飛行機が空港の滑走路を飛び出した場合の安全システム

 今回はたまたま目にとまった、珍しく軍事色が極めて弱い記事の紹介です。

http://mil.huanqiu.com/china/2012-10/3206608.html


我飛行機の滑走路飛び出し阻止技術の独自研究開発に成功せり アメリカの独占を打破

少し前、陳氏がディスカバリーチャンネルである目新しいものを見た。アメリカ人がいくつかの飛行場の滑走路の終わりの場所に阻止床を敷いており、何と飛行機が滑走路から飛び出すのを阻止できるのだ。テレビ画面上では滑走路の端に敷かれた材料は1機の滑走路を飛び出さんとするボーイング旅客機の阻止に成功し、機を保護し、さらに乗客の安全を保証した。

画面に示されたこの技術は特性材料阻止システム(Engineered Material Arresting System、略称EMAS)と呼ばれる。この技術は長期にわたり国外の会社に独占されてきた。2012年7月12日、中国民航科学技術研究院によって研究開発された、完全な自主知的財産権を持つEMASが正式に中国民航局の審査に合格し、プロジェクトへの応用の批准を獲得した。これは中国民航の、飛行の安全に関わる重大システム研究開発方面において取得した重要な進展であり、世界で第2番目に政府民航主管機構の批准を獲得したEMASでもある。この成果の取得は、飛行場へのこのシステムの装備コストを大幅に下げ、したがって我が国の多くの高原の飛行場や特殊地形の飛行場が有効に安全保障能力を向上させることを押し動かす。

機が滑走路を飛び出すのをいかに阻止するのか?

世界の民間航空業の急速な発展につれ、発着機数は明らかに増加し、機が滑走路を飛び出す回数は増加する趨勢を呈している。いかにして機が滑走路を飛び出した後重大事故を発生させるのを避けるかは、すでに民航の安全に関する1つの重大な課題となっている。この難題の解決のため、1960年代には早くもイギリス人が関連技術を開発し、滑走路を飛び出した機を遮って停止させることに着手した。だが種々の原因のため製品化はできなかった。1980年代になって、アメリカ連邦航空局(FAA)とアメリカのある会社がEMASシステムの共同研究開発を開始した。

実際のところEMASは特定の力学性能を持った発泡コンクリートであり、数十cmの厚さをもって滑走路の延長線上の地面に敷き詰められ、遮って止める阻止床を形成する。その幅は滑走路と同じで、長さは数十mから100m余りまでの間である。飛行機がひとたび滑走路を飛び出せば即この中に進入し、発泡コンクリートは機の車輪の圧力下で破砕し、もって機の運動エネルギーを吸収し、機と機上の人員の安全を保証する前提の下に、機を徐々に減速させ、最終的にこの中で停止させる。

1990年代、FAAはEMASシステムの設計方法を審査の上決定した。1996年、初めてニューヨークのケネディ飛行場で試験的な敷設が行われ、成功裏に3機の飛行機を停止させた。その後、FAAはこれに対しライセンスを発行し、全米の必要ある民間用飛行場に広範に使用された。現在までに、アメリカはすでに35の民間飛行場に55セットのEMASシステムを敷設し、8機の飛行機の停止に成功している。これと同時に、アメリカは全世界にEMASシステムを普及させている。近年、我が国の四川九寨黄竜飛行場と台湾の松山飛行場にも相次いでこのシステムが装備された。

滑走路飛び出しの難題を解決できる

四川の九寨黄竜飛行場は山を削って作られており、三方を山に囲まれ、複雑な地形と高い海抜の影響を受けるため、飛行員は九寨黄竜飛行場での任務執行過程で往々にして滑走路を短く感じ、特に雨や雪の天候状態ではそうで、機が着陸やタッチアンドゴーの時にひとたび逆噴射、ブレーキ失効、あるいは滑走路飛び出しの状況が起きたら、結果は想像に耐えない。このため、2006年の九寨黄竜飛行場第2期拡張工事の際、滑走路の南北両端にそれぞれ2セットのEMASシステムが装備された。

我が国では、相当数の飛行場が山を削って建設され、「テーブル飛行場」と俗称される。これらの飛行場にはいずれも基準に従って滑走路の端の安全区が設けられているが、安全区の外は往々にして急な坂や崖であり、機がひとたび滑走路の端の安全区を飛び出せば、機が壊れ人が死亡する悲劇が必然的に起こる。この他、いくつかの川、海、民間人居住区に面した飛行場にもこのような問題が存在する。

中国民間航空の急速な発展、フライト数の激増と共に、過去の安全レベルを維持するためにはより新しい安全上の手段が必要となっている。国際民間航空組織の統計データは、全世界の滑走路を飛び出し、逸れる事故の回数が民間用航空機事故の類型別統計の首位にランクされることをはっきり示している。近年の我が国の民間航空でも滑走路を飛び出し、逸れる事件の回数は民間用航空機重大事故の類型別統計で首位となっている。このことから、滑走路の端の安全区が充分長くない飛行場にEMASシステムを装備することは、飛行機が滑走路を飛び出し、逸れる問題を良好に解決し、安全運行のレベルをはっきりと向上させられることが見て取れる。

EMASシステムの技術的難題

中国民航科学技術研究院が研究開発したEMASが中国民間航空局の審査の上での批准決定を獲得する前、国内には類似の製品はなく、我が国の飛行場がもし装備したければ、3つの問題に直面しなければならなかった。すなわち製品の価格が高く、輸送距離が長く、システムの維持メンテナンスが難しい、という問題である。

報道によれば、2010年に台湾の松山飛行場に1セットのこのシステムを敷設することが計画され、予算は43,000万新台湾ドルにも達し、2006年に四川の九寨黄竜飛行場にこのシステムが敷設された時と比べて、価格が比較的大幅に上昇している。このように高い費用では、もし政府が大部分を助成しても、国内で最もEMASシステムの装備を必要とする中小の飛行場にはやはり負担し難い。

中国は自分のEMASシステムを必要とする! 2010年、民航局副局長李健の指示の下に、航空科学院は同院の主要な指導者、数十名の科研の中核となる人が参与する研究開発団体を組織し、国内の関連組織と連合し、数千万元の経費を投入した。2年余りの時間を経て、材料の生産およびシステム設計方法の技術的難題を攻略した。製品の性能とシステムの安全性を有効に検証するため、航科院は専用の試験台架を設計、建造し、機の車輪が材料を挽き砕く過程に対し数十回のテストが行われ、多くの貴重なデータが得られた。そして最終的にワンセットの完備された阻止過程シミュレーション計算モデルが建立され、設計方法が確立された。航科院はさらにわざわざ国航から1機のボーイング737機を購入し、2011年第4四半期から、天津飛行場の第2滑走路を利用して相次いで6回の大規模な実機による検証試験を展開した。試験の結果は、航科院が研究開発したEMASシステムは有効な阻止効果を持ち、しかも機と機上の人員の安全を保証できることを示した。

EMASシステムの発展の展望

「中国民間航空にとって、EMASプロジェクトは全く新しい、新しいものを作り出す性質のプロジェクトであると言え、国際的にもアメリカだけがこの技術を掌握し、我々には参考にし得るいかなる経験もない。このプロジェクトを成功させることは、中国民間航空が国際民間航空界に基準を輸出し中国民間航空の国際的地位を向上させること、複雑な飛行場の安全上の余裕度を向上させること、民間航空大国を建設すること、いずれに対しても非常に重要な意義がある。」 民航局の李健副局長はかつて何度も異なる場合に、中国民間航空が自らのEMASシステムを研究開発することの重要な意義を強調した。

航科院(北京)科学技術発展有限会社の関係の責任者は記者に次のように明らかにした。国産のEMASシステムの研究開発成功は敷設費用を大幅に下げ、我が国の多くの高原の飛行場、複雑な地形の飛行場、その他特殊な原因により滑走路の端の安全区を延長することが難しい飛行場のために価格水準がリーズナブルな工程解決方案を提供した。これには非常に広い市場の前途の見通しがあり、騰沖飛行場はすでにEMASシステムの装備を確定し、一方国内外の多くの飛行場もこの製品に対し強い興味を示している。「我々は天津空港経済区に10,000平方m余りの生産工場を持っており、阻止材料の生産、メンテナンスに必要な環境の要求を満足させることができ、材料性能の安定を保証することができ、毎月1セットのEMASシステムに必要な材料を生産できる。」

今年、国際民間航空組織は「国際的な基準と提案の措置」の中で、滑走路の端の安全区の長さ延長の基準を提示し、もって滑走路を飛び出すことによりもたらされる重大な飛行の安全に関わる事故を減少させている。だが地理的あるいは他の環境的要素の制約ゆえに、非常に多くの飛行場は新たな滑走路の端の安全区の長さに関する要求を満足させることが難しい。EMASはすでにICAO(頑住吉注:国際民間航空機関)の「国際民間用航空条約」の付則14「飛行場」第1章「飛行場の設計と運用」第3.5.5条に記入され、国際的に通用する同じ効果の安全措置となっている(頑住吉注:安全区を延長するのと同じ効果を持つことが公認されている、ということでしょう)。

理解されているところによれば、国産のEMASシステムの価格は国外の同類製品に比べ比較的大幅に下がっているが、非常に多くの飛行場、特に中小の飛行場にとっては、この費用はそれでも非常に大きな支出と言える。EMASシステム敷設の目的が飛行場の運行の安全性を向上させることであるのにかんがみ、中国民航局は関連の助成政策を制定し、もってEMASシステムのより普及した運用を支持することに着手しているところである。


 私これ全然知りませんでした。検索すると、

http://www.alpajapan.org/news/alpa_news/33ki_01-79news/alpa_japan_33-28.pdf

 こんなページが見つかり、と言うかこれくらいしか見つからず、この内容を見ても日本ではまだ導入されていないようです。安全対策に関し中国より遅れているっていうのはどうなんすか。









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