ドイツ語版Wikipediaにおけるフレシット弾の説明

 ドイツ語版Wikipediaのフレシット弾に関する説明を読んでみました。

http://de.wikipedia.org/wiki/Flechet


フレシット

 FlechetFlechetteと言うことも多い。ドイツ語ではPfeil)は手で持って撃つ銃のための高速飛行弾薬である。

 フレシット弾は矢の形をしており、後端または後部1/3内に安定翼を持つ。先端はたいてい魚雷型または円錐の先端を平らにした形状になっている。

弾丸

 すでに第二次大戦中に連合軍側の弾道学者が、ドイツの成型炸薬弾のメリットに対抗するためにこの種の徹甲弾を開発していた。この努力の目標は、さらに高い運動エネルギーをターゲット内にもたらすことだった。運動エネルギーは1/2x質量x速度の自乗であるがゆえに、これは2つの方法で達成され得る。

●高い初速
●重い弾丸重量

 高速弾の問題は限度を越えると非常に命中精度が低くなり、また大量の発射薬(危険)や非常に長いバレルを必要とする。また非常に長いバレルは振動を起こす(金属内で音が伝わる速さは弾丸の速度より大きい)。

 そこで弾丸重量を高めたい場合、まず最初にできるのは重い素材を使うことである。しかし硬質鉛でさえ柔らかすぎ、つまりトムバック(頑住吉注:真鍮系合金)または銅で包まねばならない。そこで妥協としてのスチールジャケット弾が生じた。

 他の可能性は弾丸の径、つまり直径を大きくすることである。だがそうすると質量やエネルギーだけでなく、命中面や空気抵抗も大きくなる。ところが空気抵抗は射程を減らし、散布界を大きくする。また命中面の拡大は効果エネルギー(N/mu)を減らす。

 論理的結論は次のようになる。すなわち弾丸を長くするのである。しかしこれは小さな程度しか可能でない。過大な長さの弾丸は音速以下の領域において、音速に近くなるとすでによろめき(頑住吉注:みそすり運動)を始めるからである。(頑住吉注:大きなみそすり運動をしながら命中すれば)人体に対する効果は非常に悲惨なものになるだろうが、装甲貫徹力は小さい。

 こうした考察からフレシット弾が生まれた。フレシット弾は直径は小さいが、その長さは直径の10倍程度ある。後端または後ろから1/3の領域内に短い安定翼がある。そのような弾丸を施条されたバレルで射撃することは不可能なので、当初は巻かれて弾体に密着しており、バレルを去った後になって初めて開く翼が開発された。あるいはバレル内を移動中、弾丸をバレル内の中心で安定させる駆動ピストン、あるいはこうした弾丸後部の駆動カゴを使用した。構造上必要な穴によってこうした駆動ピストンおよび駆動カゴはマズル通過後に分解し、バレル内径よりはるかに小さい、しかし類を見ない遠距離飛行のための弾丸を放出する。

弾道

 フレシット弾は小さな直径と非常に高い銃口初速度(5.56mm口径の場合約1500m/s)により、高い貫通力によって弾道学的に傑出したものになる。しかしステアーACRによる試みが示したように命中正確性は他のアサルトライフルより低い。

 効果的射程は同じ口径のノーマル弾薬と比べて3〜4倍に増大する。その上非常に高い銃口初速度は空気力学的形状ゆえに実にゆっくりと低下する。この結果低進した弾道が生じる。これにより照準が非常に簡単になる。距離が命中位置にはるかにより小さい影響しか与えないからである。

手で持って撃つ銃への使用

 手で持って撃つ銃のためのフレシット弾薬は今日世界中どこでも使用されていない。これは次の理由による

1.生産コストが高すぎる
2.弾丸から分離する駆動ピストンは射手の近くの人間に対する計算不能の危険要素である。
3.マンストップ効果および傷弾道学的効果が弾丸形状に制約されて悲惨なものである。
4.弾丸はたいていのケースにおいて、速度を決定的に失わずに人体を貫通する。このため危険領域が非常に大きい。
5.弾丸は屈折に対する抵抗力が非常に小さい。風に舞う木の葉でさえ弾丸の安定を失わせ、よろめかせるのに足りる。

 稀なケース、例えばベトナムでのネービーシールズにおいてフレシット弾がショットガンに使用された。ショットガン弾薬は何百mの距離でブレットプルーフベストを貫通するのに適していた。1つの弾薬には14〜40のフレシットが含まれていた。しかしターゲット内での不充分な効果によりこの弾薬は普及できなかった。

他の兵器システムへの使用

フレシット技術はいくつかの重火器および航空機用弾薬に使用されている。

戦車

 戦車は単一の、非常に大きいフレシット(APFSDSもしくは運動エネルギー弾)を射撃する。

砲兵砲

 ターゲットに何千ものフレシットを降らせる105mmグレネード(例えばM494 105mm APERS-T 頑住吉注: http://www.thenausea.com/elements/Israel/israel-doc1.html )。120mmグレネードはちょうど今開発中で、2009年に実戦使用能力を得ることが予想される。


航空機


 例えばHydraロケットにマウントされるフレシットロケット弾頭。これは千以上のフレシットを含み、歩兵の集団に対して使用される。

(頑住吉注:原ページの右の画像のキャプションです 「APFSDS弾。このジャケットはバレルを去った直後にはがれる。」)


 フレシット弾は人体に突入すると転倒して非常に大きな傷を作るという説と、空気中同様人体も真っ直ぐ貫通するだけで効力が小さいという説がありますが、ここでは原則として後者の説が取られており、この結果ターゲットを貫通して背後に、しかも非常に遠距離まで危険を及ぼすことが欠点の1つとして挙げられています。

 火砲用のフレシットというのは知りませんでした。すでに廃れた榴散弾の現代版という感じでしょうか。しかし上に挙げたページによればイスラエルがパレスチナ人に対して使用しているようで、複雑な感情を抱かざるを得ません。増してさらに殺傷力を上げるためにより大口径の砲弾も開発中というのは‥‥。ちなみに両砲弾の形状が相似形ならば、約1.5倍のフレシットが収納されるはずです。ロケット弾を使って降らせるフレシットも似たような用途なんでしょう。












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