9mm機関けん銃製作記

 これは9mm機関けん銃の製作中、進行をリアルタイムでお知らせした記録です。なお、製作に直接関係ない記述や他ページと重複する画像は削除しました。


 マルゼン製イングラムのメカを内蔵する9mm機関けん銃を製作します。UZIピストルの方が形が近く、マガジンキャッチ、セレクターの処理も簡単でしょうが、たぶん前作同様全体がモナカの構造のためベースには使いにくいはずです。イングラムはトリガーまわりを除くメカがユニット化されているので組み込みが比較的簡単です。マガジンキャッチは構造が簡単なので何とかなるでしょうし、セレクターはセーフティとして機能させるのは比較的簡単のようです(ただしア・タ・レの配列は逆になりそう)。セレクターの機能は最悪別に設けざるを得ないですが、銃の性格上極端な話フルオンリーでもいいくらいだと思います。アッパーレシーバーはかなり幅があり、イングラムのモナカをはいだユニットを入れても充分に余裕があり、デフォルメはあまり必要ないようです。
 それにしても不可解ですよね。いまさらUZIベース、ストレートブローバック、9mmパラベラムのマシンピストルを新規製作するって。H&KにはMP5Kがあり、さらに新コンセプトのPDWもあるというのに、あまりに時代遅れという感じがします。小型、軽量、いざとなったらアサルトライフルを装備した敵と正面戦闘可能というPDWのコンセプトは機関けん銃の用途にぴったりだと思うんですが。もちろんあれはバトルプルーフされていないし、この場合互換性のない特殊弾薬の採用が現実的でないのはわかりますけど。
 しかしプレスで生産性を高めたことが大きなメリットだったUZIシリーズを改良(?)するのに、なぜそれより前のMP40などよりさらに古いトンプソン、ベルグマンのようなスチール削り出しなのか。少数だからこれでいいんだといわれればそれまでですけど、それにしても2.8kgは重過ぎでは?これじゃ軽量なアサルトライフルとたいして変わらないでしょう。89式をパトリオットみたいなスタイルにしたらそのくらいになるのでは。また発射速度毎分1100発も速すぎだと思います。トリガーを引きつづけたら1.5秒ももたないんじゃあ暗殺用ならともかく防御兵器としては頼りなさすぎのような気がします。MP5Kと比較すると、たぶん威力は同等。命中精度では負け。全長、幅、重量といったコンパクトさで負け。他国でこういうコンセプトの銃を作るならプレス工法でコストが安いのが最大のメリットになるはずですが、国産、少数、削り出しということでコストでも負け。こ、これならMP5Kを輸入かライセンス生産した方がずっといいんでは。
 とまあよくわからない銃ではありますが、こんなのでOKなのは平和だからこそ。喜ぶべきなのかもしれませんね。ってこんなこというとこの銃を持って危険な場所に行かされる可能性がある自衛隊員に怒られちゃうか。

12月9日追加
 ジェットファイアの製作に疲れたのでいったん終了し、9mm機関けん銃の製作に着手しました。マルゼンのイングラムを詳しく見て、試射し、分解してみました。旧作はトリガーと直接連動していないハンマーといったメカが気色悪く、なじめませんでしたし、私のさわった製品は調子もイマイチでした。でも新作は合理的に出来ていて、作動も快調、なかなかいいようですね。要するにバルブを銃側に設けたり、ハンマーを内蔵するといった特殊なオリジナルデザインをオーソドックスなものに変えたらよくなった、というわけでしょう。H&Kのハンドガンが、ガスロック、ローラーロックといった特殊なシステムを採用したがメジャーになりきれず、オーソドックスなブローニングタイプにしたらよくなった、みたいなもんでしょうか。
 口径は同じ9mmですが、9mmショートと9mmパラベラムの圧力の違い、純粋な軍用とそうでないものとの差なんでしょうか、9mm機関けん銃とイングラムM11は肉づきがまるで違います。当初グリップフレームはオリジナルと交換する形を考えていたのですが、どうもトリガーガードを切り取ったグリップフレームをそもまま内蔵する形でいけそうです。アッパーレシーバーもまるごと内蔵になりそうですし、作動や耐久性の問題はさほど大きくならずにすみそうです。セレクター・セーフティは作動方向が逆になるのは避けられそうにないですが、機能はなんとかなりそうな感じです。マガジンはノーマル、ロングとも無加工で使用でき、ノーマルには外観を似せるための下駄をはかせることができるようにしようと思っています。ただ、実用優先ということで外観上のマガジンキャッチはダミーになりそうです。

12月13日追加
 ひえええ。なんちゅう作りにくい形をしとるんじゃこの銃は。失礼。しっかし意味不明に複雑微妙な曲線は一体何を意味しているんでしょうか。ひょっとして高くても必ず買ってくれる相手だからって、わざとコストアップしてるんではないでしょうね。うーん。
 グリップまわりの造形に四苦八苦しています。なるほど!と納得いく複雑さならいいんですが、完成してもクエッションマークが消えないようなイヤな予感がします。H&K PDWのときは、なあるほど、と納得しながら作れたんですがね。これは当然としても、一般的にはへんちくりんな銃であるはずのPP-90やプレッシン、C78などのときもこんな違和感は感じなかったです。まあ、グリップまわりさえできれば後はまあまあ簡単そうなのでがんばることにしましょう。
 残念ですが、実銃通りの位置にあるセレクター・セーフティはセーフティの役だけ、作動方向は逆でフルオートオンリーになりそうです。理屈では充分セミ・フルにできるのですが、セミを制御するプレートの動き、リターンスプリングのセッテイング方法が微妙で、トラブルが多発しそうなんです。単にセミがきかなくなるとかならまだいいんですが、トリガーがロックされて引けなくなるといった実用上致命的なトラブルも多そうなのでここは安全策でいきたいと思います。加工技術に自信がある人にはこのホームページ上などでセミフルにする方法を説明したいと思います。
 ご存知の方も多いと思いますが、マルゼンのイングラムM11は外形上MGCのモデルガンとほぼ同一です。今回のキットはグリップフレームも少しの加工で残し、すっぽりかぶせる構造のため、モデルガンをベースにしたカスタムもできそうです。もちろんモデルガンのバレルはそのまま残すので安全上の問題はありません。ただこの場合エジェクションポートの処理がうまくいくかちょっと不安ですが。

12月16日追加
 コンバットマガジンの記事でも触れられてなかったんで気になってたんですが、あの銃はオープンボルトのようです。最近ではストレートブローバックのサブマシンガンでもクローズドボルトにして初弾の命中精度を向上させるのが一般的ですから、形が近いUZIピストルの直動式ハンマーをアレンジしたクローズドボルトだろうと予想してたんですが。まあベースのイングラムはオープンボルトなんで、その方がリアルに出来ていいですけど。ということはセミオートでも狙ってあたるのは25m程度で、MP5のような使用法は無理ってことでしょう。どこが売りかわからない銃だと書きましたが、構造はきわめてシンプル、無茶苦茶に肉厚のスチール削り出しということで、タフさでは世界一かもしれません。アサルトライフルよりはるかにタフなコンパクトサブマシンガンが必要なのかは謎ですが。
 まだ未定ですが、ひよっとしたら今回は自分での流し込みではなく、業者に注文して量産することも検討しています。

12月24日追加
 おおよその形ができました。すでに機能は揃っています。コッキングハンドルは発射時はボルトと連動しないUZI同様の構造になります。レシーバーカバーもUZI同様の方法でワンタッチで外せます。この状態からダミーボルトが取り出せます。エジェクションポートの位置が合わないので、オープン時完全にクリアにはならず、中に余計なメカが見えてしまうのがちょっと残念。完成はたぶん1月末ぐらいでしょう。ここ数日中に途中の写真が公開できると思います。何せ狭い部屋なので撮影のセット組むのも一苦労なんです。

12月29日追加

9mm機関けん銃加工途中1


今こんな感じです。おおまかな形にはなっていて、発射、セーフティなど機能もそろっていますけど、細部の造形に手間がかかるので作業量としてはままだ1/3程度だと思います。エジェクションポートの位置はやはり相当にずれていて、モデルガン内蔵の場合、ロアレシーバーとの境界線くらいまで広げないと排莢しそうにないです。

1月8日追加
 PDWの再生産でしばらく止まっていた作業を再開しました。でも改めてPDWを扱って、9mm機関けん銃に対する「なんじゃこりゃ」な思いが強まったみたいです。
 バーチカルフォアグリップ(ていうか微妙に傾斜してますが)が固定であるのはコンパクト化よりタフネス優先として認めるとしましょう。でも普通ならレール状に差し込んでピン1本で固定する、といった方法をとるでしょうし、それで必要充分なはずです。ところがこの銃の場合、六角レンチが必要なネジ前、中、後3本で固定しています。そこまでする意味ってあるんでしょうかねえ。
 おかしな銃ではありますが、いつものことながら手をかけて作っていくうちに情が移って愛着のある銃にもなりつつあります。もちろんキットとしてはPDWの反省点も踏まえ、よりよい製品になるはずです。

1月14日追加

 今こんな感じです。

9mm機関けん銃加工途中2

 だいぶ形になってきましたが、これでもまだ作業量としては6割くらいでしょう。
 予価に関する質問が数件ありました。まだ未定ですが、おおざっぱな予想として、キット15,000円程度、完成品35,000円程度になるのではないかと思います。発売は3月になると思います。
 メールで問い合わせをいただいたついでに教えていただいたんですが、防衛庁、自衛隊のホームページでけっこう9mm機関けん銃について情報公開しているんですね。陸自の平成11年度調達状況として70挺、金額では2千万円となっています。つまり1挺28万円以上ということになり、サブマシンガンとすれば異常に高価ですね。平成12年は100挺であるのに対し、13年度は13挺の要求にとどまっており、調達は一段落ということでしょうか。するとやはりごく少数の特殊な装備ということなんでしょう。

1月20日追加
 刻印はほぼ実銃通り再現することを目指しますが、自衛隊マークの桜は類似の星型マークに変更、現存する国内の会社名を示す「NMB」は頑住吉をもじった「GSK」に変更しています。セレクターの表示は実銃と逆で、普通に「ア タ レ」と読める形です(実銃は「レ タ ア」なんです)。
 マガジンは基本的にM11のままですが、グリップ下に突き出た部分の外観を表現したパーツを接着できるようにしようと思います。理想を言えばMGCグロックのマガジン底板のように簡単にスライドして開閉(着脱)できればいいんですが、周囲のスペースと材質の精度、強度の問題で難しいです。接着してしまうとなると、そのままガスが注入できないとダメです。延長部は25mmくらいなので、延長ノズルを使うことになります。
 延長ノズルにはタニオ・コバのガス缶にネジ込んで固定するデラックス版と、マルシン(真鍮削り出し・グリップがオーバーサイズになったチーフとかに付属してますね)、タナカ(真鍮パイプ絞り加工・ピースメーカーに付属してました)の簡易版があります。タニオ・コバのものは途中でガス漏れしたりするおそれがなくていいんですが問題もあります。最近のトイガンメーカー以外が出している安いガスは缶の首に雄ネジがついてないものが多いんですね。まあ、あれはブースターでガスガンを撃っていた時代のなごりで、今あれを使うことはほとんどないので最近参入したメーカーのについてないのは当然かもしれませんね。
 この3種いずれでもガスが注入できるようにし、そのためには多少突起部を短くする等の妥協が必要かもしれません。
 数日中にサーフェイサーをかける直前の状態をお見せできると思います。途中の状態をお見せするのはここまでで、それからいよいよ本格的な仕上げ段階に入ります。

1月25日追加
 今こんな感じです。

9mm機関けん銃加工途中39mm機関けん銃加工途中4

 いよいよ仕上げ段階に入ります。85%完成といったところでしょうか。細部の微妙な削りの表現は今から気が重くなるくらい大変そうです。それとグリップ右面の形状ですね。なだらかなアールになっていれば簡単なのに、鈍角のエッジになっています。直角や鋭角のエッジをきれいに立てるのは簡単ですが、鈍角のエッジは非常に難しいんです。

1月29日追加
 V-MATで8,500円で安売りしていたマルゼンのイングラムを買い、製作上の必要で分解してみて驚きました。シアの形が変わってるんです。気づかずに製作を続行していたらセーフティが機能しなくなる所でした。幸いごく簡単な手直しで済み、旧型を使っても問題ないようにしました。もうこれ以上のマインーチェンジがないといいんですが。
 マガジン延長部の件ですが、タニオ・コバとマルシンの延長ノズルは長さが足りず、あまり売っているのも見かけず、後者は注入バルブとの相性も悪いです。タナカのものが理想的なので、まとめて入手できないか調べて、無理なようならやはり着脱式にするしかないようです。直接着脱するのは無理ですが、ベースとなるパーツを接着し、そこに着脱するなら何とかなりそうです。ただでさえ多いパーツ点数がさらに増え、強度も低くなりそうなのでできればタナカの延長ノズルを使いたいんですが。
 1月末完成予定と以前書きましたが、2週間ほど遅れそうです。こんな経験は初めてですが、とにかく筆舌に尽くし難いほど作りにくい形です。どういう意味があるのか分からない面取り、エッジもそうですが、意味は分かるが…という部分もあります。

エッジのイラスト

 右図のようなラインを徹底して嫌い、ほとんど左のようにしてあるんです。折れにくくする、という意味は分かるんですが、ここまでするか、という感じです。日本の場合は例外的にしろ、軍用ライフルは常に使うことが前提ですが、この銃の場合はまあ使わないことが前提で、万一の備えのため、という性格だと思うんですが。

2月3日追加
 延長ノズルの件ですが、実はご存知のパーツメーカー、KM企画さんが販売していました。500円と安価なので、これを使うことになりそうです。これで外観もかなりリアルで、がっちり接着できて強度もあるマガジン延長部でいけそうです。
 ちなみにマルゼンのイングラムは現在問屋の在庫がほとんどない状態のようです。店頭の流通在庫のみということで、次は5月にならないと入ってこないらしいという話も聞きました。まだキットの発売予定の詳細が決定していないので買っておくことをお勧めするのははばかりがありますが、発売時イングラム本体が入手困難な状態にある可能性があることは念のためお知らせしておきます。
 MGCのモデルガンは現在入手困難のようですね。ニューMGC以外では新品はほとんど買えないようです。こちらはまだ組み込み可能かどうかすらわからないわけですが、これも念のため。それにしてもあの傑作モデルガンすら入手困難な状況は何とかならないもんでしょうか。
 形状が簡単なパーツから型取りを始めました。もう一息で完成です。


2月6日追加
 MGCのイングラムのモデルガンを買いました。お店の人に「これはモデルガンですがよろしいですか」と言われ、そういう時代なんだなあ、とちょっと複雑な心境になりました。以前持っていたのはABSモデルだけで、ヘビーウェイトモデルを触るのは初めてでしたが、動きがちょっとしぶいです。まだ発火はしていませんが、少々調整の必要があるかも。
 すでに仕上げにPDWの3倍くらいの手間をかけていますが、まだアッパー、ロアレシーバーの仕上げが終わりません。とにかく作りにくい形です。この銃のこの部分が作りにくい、ということはよくありますが、全体的に作りにくい、というのは初めての経験です。まあ、例えばファイブセブンピストルのように極端に作りにくそうなものは避けている、というのもあるんですが。

2月11日追加
 「もう一息で完成」は間違いでした。一部パーツがどうしても満足いく形になってくれません。
 例えば、円柱や四角柱を表現するのは簡単ですし、これが少しぐらいゆがんでいてもあまり目立たないもんです。ところが、これが正八角柱ということになると、難易度は極端に高くなります。鈍角を表現することの難しさは以前書きましたが、この他にも、横から見た場合きれいな平行線状にラインが並んでいなければ一目で形がおかしいことがばれてしまいます。隣との関係もあるので、ズルしてつじつま合わせしてごまかす(正直に言うとこんなことはよくあります)こともできないんです。しかもこの正八角柱がカーブしていたり、直角ではない微妙な角度で交差していたりすればもう悪夢のような作りにくさになります。この銃が異常に作りにくい形というのはそういう事です。もちろんコンピュータ制御の機械加工で削り出すなら問題はないんでしょうが。


 パーツの構成です。ほとんどできているように見えるかもしれませんがまだ製品として販売できるレベルには至っていません。アームズのガンスミス記事ならこの辺で妥協して、なるべくアラが目立たないアングルやライティングで撮影してごまかしてしまうんですが。完成までもう少しお待ち下さい。 

2月20日追加
 何とかテストショット第1号が完成しました。
 まだ型直しの必要なパーツ等問題はかなり残っており、完成バンザイというわけにはいきません。材質は大部分がプラキャストなのはもちろんですが、トリガー、マガジンキャッチ等が歯科用レジン、コッキングハンドル、後部スリング金具がホワイトメタルとなりそうです。前部スリング金具はプラキャストにヒートン(壁に絵をかける時などに使うリングのついたネジ釘)を鋳込む方法にする予定です。
 しかし予定より1ヶ月近く余計に時間と手間がかかりました。予価より多少オーバーするのはお許しください。でも、超過分に見合うほど上乗せしたら売れなくなって余計損になるのも明らかなので、限度はありますよね。というわけで発売前から商売的にはあまりおいしくないモデルアップということが確定です(笑)。自分の技量と見とおしの甘さに対する反省材料ということで、勉強になりました。

2月22日追加
 とりあえず、

 ということにしておきましょうか。

 まだ細かい問題は残っていますが、ほぼめどは立ったということで。こんな成品の価格は何挺か組み立ててみてどのくらい労力がいるか見極めた上で決定します。
 次回作はまだ未定ですが、簡単なものにしたいです。まあ、長い銃器の歴史上9mm機関けん銃より作りにくい形の銃は存在しないと思われるので大丈夫でしょうけど。


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