88式スナイパーライフルの実力は?

 2004年3月にこのページで、当時まだ名前すら定かでなかった中国製スナイパーライフルに関する「スイス銃器マガジン」の記事を紹介しました。あれからもう6年半以上も経つわけですね。結果的にこの銃は88式スナイパーライフル(正確には輸出用の5.56mmx45仕様は97式と呼ばれますが)という名称で、現在すでに広く配備され、ハイチにおける平和維持部隊によって実戦使用もされているようです( http://www.gun-world.net/china/sr/qbu88/px316.jpg )。この銃に関する部隊テスト報告を載せたページがあるので内容を紹介します。

http://military.china.com/zh_cn/top01/11053250/20060901/13591700.html


軍試用報告:88式スナイパーライフル、実は精度不足

QBU88式5.8mmスナイパーライフル、別名88式スナイパーライフルは我が国の国産新世代スナイパーライフルである。2003年8月、我が隊は上級部門から2挺のQBU88式スナイパーライフルを受領し、試用した(シリアルナンバー980758、980103)。ここに試用状況を以下のように報告する(頑住吉注: http://www.gun-world.net/china/sr/qbu88/qbu88.htm ここによればこの銃は1997年に香港駐留部隊にまず装備されたとありますし、輸出バージョンが「スイス銃器マガジン」でレポートされたのは2004年3月号のことです。ちょっと試用報告のタイミングとして遅すぎるような気がするんですが、理由は分かりません。あるいは実際使ってみて問題が多かったので、問題点の洗い出しをこの部隊に委ねた、ということでしょうか)。

銃の受領後、我が隊はただちにこの銃の状態の検査を行うための人員を組織し、専門の人間を任命して訓練計画と試用方案を制定させるために派遣し、責任のもとに実施させた。選抜された6名は一定の射撃技能と経験を持つ射手であり、2003年8月20日から9月9日まで20日の時間内で使用訓練、基礎訓練、専門訓練を終了し、その後「QBU88式5.8mmスナイパーライフル公安隊試用大綱」の要求に基づいて試用作業を進めた。その中で条件的な制約により、試用の中で気圧と湿度に対するものに関し正確な記録を行うことはできなかった。

試用項目および結果

1.携行性:88式スナイパーライフルの全長は920mmであり、システム全体の重量は4.2kg(弾薬除く)である。これは都市部、屋内でも、あるいは野外で銃を持ったり背負ったりしての徒歩での行進でも、等しく携行性が良好である。階段の上り下りや乗下車、および乗車中も比較的便利である。結論は次の通りである。すなわち85式スナイパーライフル(頑住吉注:ドラグノフのコピー)と比べ、88式スナイパーライフルは体積が小さく、重量が軽い。88式スナイパーライフルの携行性は85式スナイパーライフルより優れている。

2.勤務使用性能対比試験:試用大綱の要求にしたがって進められた88式スナイパーライフルと85式スナイパーライフルの勤務使用性能対比試験中、88式スナイパーライフルの勤務分解(頑住吉注:たぶんフィールドストリップのことでしょう)の時間は、85式スナイパーライフルの勤務分解時間よりも平均で約10秒速かった。88式スナイパーライフルの勤務結合時間は85式スナイパーライフルの勤務結合時間よりも平均で約5秒速かった。85式スナイパーライフルのガス導入部は専用工具を要してやっと分解結合できるので比較は困難だが、一般的に日常のメンテナンスの中では分解は行われない。88式スナイパーライフルの勤務分解結合はいかなる専用工具も必要とせず、すぐに行える。88式スナイパーライフルの勤務使用性能は明らかに85式スナイパーライフルの勤務使用性能よりも優れている。

3.個人兵士の戦術基礎動作:88式スナイパーライフルの体積、重量はいずれも85式スナイパーライフルより小さいため、88式スナイパーライフルを持って行う各種の個人兵士の戦術基礎動作は85式スナイパーライフルを持って行う場合よりさらにスムーズさが加わり、さらに容易に順応できる。

4.戦術使用性能射撃:各距離での実弾射撃中、88式スナイパーライフルの散布精度は0.4ミルに達し、85式スナイパーライフルの散布精度は0.5ミルに達した。ただし100m以上の距離での射撃中、88式スナイパーライフルは意外な着弾(頑住吉注:飛びぬけて外れた位置に着弾する、という意味でしょう)が出現する確率が85式スナイパーライフルよりも高かった。我々はこの現象が発生する原因は、88式スナイパーライフルの5.8mm弾薬の運動エネルギーが85式スナイパーライフルの7.62mm弾薬の運動エネルギーより小さく、このため対環境因素(風、湿度等のような)の変化により敏感さが加わっているからであると分析した。全体として、88式スナイパーライフルの戦術使用性能は85式スナイパーライフルよりも優れている。

5.射撃安全性、信頼性:練習および試用大綱にしたがって進められた試験中、我が隊の試用した2挺の88式スナイパーライフルはいずれも故障、事故を発生させなかった。

試用中に発生した問題とそれに関する見解

1.精度:88式スナイパーライフルの精度は85式スナイパーライフルより高いが、ただし比較して言うとその向上ははっきりしたものではない。1つの銃器戦闘システム中、弾薬は1つのキーとなる因素である。88式スナイパーライフルの弾薬である87式5.8mm機関銃弾薬は、世界で最も性能の優れた軍用小口径弾薬ではあるが、その性能は距離をおいて正確な射撃をするという要求にはまだ距離がある。

例えば、国外のSG-550 5.56mmスナイパーライフルは、同じような小口径であるが、その射撃散布は0.2ミルとされており、88式スナイパーライフルの0.4ミルより優れている。SG-550のバレルがより長く、より重いことの他に、これはまさにSG-550が専用の高精度競技用クラスの弾薬を使用しているからである(頑住吉注:ドイツ語版WikipediaによればSG-550の銃身長は528mm、D-Boy氏のページによれば88式のそれは620mmとなっています。スナイパーバージョンであるSIG SG550-1の誤りでしょうか)。我々は88式スナイパーライフルも専用の高精度狙撃弾薬を使うべきであると提案する。これは警察の正確な射撃能力を高めることに対して重要な意義を持つ。同時に我々は受け入れ可能な範囲内で88式スナイパーライフルのバレルをより重くし、もってその精度をさらに一歩高めることに利することを提案する。これはさらにその他のメリットをもたらし得る。それは88式スナイパーライフルの寿命を延長できることに他ならない。

2.サイト:88式スナイパーライフルのスコープは多くの長所を持っている。まず簡単に使えるようにレティクル上に直接スケールが表示されている。次に夜間照明レティクル系統が比較的(頑住吉注:伏せ字? が1字あって比較的何なのか不明ですが夜間用レティクルが存在し、有用なんでしょう)。さらに9倍までの可変倍率は顕著に射撃精度を向上させる。我々はここで特に強調する。警察の狙撃手が対テロ、対暴力案件の任務を執行する時、法律法規の制約を受けるので軍隊の狙撃手のように目標を随意に射撃することはできず、目標の身分の識別、確認が必須であり、その後やっと射撃できる。高い倍率のスコープは目標の身分の識別、確認により適しており、警察が狙撃任務を執行するのにもより適しているわけである。ただし88式スナイパーライフルのスコープにも欠点はあり、まずレティクル調節のダイヤルがクリック音を使って示す調節度が不正確である。理論上1クリック音で調節度0.2ミルだが、実際には0.3ないし0.4ミルに達することがある。これは単にダイヤルに刻度を加えるだけで解決する問題である。次にそのゴム製対物レンズ保護カバーが容易に脱落する。その固定方式の改良を提案する。さらに、照明レティクル系統に使われるのが専用電池であり、普通に市場で買える電池に改め、もって後方勤務の保障に利することを提案する。最後に、88式スナイパーライフルのスコープには85式スナイパーライフルのスコープにあるような遮光カバーがなく、逆光での照準時にスコープの反射光が目標に発見される可能性があり、したがって隠蔽性がそがれる。

3.バイポッド:88式スナイパーライフルには着脱可能なバイポッドが装備されているが、これは88式スナイパーライフルの地形、地物(頑住吉注:地上の固定した物体)に対する適応性を85式スナイパーライフルより高いものにしている。ただし、我々は使用中に88式スナイパーライフルのバイポッドの装着方式に問題があることに気付いた。まず、バイポッドの装着位置はフォアストック上であるべきである(頑住吉注: http://www.gun-world.net/china/sr/qbu88/pkk49.jpg 実際にはバレル上に取り付けられています)。これは射撃時に銃の前部を支えるポイントの変化が、着弾点の変化を導き得るからである。特殊な状況下(例えば草や灌木が比較的生い茂っている環境において)バイポッドを使用してプローンで射撃することができず、シッティング、スタンディングでの無依託射撃しかできない時、着弾点は下方に0.6ミル移動する可能性がある。次にまださらに重大な問題が出現する。バイポッドを使用しプローンで射撃している際に、もし銃を構える力の強さが変化すると、バレルがバイポッドの装着位置から受ける力の強さが変化する可能性が生じる。この結果は1.バレルの湾曲度に微妙な変化が生じる。2.バレルの射撃時における共振の規則性に変化が生じる。最終的に射撃精度は銃を構える力の強さの変化につれて不規則に不利な影響を受けることになる可能性がある。もしバイポッドをフォアストックに装着すれば銃の前部を支える位置は一般的な情況下では変化せず、銃を構える姿勢の変化は着弾点の変化を発生させる可能性がなくなり、銃を構える力の強さの変化がバレルに影響するに至る可能性もなくなる。もう一つ、バイポッドの着脱可能な装着方式はプローンで銃を構える際に安定性を悪化させ、このため射撃精度に影響することとなる。このため我々はバイポッドを固定して装備すべきであると提案する(頑住吉注:固定すると言っても簡単に着脱できないが折りたたむことはできる、FAMASのような設置にすべきだと言っているわけでしょう)。

4.人間工学:88式スナイパーライフルは人間工学的に比較的優れている。銃を持ったとき、構えた時、照準する時、いずれも快適で自然である。ただしその人間工学的設計には依然として改良の必要と余地がある。我々は国外のスナイパーライフルのように88式スナイパーライフルのグリップにもパームレストを加えること、同時に銃の尾部下方に調節可能なモノポッドを加えることを提案する。これは射手が長時間にわたって監視、照準を続ける際に疲れにくくする。この他88式スナイパーライフルのセーフティ機構の位置は理想的でなく、操作に不便である。レシーバー下方から側面に移動することを提案する(頑住吉注: http://www.gun-world.net/china/sr/qbu88/d05.jpg 位置、デザインともFAMASのそれに似ていますが、180度回転する必要があるので突発的に事態が変化して緊急に射撃を行う必要が生じた時素早く操作しにくそうです)。

5.メンテナンス用付属品:88式スナイパーライフルに装備されているのはグリップ内の付属品筒に入った組立式クリーニングロッドである。この種のクリーニングロッドの欠点は組み立て後真っすぐでなく、ボアのクリーニング中にロッドがボア内壁に接触し、銃の保護上不利なことだ。この他に一体式の長いクリーニングロッドを配備して平時のメンテナンスに使い、組み立て式クリーニングロッドは緊急情況下でのみ使用することを提案する。88式スナイパーライフルのスコープ用ケースの品質は並みで、そのロックボタンは容易に変形して機能を失う。

6.88式スナイパーライフルの銃口装置は肉薄すぎ、ひとたびぶつければ変形する可能性があり、このため内部での弾道に乱れを生じる可能性がある。銃口装置の強度を増し、このような情況の発生を避けることを提案する。

結論と提案

試用を経て我々は以下のように考える。88式スナイパーライフルの性能は85式スナイパーライフルと比べて顕著に向上している。ただし依然としてさらなる一歩の改良を必要とし、それでやっと新時代の警察が対テロ、対暴力案件の任務を執行するための要求を満足させることができる。報告の第3項(試用中に発生した問題とそれに関する見解)の中で提示した提案の他に、我々は身をもって感じた。88式スナイパーライフルの性能と用途にはまださらなる一歩の発展が求められる。我々は平時における業務中に消音狙撃手段を持つことの重要性を知った。我が隊が1996年の桂林「1.16」誘拐人質事件を処置するにあたり、犯人の狙撃、射殺に使用したのがまさに消音サブマシンガンであり、このため人質の解放、救出に成功した。ただし国内では消音スナイパーライフルの方面が依然として空白である。もし88式スナイパーライフルに着脱可能なサイレンサーと亜音速弾薬を研究開発し、200m以内での精度を保証できれば、我々が対テロ、対暴力案件の任務を執行するにあたり、さらに隠密で敏捷かつ有効な手段を手にすることになることに疑いの余地はない。

88式スナイパーライフルの部品と付属品にもいくつかの欠点がある。最も主要なものは2つである。

1つにはクリーニングロッドが多節の連結で形成されていることだ。詳細に観察すれば、このような連結式クリーニングロッドが直線状を呈せず大きく湾曲していることに気づくことができる。このようなクリーニングロッドを用いて銃をクリーニングしてボアを摩損せずにいられるだろうか? 高い射撃精度を追求するスナイパーライフルに関して言えば、ボアの摩損の結果は言うまでもない。摩損を避けるため、我々は本来ならいつもの方法、すなわち細い麻縄に布きれをはさんでボアをクリーニングしたいところだ。しかし88式スナイパーライフルの口径は小さく、布切れをはさんだ細い麻縄をバレルに通すのはこれも相当に面倒なことでもある。我々は銃本体にすでにプラスチック素材が使用されているのに、何故クリーニングロッドをプラスチック素材で作らないのか、と提案する。プラスチック素材は鋼鉄よりも柔らかいに違いなく、摩損の問題が生じる心配はないはずである。

2つ目に88式スナイパーライフルの消炎器は、消炎、消音効果は良好だが、少し肉薄に作られすぎている。我々の88式スナイパーライフルの1挺は一度戦術訓練時に銃口を硬いものにぶつけたら消音器がただちに変形した。銃口装置の変形は内部の弾道に乱れをもたらす可能性があり、射撃精度に不利に影響する。その後我々は大変な技量を費やしてやっとのことで消炎器の外形を矯正した。もし可能ならば、やはり我々は消炎器の強度をさらに一歩高め、もって上述のような事態が再び起きることを避けるよう希望する。

個人的に私の88式スナイパーライフルに対する最大の不満は、そのバイポッドの設計にこそある。88式スナイパーライフルは着脱可能なバイポッドを装備しているが、これは88式スナイパーライフルの地形、地物に対する適応性を85式スナイパーライフルよりも高いものにしている。ただし我々は使用中に、88式スナイパーライフルのバイポッドが直接バレルに装着されている方式に問題が存在することを身をもって知った。まず、射撃時に銃の前部を支持する位置の変化が着弾点の変化を導く可能性があるからだ。特殊な状況下(例えば地面に植物が比較的繁茂している環境において、あるいはビルの窓からの射撃)ではバイポッドを使用してプローンで射撃することができず、バイポッドを外して(頑住吉注:前方にたたむことも可能です)シッティング、スタンディングで無依託射撃をするしかない時、着弾点が下方に0.6ミル移動する可能性がある。次にはさらに深刻な問題が加わる。バイポッドを使用してプローンで射撃する際に、もし銃を構える力の強さに変化が起きると、バレルがバイポッドの装着位置から受ける力の強さに変化が発生する可能性がある。

この結果は次の通りである。

1.バレルの湾曲度に微妙な変化が生じる

2.バレルの射撃時における共振の規則性に変化が生じる。

ついには、射撃精度が銃を構える力の強さが変化するにつれて不規則に不利な影響を受けるに至る可能性がある。当然訓練された射手は銃を構える力の強さと状態を終始不変に保つことが完全に可能である。ただしこれは一般的な射撃条件下の情況に過ぎない。もし戦闘中の比較的緊張した状態、また劣悪な状態および条件下にあっては、人間の身体および心理状況には非常に大きな変化が生じる可能性がある。これは人間の意思でコントロールできるものではない。1999年4月、私は広西公安庁組織の、玉林市博白県阮重武装犯罪集団掃討戦闘に参加した際、この事実を身をもって知った。当時私は実銃、実弾を使った戦闘に参加したのは初めてだった。戦闘中自分の心中に何らの恐怖感も起きていないと感じたが、両手はアドレナリン(頑住吉注:ちなみに中国語では「腎上腺素」というそうです)の大量分泌により、絶えずぶるぶると震えていた。

実はこの問題を解決する道は全く簡単なものに過ぎない。それはただバイポッドの装着位置をバレル上からフォアストック上に改めればよいのである。このようにすれば銃を構える力の強さ、あるいは射撃姿勢に変化があっても、バレルに影響する可能性は全くない。我々はすでに自分で、輸入品のハリス製汎用バイポッドを88式スナイパーライフルのフォアストック上に装着することを試してみた。この改良後、射撃時に意外な着弾点が出現する状況は大いに減少した。我々の印象では、現在世界でバイポッドをスナイパーライフルのバレル上に装着している例は非常に少ない。旧ソ連とロシアのスナイパーが自分で軽機関銃のバイポッドをSVDスナイパーライフルのバレル上に装着しているだけである(頑住吉注: http://www.gun-world.net/russain/sr/svd/svd008.jpg )。

この他アメリカのM-21スナイパーライフルにもかつて、ハリス製汎用バイポッドを直接バレル上に装着するのが見られた。しかしこの種の現象も多くは見られず、しかも一部の古参スナイパーからはプロのやることではないと評価されている。その他のスナイパーライフルはバイポッドを装備していないか、フォアストック上に装備しているかである。アメリカのスナイパーの教程の中では、スナイパーライフルは射撃時にバレルをその他の物体に接触させてはならないと強調されているが、やはりこれには科学的根拠があると考えられる。私はまさにこれも、何故大多数の現代のスナイパーライフルのバレルがフローティング状態に装備される設計になっているのかの原因の一つであると考える。

我が国の独自設計による初めてのスナイパーライフルとして、88式スナイパーライフルは多くの特色を持ち、総合性能も85式スナイパーライフルと比べて大いに向上している。ただし上に提示した問題からすると、88式スナイパーライフルにはまださらに一歩の改良の必要があり、それをしてやっと一流のスナイパーライフルになり得る。


 私はこの銃は95式から出発したものかと思っていました。もちろん別物なのは一目瞭然ですが、03式が95式のコンベンショナル版という意図で出発しながら結果的に全く別物になったように、命中精度を高めるためには本体の剛性を上げる必要があって金属製にするなど改良を加えて行った結果として別物になったのかと想像していたんですが、出発点から全く別の銃だったようです。順番が逆になりましたが、この銃の開発過程等に関するページも読んでみるつもりです。












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