フィアットM18双連サブマシンガン

 今回は有名な割に詳しい資料が見つかりにくい銃の1つ、ビラー・ペロサのバリエーションであるフィアットM18に関するページの紹介です。

意大利菲亜特M18双聯沖鋒槍


イタリアのフィアットM18双連サブマシンガン

第一次大戦の初期、山の多い地形で、守るは易く攻めるは困難なオーストリア・ハンガリー帝国に進攻した時、イタリア軍の損失はきわめて大きく、彼らに兵個人で携行する、密集した火力を持つ軽機関銃を強く必要とさせた。そこで、機関銃として使用されるビラー・ペロサM1915双連サブマシンガンが誕生した。フィアットM18双連サブマシンガンはその改良型である‥‥

銃器愛好家が熟知しているビラー・ペロサM1915双連サブマシンガン同様、フィアットM18サブマシンガンも初期におけるサブマシンガンの雛型の一つである。外観上、この2機種の古い銃は非常に似ており、実際フィアットM18サブマシンガンはビラー・ペロサM1915サブマシンガンから生まれたものであって、少しの改修を行ったに過ぎない。両銃は生産メーカーが異なる。すなわちM1915サブマシンガンはビラー・ペロサ兵器工場によって生産され、M18サブマシンガンはフィアット社の製品である。いずれもかつてイタリア軍に装備され、第一次世界大戦で使われた。

フィアットM18サブマシンガン主要諸元

口径 9mm
全長 600mm
銃身長 315mm
全体重量(マガジン含まず) 8.23s
弾頭初速 300m/s
理論上の発射速度 2400発/分
マガジン装弾数 25発

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです「バイポッド上に装着して使用するフィアットM18サブマシンガン」)

構造の詳細な説明

M1915およびM18サブマシンガンは当初イタリア軍から「軽機関銃」の名称を与えられたが、拳銃弾薬を発射する速射小火器なので、後に出現した「サブマシンガン」と概念が相当に符合する。このため「サブマシンガンの元祖」の称号を得ている。しかもまさにこれらの銃の啓発あればこそ、成功裏に運用されたサブマシンガン第1号が出現した。すなわちドイツのMP18 9mmサブマシンガンである。

ビラー・ペロサM1915同様、フィアットM18サブマシンガンも9mmグリセンティ拳銃弾薬を使用し、双連並列のレイアウトを採用している。2本のバレルがいずれも独立した射撃ユニットを持ち、後方のグリップユニットと前方の円盤状連結カバーによって一体化している。25連ボックスマガジンによる給弾を採用し、マガジンはレシーバー上方にセットされる。射撃後の薬莢はレシーバー下方から放出される。銃身長は315mmで、全長は600mmである。フィアットM18サブマシンガンは1挺の銃というより2挺の銃をひとまとめにしたと言う方が当たっている。当時は火力の持続性のためであったが、現在の目で見ればより大容量の給弾器を採用した方がずっと良かったと思える。ただし当時はまだ拳銃弾薬を使用するドラムマガジンの類の給弾具はなかったのである(頑住吉注:原文では「弾鼓」と「弾盤」の2つになっており、前者は一般的なドラムマガジン、後者はデクチャレフ軽機関銃のような弾薬を放射状に並べるタイプを指すようです)。

この銃は半自由遊底式自動原理を採用しており、ボルトの突起(頑住吉注:と言うかコッキングハンドルの基部)がレシーバー右側のコッキングハンドル用スリット内を滑動し、コッキングハンドル用スリットの前端には45度の湾曲部がある。このためボルトがチャンバーを閉鎖する時、角度45度回転しなければならない。弾薬撃発後、ボルトにはコッキングハンドル用スリットの湾曲部の影響下で、チャンバー内圧力が最高の時に比較的大きな摩擦阻力が生まれる。このためただちに開鎖することはできず、一定の遅延作用が引き起こされる。チャンバー内圧力がやや下降した後、ボルトは斜面に沿って回転を始め、湾曲部を離れてコッキングハンドル用スリットに沿って後退する。ボルトは後退運動を継続し、排莢動作を完成させ、運動が最後部位置に達した後、リコイルスプリングの作用下で前進、復帰し、次の弾薬をチャンバーに押し込む。現代のボルト回転閉鎖機構と異なるのは、ボルト後退、前進過程でファイアリングピン尾部の突起がコッキングハンドル用スリット後半に沿って直線運動し、ファイアリングピンは回転しないことである。

2つのプッシュボタン式トリガーは銃の尾部の2つのグリップの間に位置し、この2つのトリガーを押せば、それぞれに対応するバレルの弾薬が即発射できるが、できるのはフルオートのみである。2つのトリガーの間にあるのはセーフティレバーで、2つの位置に調節できる。それぞれ「F」および「S」の表示があり、「F」の位置にするとフルオート射撃が実施され、「S」はセーフティ状態である。セーフティレバーの軸にある丸い穴はリアサイトのピープとして使われ、フロントサイトは連結カバーの丸い穴の中に位置する。フロントサイトは4つあり、スイング可能な扇形のプレート状部品に設置され、それそれ異なる距離に対応している。異なる射程により、異なるフロントサイトが選択、使用できる。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。1枚目「エジェクションポートはレシーバー下方に位置する」 2、3枚目「ファイアリングピン(a)はボルト内で運動できる。ボルトが後退する時、ボルトの突起(b)はレシーバーにあるコッキングハンドル用スリット前部の斜面と組み合わさってボルトを回転させる。ファイアリングピン尾部の突起(c)はコッキングハンドル用スリットの直線軌道内を動き、ファイアリングピンをボルトと連動して回転しないようにする」)

性能上の弱点の分析

かさばりすぎ、重すぎることが歴然としていることはフィアットM18サブマシンガンの性能上の弱点の一つである。その重量は8.23kg(マガジン含めず)に達し、ビラー・ペロサM1915よりさらに重い。これは一方においては並列という構造設計のためであり、他方においては19世紀初期の技術水準が決定したものでもある。すなわちあらゆる部品が全て金属材料から旋盤、フライス盤で切削加工して作られており、グリップも真鍮製である。かさばりすぎ、重すぎるため、この銃を手に持って射撃するのは難しく、このため軽いとは言えないバイポッドをさらに装備し、これで支えて射撃しやすくしてある。この銃にはさらに、長さが調節できるスリングベルトが装備されており、この目的は銃を体の前に吊るして射手が行進中にフリーハンドで射撃できるようにすることで(頑住吉注:グリップのみ保持しての射撃、ということですね)、ただこの状況下ではさらに、もっと重い防盾の取り付けも必要だった。

この銃は速射を実現しただけでなく、重量、体積は当時の機関銃と比べてすで大いに「ダイエット」されていた。ただし実際上は有効な突撃武器としての使用は難しかった。フィアットM18の単一バレルの発射速度は毎分1,200発に達し、もしトリガーを引き続ければ1個のマガジン内の25発の弾薬は1秒も要さずに消耗され尽くした。しかもどんな種類の射撃姿勢をとっても、射撃過程におけるマガジン交換は困難だった。

この他、この銃の使用する9mmグリセンティ拳銃弾薬もこの銃の使用性能をきわめて大きく制限した。9mmグリセンティ拳銃弾薬の弾頭の外形および重量は9mmx19パラべラム拳銃弾薬に近いが、装薬量はもっと少なかった。9mmx19パラべラム拳銃弾薬を一般的なサブマシンガンに使用すると、弾頭の初速は毎秒400m前後、有効射程は100mないしもっと長くなり得る。だがフィアットM18サブマシンガンが発射するグリセンティ拳銃弾薬は、弾頭の初速が毎秒300mにもならず、その有効射程と殺傷効果は知れていた。

全く信じがたいことに、この銃はこのような大したことのない威力をもって、何と航空機に装備されて空中戦にも使われた! その使用効果は知れたものだったが。

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。1枚目「並列レイアウトのマガジンはそれぞれ回転式ロックによって銃本体に固定される」 2枚目「それぞれ異なる距離に対応する4個のフロントサイトがスイング可能な扇形の部品に設置されている」 明記されていませんが、100m、200m、300m、400mでしょう。突起はどう見ても5つあるんですが、あるいは本来あった600mは全く無意味ということで刻印が省略されたのかも知れません 3枚目「2つのグリップの中間に位置するセーフティには2つの位置があり、それぞれ「F」と「S」の表示がある。セーフティレバーの軸にある丸い穴はリアサイトのピープとして使われる。セーフティ両側には2つのプッシュボタン式トリガーが対称に設置されている」)

その影響は軽視できない

フィアットM18サブマシンガンは兄であるビラー・ペロサM1915サブマシンガン同様、外形、構造から使用性能に至るまで、まったく成功とは見なせない。その種々の欠点は当時すでにはっきりしていた。このため第一次大戦終結後、イタリア軍はこれをすぐに装備から外した。今日に至り、客観的視点からこの種の「でぶ」を評価すれば、威力貧弱な武器ということになり、その使用方面での意義は、後続の武器探求に啓発を与えた意味に遠く及ばない。「サブマシンガン」という武器探求の道の先駆たるフィアットM18サブマシンガンは、戦功はなかったものの、その価値を低く評価すべきではない。


 この銃に関しては「元祖サブマシンガン? Villar Perosa」、「オーストリア・ハンガリー帝国で使用されたVillar Perosa」と、過去2回触れたことがありますが、今回のページは何と言ってもディテール画像が貴重です。

 ディレードシステムは、まあ「ないよりまし」程度でしょう。ファイアリングピンを何故わざわざ別パーツにした上、回転させないようにしたのかはよく分かりません。

 この銃は高初速で貫通力や射程に優れ、言うまでもなく当時すでに普及していた.30モーゼル弾薬仕様にするだけでずっと有用な兵器になったと思われます。さらに重くせざるを得なくなったでしょうし、成功作と呼ばれるほどになったかは疑問ですが。

















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