2.11.3.3 後方に位置するコック部品

 図2.11.12は特別に好都合なハンマーレストの配置を示している。この配置はG.Wilhelmによってピストル製作に導入され(ハイスタンダード モデル102、103、ミリタリー)、いろいろなメーカーによって引き継がれた(FN、ワルサー、Domino、Britarms)。ハンマーレストはハンマーの回転ポイントから可能な限り大きい距離にある。短いトリガーストロークを達成するため、コック部品の回転ポイントは力アームが短く、レストアームが長く作られている。この結果は非常にコンスタントなトリガー抵抗と短い仕事ストロークを持つトリガーである。レバー比率を変え、長い力アームと短いレストアームに移行すると、低いトリガー抵抗に至ることができる(1〜1.5ニュートン)。この場合銃はなお確実に作動する。すなわちダブル発射は起こらない。

 我々はこれに対応する型をDominoのオリンピックラピッドファイアピストルに見いだす。ベストの散弾銃は長年来「上に位置するバー」付きで作られている。このシステムは同様にハンマーレストがハンマー軸から最大の距離に設けられている。



図2.11.12 後方に位置するコック部品 1はハンマー、2はコック部品、3はフレーム、4は閉鎖機構、HSはハンマースプリングの力の方向、SSはコック部品スプリングの力の方向、dはトリガーから伝達される力の方向。


2.11.3.4 ハンマーに関節結合されたコック部品

 コック部品は従来考察してきたシステム(頑住吉注:フレームに関節結合)とは違ってハンマーに関節結合することもできる。図2.11.13はハンマー・コック部品配置の例としてS&Wピストルモデル1913(.35オートマチックピストルおよび.32オートマチックピストル)をコックされた状態で示している。フレーム内、ハンマーの前には削り加工部があり、この下側にコック部品(2)があてがわれる。コック部品がdの方向に引かれると、ハンマーは解放され、打撃スプリングによって左に回転する。J.H.WessonはD.R.P.(頑住吉注:ドイツ帝国パテント)ナンバー247668(1911年)の中でこのシステムのためのディスコネクターを記述しており、すなわちより古いものであるに違いない。後にはLadickeによって変更された形でグストロフピストルに使用された。この銃は1940年にSuhlのグストロフ工場(かつてのSimson & Co.)で少数が製造された。



図2.11.13 ハンマーに関節結合されたコック部品


 「後方に位置するコック部品」は、ハンマーの回転軸からレストの距離がワルサー初期モデルよりさらに長く、その分バースト化の危険なしにトリガーストロークを短く均一にしたり、トリガープルを軽くすることができるわけです。ただしこのデザインはスペースを取り、また実用銃ではトリガープルを必要以上に軽くすると危険であるという事情もあるので競技銃にのみ見られる形式のようです。

 「ハンマーに関節結合されたコック部品」はきわめて珍しい方法で、私はこれを読むまで存在自体知りませんでした。少数生産に終わり、あまり詳しく知られていないS&W M1913に関してはこんなページがありました。

http://www.mek-schuetzen.de/Blueprints/S_W_M1913%20Exploded.png

http://www.mek-schuetzen.de/Blueprints/S_W_M1913_Schematic.png

 グストロフオートピストルに関してはこんなページがありますが、詳しい構造に関しては不明です。

http://www.horstheld.com/0-Gustloff.htm













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