中国によるイスラエルの「ファルコン」早期警戒機導入計画

 中国のイスラエル兵器導入をテーマにした記事で何度か出てきましたが、この件にテーマを絞った記事です。比較的新しいとは言え「歴史秘話」ものの記事なんで後回しにするつもりだったんですが、ネタニヤフ来日記念(笑)ということで急遽紹介することにしました。イスラエルは信用できないすよ。

http://military.china.com/history4/62/20140503/18479646.html


中国とイスラエルの早期警戒機改造に関する協議:アメリカ、28億アメリカドルを用いて瓦解させる

(頑住吉注:原ページのここにある画像のキャプションです。「イスラエルのファルコン早期警戒機」)

機能は多く、形勢は急迫:中国、早急に早期警戒機を必要とする

「早期警戒機」と言うと、非常に多くの人は決して良く知らないとは思わないかもしれないが、それを本当にはっきり語る必要があればやはりそんなに容易なことではない。簡単に言えば、早期警戒機とはミサイルの来襲に対し事前に警報を発することができる特殊飛行機である。純軍事的角度から言えば、敵サイドのミサイルの襲撃を防備するには早期警戒システムがあることが必須であり、早期警戒機を掌握した者は十何分、甚だしきに至っては何十分間の早期警戒時間を獲得し、壊滅的打撃に遭うことを免れ、戦争の中で先んじたチャンスを得ることができるのである。

早期警戒機は早期警戒システムと飛行プラットフォームという2つの部分からなる。現在世界でアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、イスラエルといった5カ国に早期警戒システムを製造する能力がある。早期警戒システムを装備することができる飛行プラットフォームには非常に多くの類型があり、ボーイング747、767系列、エアバス系列、C-130輸送機システム、およびロシアが製造するイリューシンー76輸送機システムなど全てOKである。早期警戒システムを装備した飛行機は実際には遠距離空戦協調指揮センターに変わり、空中の指揮部に相当する。早期警戒機はいかなる条件下でも360度全方位(陸海空)で有効に数百km範囲内の目標が偵察でき、同時に数十、甚だしきに至っては百以上の目標をロックオンでき、かつ同一時間内にのべ10機余りの作戦を指揮でき、非常に大きく敵サイドの地上戦力を牽制することができる。早期警戒レーダーはさらに非常に強い俯瞰で見る能力を持ち、言い換えれば早期警戒システムは非常に強い地上攻撃の指揮能力を持つ。

このような良いものは中国も当然持ちたい。ある専門家は、台湾海情勢の不測の事態に対応するため、中国大陸は少なくとも4機の早期警戒機を必要とし、しかも多ければ多いほど良い、と指摘する。だが、中国サイドはまだずっと直接他国から早期警戒機を購入することを考慮してはいなかった。だがある事情は中国政府に、時は我を待たず、できる限り早く早期警戒機を持つことが必須、と感じさせた。

話はさらに1996年3月の台湾地方の選挙から語り始めなければならない。この時の選挙の前、我が第二砲兵部隊は東南沿海において軍事演習を行い、もって島内の台湾独立勢力を威嚇した。そこでアメリカは台湾が大陸のミサイルの脅威を受けたことをもって、両岸の軍事力の不均衡を口実に、台湾軍に対する兵器販売水準をアップすることを決定し、台湾に向け4機のE-2T早期警戒機を販売し、かつその年に台湾に向け続々と商品を引き渡した。E-2Tはアメリカの早期警戒機の中では二流品でしかなく、信頼性は70%しかなく、実際の持続当番勤務時間は4.5時間しかなかったが、この機はそれでも200の目標を同時に追跡し、40の迎撃任務を管制でき、空中早期警戒時間を25分まで延長させることができた。これらの「利器」を持つと思うと、台湾は急に勢いづいた。

台湾は間もなく持つが、大陸には早期警戒機はなく、大陸の防空が問題となった。このため、大陸も早期警戒機を持つことが必須となった。

(頑住吉注:これより2ページ目。画像のキャプションは1ページ目と同じです。)

多くを比較判断し、細かく比較する:中国・イスラエル、私的に協定を締結

どうやって獲得するのか? 自らの研究開発に頼るのでは明らかに間に合わず、国外から購入するしかない。誰から買うのか? アメリカ、イギリス、フランスはこうした高度先端武器を我々に売ることはないだろう。我々の選択はロシアとイスラエルの間でしかあり得なかった。政治的関係から見て、中ロ関係はまさに上昇の勢いにあり、問題はないはずだった。イスラエルは西側諸国の中で初めて中華人民共和国を承認した国であり、両国は1992年の国交樹立以来関係の発展がスムーズで(頑住吉注:初めて承認した割に国交樹立がずいぶん最近ですね)、軍事協力にも何の障害もないはずだった。両者の製品を比較し、専門家たちは一致してイスラエルの「ファルコン」早期警戒システムが全体的にロシアの「A-50」の技術より優れているだろうと考えた。「ファルコン」システムの設計は、有効偵察範囲が400kmしかないが、必要な時は特別に延長でき、その最大のメリットは航続能力が12時間に達し得ることにあった。

1996年6月、中国・イスラエルは、イスラエルが中国の「ファルコン」早期警戒システム製造を援助するという協議を成立させた。この早期警戒システムの飛行プラットフォームにはロシアが生産したイリューシンー76輸送機の使用が選択された。協議によれば、1セットごとの「ファルコン」システムの販売価格は2.5億アメリカドルだった。中国サイドは事前に1セットのシステムの金を払い、イスラエルサイドは4年以内に第1機目の早期警戒機を引き渡すことになった。

協議成立後ほどなく、関連の内容はイスラエルのヘブライ語の「国土報」上で明らかにされたが、決して人々のあまり大きな注意は引き起こさず、アメリカの反応もごく平静のようだった。イスラエルサイドはいち早く協議内容をアメリカに告知しており、かつ繰り返しその「ファルコン」システムの中にはアメリカの技術は全く含まれない、と強調していた。おそらくアメリカが台湾に向け4機の早期警戒機を販売したばかりで、中国がアメリカの台湾に対する兵器販売に対し強烈に抗議中だったせいで、アメリカは当時決してイスラエルに対し横槍を入れることはなかったのである。

(頑住吉注:これより3ページ目。画像のキャプションはやはり1ページ目と同じです。)

商品引き渡しに臨んでアメリカが圧力を加える:だがイスラエルには自分なりのしっかりした考えがあった

光陰矢の如しで、瞬く間に1999年後半となった。この時、イスラエルの商品引き渡しの期日まで1年にもならないという時だったが、早期警戒機交易はどんどんアメリカに重視されるようになり、アメリカが各種の手段を利用してイスラエルに向けてかける圧力は日増しに強まった。

アメリカは何故イスラエルに中国向け早期警戒機販売をさせたくなかったのか? アメリカが最も心配したのは、ひとたび台湾海峡で戦争が勃発し、アメリカがまた否応なく巻き込まれ、中国がもし早期警戒機を持っていたら、それが真っ先に攻撃を誘導する目標はアメリカの軍事施設、例えば飛行機、空母などである可能性が高い、ということだった。当時ある専門家は、もし中米が台湾問題が原因で開戦したら、中国は少なくとも1隻のアメリカ空母を撃沈し、2,000名のアメリカの兵士がこれにより命を落とす、と予言した。これはアメリカの選挙民が受け入れられないことだった。もし開戦しなくても、中国が早期警戒機を持てば、アメリカの西太平洋の空母の一挙一動を厳密に偵察できる。また、ワシントンが極力中国・イスラエル早期警戒機交易に反対した背後には、さらにその他の意図が隠されていると指摘する分析者もいた。第1に、中国とイスラエルのより密接な関係の発展を阻止することで、北京が中東地域で影響力を拡大するのを防止する。第2に、これによりイスラエルの新式武器開発能力を拘束し、世界の軍備がアメリカに不利な方向に発展変化するのを防止する(頑住吉注:この理由で「ラビ」戦闘機も阻止したのだ、とも言ってましたね)。

アメリカの議員は考えれば考えるほど心配し、考えれば考えるほど怒りもした。イスラエルは結局のところアメリカの盟友であり、毎年必ず我が高額の軍事援助を手にしている。どうして身内のことを考えずに他人のことを考えて行動することができるのか? と。そこで軍事援助を取り上げて問題にした。アメリカの当時のイスラエルに対する軍事援助は10億アメリカドルにも達していた。アメリカ議会が開会し、2000年の対イスラエル軍事援助計画を討論した時、まずある議員が情報を流して威嚇し、もしイスラエルがあくまで中国に早期警戒機を売るなら、アメリカはイスラエルに対する軍事援助を減少、甚だしきに至っては取り消す、と言った。イスラエルが中国に向け何機かの早期警戒機を販売すれば、軍事援助の中から2.5億アメリカドル(頑住吉注:1機分の値段)ずつ差し引く、止めるまでずっとだ。本当に厳しい態度と言うべきである!

だがイスラエルは動揺せず、契約を取り消す兆しは全くなかった。アメリカ議会はそこでまた手を打ち、2000年から大幅にイスラエルに対する援助の額を増加させ、28億アメリカドルに到達させることを決定した! もし契約を取り消したら28億アメリカドルを全てやる。もし依然固執したら、少しもやらない! お前の気が変わるか変わらないか見ようじゃないか、というわけだった。だがイスラエルは依然心を動かされず、継続して契約を履行するとした。1999年10月末、ロシア製イリューシンー76輸送機がイスラエルに到着し、11月には「ファルコン」システムの装備が開始された。12月初め、中国の指導者がイスラエルを訪問し、協議の執行状況に対しすこぶる満足を感じた。

これと鮮明なコントラストを形成したのは、アメリカの指導者がどんどん恨めしさと恥ずかしさで怒り出したことで、イスラエルに向けた圧力もどんどん大きくなった。2000年2月、アメリカ国防長官コーエンがイスラエルを訪問した時、「アメリカは中国に向けこの種の技術を販売するのを支持しない。何故ならそれが潜在的に台湾海地域の軍事バランスを変えることになるからだ。」と率直に言った。イスラエル首相バラクは厳しい表情で彼の要求を拒絶し、かつ「我々はアメリカの台湾海情勢に対する深い関心を理解している。だが我々は中国と締結した契約の中での我が方の責任をより理解している。」とした。

イスラエルがこのように頑張り、アメリカを怒らせることをいとわなかったのは一体何故なのか? イスラエルには当然自分なりの考えがあった。現職の首相は一般に比較的前任者が対外的に成立させた協議を取り消すことを忌み嫌う。イスラエル・中国関係はそれまでずっと比較的友好的で、中東問題の上でイスラエルは中国の発揮する影響力を必要としていた。もしアメリカの圧力の下に協議を取り消したら、イスラエル兵器商の信用と評判は大いに割引になる。イスラエルが一方的に契約を取り消したら、国際慣例に照らして中国に向け高額の賠償金を支払う必要がある。何のかんのと言っても、イスラエルはまず自らの利益のために着想したのである。

(頑住吉注:これより4ページ目。画像のキャプションは「中国台湾地域のE-2T早期警戒機」です。)

暗にはかりごとをし、利をもって誘う:バラク、クリントンに首を垂れる

2000年4月、中国国家主席江沢民がイスラエルを訪問した。この期間、アメリカがイスラエルに対して加える圧力はすでに公然化し、しかもどんどん大きくなっていた。だがバラクはずっと江沢民主席に向け誠実で信頼できる誓いを立て、繰り返し国際協定を忠実に守るだろう、とした。署名がなされ、金が払われている以上、契約は履行されるべきである。アメリカは当初明らかにやや為すすべがない状態であるのが目立った。だがすぐにアメリカのチャンスがやってきた。しかも今回はクリントン大統領自らの出馬だった。

この時、中東和平プロセスは重要な進展を取得しており、和平協議はまさにカギとなる重要な段階にあった。クリントンはパレスチナ解放機構議長のアラファトとイスラエル首相バラクを招待してアメリカのキャンプデービットに赴かせ、イスラエル・パレスチナ・アメリカ三者首脳会談を行った。この時の会議で話されたのは中東問題だったが、会議に参加した三者のうち2人、クリントンとバラクには別のそろばん勘定があった。

クリントンは、議会が三者会談の期間にイスラエルに対する軍事援助法案を採決することになることをとっくに知っていた。もし議会がこの法案を通過させなかったら、これは直ちにアメリカのイスラエルに対する28億アメリカドルの援助が完全に水の泡になることを意味していた。採決結果が一体どうなるのかは、クリントンとバラクの「非公式」会談の状況を見て決める必要がある。この時の三者首脳会談の1つの重要な議題はパレスチナ難民の帰還と定住の問題だった。もしパレスチナとイスラエルが最終的に協議を達成させたら、イスラエルサイドは400億アメリカドルを出して路頭に迷ったパレスチナ難民が安住の家を持つのを援助する必要があった。このように高額の安住の家のための費用を出すことにバラクは当然心理的に抵抗があった。だがもし出さなければ、協議達成の希望はさらに見通しが立たなくなる。まさに会談が膠着に陥り、バラクが態度を決し難かった時、クリントンは時機をを失せず、「そっと」バラクに向けある「提案」を提出した。「もしイスラエルが、中国・イスラエル間の早期警戒機交易契約を取り消すと答えれば、アメリカは喜んでイスラエルが出す高額の安住の家のための費用のうち圧倒的部分を肩代わりしよう!」と。この時、イスラエルが中国に向け早期警戒機を引き渡すまでの時間はすでに1ヶ月に満たなかった。

土壇場でバラクは動揺した。彼はもはやアメリカとイスラエル国内から来るダブルの非常に大きな圧力を受け入れ難くなった。400億アメリカドルは結局のところ少額ではないのである。2日目、イスラエルは公然と中国向け早期警戒機販売計画を「暫時執行停止」すると宣言した。バラクのスポークスマンはこれに関し説明し、「イスラエルは、イスラエルとアメリカの関係は独特で、最も優先される地位を与えることが必須だと考える。」と語った。2つの弊害を比較してその軽い方を取り、2つの利益を比較してその重い方を取ったのである。イスラエル・アメリカ関係はイスラエル・中国関係よりもはるかに重く、イスラエル外交の譲れない最低ラインは真にアメリカの機嫌を損ねることはできない、というものだった。バラク首相はその後江沢民主席に宛てた手紙の中で依然、「契約の暫時執行停止は決して契約を取り消そうというのではなく、イスラエルはアメリカの了解を得た上でこの交易を完成させられるルートを探し出すことになる。」と強調してはいたが、中国サイドは双方にはすでに契約を再び回復する可能性はないことを知っていた。中国はすでに4年待ち、金銭上の損失はやはり小さなことだが、時間の上ではもはや待てなかった! 1999年7月、台湾はすでに4機の早期警戒機がある状態を基礎に、4億アメリカドルを費やしてアメリカから2機のE-2Tレーダー早期警戒機を追加購入し、それぞれ2003年と2005年に機が引き渡されることになった。これは中国大陸にとって小さからぬ圧力だった。

(頑住吉注:これより5ページ目。画像のキャプションは4ページ目と同じです。)

再度計画し別の道を切り開く:長期的視点から自らとじっくり相談

2000年7月18日、すなわちイスラエルサイドが早期警戒機交易契約の「暫時執行停止」を宣言した後1週間にもならず、朱鎔基首相と来訪したロシアの大統領プーチンが会談を行った。会談の中で、朱首相は明確にプーチンに向け、ロシア製A-50E早期警戒機の購入希望を提出した。プーチンは「ためらうことなく」答えた。この機は給油せずに7時間連続飛行し、同時に100の目標を追跡し、のべ12機の戦闘機の作戦を指揮し、かつ800kmの範囲内で地対空ミサイルの攻撃を早期警戒できる、と。ロシアのA-50Eは性能上イスラエルの「ファルコン」に及ばないとする専門家もおり、中国には早期警戒機を研究開発する能力が完全にあると強調する専門家もいたが、中国はできる限り短時間内に早期警戒機を獲得することが必須だった。11月1日、ロシア首相カシヤノフが中国に来て朱首相と中ロ政府首脳第5回会談を行い、双方は次のように最終決定した。ロシアは2機のA-50E早期警戒機を中国に賃貸する。同時に中国に5機の同型の早期警戒機を販売する。中国はついに望みをかなえたのである。

この挙は多方の関心を引き起こした。アメリカは「心配で気が気でない」様子だったが、すでになすすべがなかった。イスラエルの地域協力局長は北京を訪問した時、イスラエル政府を代表して「違約」の件につき中国政府に向け正式に謝罪し、自分たちがこのようにしたのは「完全に無理強いされてのことだ」と再三強調し、かつ「力を尽くして今回の不愉快な経歴を払拭し」、中国との協力の継続を希望する、とした。イスラエルはさらに進んで中国にワンセットの乾燥した地域の農場に用いる設備をプレゼントし、もって「違約」事件で中国にもたらした損失の一部を補った。2001年5月、イスラエルは昔のことを再び持ち出し、再度中国に対する早期警戒機販売を探求することを希望した。

イスラエルの「違約」に対し中国サイドはかつて簡単な声明を発表した。「長年来、中国は自力更生で自らの国防力量を発展させ、同時にいくつかの友好国ともこの方面で一部協力を行っている。いかなる国にも中国がその他の国と2国間協力を行うことに対し干渉を行う権利はない。同時に我々は、国と国との間で達成された協議と諒解は守られるべきであるとも考える。これは国の関係の中で従うべき基本原則である。」 早期警戒機獲得の曲折の過程は中国人の奮起して努め励む決意をより揺るぎないものにした。中国には自らの飛行プラットフォーム上に自らの早期警戒システムを研究開発して装備する能力が完全にある。しかもひとたび中国が同類システム研究開発の上で重大な突破を獲得すれば、各国のメーカーは次々に販売の条件を下げ、市場は中国にとって有利なものに変わるだろう。

(頑住吉注:6ページ目)中国がイリューシンー76を基礎に研究開発した空警ー2000早期警戒機

(頑住吉注:7ページ目)中国の空警ー200早期警戒機

(頑住吉注:8ページ目)資料画像:ネットに伝わる「空警ー500」早期警戒機


 これまでの簡単な記述による印象と違い、イスラエルがかなり頑強にアメリカの圧力に抵抗した様子がうかがえます。この筆者は自分の利益のためだとしていますが、これはあるいは契約を破ることへのユダヤ人であるがゆえの抵抗感とも関係があったのかなという気もします。





















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