次期米軍制式ライフルをめぐる小ネタ×3(転載)

現在は削除されていますが、「Visier」公式サイトに掲載されており、すでにコラムでお伝えした速報を2つ転載しておきます。


2005年1月4日付
速報:ゼネラルダイナミクスとH&Kが提携

 バージニア州Fall Churchに本拠地を置くアメリカの兵器コンツェルン(頑住吉注:ゼネラルダイナミクス)とオベルンドルフの会社(頑住吉注:H&K)は、アメリカ政府向けH&KモデルXM8を共同で製造するためのジョイントベンチャーを創設した。

 パートナーとしてこの件を担当するのは、アメリカのコンツェルン内に存在し、3つのヨーロッパの軍需子会社からなる「General Dynamics European Land Combat Systems」である。3つのヨーロッパの軍需子会社というのはすなわち、スイスのKreuzlingen所在のMOWAG AG、スペインのGeneral Dynamics Santa Barbara Sistemas in Madrid、およびオーストリアのウィーン所在のSteyr Spezialfahrzeugeである(頑住吉注:「ステアー特殊乗物」といったところですがあのステアーと関連した会社なのかどうかは分かりません)。資金面の背景についてはこれまで知られていなかった。

 XM8システムは従来のアメリカ軍歩兵の軍用小銃M16およびM4と交代する(頑住吉注:ここで「soll」という単語が使われています。これは英語の「shall」にあたる単語で、いつも解釈に悩みます。「すべき立場にいる」、「するよう定められている」、「という意図である」、「ということが望ましい」などの意味がありXM8採用の実現性がどの程度なのかこれだけでは分かりません)。Visierはこの新しいH&Kコンセプトをすでに2004年2月号で詳細に紹介した。ここで示したように、その基本コンセプトから、この口径5.56mmx45の未来モデルはバレル交換および他のモジュールの組み換えにより変化可能である。すなわちスナイパー用スコープモデルからグレネードランチャーつきモデルを経て乗物やヘリコプターパイロット用の短い近距離防御器具(PDW)に至るまでである。ゼネラルダイナミクスはワールドワイドに71,600人の従業員を雇用しており、2004年には(まだ集計されていないが)190億ドルの利益が予想されている。


ゼネラルダイナミクス社公式サイトでもこの件が発表されています。

http://www.generaldynamics.com/

 XM8採用の可能性がどの程度なのかこちらでもはっきりしませんが、H&Kが巨大兵器コンツェルンであるゼネラルダイナミクスとこの銃の供給のために提携したとなれば、かなり有望な話のようにも思われます。「Visier」がXM8をレポートして1年近くになりますが、あのときの記事からすればそろそろ結論が出てもいい頃のはずです。私はブッシュ大統領が再選されれば採用可能性が比較的高まるのではと予想しましたが、どうなるんでしょうか。



2005年1月3日

USSOCOM+FN=SCAR

 US Special Operation Command内に統合された特殊部隊用の新しい銃器タイプ。サウスカロライナ州コロンビアに所在するFN Herstal USA(ベルギーの銃器コンツェルンの子会社)は、彼らのSCARプロトタイプにより総計155,000挺のいろいろなバリエーションを含む銃器の発注を得た。

 アメリカのために新しいスタンダード銃器システムを求めるXM8プロジェクトは2005年、第二の、そして重大なラウンドに入る。このラウンドの最後には戦場投入のための最初の量産が意図されている。これに関して管轄権を持つのはUS Army TACOM-ARDECおよびPicatinny Arsenalである。しかし同時に2004年11月、US Special Operation Command内に統合された4軍の特殊部隊用のある新しい銃器タイプの供給のための決定が下された。すなわち、サウスカロライナ州コロンビアに所在するFN Herstal USAが、彼らの「SCAR」のプロトタイプによって発注を得たのである。

 この略称は「Special Operations Forces Combat Assault Rifle」を意味する。SOCOMは目下M4モジュラー銃器システムを使用している。これはM16/AR15をベースとしており、主に5.56mmx45用として製造されている。同時に一握りの7.62mmx51仕様の「Special Purpose Rifles」が存在する(Visierスペシャル34「スナイパー」参照)。しかしそれは補給がはかどらないため、イラクおよびアフガニスタンで作戦行動する多くのSOFチームは、まだ彼らの兵器庫に持っていた古いM14に頼っていた。

 だからSCARシステムはモジュラー交換セットとして作ることが意図されている。すなわち、口径5.56mmの「SCARライト」と7.62mmの「SCARヘビー」である。後者のバリエーションは複数の交換セットのおかげで、例えば7.62mmx39、5.45mmx39、あるいは新しい6.8mmx43のような他の口径用のベースとしても役立つ。その上レーザーで制御される射撃管制システムつきの改良された40mmグレネード器具も属する。SOCOMの入札はフロリダ州のMacDill空軍基地に所在する独立軍コマンドの未来の全需要を定義している。また総計155,000挺の銃に独自の調達予算を使っている。すなわち84,000挺のSCARライト、28,000挺の短縮された近距離戦闘あるいはCQBバージョン、そして12,000挺のライトスナイパーバージョンである。その上15,000のスタンダード型のSCARヘビー、7,000挺の短いCQBおよび12,000挺のヘビースナイパーライフルが加わることが想定されている。FN Herstal USAのプロトタイプは(目下優勢なトレンドのプラスチックパーツに反して)付属品受け入れのためのGassysstemおよび通常のピカティニーレールつきの強化された金属レシーバーに基礎を置いている。使用弾薬交換には20秒以下しか必要としない。生産が優先を受けているSCAR-Lバージョンは、全長85cm、ストックを縮めた状態では76cmであり、空虚状態で重量約3.3kgである。公示によれば重いバリエーションは運搬モードで77cmより長くなく、4kgより重くないという結果になるらしい。


 これはまた意外な内容でした。現在の対テロ戦争では歩兵、特に少数精鋭の特殊部隊の重要性が冷戦時代より増しており、彼らが使う現用のM16シリーズに大きな不満があるからこそXM8プロジェクトが急いで推し進められてきたわけです。これが待ちきれなかったということなのか、あるいはいまだに.45ACPにこだわっているように保守的な傾向がある特殊部隊員たちがプラスチック製のXM8に「こんなの嫌だ」といった意思表示をしたのか、特殊部隊用に全く別の銃を15万挺以上も調達することが決まったというわけです。
 これでXM8採用が遠のいたかどうかは分かりません。SCARはXM8と違い、特殊部隊の要求に応じてタフな(ただし重い)金属レシーバーを使い、7.62mmx51も使用できるものであり、特殊部隊にはSCAR、一般歩兵にはXM8という使い分けが行われる可能性もあると考えられます。SCARは基本的にFNCの発展型で、やはり一部ミニミと似たパーツが使われています。個人的にはちょっとカッコ悪いように見えますが信頼性は高いんでしょう。ただこのデザインだとストックをたたんだ状態ではストックがエジェクションポートをふさいで撃てないんじゃないでしょうか。こんな紹介ページもあります。

 http://world.guns.ru/assault/as70-e.htm

 これまでの流れからして東京マルイさんが電動ガンで再現する可能性もありそうな気がしますがどんなもんでしょう。


2005年6月9日追加
「DWJ」公式サイトに掲載され、すでにコラムでお伝えした内容をこちらに転載しておきます。


2005年5月25日付

ヘッケラー&コック、U.S.アーミー相手の新しい契約を得る

 ヘッケラー&コックは、新しいグレネードライフル供給に関する2千9百万ドルのボリュームを持つ契約書に署名した。

 再三にわたって1つの契約をめぐる熱い競争があった。それはU.S.アーミーがグレネードライフル供給のために公募していたものである。従来アーミーによって使用されていたグレネードライフルであり、イランやアフガニスタンにも投入されているモデルM203は、新しいモデルXM320 40mmx46によって交換される運命にある。
 この契約は全体ボリューム2千9百万ドルを持ち、1万1千挺以上のライフル、サイト、工具、付属品の購入が予定されている。最初の供給は2006年始めにはすでに予定されている。


 トップページの「Voumen」というのは明らかに「Volumen」(英語のボリューム)のタイプミスです。また途中に出てくるイランというのはどう考えてもイラクの間違いでしょう。自国メーカーの製品が米軍に採用され、巨額の利益を得ることが分かったのが嬉しくて浮かれてるんでしょうがちょっと落ち着きなさいって。

 XM320とはこんなのです。

http://www.securityarms.com/20010315/galleryfiles/2700/2769.htm

 「ストゥルムゲベール」(突撃銃)などのように通常ライフルを指す「ゲベール」という言葉が使われているので、始めM79のようなものを想像しましたが、いわゆるグレネードランチャーでした。通常この場合は「ベルファー」(投射機)という言葉が使われることが多かったと思うんですが。 
 レール上をバレルが前後に長距離スライドするM203と違ってサイドスイング式なので、砂塵などの混入に強く、また長いグレネードでも問題なく装填できるというのが売りのようです。データはありませんけどたぶん軽量でもあるんじゃないでしょうか。また、具体的にどういう方法でかは不明ですが、OICW用の25mmグレネードも使えるということです。上のサイトではXM8導入時にこれも、というニュアンスのようですが、この契約がXM8問題とどう関係しているのかに関し「DWJ」公式サイトは全く触れていません。ただ、XM8採用が決定的になったのならドイツ人は大喜びで強調するでしょうし、来年頭にはすでに供給が始まるというなら、当面はM16シリーズに装着することを考えているんではなかろうかとも思います。






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