ボーチャードピストル製作記

これはボーチャードピストルの製作情況をリアルタイムでお知らせしたものです。なお、他のページと重複する画像は削除しました。

 ボーチャードピストルは有名なルガー(パラベラム)ピストルの原型になった銃でもあり、また初めて大量に生産、販売されて一定の商業的成功を収めたオートピストルでもあります。この歴史的に重要な意味を持つピストルの初めての製品化に挑戦してみることにしました。作動システムはリアルロックドショートリコイル擬似ブローバックとします。

 擬似ブローバックは基本的に、カートリッジを介してバレル内スプリングの圧力で押され、後退しようとするスライド(またはボルト。以下同じ)をシアで止め、トリガーを引くとシアが外れて後退、排莢し、その後弱いリコイルスプリングの力でスライドが前進するというものです。このシステムは実銃がストレートブローバックである擬似ブローバック製品全てに用い、またM1900ピストル(コルト型)でも「うそんこショートリコイル」するバレルと共に用いました。しかしこのシステムにはトリガーを引かないとスライドが引けないという欠点があります。

 十四年式で初めて使用したリアルロックドショートリコイル擬似ブローバックは、実銃と全く同じ方法でスライドをロックしておき、トリガーを引くことによってショートリコルさせてロックを解除するというものです。このシステムではトリガーを引かなくてもスライドを引くことができ、「バレルとスライドがロックされた状態で共に短距離後退→ロック解除されてスライドが後退、排莢」という実銃通りの作動になります。しかし十四年式ではバレル〜バレルエクステンションとトリガーが一体で、トリガーを引き続けている限りショートリコイルから復帰しないという欠点がありました。次のM1951ブリガディアでは、トリガーを引ききるとトリガーとバレルの関係がディスコネクトされるようにしました。これでトリガーを引き続けていても完全閉鎖するようになりましたが、装填していない時にトリガーを引くとバレル、スライドがヒョコヒョコ短距離後退して戻るという問題が残りました。

 今回はそれを解決する新方式を考案しました。ヒントになったのはM1900(F)とモーゼルM1914で盛り込んだローディングインジケーターです。これは装填している際、ファイアリングピンのように包底面から突き出している部品がカートリッジの底部に押されて後退することによって外から見えるレバーを動かしたり、ピンを突き出させたりするというものです。今回のボーチャードピストルでは、この動きによってレバーをボルト後方下部に突き出させ、ここをトリガーで押し下げるようにしました。したがって装填していない際はトリガーを引いてもバレルは動かず、また排莢後はレバーが自動的に復帰するのでトリガーに引ききりによるディスコネクトを組み込む必要もなくなりました。

 この方式には、トリガーをゆっくり引くとゆっくり作動が始まってしまう(ロック解除まで)という問題もありましたが、今回はその違和感も大幅に軽減されそうです。これは特別な工夫によるものではなく、システムの特性によるものです。このシステムにおける中央の関節は左右の関節よりやや下にあり、このためボルトに後退する圧力がかかると中央の関節は下降しようとします。しかし構造上下へは動けないのでボルトは後退できません。バレルの後退により中央の関節が持ち上げられ、左右の関節の上に位置すると一気に関節が折れ曲がってボルトが後退します。つまり中央の関節を持ち上げるには一定以上の力が必要で、力が一定以上になって初めてガクンと動き出す、MGCグロックの強制ガク引き機構のような性質が元々備わっているわけです。



 今こんな状態です。システムの核心となる作動システムが固まり、これで行けそうだと判断して発表に踏み切りました。セーフティは実銃通りの位置、操作で、押し上げるとショートリコイルを不可能にして作動しないようにする予定です。マガジンはほぼフルサイズにできるはずです。

 進行状況は随時このコーナーでお伝えしていく予定です。

10月29日



 今こんな感じです。マガジンキャッチ、セーフティ等の機能が加わり、後は基本的に造形だけです。作動用のカートは実物とほぼ同じ寸法の7.62mmx25実物ダミーから型取り複製したものを使う予定です。この状態で機能が揃っているということでお分かりのように、実物で後部のハウジング内に収納されている板バネのリコイルスプリングは再現不可能なので、複数の引きバネでボルトの復帰、ショートリコイルからの復帰を行う構造になっています。実物のトリガーは回転式でも水平移動式でもない、ブランコの座席部のように弧を描いて後退するという珍しいものですが、製品ではストレートに後退する形になります。実物はエキストラクターにかまれたリムが後方のエジェクターにぶつかる形ですが、製品ではプランジャー式にアレンジしています。ぶつかる形式だとかなり後方にあるエジェクターにぶつかるときにある程度の後退速度が要求されますし、高速でぶつかるとエキストラクターに負担がかかって折れやすくなります。プランジャー式ならチャンバー後端からカート前端が出た瞬間に排出が行われますし、後退速度もあまり重要ではありません。またエキストラクターに打撃様の力が加わらないので破損の可能性が大きく低下します。

 当初ストックは接合部の強度が保てないので無理だろうと思っていたんですが、実物の写真をよく見るとこの銃のストックには指で回せるネジがついていて、これを本体にねじ込んで固定するようになっています。これならば一応大丈夫だろうということで、ストックも作ることにしました。ただし付属の革製ホルスターは作りようがないのでこれを外したような状態になると思います。全体にサイズが大きくなり、構造も比較的複雑になるので、いつもより高価になるのは避けられませんが、できれば25,000円程度に抑えたいと思っています。

11月5日



 だいぶ進みました。本体に関して言えば7割以上でしょう。

 この銃に関しては、ハンドガンとしては異常にサイズが大きい、グリップ角度が垂直に近く、後部に大きな張り出しがあるので保持しにくい、といった評価が多く見られます。大筋形が出来た原型を手にして見ると、うーん、当っていないことはないですが、大きいというよりは長いという感じで、体積的にはびっくりするほどではありません。また持って狙った時の違和感も想像よりずっと小さかったです。この感じはぜひ手に取って実感していただきたいです。私も早くストックを装着して狙った時のフィーリングが知りたいです。

11月7日



 本体の造形は複製後に行うグリップのチェッカリング以外全て終わり、仕上げを残すのみとなったので、ストックの製作に入りました。すでに着脱機能はできています。モーゼルミリタリーなど、一般的にストックを装着したピストルカービンはストックが短く、グリップとストックの接合部に違和感があったりしてあまり保持しやすくないですが、このボーチャードは驚くほど快適な使用感になっています。ストック自体は「やや長い」程度なんですが、グリップでなく大きく張り出したフレーム後端に固定されるのでせせこましい構えにならないし、グリップフィーリングにも影響がないわけです。またフルオート用ではないせいか、他に比べ極端な曲銃床になっているという要因も大きいです。

11月14日



 ストックの造形がほぼ終了しました。こちら面はまだいいんですが、裏面に意味不明の削り加工があって面倒です。実銃では結合ネジをめぐっての回転を防ぐのは中央のごく小さなレール状結合部だけですが、ちょっとこれでは強度的に無理そうなので外観をなるべく崩さないように下面に補助ロックを設けました。

 まもなく仕上げに入ります。12月半ばまでには発売したいと思っています。

11月22日



 仕上げに予想以上に手間取っていますが、あと数日で型取りに入れると思います。

12月10日

 予定よりもかなり遅れましたが、とうとう試作第1号が完成しました。

 と、いうことで、

 おめでたいと言いたいところなんですが、困ったことにコストや手間が予想以上にかかることが分かりました。特に中身が詰まったストックはそれだけで中型オート全体の倍以上キャストを使います。組み立て、仕上げ、塗装、全てこれまでの標準的モデルの1.5倍かそれ以上かかる感じです。かと言ってそれに合わせて価格を上げたら売れなくなるでしょうし、どうしたものかなと考えています。









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