2.11.5.5 ハンマーに関節結合された押し棒を持つダブルアクション銃

 これまで論評したダブルアクションシステムでは、トリガー内におけるトリガーバーの回転ポイントが、フレーム内におけるトリガーの回転ポイントより上に位置していた。トリガーへの圧力はトリガーバーの前方に向かう運動を引き起こした。これに対しトリガーの回転ポイントが、トリガーバーがトリガーに関節結合されているポイントよりも上に位置していると、後方に向かうトリガーバーの運動が結果として引き起こされる。この場合ハンマー上ではコックするための力はハンマー軸の上側に加えられる必要がある。(トリガーによって)コックされたハンマーの解放は、2.11.5.3で記述した方式に似て、あやつるカーブによってトリガーバーのレストがハンマーのレストから解除されることによってなされる。ベネリのピストルはこのようなダブルアクションメカニズムを使用している。この場合ハンマー上の押しカムがレットオフを引き受けている。2つの新しい構造、つまりチェコ製ピストル、モデルCZ75およびスペイン製のスター モデル28はこうした単純な構造からの変更点を示している。この原理は図2.11.23(CZ75)によって説明する。a)はシステムがデコックされた際の部品の位置関係をサイドから示している。ここでは一部断面図で表現されている。b)は同じ状態を俯瞰で表現している。c)はレットオフの瞬間の側面図である。フレーム(1)内に回転軸(8)を使って関節結合されたトリガー(2)は、1本の軸によってトリガーバー(3)と結合されている。トリガーは図示されていないスプリングによって前方に、トリガーバーは上に押されている。ハンマー(5)は軸(9)によって回転可能にフレーム内に収納されている。フック状の押し棒(4)は1本の軸によってハンマー軸の上側でハンマーに関節結合されている。その前端は上下2つの滑り面の間で誘導される。下の滑り面はフレームによって形成され、上の滑り面はシアキャリア(7)の一部である。このシアキャリアにはシア(6)が回転可能に収納されている。(シアキャリアはセーフティ軸によってフレーム内に保持されている。)

 トリガーバーはb)で分かるようにマガジンを囲んでいる。トリガーバーは後方に2つのショルダー部を持ち、右側のショルダーは矢印S3が示している。トリガーを引いた際、このショルダーが押し棒の適合する2つのショルダーを押し(S4は押し棒の右のショルダーを示している)、トリガーに作用する力を押し棒を介してハンマーに伝達し、(図示されていない)打撃スプリングの抵抗に逆らってハンマーを右に回転させる。トリガーバーの右に向かう運動の終わり頃、図cでT3によって示されているあやつる面が、シアキャリアのあやつる面T7に当たる。これによりトリガーバーは下方へと回転させられ、トリガーバーのショルダーは押し棒のショルダーとの干渉状態から押し出される。そしてハンマーは解放される。発射時、後方に走ったスライドはトリガーバーの上のカムを下方に押し、そしてこれによりトリガーバーと押し棒およびシアとのコンタクトを遮断する。この結果ハンマーは閉鎖機構の前進後、コックされたまま留まる。







図2.11.23 ハンマーに関節結合された押し棒を持つダブルアクション銃


 ベレッタ92系など大多数のダブルアクションオートではトリガーを引くことによってトリガーバーが前進し、ハンマーの軸より下の突起を前に引き、結果的に軸より上が後退することによってコックされます。この方式は「引き起こし式」などと呼ばれています。一方今回紹介された方式は「プッシュ式」などと呼ばれています。このプッシュ式の方がスムーズで軽いトリガーになるという説もありますが、この筆者はそういう評価を下していません。理屈から考えてもどちらでも同じのような気がします。CZ75のダブルアクションが比較的スムーズなのは、通常よりハンマー軸からやや遠い部分に力を加えるなどのデザインによるものであって、「引き起こし式」より「プッシュ式」が原理的に優れているわけではないのではないでしょうか。


http://www.mek-schuetzen.de/Blueprints/cz_75-2.gif

http://www.mek-schuetzen.de/Blueprints/Star_31_PK_9mm.gif