「シリア、トルコ戦闘機を撃墜」に対する中国の反応

 前回紹介したページの内容のように、中国はトルコとも深い軍事的な関係があり、またシリアのアサド政権も支援しています。そういう立場にある中国はこの事件に対しどういう見方をし、どういう反応をしているんでしょうか。2つのページを紹介します。まず1つ目です。

http://blog.ifeng.com/article/18453810.html


シリア、トルコの戦闘機を撃墜。弱国、弱勢力も領空を守らねばならない。

シリアは22日にシリア領空に侵入したトルコのF-4戦闘機を撃墜し、2名の搭乗員は行方不明となった。トルコは直ちに激怒し、必要な報復行動を果断に取ると公言した。シリアは弱国、弱軍として、さらには国内、外交的に困難な情勢の中で、意外にもあえてNATOの勇者トルコの飛行機を破壊し人を死亡させた。逆に教えられた我々繁栄富強の中国人は赤面した。中国の南沙諸島領空を好き勝手に侵犯する敵機に、我々はいつ1発の砲弾を放つことができただろうか?

シリア軍サイドのスポークスマンは同国の国営テレビに対し、22日11時過ぎに、ある「未確認の目標物」が高速で低空からシリア国境内1kmに飛来し、シリア防空部隊は「関連する法律に照らして」対空砲を発射してそれを撃墜した。飛行機はシリアのLatakiaから13km離れた地中海海域に墜落した。

事件は国際政治上の危機を引き起こすかもしれない。何故ならトルコはNATO構成国なので、もし事件がトルコに対する攻撃という性質のものと断定されればNATOは直ちにNATO条約第5条を根拠にしてシリアに対し軍事行動による報復を行うことができる。今年4月、シリアが国境で発砲し、2名のトルコ国境内まで逃げたシリア人を射殺した後、トルコはすでにこの条文を意識して引用し、報復した。もしNATOがこの機に乗じてシリアに対し武力によりアサド政府に対応すれば、シリア内戦は必然的に状況が悪化する。

トルコが1機のF-4「ファントム」式戦闘機がトルコとシリアの国境において「シリアに撃墜され」たと発表した直後、トルコの首相エルドアンは軍、情報部門、閣僚の緊急会議を召集し、当局は「必要な行動、対応を果断に取る」と言った。大統領ギュルも報復行動を取ると明言した。誰が是であり誰が非であろうが、重要なカギは事件の発生地点にある。トルコ大統領ギュルは2日目に言葉を変えて、ジェット戦闘機の速度を考慮すれば、短時間国境線を超える事態が発生したと認めた。飛行機がどんなに短時間越境したとしても、たとえ北朝鮮の言うところの「0.001m領海侵犯した」のであろうと、直ちにこれを打撃するのは間違っていない(頑住吉注:聞いたことないですけど北朝鮮のアナウンサーが「たとえ我が国の領海を0.001m侵犯したとしても無慈悲な報復をする!」とかヒステリックに叫ぶ姿は想像できますね)。このため機を壊され人が死亡したトルコの大統領ギュルも怒っておらず、かえって(戦闘機の越境)には「悪意はなく速度超過がもたらしたミスに過ぎない」と解説して語った。トルコとシリア双方の海軍が戦闘機の残骸と行方不明の飛行員の捜索に参加していることを付け加える。

私はシリアがトルコの戦闘機を撃墜した事件に、弱国が不利な情勢でもあえて国家の領空を守ったことに感嘆した。本来シリア情勢は動揺しており、3万の難民がトルコ国境内に避難し、この中には12名のシリアの将軍が含まれる。シリアは貧すれば鈍するで、トルコが口実をつけて出兵することをひたすら恐れているに違いない。だがシリア国境防衛軍は少しも弱みを見せず、高射砲を使って高速で低空から侵入したトルコのF-4「ファントム」式戦闘機を一撃で撃墜した。

F-4戦闘機は最高時速2,370km、作戦半径1,145km、最大弾薬搭載量7,250kgである。

トルコ軍はこれをRF-4E戦術電子偵察機に改装している。トルコメディアの報道によれば、トルコはまさにシリアの反対派「自由シリア軍」を援助してシリア軍の移動、配備を捜索、情報収集しているところだった。RF-4Eは電子および写真による偵察装置を搭載しており、いくつかの重要情報を偵察するに至れば証拠としての写真撮影が必須であり、だからこそ危険を冒して越境偵察した。相手方は情報が外に漏れることの震撼性を心配して偵察機を撃墜するしかない。シリア軍はトルコを怒らせるリスクを冒して殺人による口封じをした。最も有り得るのはRF-4Eがロシア部隊がシリア国境内にいるのを偵察により発見し、これには地上の統率部隊が含まれ、甚だしきに至っては実地に空襲の目標物を調査測量した、ということだ。イギリスの「毎日電信報」6月19日の報道は、1艘のシリアに向かうと思われる、兵器や軍用ヘリコプターを満載したロシアの貨物船がイギリスに阻止された後、すでに航路を変えてロシアに戻った、とした。この他ペンタゴンは「ニコライ・フェリチンコフ」号大型上陸艦など3隻のロシア艦船がシリアに向かい、ロシア海軍駐シリアTARTOUS港の軍事基地で補給を行おうとしていることを認めた。誰がシリアのロシア軍事施設を偵察したいと思うだろうか。ロシアは有無を言わさず叩く。

2010年8月19日、北朝鮮の1機のミグ-21戦闘機が白昼堂々中国東北200km内地の遼陽地区に侵入したのを思い出す。解放軍は意外にも兵を抑えて動かさず、国中のネットユーザーは騒然となった。事後に当局は弁解して、北朝鮮は友好国であり、武力に訴えるのはよろしくない、と言った。まさか国家主権が深刻な侵犯を受けても国境防衛軍はまだ何重にも上に指示をあおいで手を下すに下せないのだろうか? 道理でフィリピンやベトナムがつけあがり、中国沿海の領土が悲惨にも侵され辱められる目に遭うのも無理はない。

【備忘録】

62年前の今日、金日成はソ連顧問の指揮下で韓国に侵入した。1950年9月、アメリカをメインとした国連軍が仁川に上陸し、平壌を攻めて占領し、北朝鮮軍の主力は包囲殲滅された。金日成は残存部隊をつれて中国国境の山岳地域に逃げ、毛沢東に救援を求めた。スターリンの圧力下で、毛沢東は中国共産党中央政治局の大多数の意見に反して、ソ連が約束を反故にして空軍の援護を派遣しない苦境の中、断固として朝鮮戦争に参加した。

【歴史の真相】

1950年10月3日、毛沢東はスターリンに電報を送った。「我々はかつて義勇軍を北朝鮮に派遣するつもりだったが、慎重な考慮を経て〜極めて深刻な結果をもたらすと考える。〜中国共産党の多くの同志は慎重に事を行うことが必須と考えている。〜このために中国とアメリカの公然たる衝突が引き起こされ、
〜我々の平和建設計画全体に混乱をきたし、国内の多くの人々が私に対し不満を持つだろう。〜人民には平和が必要だ。このため当面兵を派遣しないのが最良である。」

1950年10月5日、スターリンは毛沢東に電報を送った。「私はあなたに派兵を提案する。〜少なくとも5、6個師団だ。(さもなければ)中国は台湾さえ得ることはできない。〜あなたは返答の中で確かにこう言った。〜朝鮮戦争〜ゆえに〜中国国内に極めて大きな不満の感情が起きるだろうと。〜私の理解では、〜資産階級の政党が中国共産党および指導者への反対を利用している。〜あなたはこうした困難を克服できるのか否か?」


続いて2つ目のページです。

http://blog.ifeng.com/article/18465085.html


シリアによるトルコ機撃墜はNATOの軍事介入をもたらし得るか否か

トルコ外務大臣アーメド ダウトオールは24日、トルコはシリアが主張する「航空機撃墜前には目標がトルコに属すことを知らなかった」との説を受け入れないと語った。アメリカの国務大臣ヒラリー クリントンは24日に声明を発表し、シリアが1機のトルコ戦闘機を撃墜した事件について強く非難し、アメリカが次にいかに行動し、もってシリアの暴力的衝突を終息させるか、各方面と協議を行う、と表明した。NATOスポークスマンは24日、トルコの要求に応じNATO構成国は26日に協議を行い、シリアがトルコ機を撃墜した事件につき討論する、とした。ではシリアがトルコ機を撃墜した事件はNATOの軍事介入をもたらし得るのか否か?

「北大西洋条約」第5条によれば、NATOはいかなる1構成国でも、もし攻撃を受けたらNATO全体に対する攻撃と見なすことができる。トルコはNATOの古参のメンバーであり、この事件はNATOに議論を呼び、NATOをメインとした多くの国のシリアに対するすでに元々非常に緊張していた関係をさらに厳しくし、「アサド危機」は1つの新たな高みに至ったと言うことができる。だが筆者は、この事件が生む結果は「とても深刻」であるが、必ずしもNATOを促し軍事介入の決心を下させ得るとは限らないと考える。シリア問題の矛盾の焦点はアサドが退陣するか否かである。現在見たところではアサドの粘り強さは筆者の最初の分析と基本的に一致している。現時点まで発展すれば、アサド退陣を促し得るのはほとんど外部の軍事介入しかない。NATO、アラブ連盟等が不断に軍事演習を行い、圧力をかけ、かつ「低調」にシリアの反対派の武装を助け、持続的な世論による抑え込みなどを行っているが、シリア内外の形勢に対する影響はあまり大きいものではない。

その原因を究明すれば、まずアサド政治体系の「頑強」さにある。考えてみれば、シリアの政治的エリートは当初アサドに後を継ぐことを促すため、多くの説得工作をなしただけでなく、ためらわず憲法を変えて元首の年齢制限を緩和した。これはすでにアサドファミリーの国内における社会、政治的基礎が非常に独特であることを説明している。頑強な抵抗が続いて1年余り、カダフィ政権のような官吏や外交官が亡命する現象が全くないことも問題をよく説明している。最近では彼らはより、リビアの推移を傍観することからインスパイアを受け、あるいはリビア問題等の利用がもたらすインスパイアを受けているようである。彼らは、カダフィの退場は悲惨で、依然「準武装割拠、準内戦」状態にあるリビア人民の現在置かれている状況が必ずしも幸福でないことを見ている。この知識がかつての一部の政治的に異なる意見の者を説得してもいる。シリア危機以来、アサド政権は国内改革の歩調を明らかに加速させてもいる。憲法を変え、新憲法草案に対する国民投票を行うことを推進し(頑住吉注:激しい弾圧の中2月に実施したが反体制派はボイコット)、民主改革のため相当の法的基礎を固めた。例えば一党独裁制を複数政党制に改め、投票による政権民主化の確立、大統領が人民の直接選挙で誕生するなどである。また最近の政府の再編成では一部の反対派リーダーを取り入れて副首相や大臣さえ担当させるなどである。こうしたかつての主要な反政府勢力がいずれも同政府と協力する立場を取り得ることは、国家秩序を転覆して再建を試みる意見が必ずしも人民の普遍的な心の声を代表していないことを説明している。いかなる体制も基本的秩序を必要とし、この基礎が混乱させられれば、形式の違い、程度の違い、持続時間の違いがあるだけで流血は避けがたい。だが責任ある政治家は皆、真面目にバランスを取ることを考える。

シリアがトルコ戦闘機を撃墜した事件は疑いもなく敏感な時期、敏感な国家の間で発生した敏感な事件である。だが敏感な国際政治を背景に発生したことは、かえって事件の敏感性を緩和させる可能性がある。シリアがトルコ機を撃墜した事件は、シリア問題の外的要素あるいは外部の力関係に新たな変化を発生させる結果をもたらす。ある評論は、シリアがトルコ機を撃墜したのはシリアがこれにより軍事力を示したのだとする。だが筆者はこの説は少し妥当でないと思う。すでに累卵の危うきにあるシリアが、この時に自発的に全世界の軍事力ランキングで非常に上寄りにある隣国トルコに対し示威を行うだろうか? それは智慧の足りない人でなければ信じない。だがこのことはシリアが外部からの干渉に反対する決心を部分的に説明できる。この決心はNATOが軍事介入を選択するか否かに対しても明らかに重要であり、リビアでそうだったように列強は必ずしも本当にリビア人民の生死を気にかけているのではなく、自身の支払う代価を気にかけるのである。もしも彼らがこの代価が支払えるものだと考えていれば、アサド政権は半年前とっくに存在していなかったかもしれない。この代価は列強の兵員や物資の消耗という問題も含むし、これによりもたらされる地域情勢の方向がコントロール不可となる危険などもあり、当然国際道義という要素もある。この他、中国とロシアがアナン6項目提案の推進を堅持している立場の、NATOに対する制約作用も重要である。一部の評論員は大国の利益、意識形態、個人の感情という立場に立つ角度から分析し、中国とロシアが連発した数回の否決票は理解できると評論している。だが中国とロシア自身が安保理常任理事国であり、安保理の国際安全保障業務における権威を守ることがその責任であり義務であることを忘れることはできない。アメリカがNATOに全世界の好戦的侵略国をかき集め、国連安保理に取って代わろうとする兆しはすでに非常に明らかであり、中国とロシアは明らかにこれを憂慮している。この時にNATOが再びこの機を借りてシリアに対し軍事介入を行えば、疑いなく中国、ロシアおよび世界全体に口実を与え、アメリカ等が国連を分裂させる下心を持つとの嫌疑を深めることになる。


 本文にもある26日のNATOの会議で、すでにこれを理由とする軍事介入は行わないことが決まったようです。まあ射程が短く命中確率の低い高射砲で一撃で撃墜されているということはやはり領空侵犯があった可能性が高いと思われ、緊迫した情勢の中領空侵犯すれば撃墜されてもある程度仕方がないので妥当な結論でしょう。しかしこの問題をめぐる中国人との認識の差には絶望感すら禁じ得ません。

 おまけ的扱いで関連が薄いですが、最初のページの朝鮮戦争に関するくだりも興味深かったです。戦前の非合法時代の共産党が、「日本の情勢では反天皇制を正面に打ち出すことはできない」と言ったところ、ソ連共産党幹部から「共産主義者なのにそれができないというのはどういうことか」と怒られて止むを得ず天皇制反対を主張したところ、当然治安維持法違反になって壊滅につながっていったという話を思い出しました。ただ、これがスターリンを悪者にし毛沢東を持ち上げる作り話である疑いも捨てきれません。現に「ソ連が約束を反故にして空軍の援護を派遣しない苦境の中」という記述がありますが、実際にはソ連は戦闘機だけでなくパイロットも大規模に派遣しており、空中で最初は中国語で連絡をとっていても戦闘で緊迫した状態になると無線からロシア語が聞こえてくることがあったと多数のアメリカのパイロットが証言しているそうです。





















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