中国航空機エンジンの遅れは深刻?

 「中国航空エンジンの現状、問題点、展望」と大幅に内容が重複しているものの、あちらにない内容もあり、また興味深い画像も多数あるので紹介します。なお、最初のページが元々の記事の表紙らしく、タイトルは「心臓病の痛み」で、航空機の一番重要な部品であるエンジンが泣き所になっていることを比喩的に表現しています。サブタイトルは「中米軍用エンジン発展の隔たりを解析」です。

http://tuku.military.china.com/military/html/2012-08-24/206941_2224976.htm


遅れは深刻! 中米航空機エンジンの現状を比較

(頑住吉注:1ページ目。画像のキャプションは「F-22のエンジン」です。)2011年4月のある談話の中で、中国航空工業社(略称中航工業)の社長林左鳴は次のように明らかにした。中国航空工業は急速な発展を成し遂げたが、先進ジェットエンジン製造領域においては依然比較的大きな隔たりが存在する。隔たりを縮めるため、中航工業は航空エンジン研究開発を優先的地位に置き、これからの5年内に100億人民元(15.3億アメリカドル)を投資して先進航空エンジン研究開発に使うことになる。

中国の渦扇(頑住吉注:ターボファンの意)-10「太行」ターボファンエンジンおよびその改良型の性能指標は、アメリカのプラット&ホイットニーF100およびゼネラルエレクトリックのF110に相当し、これら2機種のエンジンは現在のアメリカ軍のF-15およびF-16戦闘機の動力装置である。「太行」ファミリーも殲-11Bの動力であるとされ、最終的にはロシア製のAL-31に取って代わり、殲-10および殲-15の動力となる可能性がある。2010年11月、あるメディアは、推力27,500ポンド(約125,000ニュートン)の渦扇-10「太行」エンジンがすでに量産に入り、殲-11Bに用いられることになる、と報道した。それにもかかわらず、依然ある証拠は、中航工業が渦扇-10量産拡大過程で品質安定性のコントロールに問題が存在し、エンジンの信頼性不足がもたらされ、中国戦闘機が依然ロシアからの輸入エンジンに深刻に依存する結果をもたらしていることを明らかにしている。

ロシアの国防工業は、中国は現在まだ性能的に信頼できる高性能軍用ターボファンエンジンを大量生産することはできないと考えている。ロシアのジェットエンジン製造メーカーである土星科研生産連合体は、2019年以前には同社が依然、殲-10およびFC-1戦闘機のエンジンの主要な供給メーカーであると予言している。ある情報は、2011年、中国はロシアと190台のD-30KP-2ターボファンエンジン購入の件について協議した、とする。これらのエンジンは中国の、ロシア製イリューシン-76に用いられる可能性があり、土星の楽観は一部ここから来ているのかもしれない。

(頑住吉注:2ページ目。画像のキャプションは「中米エンジン発展の対比」です。)中国は力を入れて国産高性能エンジンを開発しており、これを国産軍用機への装備に用いる戦略方向はすでにはっきりしている。この戦略的選択は重大な航空技術上の挑戦を含んでおり、世界でいくつかという少数の大メーカーしか真にこの技術を掌握していない。これ自体は不思議なことではない。エンジンの飛行機に対する重要度は、心臓の人体に対するそれに劣らない。エンジンの設計、研究開発は、温度、圧力、過負荷など一連の厳しい問題に直面し、最も先進的な材料、最も適した加工方法、科学的設計、合理的使用の維持保護があって初めてこうした難題が解決できるのである。ここ何年かで中国は材料や製造の方面でいくつかの進歩を達成したが、部品やシステムの設計、集成および信頼性特性に基づく勤務および使用管理方案の制定などの方面では依然問題が存在する。これらの方面はエンジンの使用機能最適化のカギとなる重要なものである。

中国とアメリカの航空エンジン技術の隔たりは人に不安を感じさせる。1980年代、F-15戦闘機はすでに推力:重量比が8に達したF-110エンジンを装備し始めていた。一方同一時期の中国はまだ、遅れたターボジェットエンジンで苦しみもがき続けていた。現在、我々は渦扇-15エンジンで巨大な成就を成し遂げたかもしれないが、我々のアメリカとの隔たりは依然、少なくとも30年ある。中国の渦扇-10「太行」ターボファンエンジンおよびその改良型の性能指標は、アメリカのプラット&ホイットニーのF100およびゼネラルエレクトリックのF110に相当する。これら2機種のエンジンは現在アメリカのF-15およびF-16戦闘機の動力装置である。「太行」ファミリーは殲-11Bの動力であるとされ、最終的にロシア製のAL-31に取って代わり、殲-10および殲-15の動力となる可能性がある。2010年11月、あるメディアは、推力27,500ポンド(約125,000ニュートン)の渦扇-10「太行」エンジンがすでに量産に入り、殲-11Bに装備するのに用いられることになると報道した。それにもかかわらず、依然ある証拠は、中航工業が渦扇-10量産拡大過程で品質安定性のコントロールに問題が存在し、エンジンの信頼性不足がもたらされ、中国戦闘機が依然ロシアからの輸入エンジンに深刻に依存する結果をもたらしていることを明らかにしている。

(頑住吉注:3ページ目。画像のキャプションは「アメリカ軍エンジンの事前研究路線図」です。)アメリカ空軍と工業部門は1987年から、「総合高性能ターボエンジン技術」発展計画の進行を開始し、2000年前後になって基本的に完成した。技術発展を保持するため、後継として「汎用の経済的に受け入れ可能な先進ターボエンジン」計画が、アメリカ空軍実験室およびその工業パートナーによって立ち上げられた。2003年8月、3項目の総合契約がゼネラルエレクトリック社、プラット&ホイットニー社、ロールスロイス社に与えられた。この計画の重点は、全体推進システムと経済的受け入れ可能性方面に置かれた。定められた目標は、エンジンの性能:価格比を12年以内に10倍に向上させることだった。「自己適応汎用エンジン技術」プロジェクトは、汎用の経済的に受け入れ可能な先進ターボエンジン計画の中の典型プロジェクトだった。目標は、flight envelope内でファン、核心機の流量、圧縮比を改変でき、したがってエンジン性能の最適化能力を発展させることだった。これらの自己適応技術のエンジンへの1つの応用が、可変サイクルエンジン(VCE)である。これは高速飛行の需要も満足させられるし、低速でチャンスを待ち長時間巡航を続ける、あるいは遠距離持久飛行を行う、そして経済性の要求をも満足させられる。

(頑住吉注:4ページ目。画像のキャプションは「画像はF135エンジンの地上試験」です。)壮大なIHPTET工程はアメリカの次世代エンジンの青写真である。これはアメリカのエンジン工業が1980年代から21世紀初めまでに推力:重量比を10から20にした全体的飛躍をリードした。またこれには我々学習者が思考し、味わう価値が非常にある。我々中国は、アメリカの成功経験の中から何を獲得できるだろうか? まず、遠くまでを見通す発展計画である。IHPTETとVAATEはいずれも期間が20年の長きに渡る3段階の発展計画である。現在の人類の技術革新をもって、20年後の科学技術発展の息吹を正確に把握し、20年後の次世代エンジン技術が必要とするものを理解するのは非常に困難である。これは、アメリカ軍とNASAの用意周到さと遠くを見通す眼光の反映でもある。不断に飛躍を追い求めるのは、アメリカがあんなにも強大な根本的原因でもある。

(頑住吉注:5ページ目。画像のキャプションは「画像はF119エンジンの地上テスト。F119エンジンはF-22戦闘機の動力源である。現在まで、我々はその偉大さを仰ぎ見るのみであるが、それはアメリカが前世紀90年代の製品にしか過ぎないのである。」です。)さらに我々が見ておく必要があるのは、ああした技術的先行者が前進する歩みを少しも緩めないのと同時に、環境保護など公然とした理由をもって我々の前に不断に障害を設置してきたことである。アメリカは1950年代から核心機の事前研究計画を開始し、今までにすでに7世代の核心機を開発してきているが、F119の核心機はその中の第4世代に過ぎない。アメリカの航空動力工業の技術ポテンシャルの一端ををここから見て取ることができる。だがアメリカ政府は航空エンジン技術に対する統制を全く緩めたことはない。我が国に対し封鎖を保持しているだけでなく、甚だしきに至ってはいくつかの核心技術上はアメリカのヨーロッパにおける同盟国に対しても「禁輸」を実行している。これと同時に、アメリカは人力資源方面でも見えない封鎖を行っており、他国の人員が航空エンジンの核心的研究開発領域に入ることを制限しているだけでなく(頑住吉注:そりゃするでしょ)、本国の関係人材が国外に移ることも制限し(頑住吉注:え、これって可能ですかね。少なくとも日本国憲法では不可能ですよね。)、これにより産業の実力を保持している。

(頑住吉注:6ページ目。画像のキャプションは「画像は我が国が自ら研究開発した太行エンジン。現在までこれは依然殲-10B単発戦闘機の動力源になれない」です。)著名な航空動力専門家で学士院会員の劉大響は、記述の中で中国の航空エンジン研究開発は世界先進レベルに比べ、主に5点の比較的大きな隔たりがある、と考えた。1.基礎研究が薄弱、技術的蓄えが不足、試験設備が不健全 2.国家経済が相対的に遅れ、研究開発経費が深刻に不足 3.エンジン技術の複雑性および研究開発規律に対する認識不足 4.基本建設戦線が長すぎ、範囲が広すぎ、力量が分散し過ぎ、低レベルで重複している 5.管理モデルが相対的に遅れており、科学的民主的決策システム、安定し権威ある中長期発展計画が欠乏している

(頑住吉注:7ページ目。画像のキャプションは「画像は我が国が技術導入によって開発した秦嶺エンジン」です。)以上の隔たりの他に、さらに以下の問題がある。1.航空エンジンの発展過程で、銭学森院士のような中国と西洋の学に通じたマイスター級の人物が足りない。「両弾一星」(頑住吉注:原子爆弾、ミサイル、人工衛星)の研究開発過程を回顧すると、マイスター級の指導者が果たす作用は極めて重要である。 2.我が国の航空工業は長期にわたりロシアの影響を受けてきたが、良好に彼らの設計理念を理解していない。彼らは経済的に決して富裕ではなく、研究人員が相対的に少ない状況下で、システムの観念を利用して複雑な問題を単純化した。ソ連の各生産あるいは研究開発部門が提供する性能が決して高くない部品と材料を集成し、主要性能が突出し、総合技術水準が比較的高い航空エンジンを作ったのである。 3.我が国はずっと学術を重んじ技術を軽んじてきた。加えて我が国の現在の教育体制、模式の限界があり、航空エンジン業種に機械製品に対する悟性が深い設計士と技術工員を深刻に欠乏させている。航空エンジン業種のある工場長はかつて筆者に対し次のように語った。自分は、小さな子供時代におもちゃで遊ぶことが少なかった人が、賢く器用な技術工員に成長することは難しい、ということに気付いた、と。

(頑住吉注:8ページ目。画像のキャプションは「画像はF135エンジン。これはF-35戦闘機の主要な動力である。」です。)アメリカのジェットエンジンと航空機の発展史をちょっと研究すれば、新しい航空機と新しいエンジンの出現の間の相関性がほとんど1に到達可能であることに気付くことができる(頑住吉注:合致、というような意味でしょうか)。中国は積極的に新型戦闘機を研究開発中であり、これは同時に全く新しいエンジンを動力として研究開発することをも要求する。中国が開発中の第5世代戦闘機に対し、ロシアは当然117Sなどの先進的航空エンジンを輸出したがらない。中国国防工業システムの実力を過小評価するのは賢明なことではない。外界は、中国は2〜3年以内に高性能ジェットエンジン大量生産方面で飛躍を成し遂げるが、信頼できるトップクラスの航空エンジン製造に関しては、まだ5〜10年必要とする、と見積もっている。ひとたび中国がこの段階を越えれば、中国空軍と海軍航空隊の戦力増強を促すことになる。現在中国が重点的に監督しコントロールする必要がある領域は設計能力、組み立て設備、製造能力、システムの運営および維持保護能力である。こうした問題は国産エンジンの性能および使用機能に影響することになる。

(頑住吉注:9ページ目。画像のキャプションは「画像は入札に敗れたF120エンジン」です。)アメリカ人は、中国のエンジン発展の隔たりは巨大で、主に体制問題であると考えている。技術問題に比べさらに解決が難しいのが体制問題である。中国の国防に現在存在する装備の出所が単一であるという問題である。中国国産軍用航空エンジンは完全に中航工業によって提供され、このグループ企業傘下の枕陽、西安、貴州などのエンジンメーカーにはある程度の競争が存在するが、競争のプラス方向の効果ははっきりしたものではない。もし適度の競争が存在すれば、競争の圧力は企業が斬新な技術を備え、価格が比較的低い製品を生産することを促し、研究開発の進度を加速し、アフターサービスのレベルを向上させることになる。1970年代末から80年代の初め、当時アメリカ空軍の航空エンジン領域がプラット&ホイットニー1社だけが大きかったという状況に焦点を合わせ、アメリカ政府はゼネラルエレクトリックとプラット&ホイットニーの間の合理的な競争を促進することを決定した。この挙はアメリカ戦闘機に、設計過程で2つのライバル企業が提供する多くの動力選択方案を持たせ、成果は顕著だった。中国の現在の状況はアメリカと異なり、エンジン領域に広い視野に立った競争が不足し、視野の狭い問題での競争もまた多すぎる。このことは局部的利益交換と利益保護をもたらし、さらには作業の重複、資源の使用の不適切、研究開発と生産周期延長をもたらしている。中国はその航空エンジン業種の組織システム構造と運用方式を決定する必要があり、これでやっとその構造および体制の問題を上層から解決することができるのである。

(頑住吉注:10ページ目。画像のキャプションは「米英などの国の軍用航空エンジン工業と比べ、中国航空エンジン工業は人員規模上依然明らかに不足だが、すでにロシアとフランスのレベルは越えている」です。)黎明社と西安航空発動機という2つの中航工業最大の軍用エンジンメーカーは、人員の総数の合計が20,000人近い。これに比べ、プラット&ホイットニー、ロールスロイス、ゼネラルエレクトリック航空部門は、それぞれの企業人員がいずれも35,000人を超えている。軍用航空エンジン自給化追求のためには、中国航空エンジン工業は将来において規模を拡大するかもしれない。ロシアのUMPOの現在の総人員規模は15,000人であり、2010年に109台のAL-31およびAL-41エンジンを生産する計画だった。ゼネラルエレクトリック航空部門は毎年およそ200台の高性能ターボファンエンジン、総数800台の軍用エンジン、ヘリ用ターボシャフトエンジンを供給できる。

(頑住吉注:11ページ目。画像のキャプションは「特殊な材料の獲得と正確に加工することは、航空エンジン製造および製造コストの競争力を保証することに対し、いずれも極めて重要である」です。)日本の石川島播磨重工株式会社航空エンジン工場の担当責任者はかつて、航空エンジン部品のコストの50%は材料自体から来るものだと明らかにした。現代の高性能航空エンジンには、いくつかの高強度、耐高温材料を採用する必要があり、これにはチタン、ニッケル、アルミ、複合材料およびニッケルベースとコバルトベースの超耐熱合金が含まれる。中国はチタン、ニッケル、コバルトなどの金属の産出量は充分に多く、理論上は資源供給量から見て航空エンジン産業にはいかなる制約も構成しない。だがそれは単に理論上のことに過ぎない。中国の航空エンジンメーカーが直面する材料の制約はニッケル、コバルトやその他の金属など原材料の入手ではない。最も難しい問題は航空エンジンに使用できる耐高温合金材料の製造あるいは購入である。ある分析は、中国は現在、超耐熱合金をまだ完全には自給できないと考え、見積もりによれば中国の毎年の超耐熱合金の生産量は約10,000トンで、一方需要量は20,000トンである。

(頑住吉注:12ページ目。画像のキャプションは「大量生産全過程の品質管理は量産ジェットエンジンの信頼性の保証に対し特に重要である。画像は民間用ガスタービンエンジンのタービンブレードに対し実施されるプラズマ吹き付け塗装工程」です。)中国はプラット&ホイットニーF100と同クラスのエンジンの大量生産、殲-20のような第5世代戦闘機が使用する高推力エンジンの研究開発を希望している。こうした大きな志は技術上そして過程上、深刻な困難に直面している。技術レベルでは、中国のエンジンのタービン鍛造、タービンベースの粉末冶金、チタン合金の中空部品成型などの問題で依然弱い。こうした領域はここ何年かで大きな進展を成し遂げたが、基礎レベルが比較的低いので、問題は依然存在している。

(頑住吉注:13ページ目。画像のキャプションは「中国は先進的エンジンの生産ラインを建立し、もって国産エンジンの量産の質、生産自動化レベルをさらに一歩向上させる必要がある。」です。)ある情報は、現在生産中の超耐熱合金材料の加工には依然難題が1つあり、加工過程でしばしば切削工具の頻繁な損耗がもたらされるのだとしている。品質の安定性に関して言うと、同型のエンジンは同一の生産ラインで生産されることを必要とし、このようにしてやっと生産ラインの規模効益と品質の安定性が保証できる。ひとたび設計定型に至り量産に入れば、できるだけラインを分けての生産を避けるべきであり、分ければ製品の一致性に影響する。実験室でタービンブレードを1つ作るのと、生産数千単位の量産での標準化を図り、かつ性能に信頼のおけるタービンブレードにすることは全く別の事柄である。1台のジェットエンジンは往々にして400〜500枚の各種ブレードを必要とし、安定した量産品質はエンジン製造業に必ず求められることである。この1点をなさねばならず、中国にとって冶金技術および工業プロセスの科学化問題は解決が必須なのである。

(頑住吉注:後は画像とキャプションだけです。14ページ目は「F135エンジンの試験台」、15ページ目は「F119エンジンの試験台」、16、17ページ目は「F120可変サイクルエンジン」です。)


 極めて難しい高性能エンジン国産化に向け、力を入れて努力が続けられていますが、現在までのところなお問題山積のようです。

 本筋と関係ないですけど「小さな子供時代におもちゃで遊ぶことが少なかった人が、賢く器用な技術工員に成長することは難しい」という指摘は興味深いです。全然レベルが違うんで比較するのもお恥ずかしいですが、私もごく幼い頃からレゴなどで遊ぶのが好きでしたね。完全な文系人間になりましたけど(笑)。









戻るボタン