圧の燃焼ポイントを抑制することができ、現代の消火剤に属する。一方西側の二酸化炭素消火剤はこの要求を達成するのには遠く及ばない。旧ソ連はハロン2402を汎用消火剤として各工業で使用していた。

だがハロン2402型消火剤の毒性もやはり強く、戦車等の密閉空間の中では往々にして人員の窒息死亡が起きる。少し前ロシアがインドのために準備していた核潜水艦海豹号が引火したため2402型消火剤を使用した。これにより、遅れず防毒マスクを着けなかった船員が10人死亡し、12人が負傷した。西側はこれの使用を拒絶し、別の方向に転じてハロン1211消火剤を開発した。その消火効率はハロン2402型消火剤に遠く及ばないが、毒性はやや低い。

ハロン1211消火剤の消火効率が高くないことは、中東戦争でイスラエルの戦車が爆発する事件がアラブ諸国より一様に多いという結果をもたらし、あの時はあえて得意満面でソ連戦車はゴミだと言う人はいなかった。1960年代末になって、西側に新世代の王者が出現した。ハロン1301消火剤である。その毒性はハロン2402型消火剤の1/4しかなく、消火効率はハロン2402型消火剤同様に良好である。だが西側の戦車およびソ連の戦車は依然として頻繁に爆発して砲塔を天に飛ばしていた。これはどういうことか? 

その原因はロジックコントロールモジュールが迅速正確を必要とすることにあった。ロジックコントロールモジュールの進行速度はマイクロエレクトロニクス処理技術の向上を必要とし、これはよく理解できることだが、1970年代末になってその技術は西側でやっと普及できた。ロジックコントロールモジュールは計算速度が速いことだけを必要とするわけではなく、噴射ボンベの噴射進行に対しても有効なコントロールが必要で、さもないと事前に噴剤を噴射し尽くしてしまうことになる。

2.センサーはずっと1つの大問題だった。戦後第1世代では、東および西側が採用したのはいずれも温度センサーだった。考えれば分かるが、これでは全てのケースですでに火が起こって爆発してしまっている。温度を元にやっとゆっくりデータを伝達する、効率は推して知るべしである。

戦後第2世代のセンサー技術は光学熱電対センサーであり、敏感度が大いに向上した。ただし敏感度が高すぎるとマッチ、吸い殻、甚だしきに至っては乗員が銃をぶつけた火花でも噴射をもたらし、乗員が苦しみ、中毒さえ起こすかもしれない。本当に戦闘によるものでなければ噴射はない、とならないと使うことはできないのだ。皆が頭を悩ませたあげくに、第3世代技術がついにある小国で誕生し、一挙に戦車に内在する防護の難題を突破した。

3.イスラエルのSFAE消火爆発抑制システム

イスラエルは四方に戦争に赴き、ずっと人員の不足と戦車内の防護という弱点を痛感していた。このためずっと消火爆発抑制システムの研究に没頭し、西側の1970年代における電子化革命に至り、やっと大きな進展があった。

SFAE消火爆発抑制システムは第3世代光電火炎センサーを採用している。噴流や火炎のスペクトルの類型を分析して信号を発する。改良を経たマイクロエレクトロニクスロジックコントロールは100ミリ秒でハロン1211を噴射し、人員の保護は4倍以上に向上した。ハロン1211しか使っていなくてもやはり有史以来の完全な消火爆発抑制システムに一挙に成功したと言える! 1981年の中東戦争において、SFAEを装備したイスラエル軍のメルカバの名声は大いに高まり、西側はSFAEを元により完全な消火剤ハロン1301の製品を盛んに発展させた。

4.コンパートメント化? 神話はやはり優勢?

西側がT72を攻撃する理由の1つは、コンパートメント化を採用していないことに他ならない。だが実は厳密な意味から言うと、コンパートメント化は神話化されており、西側の戦車の中でコンパートメント化を採用していないものにはメルカバ、チャレンジャー2、レオパルド2、K1A1等がある。それらの防護水準はそれでも高い。それどころかメルカバ、チャレンジャー2は重防護の模範と呼ばれている。

目下、コンパートメント化を厳格に採用しているのはアメリカのM1A1系列、その思想に追随したブラジルのオソリオ、日本の90式、および韓国の新式で、フランスのルクレールも同様であるとされる。

世界の現代戦車は皆、一般に戦車の弾薬を戦車のシャーシ内に置いている。砲塔は命中弾を受けやすいからで、上述のコンパートメント化された戦車でも大部分は弾薬をこのように置いている。砲塔後部コンパートメントに8〜12発の弾薬を置いているが、体積が非常に大きいM1戦車でも16発に過ぎず、部分コンパートメントとしか評価できない。

いわゆる「コンパートメント化は安全性を増加する」というのは西側の神話に過ぎず、ずっと無数の人を欺瞞してきた。コンパートメント化は容易なのだからやろう、と。だが上述の戦車の発展目的は決していわゆる安全性ではない。設計上やむを得ずのことである。アメリカのM1設計時、重い砲塔前部装甲は尾部とのバランスを取ることが必要で、このため砲弾をここに置く考えがあった。アメリカは熱電対光学センサーと爆発抑制を行うドライアイス消火器を砲塔尾部コンパートメントコンパートメントに置くことを始めたばかりで、その時SFAE消火爆発抑制システムはまだ誕生していなかった。熱電対光学センサーは敏感すぎ、しょっちゅうドライアイスを噴射して弾薬、発射薬を損壊させていた。アメリカ人は思い切って弾薬をシャーシ後部コンパートメントに隔離し、排圧板を追加装備した。このようにするとエンジンコンパートメントが爆発で破壊されやすい。だがアメリカン人は金持ちである。M1A1の砲塔前部装甲に、さらに重い劣化ウラン合金ネットが追加装備された複合装甲が加えられると、バランスを取る必要から出た砲塔尾部コンパートメントはなくすことがよりできなくなった。

M1A1の砲塔尾部コンパートメントは12.7mm機関銃ですら貫通でき、弾薬に引火する危険があるとされる。実戦によれば、この設計は信頼でき、少なからぬイラクの遊撃隊が高射機関銃やRPGロケットで砲塔尾部コンパートメントの弾薬を引火爆発させた。だが乗員は一時的に焦げ臭い臭いを嗅いだだけだった。だがこれは意外なことでもあった。2004年のファルージャの戦いにおいて、1発のセルフコントロールミサイルが砲塔尾部コンパートメントの弾薬に命中し、M1A2は爆発し、乗員は骨も残らなかった。原因は装填手が砲塔尾部コンパートメントの耐圧板を閉め忘れたことだった。

だが「一時的に焦げ臭い臭いを嗅」ぐ他に、M1戦車は依然他の戦車同様の問題に直面している。その他の30発の弾薬をどうするのか? ただ消火爆発抑制システムだけに頼るのでは完全に有効ではなく、イスラエル軍は2005年の行動中、メルカバ戦車の3および4型が現代の大型対戦車誘導弾の攻撃を受けた時、多数の爆発現象が発生し、乗員の死傷は悲惨、重大だった。彼らの解決方法はチャレンジャー戦車と同じで、水と複合繊維で弾薬を包んだ。だが依然として完全に爆発を防ぐことはできなかった。M1戦車の解決法も同じだが、M1戦車の直面する脅威が比較的低かったので(イラクは主に制裁のため、大半が失効したRPGロケットと手製爆弾に多くを頼っていた)、そしてアメリカ軍の秘密保持のため、真実の状況を知るのは難しい。だが2003年、バグダッドを攻撃した行動での1つの戦例はショッキングだった。1両の戦車が12.7mm機関銃に外部補助動力系統のオイル配管を貫通され、燃焼したオイルはエンジンに進入して大火災を引き起こさせた。幸い消火爆発抑制システムは信頼性が高く、多数回の噴射後、消火はできなかったが乗員に逃げる時間を与え、その後戦車は爆発し、砲塔は台座から離脱した。多くの写真は、M1の爆発は依然しょっちゅう発生していることを示している。

いわゆる砲塔の「コンパートメント化は安全性を増加する」というのは西側の人間がでっちあげたニセの命題に過ぎず、戦車の安全と砲塔のコンパートメント化は無関係である。ブラジルが砲塔尾部コンパートメントを採用しているのはオソリオ戦車の車体が小さく、120mm砲の砲尾が長く、砲弾全体が細長いからで、尾部コンパートメントを後方に延長して砲弾を収めるしかなかったのである。一方日本の90式、韓国の新戦車、フランスのルクレールは自動装填装置を採用しているので、砲塔尾部をさらに延長して尾部コンパートメントを追加装備しているわけである。それらの大部分は弾薬を依然T72、99式、96式同様シャーシ内部の比較的低い場所に置いている。

中国の99-2式戦車はより高圧で長砲身の125mm砲を採用し、西側式長弾芯の砲弾より一歩威力が高められ、かつルクレールに似た一体式自動装填装置を採用しているとされる。さらに一歩砲塔内部空間を拡大する必要があり、砲弾を尾部コンパートメントに置き、コンパートメント化を始めたという。いわゆる安全性の向上とは関係ない。

5.T72とT80戦車がゴミである背後

ソ連式消火爆発抑制システムはずっと良くなかったが、1970年代には西側と対等だった。1980年代に西側の消火爆発抑制に飛躍があり、一方ソ連は依然まずいレベルに留まったのである。

ソ連の軍事思想は火力万能主義である。ソ連戦車は信頼性、侵攻性、大規模生産、良好な硬性防護が極めて強調された。我々がソ連のT72やT80を嘲笑する時、それらが初めて複合装甲と120mm以上の火砲を装備した戦車であり、西側を十年間恐れおののかせたことを忘れてはならない。1960年代末から1980年代の初め、西側は間違いなくこれに対抗できる戦車を持たなかった。ソ連戦車は安全ではないかもしれないが、ソ連戦車師団の数はアメリカの戦車師団の数よりはるかに多く、人員編成はアメリカの戦車師団編成より1/4少なかった。ソ連は大規模な戦車戦、電撃戦で半分の数の戦車を失うかもしれないが、確実に勝利をつかみヨーロッパを手中に収めると強調していた。戦車乗員の死亡率は高いかもしれず、我々はソ連が非人道的であると指弾することができるが、歩兵にとっては戦車の突撃であろうと彼らの援護作戦であろうと、彼らはもっと死傷者を出して数を減らし、勝利を掴むのである。ソ連の1個戦車師団は8000人前後であり、ただし戦車は300両と西側の1.5〜2倍である。戦車乗員は最多でも1000人を越えず、もし2/3を失っても、やはり最多で700人前後の死傷に過ぎない。もし彼らが600人戦死しても、彼らの作った突破口からソ連歩兵が火網を越えて行き、万単位の死傷者を出すのである!

筆者はこの種の思想の得失について深入りし詳しく討論する気はないが、どうであろうと1980年代〜1990年代、ソ連・ロシア戦車の消火抑制システムは依然西側の1960年代〜1970年代に相当していた。この原因は次のところにある。

1.マイクロエレクトロニクスシステムの遅れ。先進的ロジックコントロールモジュールと光学センサー設備の開発が難しかった。最も先進的なT80も依然第2世代熱電対光学センサー装置を使用していた。一方T72は第1世代温度センサー装置しか使用できず、ロジックコントロールモジュールは真空管しか使えず、反応は遅く極めて信頼性が低かった。

2.ソ連は依然ハロン2402を使用し、密封空間ではハロン2402消火剤の毒性の強さは人員の死傷が多すぎる結果を招き、噴射時間を短縮して人員が晒される時間を減らすしかなかった。効率を保証するのは難しかった。ソ連は大量のハロン2402を使用しているので、交換にかかるコストは高すぎ、今日に至るもロシアは依然ハロン2402消火剤の使用を堅持している。イラクにおいて、現地の科学者はソ連の消火剤の噴射時間が短すぎることに対し満足せず、自ら抵抗器を追加装備して噴射時間を延長した。その結果多数の窒息死亡がもたらされた。

3.戦車弾薬の個体防護が考慮されていない。この点は1960〜1970年代には責められなかった。何故なら皆がそうしていたからである。だが1980年代に出現した新戦車に対して言えば遅れてしまっている。後発には後発のメリットがあるのである。

4.薬筒と弾薬が引火しやすく、容易に炸裂し、炸裂が猛烈である

T72とT80は湾岸戦争と第1次チェチェン戦争でそのブランドイメージに傷をつけた。T80は敵の戦車を狩り破壊する目的から、前面装甲は非常に厚く西側重戦車に近いが、一方側面、後面装甲は14.5mm徹甲焼夷弾でも貫通でき、T72に遠く及ばない。反控戦場(頑住吉注:たぶん大規模な正規軍同士の正面戦闘ではなく、横や後ろから抵抗軍ゲリラの弾が飛んでくる可能性が強い戦場、といった意味ではないかと思います)の必要性には適せず、またハロン2402システムは火の勢いを抑えることが極めて難しく、さらには金属射流(頑住吉注:成形炸薬の金属ジェットのことでしょう)を弱めることもできない。加えて燃焼薬筒と弾薬が発火しやすく、T80の砲塔が数百m飛ぶのは一大景観となった。

爆発が絶えず発生し、当然相手が強大だという要素もあって、第2次チェチェン戦争前に至ってロシアはついに我慢できなくなって西側の1980年代中期レベルに類似した「曼図」(頑住吉注:ロシア語、英語表記不明、「マントゥ」のような発音だと思います)ハロン1301消火爆発抑制システムを開発した。T72とT80の生存能力は大きく向上し、第1次チェチェン戦争では完全損失が300両近かったが、これが20数両まで減少した。多くのT72が複数の命中を受けて損傷した後でも戦闘を続け、最も著名な1両の戦車は対戦車兵器で100回近い命中を受け、20発が貫通し、「曼図」ハロン1301消火爆発抑制システムが全ての噴剤を噴射し終わるに至り、このT72はやっと自分の陣地に戻ってきた。2008年のコーカサス急襲において、ロシアのT72の働きぶりは良好で、ロシア軍内に起きた「親父、俺はチェチェンでT80の砲塔が飛んでいくのを見るのが一番好きだったぜ」のような嘲笑は二度とは起こらなかった。一方グルジアの未改良のT72は依然として砲塔が天に飛んだ。ロシアの戦車の生存能力はついに世界の潮流に接近し、再び西側を嘲笑させることはない。

5.中国戦車の状況

笑えるのは、ロシア戦車が生存能力を新たに自ら証明した時代であるのに、日本の雑誌「戦車」(頑住吉注:「PANZER」?)や一部のいわゆる専門家、およびネット軍事家が中国の99式に攻撃を開始したことである。その根拠は99式が少しT72やT80に似ており、だからきっと一撃で砲塔が天に飛ぶはずだ、というだけのことである。

それでは中国はどんな状況なのか?

珍しいことに、中国がロシアの歩みに追随せず、逆に西側と歩調が一致していることである。すなわち1960年代、59式戦車に自動および半自動のセンサーを使用した。センサーの反応時間は3〜5秒で、噴剤は二酸化炭素だったが、後にハロン1211に改められた。ソ連同様マイクロエレクトロニクスシステムが遅れており、先進的なロジックコントロールモジュールや光学センサー設備を開発することは難しかった。1979年、対ベトナム戦争(頑住吉注:中越戦争)における戦車兵の損失は悲惨、重大で、大陸は改めて改良に着手した。

多くの人が思い込んでいるいわゆる人命不重視とは違い、大陸は技術兵種の人員保護を重要視している。抵抗戦争(頑住吉注:抗日戦争)と解放戦争(頑住吉注:国共内戦)の中で、鹵獲したヘルメットはまず機関銃手に装備された。戦車兵の防護が重視されたの原因は簡単である。中国は豊かな国ではなく、合格点を出せる戦車兵1人を養成することは多くの経費、物資、精力を必要とする。1990年代になっても、中国陸軍は依然として半機械化部隊のままだった。その中の技術兵種が希少価値だったことは推して知るべしである。

イスラエルのSAFEの導入を通じ、中国は79式戦車に完成品で輸入されたSAFEハロン1211消火爆発抑制設備を使用した。80式戦車に使用されたのはコピー生産型だった。比較すると、いずれも10マイクロ秒で閃光をセンサーで感じ、80マイクロ秒噴射することができたが、爆発抑制噴射の回数はオリジナルがコピー生産よりやや多かった。

努力を通じ、中国は1980年代末により先進的な85式システムを発展させた。これはハロン1211に替えて1301消火剤を使い、効率はより高く、センサー感知範囲がより広く、ロジック能力、コントロール能力がより高かった。

1993年、中国の北京で、ロシアの地上兵器展が開かれた。ロシアにとって意外だったのは、中国がT80Uにさほど興味を示さなかったことだった。原因は多方面にわたり、例えば車体が自動的に蛇行する状況が深刻なことだった。ロシアが分けて設置していた火力コントロールシステムとまずい夜視設備に関しては、中国はとっくにより良好な製品を有しており、ましてやそのハロン2402消火剤は中国に一顧だにさせなかった。

中国が独自に発展させた消火爆発抑制設備が西側の水準に達したのと同時に、中国はロシアの125mm自動装填装置を導入してコピーし、85-2型戦車に使用してパキスタンに輸出した。公差のせいで頻繁に弾薬が詰まり、この他弾薬の防護が良好でなかった。中国が取ったやり方はこの設備の改良だった。西側のように燃焼薬筒と弾薬の中に不活性繊維材料を加えて発火しにくくし、装弾盤以外の大多数の弾薬を充填耐火液の容器で包み、装弾盤に対するセンサーの感知と噴射気化を増強し、爆発を抑制した。この設備は85-3型戦車に追加装備され、後に96型戦車に発展した。中国は1980年代の戦車乗員保護において、もう西側の水準に接近していたと言ってよい。まして96型戦車の二次的殺傷に対する保護は、「曼図」ハロン1301消火爆発抑制システムが追加装備されたT72戦車をはるかに超え、基本的に世界の先進レベルに達したのである。

99式戦車はさらに1段階上で、より先進的なロジックコントロールモジュールと光学センサー設備を使用し、拡大弾盤は耐火液を充填した容器に包まれているとされる。設計定型の期間、105mm砲、120および125mm砲、紅箭8および紅箭7改、大型対戦車ロケット弾の無数のテストを経て、防護は良好で、乗員の防護は人をして満足させた。しかも新世代のより効果が高く環境保護に優れた消火爆発抑制設備と防御構造がまさに研究中である。

台湾のフォーラムのネット仲間は中国大陸の99式戦車をけなし、99式戦車はT72に似ており、一撃ですぐ爆発すると考えている。これはお笑いでしかなく、1980年代、大陸の戦車である59改の二次殺傷に対する防護は、台湾が90年代中期に輸入したアメリカのM60改と早くも対等だった。もし彼が我々の戦車が一撃ですぐ爆発すると考えているなら、自分たちの戦車をどう評価しているのだろうか。

現有の技術では、いかなる戦車の砲塔も天に飛ぶ可能性はある。問題のカギは、爆発の確率を下げ乗員に逃げる時間を与えることである。ロシアの戦車の生存能力は技術的に一時的に遅れたが、固有の問題があるわけではない。「曼図」ハロン1301消火爆発抑制システムに改良しただけでT72戦車の生存能力は本来の5倍以上に達し得た。99式戦車の部分的特徴がT72やT80に似ているというだけでしょっちゅう爆発が起こるとすぐに断言する、これはきわめて笑える話である。


 私はこの方面の知識がほとんどなかったので非常に勉強になりました。確かに過去は劣っていたが、現在では西側に(ほぼ)追いついているという主張です。「対戦車兵器で100回近い命中を受け、20発が貫通し、「曼図」ハロン1301消火爆発抑制システムが全ての噴剤を噴射し終わるに至り、このT72はやっと自分の陣地に戻ってきた」というのはレアケースでしょうが、生存性が以前より大きく向上しているのは間違いないと思われます。さらに意外なことに中国はイスラエルのシステムを導入、コピーすることによりロシアよりこの方面では上を行っているようです。このあたり、西側の、自称でない真正の専門家には充分認識されているんでしょうか。















戻るボタン