武直-10 やはりエンジンがネック

 「アパッチに対抗可能」など武直-10をほめたたえる論調が多い中、こんな指摘もあります。

http://tuku.military.china.com/military/html/2012-11-20/210041_2268563.htm


国産エンジンが中国の武直-10の戦闘力発揮を深刻に妨げる

武直-10(画像のソース:鼎盛軍事 白龍の作品)

1990年代初めの湾岸戦争で、AH-64はヘルファイアミサイルに頼ってイラク戦車集団を掃討し、中国陸軍航空隊に深い印象を残し、自分たちの類似の武装ヘリ研究開発に着手することになった。そこで中国の当時の航空工業技術水準および工業的基礎により、このヘリの重量と体積はAH-64に比べ大きくはあっても小さくはないものになり、このためそのエンジン出力は少なくともT700のレベルを超えるか到達するものである必要があった。つまり出力が少なくとも1,200KW前後必要ということである。

だが中国の当時の航空エンジン研究開発の実力をもってしては、このようなターボシャフトエンジンの研究開発は基本的に不可能な任務で、このため最終的に輸入するしかなかった。当時中国はまさにカナダからPT-6Bターボシャフトエンジンを導入して直-8ヘリを改良しようとしているところだった。PT-6Bエンジンの出力は1,300kwを超え、ちょうど新型武装ヘリの必要性を満足させることができた。そこで中国はPT-6Bを基礎に武直-10型武装ヘリの研究開発に成功した。

(頑住吉注:2ページ目)原型機の画像や海外の資料から見て、武直-10のサイズはAH-64に近く、機首にはAH-64に近いドラム式光電子システムが装備され、両側の吊り下げ搭載架には国産の藍箭-7機載レーザー制御誘導対戦車ミサイルが搭載できる。藍箭-7の各方面の性能はヘルファイアとほぼ同じで、このことは武直-10がAHー64のようにリーチが強い方が勝つという原則を実現して遠距離から相手を攻撃でき、もって自身の戦場での生存能力を高められることを意味する。

特に藍箭-7は最多で4種のレーザーコードの支持を受けることができ、最多で4つのレーザー照射器の支持を受けることができる。関係の画像分析によれば、武直-10は最多で16発の藍箭-7対戦車ミサイルが搭載でき、比較的強い多目標攻撃能力を持つ。ひとたび武直-10が部隊に装備されれば、その優良な性能に頼り、有効に中国陸軍航空隊の作戦能力を高めることができることは全く疑いない。


(頑住吉注:3ページ目)だが武直-10の優良な性能は国外エンジンという基礎の上に建立されたもので、特にカナダはまだ対中国武器禁輸を維持しているため、疑いなくこれは空中楼閣である。このためカナダがアメリカの圧力下で中国向けに輸出されたPT-6Bターボシャフトエンジンを軍用に使うことを禁止すると、武直-10は直ちに継続困難となり、試験飛行の成功後、定型に至り部隊に装備されることは遅々としてできていない。

(頑住吉注:4ページ目) 左はカナダが生産したPT-6Bエンジン。右は我が国国産の渦軸-9エンジン。(頑住吉注:ここまで形の違うエンジンをよく組み込めましたね)

中国航空エンジン工業の努力を経て、今世紀に入って中国は渦軸-9エンジンを研究開発した。各方面の性能から言うと、その戦術技術性能はなかなかのものだが、出力は低めで、資料によればその出力は1,000kw前後であって、武直-10に用いるには明らかに小さい。

例を挙げると、国外のエンジンで出力が渦軸-9に近いのはフランス・ドイツ合同研究開発によるタイガー式武装ヘリのエンジンだが、この機の空虚重量は3トン、最大離陸重量は6トン前後で、この2つの指標はそれぞれAH-64に比べ3トンおよび4トン少ない。これはもし武直-10が渦軸-9を輸入エンジンの代わりにそのまま採用したら、その最大離陸重量はおよそ6トン前後となり、自身の5トンを差し引くと、燃料と武器の搭載重量は1トン前後しかないことを意味する。一方藍箭-7対戦車ミサイルの重量は1発でもう50kgに達し、このため渦軸-9を武直-10にそのまま使用するのは難しく、改良を加えて最大離陸重量を高める必要がある。

(頑住吉注:5ページ目。何か窓ガラスの製造精度が低そうな感じしませんか?)機の最大離陸重量を高めるには2つの方法がある。1つは機の揚力を高めることで、ヘリに関して言えばローターの揚力特性を向上させローターの直径を拡大することに他ならず、もって機のローター負荷を低くするのである。だがローターの直径を無限に拡大することは不可能である。何故ならローターが大きくなるほど設計、製造はより困難になり、同時にローターが下に垂れ下がる角度もどんどん大きくなるので、機体や機の尾部にぶつかりやすくなる。この他野外での離着陸に不便であるなどの問題もあり、このため揚力を高めることに頼って武直-10の最大離陸重量を増加させることには限度がある。

(頑住吉注:6ページ目)このように最大離陸重量が一定という状況下では、自身の重量を軽減することに頼って機の搭載重量を高めるしかない。これは我々が見たところ量産型武直-10が原型機に比べ何故一定の差異があるのかの原因でもある。武直-10の重量軽減の可能な手段には次のものが含まれる。機体の体積の縮小。こうすればすぐ機体自身の重量が減る。筆者は武直-10量産型のコックピットが原型機のコックピットに比べやや縮小されていることに注意を向ける。これは機の寸法と体積をやや縮小できることを意味する。これは一定程度機の重量を下げるが、このようにすれば機内のスペースも減少し、機の燃料搭載率も下がり、機の航続距離や滞空時間に影響する。このため画像から見て、量産型は寸法上決してあまり大きく縮小されてはいないようである。

(頑住吉注:7ページ目)まだ1つ見ることができるのは量産型が回転塔型光電子システムを本来のドラム式光電子システムに代わって用いていることで、これは新たな航空電子システムを採用したことを意味する。我々は現代の電子技術の迅速な進歩につれ、同様の働きをしながら現在の航空電子システムは本来のシステムの重量や体積に比べていずれも大いに減少していることを知っている。このようにすれば一定程度上機の重量が軽減できる。

(頑住吉注:8ページ目)画像は武直-10ヘリの前部コックピットの特写である。さらなる方法は機の複合材料の比率を高めることである。タイガー式武装ヘリがAH-64に比べ自重が軽い1つの原因は複合材料使用率がAH-64より高いことに他ならない。世界航空機ハンドブックによれば、タイガー式武装ヘリの複合材料使用率は80%にも達する。これに対しAH-64の材料は主に依然伝統的なアルミ合金で、こうしてタイガー式武装ヘリは顕著に自身の重量を軽減しているのである。

(頑住吉注:9ページ目)武直-10の航空展における飛行デモンストレーションは非常に見栄えがするが、これは決してその実戦能力がより高いことを示すものではない。逆に、武直-10ヘリは日本軍のAH-64D武装ヘリとの空戦対抗の中で、明らかに後れを取ることになる。

今世紀に入ってから中国は航空複合材料の使用上長足の進歩を達成した。1つの明確な例がCー919旅客機にすでに広範に複合材料が使用されていることで、これには力を受け入れる部品が含まれる。ヘリの材料に対する各方面の要求は旅客機に比べ低いと思われるので、中国航空業に関して言えば武直-10の量産型に大きな比率で複合材料を使用するのは明らかに決して特別困難なことではない。

(頑住吉注:10ページ目)まだある1つの万止むを得ない方法は、ヘリの関連指標を引き下げることで、特に抗墜落性の指標である。イタリアのA129武装ヘリは関連の指標を引き下げておよそ7%の構造重量を節約している。もしこうした措置を取ってもまだ満足な飛行性能に達し得なければ、機の搭載重量を減少するしかない。これには弾薬と燃料が含まれる。

(頑住吉注:11ページ目)武直-10は十年余りの研究開発を経ても久しく装備されず、もし現在すでに就役していても現在見たところでは依然完備された戦闘力を具備していない。ここには2つの深い教訓がある。1つは成熟した技術を導入するのはいいが、近道だけ行ったのではダメだということである。当初武直-10は国外動力の導入を利用して研究開発に成功した。だが禁輸に遭遇した後プロジェクトはすぐ停滞して進まなくなり、武直-10の就役時期がずっと遅延する結果がもたらされた。

(頑住吉注:12ページ目)2つ目は中国自身のエンジン研究開発の規律に対する認識不足である。これは最も重要な点でもある。中国ではしばしば機種に対応するエンジンの研究開発を連動させ、エンジンの研究開発周期が長く、研究開発の難度が高く、事前研究を必要とするという客観状況を軽視し、もって多くの機種の研究開発時には使えるエンジンがないことに気付くというまずい局面の出現がもたらされた。実際のところ国産ヘリの動力システムが直面する問題は、中国のその他の装備発展の中にも程度は異なるが全て存在しているのである。

(頑住吉注:以後のページは画像とキャプションだけです。13ページ目は「武直-10の光電子システム回転塔の特写」、14ページ目は「武直-10ヘリ後部コックピットの特写」、15ページ目は「武直-10ヘリの翼にある光電子対抗システム」、16ページ目は「武直-10ヘリの赤外線熱信号抑制システムコンパートメントの特写」、明らかに金網部分の周囲のラインが歪んでますな。17ページ目は「武直-10ヘリのローターシステムの特写」、18ページ目と19ページ目は「武直-10ヘリ」です。)


 非常に厳しい評価なんですが、エンジン開発に対する認識不足はすでに解消し、全力であらゆる努力をしているがまだ難関突破に成功できていない、という段階でしょう。また、「中国航空機への複合材料の応用状況」には、「先進国の複合材料の一部軍用機への使用量はとっくに50%を越えているとされるが、我が国の軍用機への最大使用量はまだ10%に満たない。民間用方面では、アメリカの大型旅客機ボーイング787の複合材料使用量はやはり50%を越えているが、我が国初の自主知的財産権を持つ支線旅客機ARJ21が使用する複合材料は飛行機の構造重量の2%しか占めない。」という記述があり、この記事の「武直-10の量産型に大きな比率で複合材料を使用するのは明らかに決して特別困難なことではない」というのは疑問です。しかしまあ確かに超音速戦闘機への使用に比べれば時速200km台のヘリへの応用は相対的に簡単ではあるでしょう。













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