風銃

 前回紹介した「銃器史」の中に、「Windbuchse」(「u」はウムラウト。風銃)というものが登場しました。これは初期の空気銃のことです。これに関するドイツ語版「Wikipedia」の内容を紹介します。

http://de.wikipedia.org/wiki/Windb%C3%BCchse


風銃

 風銃は空気圧銃器(より正確には圧力空気銃器)であり、17世紀にハンティング、練習、戦争目的に開発された。

 風銃は圧縮空気を使って大口径の球状弾を発射した。この銃は1607年頃以後、特にニュールンベルグの銃器の発火機構製造者Peter Dombler(「o」はウムラウト)によって戦争での実戦使用のために開発された。だが都市ニュールンベルグはすぐさまこの開発者にそれ以上の生産を禁止した。その理由は、人は「それが手に入る所ではそのような殺人的銃器を使って気付かれずに人を殺すことができるはずだ」というものだった。

 しかし他の情報ソースでも伝承されている風銃の無騒音性は相対化されなければならない。火器と比べれば風銃は明らかにより静かだったが、弾丸がバレルから出、そして一定の残余圧力下にある空気が膨張する際にはやはり主観的にうるさい発射音が生じた。だが黒色火薬を使用する銃器と比較しての大きなメリットは、煙の立ち昇りと発射炎がないことだった。この銃は究極的な意味では通常のモダンなエアライフルと比較し得るものである。有名なDynamit砲(頑住吉注:「有名な」と言われてもドイツ語版「Wikipedia」にはこの項目はないですし、他にも詳しく分かるページは見つかりませんでした。まあ圧縮空気を使った初期の大砲でしょう)もこの原理に従って機能する。

 射手はたいてい外部の空気ポンプを使って銃に付属する着脱可能な銃床(あるいは圧力に耐える球体)内に1発もしくは何発でもない射撃に充分な圧力を蓄える。最初の射撃は信頼性を持って150mまで命中したが、以後射程距離は半分に、あるいはもっと減衰した。しかし減衰した射程距離を持つ射撃でもなお致死的であり得た。

 ナポレオン戦争の間、1780年頃チロルのBartholomus Girandoniがこの原理を改良した。この銃の構造に施条されたバレルとチューブラーマガジン(弾丸は直径11.75mm、0.463インチ、20発)を使用することによってである。球状弾は単純な押し込みメカニズムによってパイプから銃内にロードされた。このGirandoniの銃は約1500回のポンプの押しによって充填されねばならず、その後はマガジン内の20発のための圧縮空気が供給された。Girandoni風銃はミュンヘンのドイツ狩猟博物館やSuhlのドイツ兵器博物館で見学できる。

 パッキングに当時使用できた、今日では不十分と見なされる素材(真鍮あるいは革のような)、および比較的短い射程距離、そして制限された再装填可能性ゆえに、この早い時期の風銃は戦争目的には使われなかった。しかし発展開発品はなおしばしば密猟者やゲリラ戦士によって使われたし現在もそうである。

 ある風銃はアーサー コナン ドイルの小説の中で有名な使われ方をした。「空部屋」(「The Empty House」1903年)の中でMoran大佐は風銃を使ってシャーロック ホームズを謀殺しようとしたが、失敗した(頑住吉注:代表的な邦題は「空き家の冒険」のようです http://homepage3.nifty.com/coderachi/holms/rtrn/rtrn1.html )。


 すでに17世紀に初期の空気銃が登場していたというのは意外でした。なお、「銃器史」の中であたかも無音であるかのような表現がなされていましたが、やはり当然発射音はあったということです。ただ、私は「DAYSTATE MK3」の項目で、「装薬銃なみの威力のあるエアライフルなら音も装薬銃なみになるはず」と書きましたが、火薬の燃焼速度、また銃口から弾丸が出た後にも燃焼、ガス膨張が続く事情からか、たとえ同一の威力であってもエアライフルの方が音が明確に小さいというのが正しいようです。

 日本でも国友籐兵衛が1810年代の終わり頃に高性能の空気銃を製作したとされています。

http://www.home-nagahama.org/tepponosato/ikkansai/ikkan2.htm

http://www.pref.nagasaki.jp/nichiran/jouhou/?ID=00000013

「彼は、風砲の研究に打ち込み、わずか1年たらずで「早打気砲」の製作に成功しました。この気砲は、口径1.1cm、銃身75cm、全長140cmのもので、空気圧さくポンプと一対になっており、オランダ製のものより数十倍の威力があったといわれています」と言うと世界的に見ても非常に先進的で進歩したものだったような印象を受けますが、実際には40年ほど前に登場していたBartholomus Girandoniの空気銃より優れたものと見ることはできないようです。それにしても口径11.75mmで有効射程150m以上というのは予想以上の性能です。

 ちなみに白土三平氏の「ワタリ」等、また山田風太郎氏の忍法帖にもこうした初期の空気銃が登場しています。


2007年9月2日

 「Dynamit砲」について教えていただきました。

http://www.geocities.jp/ironclad_tripod/Photoalbum/album08.htm

 「ダイナマイト砲」はアメリカの軍艦に搭載された、スムースボアの砲身から空気圧で有翼の砲弾を発射するものだったそうです。






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