米軍次期制式ライフル候補 XM8

 「Visier」2004年2月号に、M16シリーズの後継機種として現在テスト中のXM8に関する記事がありました。


まとめて解決

採用から40年、M16が引退すべき時を迎えた。今H&Kが米軍用にその後任を開発しようとしている。これはXM8に関する最初のレポートである。

 銃器システムは何年かの間はまったくすばらしいものであり続けられる。しかし米軍の制式アサルトライフルM16はすでに長い年月その地位にいて、過去20年のうちに採用されたものが多い他国の制式アサルトライフルより古株となってしまっている。このためついに交代の時期が来た。現在このための準備が進んでいるが、GIたちが使う次のライフルはシュヴァルツバルト生まれのものになりそうだ。

この間の経緯
 1955年、ユージン・ストーナーはアーマライト社において、新しいガス圧作動式のライフルを開発した。最初のバージョンは1962年、ARー15として陸軍、空軍による使用が始まった。当時はまさにベトナム戦争の最中だった。M16には当初機能上の問題があったとされ、多くの改良が行われたが、この銃には根本原理上の弱点があり、それは改良によっても決して完全には埋め合わせできない性質のものだった。現在最も新しいバリエーションとしてM4カービンが知られており、この銃はストーナーが開発したオリジナルから数えていわば第四世代目にあたる。だが改良された最新バージョンのM4カービンでも依然として汚れに敏感で、マガジンなどさまざまな原因からくる送弾不良に悩まされ続けている。これに加え、GIや特殊部隊員たちはM4等に多数のアクセサリー類を装備するが、根本デザイン上M16シリーズはこのような使用をすると安定性が悪くなってしまうという問題もある。
 次世代の米軍歩兵用主力兵器のための研究および開発プロジェクトは本来「OICW」(オブジェクティブ インディビジュアル コンバット ウェポン)と呼ばれるものである。この銃は新しい方式のコンビネーション銃として計画されており、アサルトライフルと、レーザーおよびコンピュータによって制御する20x28mmセミオートグレネードランチャーを単一の銃としてカップリングしたものである。ヘッケラー&コック社とアライアント・テクシステムズ社は「マルチ ミリオネン ダラー プログラム」の名の下にパートナーを組み、1999年すでにXM29の前段階シリーズモデルを作り、最初の部隊テストも行われた。XMとは実験モデルを意味している。
 しかしこの銃は最も近代的なハイテクマテリアルを主な素材としていなかった。2本の銃身を持つこの銃の戦闘重量は約8kgにもなり、あまりにも重く、また扱いにくいものになった。コンピュータ、バッテリー、マテリアル技術上の問題も克服されておらず、目下開発者が壁にぶつかって足踏みしている状態である。

転換と進歩
 これら新しい銃全ての開発の中心となっているのはニュージャージーのピカティニー・アーセナルであり、これは「ARDEC」(アーマメント リサーチ デベロプメント&エンジニアリングセンター)の後身である。開発と調達は2002年6月、Fort Belvoirで創設された新しい階級、いわゆる「チームソルジャー」を通じて行われる。「チームソルジャー」は国防に関する包括的、革新的な新組織の一部に過ぎず、ブッシュ行政が21世紀における米軍の転換を目的として要求したものである。新しい開発マネージメントの枠組みは、製造領域チームと個人用兵器のための「プロジェクト マネージャー ソルジャー ウエポンズ」が担当する。 
 OICWの当面の代役として、現在アサルトライフルとグレネードランチャーを従来のように分割したものが検討されている。XM29のグレネードランチャーは現在口径25mmに拡大され、アサルトライフルとは分離してさらに改良が進められようとしている。同様に5.56mmx45弾薬を使用するKE(キネティックエナジー)コンポーネントも、原型となった新アサルトライフルに回帰している。H&Kは2002年夏、すでにいくつかのM16シリーズの新型モデルを運動エネルギーを大きくするためのアイデアとともに提案していた。当時すでにアフガニスタンにおける軍事行動の分析から、アメリカ製兵器の欠点が問題となっていた。新しい銃を求める声は米軍内部からも強い。長時間の研究や選択手順を踏んでいる暇はなく、早急な解決が求められている。そこでアライアント テクシステムズ(ATK)とH&Kに革新的な新しい銃の開発が託された。両者は2002年10月、400万ドルと見積もられる開発注文を公式に手に入れた。ただしこの決定はその前月のうちにすでに下りていた。プロジェクトのための全時間枠はかなり短かった。何故なら米陸軍が新しい銃の採用を2005年下半期の会計年度に間に合わせることを欲したからである。

神聖なものの終わり
 当然陸軍は新しい銃器システムに多項目の要望を出していた。その一つとして、接近戦用の銃から戦闘部隊で使用するための軽機関銃、スナイパーライフルまでさまざまなバリエーション展開が可能なものが望ましいという要望があった。また、組み替え可能なモジュラーシステムによって、戦闘上の必要や作戦地域に応じて5.56mmx45、7.62mmx39、5.45mmx39、そして新しい6.8mmSPCにも適合しうるものが欲しいという要求はきわめて強かった。
 他方において実際の使用者が驚くような、既存の殻を破るものが求められた。角張ったピカティニーレールにライトやIRレーザーを装着すると前部が重くなってしまうM4はもう過去のものとすべきである。最近至る所で見かけるピカティニーレール自体ももう放棄すべき時期である。ヘッケラー&コックの設計者は、陸軍のプロジェクトマネージャーの希望にジャストフィットする、流線型の、きわめて未来的に見えるデザインを行った。レシーバーと伸縮ストックは必要に応じてグラスまたはカーボンファイバーで強化され、黒または淡いグリーンに着色されたプラスチック製だ。
 フォアグリップおよびストックの射手の体に密接にコンタクトする部分には、ゴムのような質感のソフトなポリマー製パーツが組み込まれている。銃は内外にわたって新規開発された部分が多かったにもかかわらず、実射およびテスト用のライフルは2003年夏には完成しており、これは記録もののスピードだった。
 ピカティニーレールの機能は、穴型の「Picaps」(ピカティニー アタッチメント ポインツ)によって引き継がれた。これは一種の角柱型スイング式留め具によって固定するものである。これらパテントものの結合システムは銃の軸線上に配置されている。位置はフォアグリップの3、6、9時方向およびキャリングハンドルの後方、オプティカルサイトの取り付け部である。ピカティニーレールの場合と違い、1回調整、試射すればアクセサリー類は複数回着脱してもその狙点の正確さを保持し続ける。レーザーサイトはもはやフォアグリップの上や横に固定する必要はなく、オプティカルサイトと一体となった。
 XM8ファミリーの心臓部(ボルトやガスピストンまわりなど)はG36やSL8と同じ、既知のものである。回転閉鎖式ボルトはストーナーのそれと似ているが、ロックのための突起はAR15/M16の7つに対し6つだけとなっている。ガスが後方の機関部と隔絶されているシステムのおかげで、バレルから導かれた作動用のガスが直接、全てボルトキャリアに吹きつけるM16シリーズより決定的にクリーニングの必要性が小さくなっている。この自動装填システムの持つ作動上の信頼性にはアメリカ人も驚いた。2003年10月、彼らはプロトタイプの最初の実射テストのため、オーベンドルフに到着した。このときテストされた銃は15000発以上をクリーニング、重大な送弾不良なしに連続的に撃ち切った。「プロジェクト マネージャー ソルジャー ウェポンズ」のリーダーオフィサーであるマイケル スミス大佐は「実にすばらしい」と評価した。プロジェクトマネージャーの代理のRich Audetteは、米軍の定期刊行物「アーミータイムス」に対し、オーベンドルフにおける実演に関して「私はM16A2およびM4の開発も実際に見て来た経験があるが、このように良好な射撃結果は初めて見た!」と語った。
 2003年10月のうちに最初の30丁のサンプルがアメリカ メリーランド州のアバディーンに送られた。この地にある軍の研究施設で追加テストを行うためである。そして12月半ばにはさらなる170丁の実験用銃がオーベンドルフから送り出された。ついにアメリカで部隊テストが行われるためである。

バリエーション
 モジュラーとして作られた銃器システムはまず第一に5.56mmx45弾薬用に作られ、そしてテストされた。しかし新しいレミントンの6.8mmx43SPC弾薬も問題なく使用できる。基本となる銃はXM8カービンバージョンで、12.5インチ(32cm)バレルが装備される。この銃の全長は、伸縮ストックをいっぱいに伸ばした状態において33インチ(84cm)である。空虚重量は現在2.8kgだが、さらにもう300g軽量化される。20インチ(51cm)バレルを装備したより長いバージョンにはバイポッド付きのタイプ、なしのタイプがあり、なしのタイプは戦闘部隊のスナイパーとして使われることが想定されている。バイポッドありのタイプにはH&K製の100連ドラムマガジンも装備され、分隊で使用する一種の軽機関銃として火力支援にも使われることが想定されている。このドラムマガジンはH&Kのテスターが続けて4個、短いバーストによって5分以内にノートラブルで撃ち切った。連射し続けるとチャンバーの過熱による自然発火が起こる可能性がある点は注意が必要だ。これは240発連続でフルオート射撃して初めて発生するという結果が出ている。
 最後のバリエーションはショルダーストックがないショートバージョン、「近接防御器具」(PDW)だ。これは航空機、ヘリコプターパイロットのためのものだ。このコンパクトな銃には9インチのバレルが装備されているが、それでもなお680〜685m/sの初速を生み出す。

決定への道程
 プロトタイプはきたるべき部隊、フィールドテストを経てなお変更されるはずである。外観も一部変わる可能性がきわめて高いと思われる。さらなるテストは部隊を砂漠から北極まで含め、全ての気候、風土条件の下に投入し、5月まで行われる予定だ。そしてその直後にケンタッキー州フォートキャンベルにおいて、少なくとも3週間の間、全ての戦闘シナリオを想定して充分に部隊テストを行う。1人1人のGIの希望を重要な情報としてフィードバックし、操作性や破損しやすい部分に関する改良を行う。そして最後に改良された銃をさらにもう一度、3カ月にわたり作戦テスト、ハードテストする。これは2004年秋にさしせまっている。そしてXM8を新しい米軍の制式ライフルとするか否か、そしてする場合にはどのバリエーションにするか、判定が下される。
 ヘッケラー&コックは現在見通しについて極めて楽観的である。アメリカの子会社HK Inc.も10億ドルと見積もられる新しい軍用ライフルの生産受注が与えられると見ている。2003年8月、すでにHK Inc.は新しい工場の建設を決定した。立地はジョージア州コロンバスで、最も重要な米軍歩兵部隊の基地であるフォートベニングの門前と言ってもいい場所である。11月、Muscogee Gewwrbepark内にあるこの地に礎石が置かれ、2千万ドルをかけ、5千平方mの規模を持ち、最終的に500人が就労できる新工場の建設が始まった。そこではまず、H&Kが9400挺生産し、スカイマーシャルとアメリカ運輸安全局に供給するUSP40コンパクトの一部が生産される予定だ。

6.8mmx43SPC:太いことはいいことだ。(頑住吉注:別扱いの囲み記事)
 米軍が5.56mmx45(別名.223)のターゲット内弾道成績に充分満足していない事はとっくに国家機密でもなんでもなくなっている。特にSOCOM特殊部隊からは、よりマンストッピングパワーの強い弾薬、しかも既存の5.56mmウエポンシステムに大きな追加予算なしで適応させられるものが欲しいという要求が強い。第5スペシャルフォースグループのユーザーの一部がChris Murryおよびレミントンと共同で、2年をかけて6.8mmスペシャルパーパスカートリッジを開発した。実戦テストにはこの他SWATチーム、多数の警察官も参加した。レミントンはこの弾薬をラスベガスにおける今年のSHOT Showで発表する。そして民間マーケット向けには115グレイン マッチ キング ボートテイル ホローポイント、ポリマーチップ弾も含め各種が発表される。42cm(16.5インチ、M4カービンに近い)のバレルからの初速は808〜820m/sとなる。マズルエネルギーは62グレイン弾頭を使用する現在の制式軍用弾薬M855を50%以上上回り、450mの距離では80%も上回る。新弾薬は.223レミントンに似た弾道と反動を示し、既存のM16用マガジンに適応する。新弾薬はM16用30連マガジンには25〜28発入る。この弾薬のベースとなったのは.30レミントンの薬莢であり、5.56mm弾薬の薬莢よりやや太い(しかし残念ながら全く同じ円筒形である。 頑住吉注:何が残念なのか説明がありません。薬莢のボディー部がテーパー付きの方が排莢がスムーズで薬莢切れ事故などが起こりにくいという意味でしょうか)。この弾頭の寸法が決定するためには着実な研究が必要だった。6および6.5mm弾が研究され、7mm弾もテストシリーズに存在した。しかし弾道が充分フラットにならないという結果が出た。6.8mm(.270)バリエーションが結局最善の妥協点であることが分かり、また必要な成績が達成された。これにより、アメリカ人はジョン・ガーランドがフランクフォードアーセナルで1920年代にすでに到達していた地点に立ち戻ったように思われる。当時彼は口径.276、弾頭重量125グレインの弾薬を使用するライフルを設計した。イギリスも戦後似た弾道成績を示す.280弾薬を研究したことがある。

キャプション

基本形:カービン型のXM8は317.5mのバレルを装備し、全長84cm、重量2.8kgである。このマシンカービンは頑丈なG36用30連マガジンを使用し、わずかの操作によって40mmグレネードランチャーX320を取り付けられる。

接近戦器具:XMコンパクトバージョン(またはPDW)は、9インチバレルを装備している。このタイプは特殊部隊の特別の希望によって誕生した。ショルダーストックの位置にはキャップがあるだけで、ここにショルダーストラップ、ゴム製スリングを固定することができる。

匠のデザイン:モジュール形式であるXM8銃器ファミリーの個々の構成要素及び9〜20インチまでのバレルによるバリエーション可能性を図示した。

新規参加者:アメリカ製の40mmグレネードランチャーM203と違い、ヘッケラー&コックのX320のバレルはサイドに開く。これにより長いグレネード弾薬も挿入できる。グレネードランチャーはフォアグリップに取り付けられ、交換はきわめて簡単である。

通常分解:分解はSL8、G36と似ており、ピンを抜くだけで非常に手早く行える。現場ではこれ以上の分解は必要ない。

操作系:XM8はその操作も革新的である。ボルトストップはトリガーガード内にある(1)。マガジンキャッチは従来のようにマガジンを握る手の親指でレバー(2)を操作することでも作動させられるし、素早く人差し指で3を圧することでも作動させられる。全ての操作系はアンビとなっている。

メカの心臓部:XM8のボルトグループを見ればその原型がG36であることがわかる。上部には左右に折り曲げられるコッキングハンドルがあり、下部には回転させるためのカムとかみ合ったボルトヘッドがある。

オプティカルサイト:「Picaps」のおかげでオプティカルサイトは簡単に着脱できる。写真は分離の前段階としてレバーを横に開いたところである。固定するにはレバーを前方に押す。前のくぼみの中に小さな銀色のクリップピンが見えるが、これによってレバーは固定される。

プロトタイプから改良されたオプティカルサイト:オプティカルサイトは初期段階ではスコープのみの単純な外観で、接眼レンズの左右はフラットだった。後のバージョンでは可視および赤外線レーザーが左右に配置された。これらは一体のため、調整は1回でよい。

フォアグリップの下:スプリングの付属したガスピストンがバレルから導かれたガスのエネルギーをメカニズム上のインパルスとして後方のボルトキャリアに伝達する。メカニズムはまったく単純で理解しやすく、射撃後問題なくクリーニングできる。

ロングライフル:ライフルバージョンは主に戦闘部隊のスナイパー(英語ではDesignated Marksman)用として想定されている。20インチのバレルは弾薬エネルギーの向上に役立つ(初速は870m/s)。左は比較用のPDW。

上から見たところ:銃にもグレネードランチャーにもセーフティレバーが両面に備えられ、左右の射撃姿勢に対応できる。フォアグリップ前部には8つの「Picaps」穴がある。

バイポッド:XM8のロングバージョンは100連ドラムマガジンを装備すれば戦闘部隊の火力支援用としても使える。G36用のマガジンは左右に連結することもできる。

可変:バイポッドが装備されるかどうかは検討中である。この写真ではフォアグリップのサイドと下面に4つの穴が見える。これはピカティニーレールのかわりに装備される「Picaps」である。

バランス:この写真ではXM8がかさばるような印象を与えるが、実際には決して扱いにくい銃ではなく、重心が中央近くにあって非常にバランスがよい。

大きさも変えられる:ショルダーストックはさまざまな体格の射手に合わせて5段階に調節できる。矢印のパーツがロックだ。ピストルグリップの下の黒いキャップを外すと内部は空間であり、クリーニングツールまたはレーザーサイト用バッテリーが収納できる。12.5および20インチバレルにはバヨネットラグがある。

素早い反応:いくつかの会社、たとえばバレットやプレシジョン リモート社(左)はアメリカの市場にレミントン6.8SPCに適合するAR15/M16用アッパ−レシーバーを供給する用意が整った。

比較:6.8mmx43スペシャルパーパスカートリッジ(SPC)は.30レミントンの薬莢をベースにしている。交換されるべき5.56mmx45(右)よりやや太く、長い。この弾薬には目下IMRまたはVihtavuoriパウダーがロードされている。


 20mmという小口径のグレネードランチャーを採用している国は現在ないはずです。実際にはそう単純ではありませんが、仮に20mmと40mmのグレネードが相似形だとすれば、体積は1/8となり、信管など全体の体積が1/8だからといって1/8で済ますわけにはいかない部分も多いはずですから、威力は1/8以下になると思われます。OICWのグレネードの場合はレーザーおよびコンピュータ制御で従来より正確に命中させることが可能でしょうが、それでも榴弾としての多数の人間に対する威力、小銃弾では対処できない車両などに対する威力が現在の40mmグレネードよりはるかに劣ることは否定できないでしょう。威力不足だからこそグレネードランチャーを銃から独立させるにあたって口径を25mmに拡大したわけでしょうし。で、何故威力不足となる妥協をしたのかといえば、これは当然連発グレネードランチャーをアサルトライフルとカップリングするにあたり、なるべく小型軽量にまとめるためでしょう。ここまで妥協してもOICWは約8kgという重さで、きわめて扱いにくいものになってしまったわけです。原因の1つはプラスチックの使用が徹底していなかったことらしいですが、M16シリーズが3kg強、プラスチックを多用したXM8が今後軽量化されて2.5kgだということを考えれば、劇的に軽量化可能とは考えられません。せいぜい6kg、つまり最低でも現在のアサルトライフルの倍くらいの重量にはなるでしょう。さらに、寒冷時には使用時間が短くなるバッテリーの予備も必要になりますし、コンピュータ制御の照準装置は可能な限り軽量化しつつ酷使に耐え、信頼性の高いものにしなくてはなりません。というわけで、OICWは現在さまざまな技術的壁に突き当たって足踏み状態ということです。個人的には銃とは直接関係のないマテリアル、バッテリー方面などの画期的な技術革新でもないかぎり、OICWの将来は暗いのではないかと思います。一部の兵が持つ支援火器的なものなら比較的近い将来のうちに可能かもしれませんが、それならあえてグレネードの威力に大きな妥協をしてまでアサルトライフルとカップリングする必然性は薄いと思われます。  
 一方M16シリーズは砂漠での信頼性などで大きな問題があり、今後も対テロ戦争を継続していくつもりの米軍としてはいつになるか分からないOICWの実用化を気長に待っているわけにはいかない状況です。そこでOICWの開発にも携わり、技術力に定評のあるH&Kに当面の次期制式アサルトライフルの開発が託された、というわけです。結果的に主力アサルトライフルは長期にわたってXM8となり、支援火器的なものとしてレーザー、コンピュータ制御の口径25mmセミオートグレネードランチャー(アサルトライフルの機能はない)が装備される、という可能性も高いのではないか、そして本音ではH&Kもそれを期待しているのではないかと思います。それにしても莫大な利益を生むと考えられる米軍次期制式アサルトライフルの開発を競争なく単一の社に任せることに異論はなかったんでしょうか。ベレッタM9の採用時には落ちたSIGザウエルが納得できずに裁判まで起こしたそうですが。どの社も「この分野ではH&Kにかなわない」と判断して異論を唱えなかったのならG36の実力は想像以上なのかもしれません。G36Cモデルアップ時、「MP5のような1人勝ち状態の再現は難しいかもしれないが、今後メジャーになっていくのは確実。少なくともG3程度のシェアは得られるだろう」旨予想しましたが、G36シリーズということで言えば、本当に1人勝ちに近い状態が今後ありうるかもしれません。
 G36をベースとしたXM8のメリットとしては、信頼性が高い、クリーニングの必要が小さく、またクリーニング自体も簡単である、プラスチックを多用しているので軽い、安い、組み替えによって複数の弾薬が選択でき、またPDWから軽機関銃までバリエーション展開できる、などが挙げられています。通常複数の弾薬を使用すると補給やコスト面で問題が生じますが、現在世界唯一の超大国アメリカの実力なら、必要に応じて弾薬を使い分けるという新しい運用も可能かもしれません。基本ユニットが同一なら訓練、生産、パーツ供給、修理などさまざまな面で合理的です。ちょっと意外な気もしますが、XM8の基本形はM4よりさらにバレルが短いカービンになるようです。軽いのも、短いのも、昔はなかった多数の電気機器やバッテリーなどを携行せねばならない現代の兵士の負担を少しでも軽減するためでしょう。バレルが短くなれば初速が下がり、威力も低下しますが、どうしても必要な場合はより強力な弾薬も使えるわけです。
 遠距離の精密射撃が必要なスナイパーには新しい6.8mmx43も使えますし、支援火器としても使えます。ただし、やはりチャンバーの過熱によるコックオフが起き、ワンタッチでバレルのみ交換できるような機能はないので長時間持続射撃は行えません。このためミニミが完全に用済みになることはないでしょうし、もちろんFN-MAGの代用にはなり得ません。
 PDWバージョンはいわゆるパトリオットピストルのようなスタイルですが、M16シリーズと違い後方にリコイルスプリングを配置する必要はないので同じ銃身長の場合全長が短くできます。ちなみに本文ではパイロットのためのものとされており、一方キャプションでは特殊部隊が要望したものとされていますが、たぶん両方で使うことになるんでしょう。ただ、やむを得ないとはいえ680〜685m/sという初速は想像以上に低いですね。5.56mmx45の初速は通常800m/s代で、それでも威力不足とされる場合も多いわけです。エネルギーは速度の二乗に比例するわけですし、ここまで初速が低下するとかなり非力になるのは否定できないでしょう。
 XM8に装備されるX320グレネードランチャーは横開き式のため、長い弾薬も使用でき、砂塵の混入にも強いと思われます。またフォアグリップと一体化しているので実に簡単に通常のフォアグリップと交換できます。必要なら連発の25mmグレネードランチャーを開発して装備することもできるはずです。  
 ピカティニーレールといえばモダンな銃の象徴のように思いますが、前部に集中したピカティニーレールにアクセサリーを多数装着すると銃のバランスが悪くなり、またひっかかりやすくもなります。以前の記事では使用中にゆるむという問題も指摘されていましたし、着脱するたびに狙点を調整する必要もあります。そういうわけでピカティニーレールはもう時代遅れと評価され、XM8には「Picaps」という新しいシステムが導入されています。鮮明な写真がないので詳細には分からないのですが、銃側にはひっかかる心配がなく重量も増加しない単なる穴のみがあり、アクセサリー側にスイング式のレバーがあってこれで固定するものであるのは確かです。XM8ではレーザーサイトはオプティカルサイトと一体なのでハンドガードに装着する必要はありません。オプティカルサイトも「Picaps」によって装着されており、その他のアクセサリーもワンタッチで着脱でき、ゆるむ心配はなく、遠距離の狙撃となれば別でしょうが着脱しても一応狙点は維持されるということです。
 ストックは想像通り多段階に長さが調節できるものでした。これは分厚いボディーアーマーなどに対応する意味もあるでしょうし、増加傾向にある女性兵士の体格に適応するという意味もあるでしょう。
 秋に3カ月の最終テストが行われ、そして採否の判定になるということは、早ければ年内に採用決定の情報が入るかもしれません。H&K本社に近いドイツの銃器雑誌には途中経過などの情報が掲載される可能性もあるので注意しておこうと思います。H&Kは楽観的で、新工場も建設中ということですが、5000平方m(単純に考えて50x100m)の規模の工場で全米軍の需要が満たせるはずはありません。これはあくまで準備段階にすぎず、実際最初はXM8以外の生産に使われるということです。現時点ではXM8不採用、当面M16でしのぐという可能性、もう少し時間をかけてXM8の改良を行うという可能性もあるはずです。
 ちなみにH&Kが2002年段階でM16シリーズの改良モデルを提案していた、とありますが、H&KはSHOT ShowでM16改良型の発売を発表したそうです。これは米軍用に提案していたモデルを発展させたものでしょう。
 6.8mmx43SPC新弾薬ですが、「Visier」によればXM8への使用に問題はないということです。ベースとなった「.30レミントン」という弾薬は「カートリッジス オブ ザ ワールド」にも載っておらず、検索しても6.8mmx43SPCのベースになったこと以外の情報がほとんど出てきませんのでかなりマイナーな弾薬らしいです。リムまで太いので、5.56mmx45とはボルトヘッドの共用はできません。初速は遅いもののエネルギーは大きく、パンチ力、貫通力は上で、また弾が重いので遠距離における残存エネルギーが大きくなります。ただし、「似た反動」と書いてあるものの、フルオート時のコントロールが多少困難になるのは間違いないはずです。また、装弾数も少なくなり、携行可能な数も減るはずです。いいことづくめということはあり得ず、状況によっては5.56mmx45の方が有利な場合もあるでしょう。6.8mmx43SPCが果たして5.56mmx45にかわって主力となるのか、あるいは「スペシャルパーパスカートリッジ」という名前通り特殊目的にのみ使われるのかは現時点では不明です。

※ごめんなさい。よく確認したら、.30レミントンというカートリッジは意外にも「カートリッジス オブ ザ ワールド」の「obsolete(時代遅れの)アメリカン ライフル カートリッジス」というコーナーに載ってました。この弾薬は1906年、30-30というカートリッジのリムレス版としてレミントンモデル8というオートライフル用に登場したということです。戦後新たにこの弾薬用に作られたライフルはありませんが、いくつかのアメリカのメーカーが最近まで生産を続けていました。弾頭重量は.30カービンの100〜125グレインに対し150〜170グレイン、エネルギーは2倍弱といったところです。

Picaps

これは「Picaps」の説明写真をイラスト化したものです。青い部分が固定レバーで、これを後方に回すと外れ、前方に回してレバーを赤い部分の突起に引っかけると固定するということです。

ストックのロックパーツ

青い部分がロックパーツです。

トリガーまわり

赤い部分がボルトストップですが、個人的にこれは操作しにくいような気がします。青い部分はマガジンキャッチで、レバー状の部分はおなじみの形式ですが、トリガーガードの左右に水平に張り出した部分があり、ここをトリガーフィンガーで押し下げることでもマガジンが外せるということです。レバーだけだと片手では操作が難しく、またM16より遅いということでこうしたのかもしれませんが、マガジン脱落事故が多くなりそうな気がします。このあたりは実際に使用した米兵の意見から改良される可能性が高いのではないかと思います。








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