1.12.4.3 「あやつるカーブ」を通じてのシリンダー回転

 コルトによって再び銃器製造に導入された、シリンダー回転のための「レバー切り替え仕掛け」は、スペースの必要が少ないという長所を持っている。この重要な視点は、コルトによる「レバー切り替え仕掛け」が、ほとんど全てのリボルバー構造にほとんど変更されずに引き継がれるという結果をもたらした。シリンダー回転をシリンダーの円筒表面にフライス削り加工された「あやつるカーブ」を通じて行うというアイデアも、コルトに由来する(元々のパテントは1853年に記録された)。

 我々は「あやつるカーブ」式シリンダー回転を使った銃にすでに接している。つまり、ウェブリー・フォスベリーリボルバーである。この銃の場合、シリンダー回転の最初の局面は特別に急速に推移する(頑住吉注:指の力によるのではなく反動によるためです)。このため、シリンダーに伝導される力は非常に大きい。ちなみにこの激しい運動は、最初のモデル(1901年)の場合にシリンダーがときどき次の次のチャンバーに回され、その際次の停止位置は飛ばされてしまうという問題の理由である。フォスベリーが何故、ルートを後退および前進運動にほぼ均一に分配する代わりに、「あやつるカーブ」の適した形状によって、シリンダー回転のより大きい部分を前進するスライドの遅いルートによって引き起こさせなかったのかは疑問である(頑住吉注:スライドの後退は反動によって急速に行われ、前進はスプリングによって比較的ゆっくり行われるのだから、主に前進時にシリンダーを回転させるようにすれば作動上の問題が起こりにくかったはずだ、というわけです)。

 「あやつるカーブ」式シリンダー回転を使ったリボルバーの1つの興味深い例がモーゼルリボルバーである。この1878年にパテントが取得された構造について図1-55に基づいて解説しよう。

 ハンマーの脚は「滑り部品」(1)の切り欠きをグリップしている。この「滑り部品」にはセーフティおよびコッキングノッチが備えられ、ハンマースプリング(2)によって後方に押されている。「Umsetzer」(頑住吉注:通常はシリンダーハンドを指しますが、本来は「移すもの」といった意味で、シリンダーを回転させるパーツのことです。この場合シリンダーハンドではおかしいので、仮に「シリンダー回転用部品」としておきます。ちなみに何故かパーツ番号が振ってありませんが、青で表現されたパーツです)は「滑り部品」内に関節結合され、小さなスプリングがそのノーズをシリンダーの「あやつるカーブ」内に押している。ハンマーのコッキングは「滑り部品」を動かし、そしてこれによって「シリンダー回転用部品」を動かす。「シリンダー回転用部品」のノーズは、シリンダー下のフレームにあるスリット内で真っすぐ前方に誘導される。この際「シリンダー回転用部品」のノーズはノッチ(3)内につかまれており、シリンダーを真っすぐなノッチ(4)内に落ちるまで左に回転させる(後ろから見て)。コックされた銃では、シリンダーは「シリンダー回転用部品」のノーズによって正しい位置にホールドされる。このときチャンバーとバレルは「Fluchten」する(頑住吉注:以前も出てきた、辞書には「逃げる」といった意味しか載っていない単語ですが、やはり「直列する」といった意味があるようです)。ハンマーが作動すると、「シリンダー回転用部品」のノーズは真っすぐなノッチ(4)内を後方に滑り、ルートの最後に次の斜めのシリンダー回転用ノッチ内にジャンプする。

図1-55 モーゼルリボルバーの原理スケッチ。 (1)=「すべり部品」 (2)=ハンマースプリング (3)=シリンダー回転用ノッチ (4)=後退用ノッチ

 図1-56ではいくつかの「あやつるカーブ」が並べられている。a)はレミントン ジグザグデリンジャーの「あやつるカーブ」を示している。この銃はW.H.Elliotによって設計された.22口径のペッパーボックスである。Elliotはレミントンによって1861〜1862年まで少数が製造されたこの銃によって2つのパテントを手にした(1858年および1860年)。c)では、Union Arms Co.のオートマチックリボルバーの「あやつるカーブ」が再現されている。このウェブリー・フォースベリーに似た銃は1904年に開発され、、.32口径で製造された(頑住吉注: http://www.horstheld.com/0-makers-T.htm この図では何故これで連続的に回転できるのか不明です。いくつかバージョンがあるのか、挙げたページの画像、および大日本絵画刊「オートマチック ファイア・アームズ」P32に「Lefover automatic revolver」として掲載されている写真ではモーゼルリボルバーに近い形式の「あやつるカーブ」になっています)。

図1-56 いろいろなリボルバーの「あやつるカーブ」。 (a)はレミントン エリオット.22デリンジャー(ジグザグピストル) (b)はモーゼルリボルバー (c)はUnion Arms Co.のオートマチックリボルバー (d)はウェブリー フォスベリーリボルバー モデル1902

 「あやつるカーブ」を通じたシリンダー回転の長所は、長い「シリンダー回転用部品」のルート、そしてこれにより適切に製造が行われた場合、シリンダー回転のハンマーの運動との正確な同調が可能になることにある。その欠点はシリンダー周囲の長いノッチによってチャンバーが弱くなり、これによりより大きく、そしてより重いシリンダーが必要になることである。


 ちょっと意外ですが、この「あやつるカーブ」によるシリンダー回転は結局このタイプを製品化していないコルトが元祖ということです。



 このパテント図面は「Waffen Revue」36号のモーゼルリボルバーに関する記事に資料として掲載されていたもので、1855年のElisha K. Rootのものとされています。この人はこれに似たサイドハンマーのいくつかのコルトリボルバーを設計した人で、この図によればトリガーが大きく前後にスライドし、そのトリガーに付属するパーツの上方への突起がシリンダーの「あやつるカーブ」とかみ合っていて回転させる仕組みのようです。



 こちらは同じ号に掲載されていた1856年のコルト自身によるパテント図面です。こちらはシリンダーの上に前後にスライドするパーツがあり、その後端がハンマーの上端とヒンジ結合されていて連動する仕組みのようです。今回紹介した内容によれば元々のパテントは1853年とされ、これらよりさらに古いものがあることになります。いずれにせよこれらはおそらく本気で製品化するつもりで申請したというより、こういうライバル製品の登場を封じる狙いの方が強かったのではないでしょうか。

 私が精度や剛性の低いプラキャスト製ガレージキットにおいて、シリンダー中心近くで細かい動きをリセットを繰り返して行う通常のシリンダー回転システムを再現するのには非常な困難が伴います。一方シリンダー外周で大きな動きを一方通行でずっと続けるこの回転システムは、通常のシステムに比べればはるかに楽です。またシリンダーストップとシリンダーハンドの役を1つのパーツが兼ねているので両者の同調が不要であるという点でも難易度は低くなります。これは実銃でもあまりシビアな精度を要求されない、また同じ精度で作ったならより正確な作動が実現されるという長所につながるはずです。

 「あやつるカーブ」にはウェブリー フォースベリーのような段差なしで形状によって一方通行の動きになるものと、モーゼルのような段差によって強制的に逆行が阻まれるものの2種があります。前者は段差は不要でも後退時に約1/12、前進時に約1/12、合わせて1/6回転するシステムにせざるを得ません(6連発の場合)。別にオートなら前者でなければならないということはなく、モーゼルのシステムを逆にしたような、スライドの後退時にはシリンダーは回転せず、前進時のみで1/6回転するシステムにもできたはずで、これならシリンダーのオーバーランは起きにくかったでしょう(現にUnion Arms Co.の少なくとも一部バリエーションはそうなっていたようです)。一方ハンマーと連動するタイプで前者を採用することは、摩擦抵抗によってハンマーの動きが減殺され、不発が起きやすくなったりロックタイムが伸びるおそれがあり、シリンダー回転終了とハンマーダウンの同調もシビアになるので、不可能とは言えないまでも現実的ではないと思われます。

 ただし、後者は「あやつるカーブ」内に段差を設ける必要上最深部がより深くならざるを得ず、最後に触れられているチャンバーが弱くなり、それを防止するにはシリンダーが大きく、重くなるという欠点がより大きくなります。

 いずれにせよこの方式は上または下からの突起が「あやつるカーブ」内にはまっているという性質上スイングアウト方式のリボルバーには向かず、やがては廃れる運命だったはずです。












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