ハンガリー製M39サブマシンガン

 今回は国内ではあまり知られていないハンガリー製の変わったサブマシンガン、M39とその派生型を取り上げたページの紹介です。

M39沖鋒槍及其衍生型


ハンガリーのメロディ M39サブマシンガンおよびその派生型

第一次大戦が終わり、第二次大戦初期に至るまでの間の時代、サブマシンガンの発展は勃興期からだんだんに最盛期へと入り、この時期にはドイツのMP28サブマシンガン、アメリカのM1928およびM1トンプソンサブマシンガン、M3「グリースガン」サブマシンガン、イギリスのステンサブマシンガン、ソ連のPPSh-41サブマシンガン等非常に有名なサブマシンガンが出現した。ハンガリーも負けてはおらず、サブマシンガンの領域において自分のメロディを作曲した。これこそ銃器設計師パル キラリが設計したM39サブマシンガンおよびその派生型である‥‥。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです「M39サブマシンガンのマガジンは前方に折りたたんで収納できる。画像のマガジンは半折りたたみ状態である」)

パル キラリ小伝

M39サブマシンガンはハンガリーの技師パル キラリ(Pal D. kirali)によって1937年に研究開発が成功し、ブダペストのダヌビア(Danuvia)兵器工場で生産された。

パル キラリは1880年にハンガリーに生まれ、1902年にブダペスト理工大学の工程学士の学位を獲得し、第一次大戦期間はハンガリー陸軍に加入し、大尉の階級を得た。服務期間は主に武器研究作業に従事した。

第一次大戦終結後、ハンガリーは一切の武器の研究開発を禁止され、キラリの軍隊における武器研究開発事業はこのため中断された。武器業界のため、彼はスイスに行ってスイス工業社(SIG)小火器部に加入し、SIG MKMOサブマシンガン(頑住吉注: http://world.guns.ru/smg/switch/sig-mkps-mkms-e.html )を設計した。この銃は多種類の異なる口径の型が登場し、多くの国に輸出された。

1928年、ハンガリーの武器研究開発禁止令が解除になった後、キラリは祖国に戻り、ダヌビア兵器工場に働き、小火器設計の仕事に従事した。この期間に彼はM39サブマシンガンおよびその派生型を設計した。第二次大戦終結後、ソ連がハンガリーを占領し、ダヌビア兵器工場は解散させられた。キラリは1947年から再びハンガリーを離れ、ドミニカ共和国に行き(頑住吉注:なんでまた唐突にドミニカなんでしょうか)、ハンガリー人のSandor Kovacsが経営するArmeria of San Cristobal兵器工場に加入した。この時期、、彼は数種の武器を設計した。その中で最も有名なのは、かつて一度南米で広く普及したサン クリストバルカービンである(頑住吉注: http://www.deactivated-guns.co.uk/deactivated-guns/modern-deactivated-guns/deactivated-san-cristobal-carbine/prod_970.html )。

(頑住吉注:原ページのここにある1枚目の画像のキャプションです「M39サブマシンガンの折りたたみ式マガジンハウジング(マガジンはすでに取り去ってある)の特写」 続いて2枚目「レシーバー後部カバーとセレクターの特写。この角度だとレシーバーに刻印された「E」(セミオートを表す)位置と、「Z」(セーフティを表す)位置が見える。ここではセレクターは「Z」の位置にある。」)

(頑住吉注:これより2ページ目)

マガジンハウジングの設計に特色あり

M39サブマシンガンは一体式木製ストック/ハンドガードを採用しており、レシーバーは円筒形である。銃全長は1,048o、銃身長は500o、全体重量は4.6sであり、これは当時のサブマシンガンの中で明らかに大きめ、重めだった(頑住吉注:型にもよりますが、トンプソンよりわずかに軽い、といったところです)。M39の機械式サイトはカーブしたベースを持つタンジェントサイトの「V」字型ノッチのリアサイトと、ポスト状のフロントサイトからなり、タンジェントサイトの射程は50〜600mである。そのレシーバー後端には回転スイッチ状のセレクターが設けられ、セレクターの前方には頭文字「E」、「S」、「Z」が刻印され、それぞれ3種の射撃モードを表している。すなわち、「E」(ハンガリー文のEgyenkentの略)がセミオートを表し、「S」(ハンガリー文のSorozatの略)がフルオートを表し、「Z」(ハンガリー文のZarvaの略)がセーフティだった。M39にはさらにバヨネットのベースもあり、両刃の長いバヨネットを追加装備すると、銃の全長は1,378mmに達した。

M39は威力が比較的高い9mmx25モーゼル拳銃弾薬を使用する。この弾薬は弾頭重量が8.1g、平均初速が455m/sで、銃口エネルギーは838ジュールに達する。9mmx19パラベラム拳銃弾薬の銃口エネルギー7(498ジュール)と比べると、約40パーセント高い(頑住吉注:この数値だともっと開いていますが、たぶん9mmx19の数値はピストルで発射した場合の初速を基準にしており、双方長銃身で発射すれば約40パーセント差になるということでしょう)。

M39は容量40発のダブルカアラムダブルフィードマガジンを採用している。マガジンハウジングの設計には非常に特色があり、携行時、あるいは不使用時、マガジンハウジングを前方に折りたたみ、マガジンをハンドガード下方のミゾの中にはめ込むことができる。マガジンをハンドガードにはめ込むと、マガジンの口部が露出するので、弾性のある防塵カバーをマガジンの口部にかぶせ、砂や埃がマガジン内に侵入して給弾不良を起こすことを防止する。

(頑住吉注:原ページのここにある1枚目の画像のキャプションです「M39サブマシンガンのレシーバーは円筒形で、タンジェントサイトの最大距離は600mである」 続いて2枚目「ボルトユニットの特写。遅延テコの上端、固定撃針のローラー、ファイアリングピンが見える」 部品名称は左から遅延テコ、ローラー、ファイアリングピンです 続いて3枚目「分解後のボルト」 部品名称は上がファイアリングピン、中央左がボルト本体、右がボルトヘッド、下が遅延テコユニットです)

ボルトのシステムは複雑

M39は自由遊底式(頑住吉注:通常ストレートブローバックを指します)式自動原理、オープンボルトファイアを採用しており、ただし当時の大多数のサブマシンガンが採用していた慣性閉鎖機構とは異なり、遅延開鎖式閉鎖機構を採用している(頑住吉注:ディレードブローバックというわけです)。テコを通じてボルトの遅延が実現され、構造は比較的複雑である。ボルトはボルトヘッド、ボルト本体の2つの部分からなり、ボルトヘッドは比較的軽く、ボルト本体はやや重い。ファイアリングピンはローラーによってボルト本体に固定されている。ボルト本体、ボルトヘッドの間にはスイング可能な遅延テコが設けられている。

発射準備状態でトリガーを引くと、シアがボルトを解放し、ボルトはリコイルスプリングの作用下で前進する。ボルトヘッドは前進過程で弾薬を押してチャンバーに入れ、運動を停止する。ボルト本体は慣性の作用下で前進を継続する(この時遅延テコの上端は前方に回転し、下端は後方に回転してボルト下面に露出する)。ボルト本体に固定されたファイアリングピンは弾薬のプライマーを打撃して弾薬が撃発する。弾薬の撃発後、火薬ガスはボルトヘッドを押し動かし、ボルト本体と共に後座し、薬莢の引き抜きが行われる。ボルトが約19mm後退すると、遅延テコの下端がレシーバーの壁面に衝突し、前方に回転する。しかもボルトヘッド下部のミゾの中にあてがわれているので、ボルトの後座を遅延させる。またその上端は後ろに回転するので、ボルト本体の後座は加速する。ボルトの運動継続中に排莢が行われる。ボルト本体が後退しきると、もしセミオートならばボルト本体はシアによって発射準備状態に保持され、1つの射撃サイクルが終わる。もしフルオートならば、ボルトヘッド、ボルト本体はリコイルスプリングの作用下で前進し、次の射撃サイクルに入る。

M39のボルトは2つの部分に分かれており、遅延テコを採用している。その目的はボルトの後座時期の遅延、後座力の低下である。M39は威力が比較的大きい9mmx25モーゼル拳銃弾薬を発射するが、この種の設計構造の採用で確かに有効に後座力が低下していることは実際に証明されている。もしフルオートモードでもマズルジャンプははっきりしたものではない。ただしこの設計がもたらす問題は、ボルトの構造が比較的複雑であり、ボルトユニットの各部品の加工精度に比較的高い要求が出されることであり、同時に銃の故障率も増加する。まさにこれらの問題ゆえに、これに加えこの銃が長すぎ、重すぎるため、M39サブマシンガンの軍における普及、使用は制限され、この銃の総生産数は8,000挺に至らなかった。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです「マガジンハウジング(マガジンはすでに取り去られている)を完全に展開したM43サブマシンガン。マガジンハウジング後部には折りたたみストックの固定に用いるギザギザの金属製スロットが設けられている。

(頑住吉注:これより3ページ目)

後続の派生型

M43サブマシンガン

M39サブマシンガンの銃本体は比較的長く、かつ重かったので、落下傘兵および装甲兵の武器に対するコンパクト性に関する要求を満足させられず、このためキラリはM39に改良を行い、1943年にM43サブマシンガンを登場させた。

M43とM39は外観の設計から内部構造まで比較的大きな差異がある。外観から見ると、この銃の最も明確な特徴は下向きに折りたたむ金属製ストックである。バットプレートも回転可能で、ストック折りたたみ後、バットプレートも回転させてストック、バットプレートを銃本体の下方に密着させらることができる。ストック折りたたみ時はギザギザの金属製スロットによって固定される。握って保持しての射撃に便利なように、銃本体後部下方に木製ピストルグリップも増設されている。

M43の銃身長は424oであり、M39と比べればやや短いが、拳銃弾薬を使用するサブマシンガンとしては依然明らかに長めである。ストック展開時の全長は953mm、ストック折りたたみ時の全長は749mmである。M43の全体重量は4.45sで、M39と比べやや軽い。

内部構造から見ると、M43のM39との最大の違いは一体式ボルト構造を採用していることである。この他、この銃のエジェクターもボルト上からレシーバー上に改められている。

M43とM39のマガジンハウジングとマガジンにもやや差異がある。M39のマガジンハウジングは垂直に下に向いているが、M43のマガジンハウジングは前に傾斜している。このため両者のマガジンは外形は似ているものの、中に弾薬を装填すると弾薬の配列角度が異なる。このため両者のマガジンは似ているものの互換性はない。

M43もダヌビア兵器工場で生産された。報道によれば、1943年から1945年の期間、この兵器工場ではM43サブマシンガンが全部で60,000挺生産された。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです「ストック、マガジンとも折りたたみ状態のM43サブマシンガン」)

M44サブマシンガン

M44サブマシンガンはキラリがハンガリーのために設計した最後の武器であり、M43サブマシンガンの改良型である。その主要な改良点は使用弾薬の変更であり、流行の9mmx19パラベラム拳銃弾薬を使用する。M44の全長は500mm、銃身長は250mm、構造はM39やM43と比べてよりコンパクトである。装弾数40発のダブルカアラムダブルフィードマガジンを使用する。

ソ連がハンガリーに攻め入ったため、この機種は制式装備されなかった。ソ連がハンガリーを占領していた期間、PPSh-41サブマシンガンが主流となり、このためキラリ設計によるM39およびその派生型は徐々にハンガリー軍の制式サブマシンガンの舞台からフェードアウトしていった。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです「M43とM39は外観設計上大きな差異がある。例えばM43は折りたたみ式ストックを採用し、銃本体後部下方には木製グリップが増設され、マガジンハウジングおよびマガジンが前に傾斜している」)


 この銃に使用する9mmx25モーゼル弾薬は.357マグナムや.38スーパーと同クラスの弾薬で、長銃身から発射すればかなりの威力を持ちますが、その後のアサルトライフルほどでありません。キラリが後にドミニカで作ったクリストバルカービンも.30カービンというピストル弾薬よりは強力ながらアサルトライフルには明らかに及ばない威力を持つ弾薬仕様で、キラリの理想はやや現実とずれていたのかも知れません。しかしハンガリー、スイス、ドミニカでユニークな銃を作ったキラリという人物には興味をそそられます。

 後にスイスやフランスでマガジンを折りたためるサブマシンガンがかなりの数登場していますが、これの元祖はキラリ設計によるSIGのMK系だったようです。M39、M43は40連という大容量のマガジンを持ちながら折りたたんでコンパクトにできるという大きなメリットを持ちますが、ライフル並みの長さ、重さでピストルよりは強力、という性格が中途半端だったようです。また真下に長く突き出したM39のマガジンはプローン時に非常に邪魔だったはずです。

 レバーを使った遅延はFAMASに似ていますが、原理的には全く異なります。そもそも長さ25mmの薬莢が19mm後退してから機能し始めるディレードシステムは、後方への高圧ガス噴出や薬莢切れを防止する通常のディレードシステムとは同列に論じられず、むしろバッファーシステムに近いと考えられそうです。例えばレミントン製オートピストルに使用されたPedersen閉鎖機構が同様に短距離ストレートに後退してからボルトヘッドが一時停止するシステムでしたし、中国のサイトの説明によれば5.8mm口径の92式拳銃も弾丸がマズルを出てからスライドの動きにブレーキがかかるものです。これらはリコイルショックを弱めることなどを目的に採用されたもので、なければなくて済む程度のものに過ぎません。現にM43サブマシンガンでは放棄されたとされていますし、92式拳銃を消音化したQSW06式ではやはり放棄されています。個人的にはそれだけの目的ならこんな複雑化するシステムより高性能のバッファーを組み込んだ方が得策ではないかと思います。

















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