中国初の実用カタパルトはやはり蒸気式?

 最初から電磁カタパルトを、という意見も多かったようですが。

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中国の002型空母、4基の蒸気カタパルトを配置へ? 専門家が解読

電磁カタパルトには多くの優勢があるが、蒸気カタパルト技術は相対的に成熟し、信頼性がより高く、蒸気カタパルトから電磁カタパルトまで移行するには1つの過程を必要とする

本報記者 姜靖

最近あるメディアの報道は、最も早ければ今年年末に進水する002型空母は4基の蒸気カタパルトを配置し、アメリカの「フォード」号空母上に採用される電磁カタパルトではない、とした。これにつき、アメリカのある軍事専門家は評論し、002型空母はまだ進水せずすでに立ち後れた、と語った。

ならば、蒸気カタパルトと電磁カタパルトには一体どのくらいの差があるのか? 我が国の空母はなぜ電磁カタパルト技術を採用しないのか? 海軍軍事専門家の李傑は18日科技日報記者のインタビューを受けた時、「電磁カタパルトに多くの優勢があるが、蒸気カタパルト技術は相対的に成熟し、信頼性がより高く、蒸気カタパルトから電磁カタパルトに移行するには1つの過程を必要とし、一挙に成就されることはあり得ない。」と語った。

蒸気カタパルトの劣勢は顕著

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「ネット仲間が作図した国産空母の想像図」)

アメリカの軍事専門家は、002型空母は4基の蒸気カタパルトを使用することになると見られ、これはその立ち後れのカギとなる重要な要素である、と指摘する。何故なら電磁カタパルトに比べ、蒸気カタパルトの劣勢は相当に顕著だからである。

これに対し李傑は次のように言った。ある空母にとって、艦載機カタパルトの選択は極めて重要である。現在9つの空母を持つ国のうち、6つはスキージャンプ発進技術を使用し、その他3カ国(アメリカ、フランス、ブラジル)は蒸気カタパルトを採用している。アメリカのまもなく就役する「フォード」号空母は電磁カタパルトを採用することになる。

蒸気カタパルト技術の劣勢は主に3つの方面に表れる。1つ目は蒸気カタパルトの体積が大きく、重量が重く、効率が低く、艦上の補助システムに対する要求が高く、運用と維持保護の費用が相対的に高いことである。比較すると、電磁カタパルトの構成ユニットは非常に少なく、体積は425立方m、重量225トンしかなく、蒸気カタパルトの半分にも及ばない。また、蒸気カタパルトの機械磨耗損傷は非常に深刻で、特に金属密封材は、艦載機が1回発射されるたびに必ずそれと1回摩擦され、交換量が非常に大きい。統計の数字は、蒸気カタパルト運転の費用は空母全部の整備の維持保護費用の80%を占め、およそ500人で蒸気カタパルトの運行と維持保護を保証する必要があることをはっきり示している。蒸気カタパルトが艦載機を射出するにはさらに大量の淡水を消耗する必要がある。アメリカのニミッツ級空母を例にすると、1機の艦載機を射出するのにもう1トンの淡水を消耗する必要がある。

2つ目は蒸気カタパルトの出力効率が電磁カタパルトに遠く及ばないことである。このことは艦載機を比較的近距離内で急速射出発進させるのに不利で、したがって出動効率が大幅に減少する。理論と実践はいずれも、現役のアメリカのニミッツ級空母の蒸気カタパルトの効率は5%前後しかなく、もし電磁カタパルトを採用すれば出力を60%まで高められることを示している。蒸気カタパルトシステムは使用前予熱に十何時間、甚だしきに至っては24時間必要とし、電磁カタパルトシステムはOFFのコールド状態から発射準備状態まで15分しか必要としない。

3つ目は蒸気カタパルトは一定の重量の艦載機しか射出できず、いくつかの艦載無人機は射出できないことである。一方電磁カタパルトのエネルギー出力の調節範囲は蒸気カタパルトよりはるかに大きく、射出過程の加速が均一で力量がコントロール可能なだけでなく、重さ何十kgの艦載無人機の射出も問題とはしない。また、電磁カタパルトの推力始動段階には蒸気カタパルトのような種類の突発、爆発的衝撃がなく、このことは非常に大きく飛行機と部品の構造寿命を延長するだけでなく、しかも飛行員の身体の受け入れ能力に対する要求を下げた。

技術は古いが信頼性が高く実用的

電磁カタパルトはメリットが非常に多いが、その決策と研究開発過程は蒸気カタパルトに比べてずっと複雑でまた長いだろう。蒸気カタパルトは研究開発から大量使用まで、10年の時間しか費やしていないが、電磁カタパルトは30年あまりを用いている。

蒸気カタパルトの登場は第二次世界大戦末期のジェット式飛行機の出現と関わりがある。高エネルギーカタパルトの急迫した需要にかんがみ、アメリカ、イギリスなどの国は新たなカタパルト技術の開発に着手することを決定し、ごく短い何ヶ月かの時間で、イギリスはもう方案提出からデモンストレーション装置の製造までの全過程を完成した。その後、イギリス海軍はまた初歩的な試験を展開した。1952年、イギリス海軍は「ペルセウス」号空母上で蒸気カタパルトに対する試験を開始して成功を取得し、すぐに部隊装備を開始した。1954年6月1日、アメリカは「ハンコック」号空母上で蒸気カタパルト装備に対し射出操作を完成させた。これより、空母の蒸気カタパルト装備は日増しに普遍的なものになり、全過程は10年の時間しか費やさなかった。

一方電磁カタパルトの研究は1982年に始まり、まもなく就役するアメリカのフォード号になってやっと電磁カタパルトを装備する。過去30年あまり以来、電磁カタパルトの研究開発は問題が絶えず、試験には故障が頻出し、計画の遅延をもたらし、費用は基準を超えた。2010年1月12日、アメリカのニュージャージー州ハースト湖航空工程基地で行われた電磁カタパルト試験の中で、カタパルトの牽引具が逆向きに移動し、甲板の固定器具に猛烈に衝突し、システムのハードウェアの損傷をもたらした。この故障がリニアモーターの電機子と甲板の固定器具に対しもたらした損傷は修復不能だった。この事故は計画をまるまる2ヶ月遅延させた。アメリカの個別の議員は甚だしきに至っては、電磁カタパルト技術のリスクはその優勢を超えていると心配した。

李傑は、蒸気カタパルトはすでに半世紀あまり使用されており、その高い信頼性はとっくに関連の専門家の認知と飛行の実践の検証を得ている、と語る。時今日に至り、のべ1千万機近い艦載機が射出されて発進しており、まだ1機も装置自体の故障が原因で事故を起こしていない。一方電磁カタパルトはまだ実践の検証を経ておらず、短時間ではまだそれが安全で信頼性が高いか否か断言するのは非常に難しい。我が国の002型空母が蒸気カタパルトを使用するのは、まさにこの方面の考慮から出たことである。

電磁カタパルトを空母に装備するにはまだ月日が必要

この前、あるメディアは報道し、我が国は電磁カタパルトを自主研究開発し、先日すでに蒸気カタパルトと電磁カタパルトの対比試験を開始し、射出の強度でも射出の回数でも、電磁カタパルトはすでに検証を得ており、続いて解決が必要なのは電磁カタパルトの信頼性の問題である、とした。中国工程院院士、動力・電気工程専門家の馬偉明は、「中国の電磁カタパルト技術は空母に搭載するのに全く問題なく、この技術は甚だしきに至ってはアメリカに先んじている。」と指摘する。

これに対し李傑は、電磁カタパルトを技術の成熟から工程化および実用化の程度に到達させ、かつ最終的に空母上に装備し、かつ一定の戦闘力を形成するまでにはいずれも多くの時間を必要とし、絶対に一挙に成就されるものではない、と指摘する。

まず、もし電磁カタパルトを装備するなら、空母の甲板、コントロールシステム、甲板下方などの部位に新規設計を行う必要があるかもしれない。アメリカの「フォード」号空母の経験から見て、電磁カタパルトを装備する他、さらにグレードアップされた原子力動力装置、より大きな甲板、より先進的な制動ケーブル技術、ダブル周波数帯レーダー、より多くの艦載機などを包括し、古い装置の技術に革命的改良があっただけでなく、さらに新たな技術装備を艦に搭載する必要があり、電磁カタパルトシステムの各種設備の体積、重量に対し新たな要求を提出している。各種設備の体積、重量はいずれもまだ定型に至っていない状態にある。その他の部位の設備の設計を改変するか否かも、カタパルトシステムの設計、制作に影響し衝撃を与え、全艦体のレイアウトに影響することになる。

また、電磁カタパルトは電気使用量が驚異的で、通常動力空母に対しては非常に大きな挑戦である。李傑は、電磁カタパルトが艦載機を射出する時、強制エネルギー貯蔵装置に頼ることが必須であると指摘する。この装置最大の不足は電気エネルギーが蒸気のように大容量で貯蔵できないことである。電磁カタパルトのカギとなる重要部品である強制エネルギー貯蔵装置は、艦載機の発進時その加速に対し貢献する必要がある。それぞれの強制エネルギー貯蔵装置に損失を加算すれば、充電のパワーは約4兆ワットである。もし4基の電磁カタパルト装置を同時に充電するなら、充電総パワーは16兆ワットに達し得る。もしさらにレールガン、レーザー武器、リフトなどその他の施設の電気使用量を加えれば、空母の総パワーは60兆ワット以上に達することが必須で、要求をやっと満足させられるには、もし原子力動力装置を採用しなかったら、電磁カタパルトの充電だけでさえその他のシステムの電気使用に影響するだろう。

また、いかにして電磁輻射を減少させ人体に対する傷害と電磁妨害を減少させるかの問題、素早く放熱し、もって射出間隔を狭め射出効率を向上させるかなどの問題は、いずれも空母が電磁カタパルトを装備するのに早急に解決が待たれる問題である。


 スキージャンプ式の空母を複数持ち、蒸気カタパルトの空母を作り、さらに電磁カタパルトに移行すればパイロットや艦のスタッフの養成などにも大きな不都合が出ると思われますが、こうした面で中国は慎重な策を取ることが多いようですね。

















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