ユンカー

 「Visiser」2003年12月号に、AK74スタイルの実銃エアガンの紹介記事が掲載されていました。


狼の皮をかぶった羊

 最近のスポーツ射撃ではカラフルでプラスチックを多用した銃が好まれるが、こういうものではない。美しいウォールナット材の木目が目を楽しませるというわけでもない。実射性能が良いわけでもまったくない。それでもドイツ国内に輸入、販売されたロシア製CO2ガスライフル、ユンカー2およびユンカー3は小さなセンセーションを巻き起こした。
 このような銃が輸入可能になったのは、多くの論争の的となったドイツにおける新しい銃器法、そしてロシアの銃器法のためでもある。この銃はロシアにとって国の宝ともいうべきカラシニコフアサルトライフルAK74を模造し、発射エネルギーを減少させてスチール製BB弾を発射可能にしたものであり、おもちゃではない。ドイツには連邦刑事局の許可を受け、18歳以上なら自由に購入できる7.5ジュール以下の空気銃としてウマレックスが輸入している。旧銃器法はフルオート軍用銃の外観に似せたものおよびフルオートで発射できる模造銃(作動原理のいかんにかかわらず)を軍用銃の取り締まり規定によって禁止していたが、2003年4月にこれが廃止された。今回紹介するユンカーのメーカーでもあるロシア(Ischewsk)のIzhmashは2年前、ニュールンベルグにおけるIWAで圧縮空気を使用するマシンピストルを展示したのだが、旧銃器法に基づき警察に没収されてしまったことがある。今回の法改正によって初めてオリジナルに忠実なカラシニコフの模造品がドイツで販売可能になった。

真のメーカーによる製品

 事実、2機種のユンカーは本物に似ているのではなく、いわば本物なのだ。なぜなら、2003年11月10日に84歳の誕生日を祝ったMichail T. Kalaschnikowが1948年に発明し、その地で大量生産を開始して以来、Izhmashは本物のカラシニコフのメーカーでもあるからだ。2機種のユンカーエアライフルは、メーカーによれば90%本物のAKの部品が使用されているという。レシーバー、折りたたみストック、、サイト、ピストルグリップ、本体に収納されるツール、型どおりバレル下に差し込まれたクリーニングロッドなどである。金属で補強されたプラスチック製マガジンアウターも流用され、この中にはユンカーの心臓部ともいうべき発射メカニズムとパワーソース(12gのCO2ボンベ)が内蔵されている。

オリジナルとの比較

 ユンカー3はユンカー2より13cm長いバージョンであり、1975年に改良されて誕生した、7.62mmにかわって5.45mm弾薬を使用する(薬莢の長さはいずれも39mm)AK74のオリジナルモデルを模している。ただし、ストックは1991年にAK74Mの名で登場したバリエーションと同じ、黒色の折りたたみストックが付属している。ユンカー3の直接の原型はこのAK74Mということになる。AK74の特徴のひとつは最高の効果を持つマズルブレーキで、これもオリジナルそっくりだが、空気銃の場合機能はない。よりコンパクトなユンカー2には前部がじょうご型になった特徴的な減音器が付属しているが、これは実銃ではAK105というタイプを模したものだ。これは1990年代半ばに公開された全長824mmのコンパクトバージョンで、スケルトンストックが付属している。減音器は元々もっと短いAKS74U(またはAKSU)のために設計されたものだ。ユンカー3のマズルブレーキは金属製だが、ユンカー3ではガスピストン部分から前はプラスチック製になっており、リアリティを損なっている。

外見は完全、中身はからっぽ

 構造や可動部の操作もオリジナルから多くが引き継がれており、作動原理について学ぶ資料にもなる。銃に対して技術的、歴史的興味を持つ購入層にもアピールする。カッタウェイされた銃、無可動銃(これも新しい銃器法でフルオートモデルが解禁された)、エアソフトガンなどの長所を合わせ持つ製品と言える。レシーバーデッキ、リコイルスプリング、ボルトキャリアなどの構造、分解法もオリジナルとほぼ同じだし、コッキングハンドルを引き、スプリングの力で前進させることもできる。ストックもオリジナルどおり伸縮できる。ユンカー3のストック内部にはドライバー、クリーニングキット等が一体になったツールが内蔵されている。レシーバー右面にある非常に長いセーフティレバーは、セレクターの機能はないもののセーフティの機能はある。
 実銃通りリコイルスプリングによって後方に押されているガイドの後端を前方に押し込むと、レシーバーデッキが外れて内部を見ることができる。内部はほとんどからっぽだ。長いリコイルスプリングの下にあるのは単なるトリガーメカニズムの痕跡だ。実銃の撃発機構を組み込んだり、実弾を装填したりできないように特別の処置が施され、違法な改造はできないことがわかる。

パワー
 ほとんどからっぽのユンカーに命を吹き込むのは、マガジンアウター内部に巧みに収められた「MP841K」ユニットだ。マガジン左側面にあるロックボタンを押し込むと、ユニットを引き出すことができる。ユニットには、極めてコンパクトにCO2ボンベ、垂直なパイプ状マガジンなどが収められている。ユニット前面にあるマガジンに18個のスチール製BB弾を入れるのはちょっと根気のいる作業だ。デイジーのBB弾なら3000発で15ユーロだ。例えばH&Nが販売している銅メッキされた鉛製BB弾も使えるが、缶入りで500発7ユーロと高い。ユンカーはスムーズボアなのでライフリングに鉛弾がくい込んで回転し、命中精度が向上することはなく、この高い弾はコストに見合わない。
 広告では0.35gのBB弾使用時、初速わずか70m/s、つまり1ジュールにさえ届かないという低い数値が示されているが、実際のテスト結果はこれを上回った。長いバージョンのユンカー3の場合、少なくとも撃ち始めでは初速約140m/s、3.4ジュールとなった。ただし、特に速いペースで撃てば撃つほどパワーは低下していく。10発目には91m/sとなり、18発目には75m/sになってしまうこともある。

命中精度
 BB弾を使用する銃を撃つ場合ゴーグルは必須だが、特にスチール製BB弾を使うこの銃の場合は強く跳ね返る可能性があるので特に必要性が高い。10mから14x14cmのエアピストル用ターゲットを1マガジンフル装填して撃ってみたが、着弾はバラバラに散っていた。ある程度収束した着弾が得られたのは5〜6mまで近づいたときだった。命中精度が低い一因は3350〜3500gもあるトリガープルだが、これは実銃どおりだ。
 1個のCO2カプセルで、8〜9マガジン撃つことができる。空撃ちをしたくなるが、これをするとパッキング材が吹き飛ばされてしまうことがあるのでしてはいけない。念のため予備のパッキング材が同封されている。

結論
 2、3のディーラーによる独占輸入品というせいもあり、また売れ行きに過度の期待をしたこともあって9月時点でこの銃には560ユーロの値がついていた。現在では349ユーロで買え、よく売れている。ネット上でも話題になっており、インプレ、チューニング、リアリティアップなどの情報も多い。マズルエネルギーを7.5ジュール程度まで引き上げるパワーアップ方法も公表されている。
 この「狼の皮をかぶった羊」は、本物と同じ工場で作られたものであることに魅力を感じる人、カラシニコフの技術に興味を持つ人は買わずにはいられないだろう。

モデル:Baikal/Izhmash Yunker2
口径:4.5mm(18発のスチール製BB弾を使用)
システム:CO2カプセル(MP841Kユニット改良型)
価格:349ユーロ(ウマレックスによる)
銃身長:380mmスムーズボア
重量:3500g
全長:810mm(折りたたみ時600mm)
型式:AK105スタイル 折りたたみ式スケルトンストック ハンドガード、ピストルグリップ、減音器はプラスチック製 リアサイトは上下、フロントサイトは上下左右に調節可 マニュアルセーフティあり コッキングハンドルは機能なし マガジンキャッチは実銃通り クリーニングキット、工具つき

モデル:Baikal/Izhmash Yunker3
口径:4.5mm(18発のスチール製BB弾を使用)
システム:CO2カプセル(MP841Kユニット改良型)
価格:349ユーロ(ウマレックスによる)
銃身長:480mmスムーズボア
重量:3600g
全長:930mm
型式:AK74スタイル 折りたたみ式プラスチック製ストック(内部にはクリーニングキットと工具を収納) その他の特徴はユンカー2と同じ 両モデルともバレル下にクリーニングロッドを装備


 このユンカーという銃は、本物のAKのメーカーが、大部分本物のパーツを使って作ったCO2ガスライフルです。外貨獲得のためいろいろ工夫しているんですね。メーカーによる紹介はここで、小さいですがマガジン内が分かる画像もあります。
http://www.izhmash.ru/eng/product/yunker2.shtml
ホームに帰るとAN−94のページにも行けます。まあたいした情報はないですが。メーカーはユンカーに関し、「90%本物のパーツを使っている」と宣伝しているそうですが、パーツ数が90%同じなわけはなく、これは体積比か重量比でしょうね。まあ嘘ではない、といったところでしょうか。
 発射機能はほとんどマガジン内にあるため、機能のないボルトキャリアなどはあるものの、それ以外の中身はほとんどからっぽです。トリガーメカはマガジンにある発射スイッチを押すだけ、セーフティは単にトリガーをロックするだけのようです。ちなみにユンカー2、ユンカー3があるからには当然ユンカー1もあるわけですが、こちらはバレルからではなくその上のガスシリンダーの位置から発射を行うもので、法改正で輸入可能になる前のものなのでドイツでは販売されたことがないそうです。メーカーの公式サイトにはユンカー1はないので、もう絶版なんでしょう。初期の試行錯誤期にバレル上のガスルートから発射する銃を作るというのは日本のエアソフトガンにもありましたよね。
 命中精度は日本のエアソフトガンより明らかに劣っており、かなりお粗末です。「Visier」はスムーズボアであること、トリガープルが重いこと、初速の安定性が低いことを指摘していますが、それだけの理由ではここまで散らないはずです。日本のトイガンマニアなら見当がつきますが、発射メカニズムは全てマガジン内にあり、マガジンを出たBB弾がバレルに突入するときカート式リボルバーのように途中で微妙な段差にぶつかり、これが命中精度を低下させる最大の原因になっているのではないかと思います。いわゆるバレル後座式のスライド固定ガスガンのように、バレルが後退してBB段を拾い、それから発射というメカではないようです。マガジン前面の穴はBB弾が通る大きさしかなく、バレル後端にはテーパーが切ってあるんで。マガジンとバレルの気密も単にゴムのパーツで行っているだけみたいで、CO2の高圧で無理矢理飛ばしているという感じでしょう。しかも小さなボンベで大きなパワーを出そうとしているので撃つたびに大きくパワーダウンしてしまうわけです。このあたりは経験豊富な日本のエアソフトガンメーカーならもっとうまく処理するでしょう。6mmBB弾、低圧ガス仕様のモデルを作って日本に輸出してくれたら面白いですが、まあまず許可されないでしょう。






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